教科課程の訓練
セミナリー教科課程の採用と調整の訓練


セミナリー教科課程の採用と調整の訓練『セミナリー教科課程の訓練』

勉強する女性

セミナリー教科課程の採用と調整の訓練

イエス・キリストの福音を教えるため,効果的に備える手段というのは数多く存在します。備えには,祈りの気持ちで神の言葉を研究することと,自分の教える生徒がイエス・キリストと回復された福音への改心を深める助けとなる最善の方法が分かるよう,聖霊の導きを求めることが含まれます。

セミナリーの教科課程は,レッスンを準備する際の指針となり,真実の教義を教えるうえで助けとなる信頼できるリソースです。このリソースを使用する際は,まず教科課程の内容を取り入れるよう努めてください。次に,自分の生徒が必要としている事柄や聖霊の導きについて考慮し,教科課程のアイデアのどの部分に調整を加える必要があるかを判断するようにしてください。

セミナリーのレッスンを準備するために教科課程を用いることに関して,大管長会のダリン・H・オークス管長の次の勧告について考えてみてください。

ダリン・H・オークス管長

「まず基本に従い,次に状況に合わせて変えます。指定されているレッスンに十分精通していれば,その後,御霊に従って変えることができます。しかし,この柔軟性について話すとき,基本に従うよりも先に調整を加えてしまうという危険が存在します。バランスが大切です。これは常に継続する課題です。まず基本に従い,それから調整を加えるというアプローチは,しっかりとした土台にとどまるうえで役立つものなのです。」(“A Panel Discussion with Elder Dallin H. Oaks” [Seminaries and Institutes of Religion satellite broadcast, Aug. 7, 2012], broadcasts.ChurchofJesusChrist.org)

  • まず最初に教科課程の内容を取り入れてからレッスンに調整を加えすることが大切なのはなぜだと思いますか。

教科課程を取り入れる

宗教教育セミナリー・インスティテュートの目的には,「青少年とヤングアダルトがイエス・キリストと主の回復された福音への改心を深められるように助けること」とあります。この目的には,生徒が改心を深められるよう助けることに関して,さらに以下のように記されています。

わたしたちはどの学習経験においても,イエス・キリストとその模範,特質,贖いの力を中心にします。わたしたちは聖典と預言者の言葉にあるとおりのイエス・キリストの回復された福音を,生徒が学べるように助けます。わたしたちは生徒が自分自身で学ぶという,自らの役割を果たせるように助けます。わたしたちはどの学習経験でも聖霊を招き,その役割を果たしていただけるよう努めます。

セミナリーの教科課程は,皆さんがこのような学習経験を提供するのを助けるために,入念に計画されています。各レッスンは,イエス・キリストを中心とした学習経験を軸にしており(キリスト中心),生徒が聖典や預言者の言葉から福音を学ぶ助けとなるもので(聖典ベース),生徒が学習過程で自らの役割を果たせるような機会が設けてあります(学習者重視)。わたしたちは,この目的における3つの重要な要素を同時に実現することで,学習の過程で聖霊に御自身の役割を果たしていただけるよう招きます。『救い主の方法で教える』には,「御霊がほんとうの教師であり,改心の真の源で〔ある〕」とあります。御霊がおられるからこそ,実際に救い主への改心を深めることができるのです。

図:御霊に導かれた学習経験

この図は,聖霊に御自身の役割を果たしていただくよう招く,キリストを中心とした,聖典に基づく,学習者に焦点を合わせた経験を示しています。黄色は,その学習経験が聖霊をどの程度招くかを示しています。この図の中央は,御霊が学習経験を導いており,生徒がイエス・キリストと回復された福音への改心を深めている状態を示しています。セミナリーの教科課程を取り入れることによって,生徒がセミナリーで学ぶ中で,御霊に導かれる経験を味わう可能性が高まるのです。また,セミナリーの教科課程も,以下において皆さんの助けとなるよう,慎重に見直され,相互に関連付けられています。

  • 教義上の正確性を確保する。

  • 霊感を受けた著者の意図を反映する。

  • 『救い主の方法で教える』に見られるキリストのような教え方の原則を実践するときに,バランスの取れたアプローチを維持する。

  • 生徒が学んでいることを分かち合い,実際に行動に移せるような学習経験を提供する。

  • 様々な手法を用いる。

レッスンを準備する際は,心に留めておくべき重要な事柄が数多く存在します。教科課程を取り入れることは,何をどう教えればよいかを知る助けとなり,堅固な教義という土台の上にとどまる助けにもなります。

教科課程を取り入れる方法を,幾つか紹介します。

  • レッスンの目的を注意深く読みます。レッスンの目的は,概要の文書や各レッスンの導入部の最後の文に記載されており,内容や活動はすべて,この目的や学習成果に沿ったものとなっています。

