「第18課—モルモン書の翻訳:神の賜物と力モルモン書の翻訳:神の賜物と力」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』
「モルモン書の翻訳」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』
第18課:教義と聖約6-9章
モルモン書の翻訳
「神の賜物と力」
オリバー・カウドリという筆記者を迎えて,ジョセフ・スミスは1829年の春の間に,モルモン書の翻訳を大幅に進めることができました。ジョセフ・スミスがどのようにしてモルモン書を翻訳したのか,詳細は分かっていませんが,彼が神の賜物と力によってこれを成し遂げたことは分かっています。この課は,ジョセフ・スミスがわたしたちのためにモルモン書を翻訳できるよう,神がその手段と力をジョセフにお与えになったという証を,生徒が強められるようにすることを目的としています。
レッスンの最初に,以下のシナリオを紹介しましょう。二人一組になって,もしくは代表者に教室の前に出てもらって,ロールプレーをする機会を作ってください。
ある日あなたは親友の一人に,モルモン書は聖書のような聖典だという,あなたの信じていることを話したと仮定します。あなたの友達は少し驚いたようで,モルモン書はジョセフ・スミスが自分の想像で書いたものだと教えられた,と言います。
この課ではジョセフ・スミスによるモルモン書の翻訳の詳細を学ぶことを,生徒に説明します。学習しながら,このような状況で助けとなり,モルモン書は神から与えられた書物であるという証を強めるのに役立つ真理を探すよう生徒に勧めます。
オリバー・カウドリがモルモン書の翻訳でジョセフ・スミスを助けた状況について,覚えていることを生徒に尋ねるとよいでしょう。必要に応じて,「教義と聖約6章 」の課,または『聖徒たち』 第1巻「真理の旗」58-60 を参照してください。
ペンシルベニア州ハーモニーに来てジョセフ・スミスを訪ねてから2日以内に,オリバー・カウドリはジョセフの筆記者として働き始めました。ジョセフとオリバーによるモルモン書の翻訳のスピードは,大幅に上がりました。オリバーを筆記者に迎えて,ジョセフ・スミスは実働約65日でモルモン書の翻訳を終えたと推定されています(see Russell M. Nelson, “A Treasured Testament ,” Ensign , July 1993, 61)。
奇跡的な方法でジョセフ・スミスがモルモン書を翻訳したことについて,どのようなことを知っているか,生徒に尋ねてもいいかもしれません。
以下の「福音トピックス」の論文「モルモン書の翻訳 」からの抜粋は,ジョセフ・スミスが翻訳について世間に知ってもらいたかったことを生徒に理解してもらうのに役立ちます。
1830年版モルモン書の序文に,ジョセフ・スミスのこのような言葉が記されています。「わたしは神の賜物と力により翻訳したことをお知らせしたい。」翻訳の過程についてその詳細を述べるように強く求められたとき,ジョセフは,それは「神の賜物と力により」行われたと何度か繰り返し,またあるときは「モルモン書の出現に関する詳細のすべてを世の人々に告げるつもりはありません」と付け加えました(「福音トピックス」の論文「モルモン書の翻訳 」,ChurchofJesusChrist.org )。
以下のことが分かると,モルモン書を翻訳する当たって神がジョセフ・スミスにお与えになった道具のことが,少し理解しやすくなるでしょう。
1823年に天使モロナイがジョセフ・スミスに現れたとき,モロナイは,モルモン書を世に出す経緯について預言者ジョセフに指示を与えました。
ジョセフ・スミス-歴史1:34-35 を読み,モルモン書の翻訳のために神が準備された道具を見つけてください。
必要であれば,モルモン9:34 とエテル3:23-24 を読んでもらい,モルモン書の預言者たちは,神がその翻訳手段を用意してくださることが分かっていたことを,生徒に理解してもらうとよいでしょう。
モルモン書の翻訳のためにジョセフ・スミスが使った物理的な用具について,生徒がさらに詳しく理解できるよう,ChurchofJesusChrist.org にあるビデオ「聖見者の石 」(3:47)を見せるといいかもしれません。あるいは,以下の情報をかいつまんで話すか,生徒の一人にクラスで読んでもらってもよいでしょう。
3:47
後の歴史記録を読むと,ジョセフ・スミスはモルモン書を翻訳するためにウリムとトンミム(「ニーファイ人の解訳器」または「めがね」と呼ばれることもある)のほかに,聖見者の石と呼ばれる用具も使っていたことが分かります。預言者ジョセフは,金版を手に入れる数年前にこの道具を見つけていました。
神が準備されたこれらの道具をジョセフがどのように使ったのか,詳しいことはあまり分かっていません。しかし,ジョセフが時折ウリムとトンミム,または聖見者の石のいずれかを帽子に入れて光を遮り,それによってその用具に現れた言葉をよく見ることができるようにした,という証言があります(「福音トピックス」の論文,「モルモン書の翻訳 」,ChurchofJesusChrist.org 参照)。
ジョセフ・スミスによるモルモン書の翻訳については,幾つか分かっている詳細はあるものの,翻訳のプロセスについてはまだ分かっていないことがたくさんあるということを,生徒に理解してもらいます。最も重要な真理は,神の力によって神の言葉が神の子供たちに伝えられるようになったということです。
モルモン書は神の賜物と力によって翻訳されたということを生徒に感じてもらうために,以下のリソースを一つまたは複数使うといいかもしれません。
『わたしに従ってきなさい-個人と家族用:教義と聖約 2025』 の「教義と聖約6-9章 :これは啓示の霊である」の「回復の声 」の項
ビデオ「ハーモニーでの日々 」のタイムコード7:18-11:33
25:5
