「第58課―教義と聖約45:1-8:『父に対する弁護者』」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』 (2025年)
「教義と聖約45:1-8」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』
世界的なパンデミックの中で教会員に向けて,ラッセル・M・ネルソン大管長は,「わたしたちが不安と恐怖に取り囲まれるとき,その大半の人に助けとなるのが御子に聞くことだと,御父は御存じです」と言いました(「彼に聞きなさい 」『リアホナ』 2020年5月号,88)。1831年初頭,聖徒たちの恐れと不安を鎮めるために,主は聖徒たちに,主の声を聞き,主の御名を信じるようにと勧められました。この課では,生徒に,イエス・キリストの名前と称号の幾つかを学び,イエス・キリストの使命と特質をより深く理解してもらいます。
生徒を少人数のグループに分け,自分の姓や名の意味や重要性を詳しく話してもらいます。もし生徒が,自分の名前の詳しい由来や意味をよく知らない場合は,自分の名前の好きな点を話してもらうとよいでしょう。グループで話し合ってもらった後,何人かの生徒に,クラスメートの名前について分かったことを発表してもらいます。
七十人定員会のジョナサン・S・シュミット長老の,次の言葉を読んでください:
「ある人を知る簡単な方法は,その人の名前を知ることです。……
主は人々のことを知り,名前で呼ばれました。主は古代のイスラエルに,こう言われました。『恐れるな,わたしはあなたをあがなった。わたしはあなたの名を呼んだ ,あなたはわたしのものだ。』〔イザヤ43:1 {;強調追加〕……
ちょうどイエスがわたしたち一人一人を名前で御存じのように,わたしたちがイエスをさらに知ることができる一つの方法は,主の数多くある呼び名を知ることです。……イエスの呼び名の多くは,主の使命や目的,人格や特質を理解できるよう助けてくれる称号です。イエスの数多くの呼び名を知るようになると,主の神聖な使命や無私の人格がさらによく理解できるようになります。主の数多くある呼び名を知ると霊感が与えられ,主にさらに似た者となることができます。」(ジョナサン・S・シュミット「まことの神でいますあなたを知ることであります 」『リアホナ』 2022年11月号,104-105)
生徒に,シュミット長老の言葉から見つけた意義深いことを発表してもらいましょう。
次の質問に対する生徒の答えを,ホワイトボードに書き出すとよいでしょう。
時間を取って,前の質問について生徒に話し合ってもらった後,次の真理を見せましょう:イエス・キリストの御名と称号を知ると,キリストの神聖な使命と無私の人格がよく理解できるようになる。
生徒に,イエス・キリストについてさらに学びたいという自分の気持ちはどれくらい強いか,考えてもらいます。以下のアイデアを活用してもかまいませんし,自分で評価方法を考え出してもかまいません。生徒には,心の中で自分を振り返って,答えを学習帳に書いてもらいます。
以下の項目をチェックして,救い主についてさらに理解したいという自分の気持ちと努力を評価してください。
1 =めったにない;2 = 時々ある;3 = 非常によくある
わたしは,イエス・キリストの神聖な使命をもっとよく理解したいと思っています。
聖文を研究するとき,わたしは意図的にイエスの御名と称号を探します。
イエスにさらによく従えるようになるので,イエスの特質を知ることはわたしにとって大切なことです。
救い主の名前と称号を研究して救い主がどのような御方なのかを知ろうとするときには,御子に従いたいという望みが強くなるよう,天の御父に助けを祈り求めてください。
イエスの数多くの名前の一つを研究することで,生徒はイエスの使命と人格をよく理解できるようになります。御父に対するわたしたちの弁護者としての救い主の役割について話し合うと,生徒は,イエスの様々な名前や称号を自分で研究することができるようになります。
生徒に次の活動に参加してもらう際に,ゲツセマネのイエスの絵を見せるといいかもしれません。
教義と聖約45:3-5 を読み,イエス・キリストの称号と役割を探してください。
イエス・キリストの称号について深く考える: 以下の活動は,御父に対するわたしたちの弁護者という救い主の称号を理解して,救い主をさらによく知るのに役立ちます。生徒がイエス・キリストの称号に焦点を当てられるようにする方法についてさらに訓練するには,『教師養成スキル:イエス・キリストに焦点を当てる』 にある「イエス・キリストの称号,役割,特質について教える 」という訓練を参照してください。この訓練は,生徒が「探求を促す質問を作成して,イエス・キリストの役割,称号,象徴,特質,人格を理解するのに役立てる」スキルを伸ばすのに役立ちます。