  • レッスンに一通り目を通します。生徒が読むことになる厳選された聖句や太字になっている真理,引用文,活動がどのようにレッスンの目的と合致しており,どのようにキリストを中心とした,聖典に基づく,学習者に焦点を合わせた経験をもたらすのかよく考えてみてください。また,レッスンの最後にある学習活動によく注意を払ってください。この活動は,生徒がレッスンの目的を実際に行動に移す機会となります。

  • 生徒になったつもりで質問に答え,活動を行ってみるとよいでしょう。こうすることで,御霊によって学ぶ助けとなり,教化され,高められ,生徒に同じような経験をしてもらう準備がさらに整った状態で教室に入ることができます。

  • 自分にとって目新しいものであっても,教科課程に含まれている様々な種類のレッスンをすべて理解し,教えるよう努めます。(レッスンの種類には,「聖文コース」レッスン,「マスター教義の実践」レッスン,「学習を評価する」レッスン,「人生の備え」レッスンなどがあります。)これらの学習経験はそれぞれ,独自の形で,イエス・キリストと主の福音に対する生徒の改心を深める助けとなります。

教科課程にある内容を取り入れる選択をすることは,「人生の備え」レッスンにおいて特に重要となるでしょう。これらのレッスンでは,生徒の生活に重要となる様々なテーマに焦点を合わせています。これらのレッスンは,教会の様々な部門やほかの分野の専門家の助けを受けて作成されました。教師の中には,自分は特定の「人生の備え」の科目を教えるのに適任ではないが,ほかの「人生の備え」の科目については幅広い専門知識があると感じている人がいるかもしれません。いずれにせよ,教師は教科課程に調整を加えようとする前に,まず教科課程を取り入れるほうが賢明です(下記のアルバレス兄弟佐藤姉妹の事例研究を参照)。

教科課程を取り入れるための事例研究

アルバレス兄弟—特定の「人生の備え」レッスンを教えるのにふさわしくないと感じている教師

アルバレス兄弟は改宗者で,専任宣教師として奉仕したことはありません。自分は伝道に出たことがないため,「宣教師への備え」を教えるのにふさわしくないと感じており,「人生の備え」レッスンの「宣教師への備え」セクションを省くことも考えていました。しかし,このレッスンを見ていくうちに,ここでは福音を分かち合う完全な模範としてキリストに焦点が当てられており,彼自身の経験が求められているわけではないことに気づきました。レッスンには,生徒が主の宣教師として奉仕する備えをするのに役立つ洞察に満ちた聖句や魅力的な活動が含まれています。たとえ伝道の備えに関して自分に経験がなかったとしても,教科課程のレッスン自体が,生徒たちがすばらしい経験をする助けになると気づきました。

佐藤姉妹—特定の「人生の備え」の科目について幅広い専門知識を持つ教師

佐藤姉妹は,財政管理に関する「人生の備え」レッスンを教える準備をしています。彼女はプロのファイナンシャル・プランナーで,セミナリーのクラスで自分の知識や経験を分かち合うことを楽しみにしています。祈りの気持ちで教科課程を学んでいくうちに,教材がシンプルなものであり,イエス・キリストと聖文に重点が置かれていることに気づきました。そして,教科課程にあるとおりにレッスンを教えれば,生徒がイエス・キリストを信じる信仰を深め,人生の段階に合った基本的な財政の原則を身につける助けになると判断しました。佐藤姉妹は,もっと高度な財政の原則を教える準備をする代わりに,教科課程のレッスンに忠実に従うことにしたのです。

教科課程の調整

皆さんはセミナリー教師として,生徒がイエス・キリストのもとへ向かうのを助ける特別な立場にあります。日々の生徒とのやりとりを通じて,皆さんは生徒をよく知り,愛するようになるでしょう。生徒を知り,愛することにより,いつ,どのように教科課程に調整を加えるべきかに関して,聖霊の導きを受ける能力が高まることでしょう。教科課程を使ってレッスンを準備するときは,まず祈ることから始めてください。天の御父は聖霊を通して霊感を与えてくださり,必要であれば,さらに生徒の必要を満たし,生徒に合ったレッスンができるよう,レッスン内容をどのように調整すればよいか教えてくださることでしょう。

レッスンに調整を加える理由としては,以下のようなものが考えられます。

  • 生徒が現在直面している問題や疑問について助けるため。(ジョーンズ兄弟の事例研究を参照)

  • 生徒の必要や能力,文化,利用可能なリソースに基づき,レッスン内容の一部をより生徒に合ったものとするため。(デュベ姉妹レイエス兄弟ロドリゲス姉妹の事例研究を参照)