「ジョセフ・スミス-歴史」に記録されている翻訳プロセスに関するオリバー・カウドリの説明(75節の後の最初の段落 に記載)
生徒に,答えを発表してもらう前に,少人数のグループまたは二人一組で以下の質問について話し合ってもらうとよいでしょう。
エマあるいはオリバーのどの言葉が,モルモン書は神の賜物と力により翻訳されたというジョセフ・スミスの証を裏付けていますか。
ジョセフ・スミスが神の御手として使われ,モルモン書を翻訳したことを知って,神についてどのようなことが分かりましたか。また,神についてどのように感じるようになりましたか。
モルモン書が神の賜物と力によって翻訳されたことを知ることができる最もよい方法の一つは,モルモン書を研究し,その教えに従って生活することによって神の力を体験することだということを説明してください。
時間を取って,モルモン書の中から自分の生活に影響を与えた聖句や物語を生徒に見つけてもらいます。生徒がそれをなかなか見つけられない場合は,モルモン書のマスター教義聖句の幾つかを研究するよう勧めるなどのアドバイスをして,導くといいかもしれません。また,研究するとよい聖句を幾つか示してもよいでしょう。
モルモン書を研究することによって力が得られること自体が,神がモルモン書を与えてくださったことの何よりの証であることを生徒に証するとよいでしょう。
十二使徒定員会のニール・A・マックスウェル長老(1926-2004年)は,次のように教えています。
「モルモン書の翻訳のプロセスに関してもっと多くのことが明らかにされないのはなぜなのでしょうか。このプロセスのすべてが明らかにされなかったのは,恐らく,そのような情報が与えられたとしても,わたしたちにはそれを理解する備えができていなかったからなのでしょう。また,重要な証拠がたくさんあるにもかかわらず,主はわたしたちに,あくまで信仰によってモルモン書を受け入れるよう求めておられるのかもしれません。実際に救い主は,ニーファイ人に与えられた救い主の教えを振り返っていたモルモンに,すべてのことを版に書き記してはならないと指示されました。『わたしは自分の民の信仰を試みよう』(3ニーファイ26:11 )という御心のゆえに,そうされたのです。また,翻訳の詳細が明らかにされていないのは,恐らくわたしたちに,その書物が世に出たいきさつに過度の関心を持つよりも,モルモン書自体にさらに深く心を向けるよう求めておられるからなのでしょう。」(Neal A. Maxwell, “By the Gift and Power of God ,” Ensign , Jan. 1997, 41)
ラッセル・M・ネルソン大管長は,次のように教えています。
「ジョセフがモルモン書を翻訳するためにかかった時間が短かったことを考えてください。1828年の4月から6月にかけて,マーティン・ハリスが後に紛失した116ページをジョセフは翻訳しました。ジョセフは,筆記者のオリバー・カウドリとともに,1829年4月7日火曜日に再び翻訳を始めました。原稿はその年の6月30日,つまり85日後に完成したのです。もちろん,翻訳の作業にすべての時間を費やしたわけではありません。控え目に見積もっても,預言者と筆記者が現在の版(英語版)で531ページになるこの書物の翻訳のために作業した日数は65日以下でした。」(See John W. Welch, Ensign , Jan. 1988, pp. 46–47)1日平均8ページという計算になります。1冊の書物を自分が翻訳するときや,モルモン書を読む計画を立てるときに,これを考えてみてください。(Russell M. Nelson, “A Treasured Testament ,” Ensign , July 1993, 61–62)
中央幹部七十人名誉会員のキム・B・クラーク長老は,次のように教えています。
「モルモン書は,ジョセフと同様,皆さんにとっても啓示を受ける経験となります。
モルモン書の預言者たちは現代を見て,指導者の言葉をわたしたちに向けて書きました。この時代やわたしたちの必要と目的を満たすために語りかけているのです。心を開いてモルモン書を読み,祈るならば,聖霊は『これが真実であることを……あなたがたに明らかにしてくださ〔います〕。』〔モロナイ10:4 〕」(キム・B・クラーク「あなたはジョセフである 」〔ヤングアダルト対象のワールドワイド・ディボーショナル,2017年5月7日〕,ChurchofJesusChrist.org )
自分が影響を受けたモルモン書の聖句や物語を発表してもらう前に,ビデオ「ジョセフ・スミスはどのようにしてモルモン書を翻訳したか 」(8:06)を見てもらうとよいでしょう。このビデオでは,十二使徒定員会のクエンティン・L・クック長老と元教会歴史家のケイト・ホルブルック兄弟(1972-2022年)が,翻訳のプロセスに関する詳しい知識よりもモルモン書に対する個人の証の方が,いかに重要であるかを語っています。
8:6
ジョセフ・スミスがモルモン書を翻訳するために物理的な道具を使ったことについて話し合うときは,神が御自分の力を示すために用具や物を使われた,他の事例を知っているか生徒に尋ねるとよいでしょう。この話し合いの一環として,モルモン書の翻訳に関する「福音トピックス」の論文の次の文章を示してもよいかもしれません:
「『ウリムとトンミム』のほかに,聖書には,神の力を与えられるために使用する物理的な道具として,他の物についても述べられています。すなわち,アロンの杖,青銅の蛇,聖なる注ぎ油,契約の箱,さらには目の不自由な人の目を見えるようにするためにつばに混ぜた地の泥でさえも使用されました。」(「福音トピックス」の論文「モルモン書の翻訳」 ,ChurchofJesusChrist.org )
『聖句ガイド』 の「ウリムとトンミム」の項を研究して,この道具について,ならびにそうした道具が歴史の中で使われた他の事例について,さらに学ぶように勧めてもよいでしょう。その後,一人か二人の生徒に,学んだことをかいつまんで話してもらいましょう。