御父に対するわたしたちの弁護者というイエス・キリストの役割について,生徒に理解を深めてもらうために,次のような質問をするといいかもしれません。弁護者 という言葉の定義の一つは,支えを提供し,助けを必要としている人々の大義を擁護する人だということを指摘します。
弁護者 という言葉を,あなたはどのように理解していますか。
この聖句によると,イエス・キリストは御父に対するわたしたちの弁護者としての役割をどのように果たしておられますか。
この聖句から,救い主の人格について,どのようなことが学べますか。
ラッセル・M・ネルソン大管長の次の言葉を生徒に見せ,一緒に読んでください。ネルソン大管長のこの教えを読んでイエス・キリストに対する愛と感謝の気持ちがなぜ強くなったか,生徒に発表してもらいます。
「イエスは御父に対するわたしたちの弁護者です(1ヨハネ2:1 ;教義&と聖約29:5 ;32:3 ;45:3 ;110:4 参照)。弁護者 という言葉は,『ほかの人のために話す人』とか『ほかの人のために嘆願する者』という意味のラテン語から派生したものです。ほかにも仲裁者 や仲保者 (1テモテ2:5 ;2ニーファイ2:28 ;教義{&と聖約76:69 も参照)など,聖文では関連する語が幾つか使われています。
……救い主が御父に対するわたしたちの弁護者,仲裁者,仲保者であられることを理解すると,キリストに比類なき包容力,正義,憐れみがあることが確かに分かるようになります(アルマ7:12 参照)。」(Russell M. Nelson, “Jesus the Christ—Our Master and More ”[Brigham Young University devotional, Feb. 2, 1992], 4, speeches.byu.edu )
これは,生徒が救い主に対する自分の気持ちを深く考える,よい機会になるかもしれません。ホワイトボードに次の質問を書いて,生徒にはその答えを学習帳に書いてもらいましょう。適宜,何人かの生徒に自分の考えをクラスで発表してもらいます。
生徒が次の節を研究して,1節 でイエス・キリストの称号をなかなか見つけることができなかった場合は,キリストが,神としての自分には万物の創造主という役割があると言われたことを,説明する必要があるかもしれません。
イエス・キリストには多くの名前と称号があります。教義と聖約45:1,7,59 を読み,キリストの名前や称号にはほかにどんなものがあるか見つけてください。
以下の活動をだれかと一緒にやってもらうのと,各自でやってもらうのと,どちらの方が生徒のためになるか判断します。
学んでいることを整理する方法を工夫するよう,生徒を励まします。例えば,学習帳のページの中央にキリストの名前や称号を書くようなデザインを考案してもよいでしょう。選んだ称号をよく理解するのに役立つほかの聖句や言葉を見つけたら,ページ中央の名前や称号を中心にして,様々な方向に様々な大きさで,それを書き込みます。それから,聖句や語句を名前や称号に結びつける線を引きます。
研究したことの中から,さらに学びたい名前または称号を選んでください。「福音ライブラリー」アプリや聖文研究のヘルプなど,利用可能な学習リソースを使って,その名前や称号からイエス・キリストについてどのようなことが分かるかを学びます。末日の預言者の言葉からも,さらに多くのことが学べます。それができたら,以下の質問に答えてください:
生徒に,自分が研究した内容の詳細や,研究して分かった,ためになる教えを発表してもらってもよいでしょう。今後のレッスンで,イエス・キリストの名前と称号について今日生徒が学んだことについてさらに話し合う機会があるかもしれません。
十二使徒定員会のデール・G・レンランド長老は,次のように教えています:
13:49
「イエス・キリストが与えられたため,『わたしたちには御父に対する弁護者がおられ〔ます。〕』〔1ヨハネ2:1〕 贖いの犠牲となられた後,イエスは,『人の子らに対して持っておられる御自分の憐れみの権利を御父に求めるために,天に昇って』行かれました。そして,憐れみの権利を求めて,『人の子らを弁護してくださる』のです〔モロナイ7:27,28〕 。
キリストがわたしたちのことを御父に弁護してくださるのは,救いの計画に反する行為ではありません。御自分の御心が御父の御心にのみ込まれるに任せられたイエス・キリストは,最初から御父が望んでおられたこと以外を擁護しようとはなさらないのです。天の御父は疑いなく,わたしたちの成功を応援し,認めてくださいます。
キリストが弁護してくださることを考えると,キリストがわたしたちの罪の代価を払ってくださっており,神の憐れみを受けられない人がいないということが,少なくともある程度,分かってきます。」(デール・G・レンランド「きょう,選びなさい 」『リアホナ』 2018年11月号,104-105)
十二使徒定員会のジェフリー・R・ホランド長老は,次のように記しています:
「ギリシャ語のアルファベットの最初の文字であるアルファは,始まりと創始を表しています。『わたしは初めに父とともにいた』と主は明らかにされており(教義&と聖約93:21 ),長子として,天の会議と創造の業において御父の右に立たれました。
ギリシャ語のアルファベットの最後の文字から取った,オメガという名前が示すように,キリストは死すべき経験の終着点であり,現世の経験が終わる理由であると同時に結果でもあられます。
ギリシャ語のこれらの文字は,世の始まりから終わりまでのイエスの普遍的な役割を意味しています。しかし,キリストは特にアルパでありオメガであるべきであり,わたしたち 個人の始まりであり,わたしたち 個人の終わりで,わたしたちが旅の形を作る模範であって,これを基準にわたしたちはその結果を測るのです。
わたしたちが行うあらゆる選択において,キリストをわたしたちの判断基準とし,航海図とし,前方に見える唯一の港としなければなりません。キリストは,わたしたち一人一人にとっても,人類全体にとっても同様に,括弧でくくられた存在そのものであり,わたしたちが持つ特権にあずかった羅針盤であられるはずなのです。わたしたちは,キリストの外に迷い出てはなりません。迷い出てみようと思うべきではありません。『わたしはアルパでありオメガである』という御方であられるのです。」 (Jeffrey R. Holland, “Whom Say Ye That I Am? ,” Ensign , Sept. 1974, 6–7)
十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は,次のように教えています:
9:47
「人生のあらゆる時期に,出遭うすべての状況で,直面するそれぞれの課題において,イエス・キリストは光であられます。その光は恐れを消し去り,確信と導きを与え,永続する平安と喜びをもたらします。」(David A. Bednar, “The Light and the Life of the World ,” [First Presidency Christmas devotional, Dec. 6, 2015], {90}broadcasts.ChurchofJesusChrist.org{91})
レッスンを始めるもう一つの方法として,生徒に,自分には重要な決断を下さなければならないことがあるが,まずほかの人に相談したいと思っていると仮定してもらいます。生徒に,どのような特質を持った人であれば,その人の助言を信頼するか考えてもらいます。教義と聖約45章 に記録されている啓示は,人々が,教会について相反するメッセージを聞いたり,読んだりしていた時代に与えられたものであることを説明します。生徒に,教義と聖約45:1-8 を読んで,聴く ,あるいは聞く という言葉を見つけてもらいます。救い主の名前,称号,役割について学びながら,救い主がなぜ自分にとって信頼できる助言者であられるのか,生徒に考えてもらいます。
生活の中で救い主を受け入れるとはどういうことかが分かると,生徒のためになるかもしれません。生徒に教義と聖約45:8 を読んでもらい,「わたしは自分の民のところに来たのに,民はわたしを受け入れなかった」という言葉を,救い主はどのような意味で言われたと思うか尋ねます。生徒に,イエス・キリストを受け入れ,イエス・キリストを生活の中心とする方法について話し合ってもらいます。生徒に,「神の〔息〕子〔と娘〕となる」とはどういう意味だと思うか尋ねるとよいかもしれません。生徒に答えてもらった後,教義と聖約45:8 とモーサヤ5:7-8 を相互に参照してもらいます。この二つの聖句からどんなことが分かるようになるかを話し合い,救い主を受け入れ,主の御名を受けることの大切さについて証します。