  • 教会指導者から与えられた,より最新の声明や指示,リソースを用いるため。(シュミット姉妹の事例研究を参照)

  • レッスンの特定のセクションの目的を達成するより良い方法を見つけるため。例としては,教えを受けられるよう生徒の思いや心をさらに備えさせるために,実物を使ったレッスンに調整を加えることや,聖文に記録された出来事を描いた動画を見る代わりに,同じ出来事をロールプレイしてもらうことなどが挙げられます。(リー兄弟の事例研究を参照)

教科課程に調整を加える前に,以下のように自問するとよいでしょう。

  • 調整を加えたとしても,キリストを中心とした,聖典に基づく,学習者に焦点を合わせた学習経験ができるようになっているだろうか。

  • 調整した内容は,聖霊の促しや『救い主の方法で教える』にあるキリストのような教え方の原則と調和しているだろうか。

  • 調整した内容は,霊感を受けた著者の意図を反映しているだろうか。

  • 自分が調整を加えた内容は,改心を促す原則に重点を置いているだろうか。

  • 自分が調整を加えた内容が,今後のレッスンや評価体験にどのような影響を及ぼすか理解しているだろうか。

教科課程に調整を加えるための事例研究

ジョーンズ兄弟—現在直面している問題や時間的制約のある問題に基づいてレッスンを調整する

ジョーンズ兄弟は,総大会の前日の金曜日に,翌週の月曜日に行う「聖文コース」のレッスンを一生懸命に準備していました。すると,驚いたことに,自分が教えている地域に新たに神殿が建つと預言者が発表するのを耳にしたのです。生徒は神殿のことを話したくてうずうずしながらクラスにやって来るだろうし,神殿について質問したい生徒がたくさんいることも予想がつきました。

そこで,ジョーンズ兄弟は聖霊の促しを感じて学習進度ガイドに調整を加え,月曜日に「聖文コース」のレッスンを教える代わりに,教科過程にある「人生の備え」セクションから「神殿への備え」のレッスンの一つを教えることにしました。

レイエス兄弟—生徒の能力に応じて活動を調整する

レイエス兄弟は,あるレッスンを研究していたとき,そのレッスンは生徒の話し合いを軸に進める形だと気づきました。レイエス兄弟は,生徒がいつもとてもおとなしく,活発な話し合いができていないことに気づいていました。ただし,学習調に記録することはとても楽しんでいます。そこで,話し合いを進める代わりに,教科課程から取った二つの質問をホワイトボードに書き出し,生徒に答えを書いてもらうことにしました。また,希望する生徒には,書いた内容を発表してもらうことにしています。

ロドリゲス姉妹—地元の文化に基づいてレッスンを調整する

ロドリゲス姉妹は,イエスの母マリヤに関する参照聖句を用いたレッスンを教える準備をしています。ロドリゲス姉妹が住んでいる地域では,マリヤに対する強い思い入れと,異なった信仰の文化があります。イエス・キリストの母親の役割を果たしたという理由で,マリヤを礼拝する人も多くいます。ロドリゲス姉妹は,教科課程のレッスンを研究しながら,マリヤについて聖文と教会指導者が何と教えているかを生徒に理解してもらうのに役立つ箇所を探しました。そして,レッスンを調整し,教科課程の内容に以下の二つの質問を加えることにしました。

アルマ7:10から,マリヤについてどのようなことが分かりますか。わたしたちは,マリヤや聖文に登場するほかの忠実な弟子たちを敬い愛していますが,アルマ7:11-13を読むと,天の御父とイエス・キリストだけを礼拝する理由について,どのようなことが分かるでしょうか。」

デュベ姉妹—利用可能なリソースに基づいてレッスンを調整する

デュベ姉妹がレッスンの準備をしていると,FamilySearch.orgで自分の先祖を調べるようにという招きがあることに気づきました。彼女は,ほとんどの生徒がインターネットにアクセスできないのを知っています。そこで,デュベ姉妹は賢明にこの招きに調整を加え,まず生徒に紙の家族の記録シートに記入してもらい,ほかの親族の名前を調べる方法を学ぶためにワードの神殿・家族歴史相談員に相談してもらうことにしました。

シュミット姉妹—教会指導者の最近の言葉を用いるためにレッスンを調整する

シュミット姉妹は,レッスンの準備中に,翌日教える予定の箇所に目を通していました。レッスンに載っている教会指導者の言葉を読んでいたときに,同じ目的を達成できそうな最近の言葉を目にしたことを思い出しました。最近,個人学習でこの話を研究したばかりだったので,よく覚えていたのです。そこで,教科課程に載っている言葉ではなく,最近の言葉をレッスンで使うことにしました。

リー兄弟—目的をさらに達成できるよう学習活動を調整する

リー兄弟は,教科課程のレッスンを教える準備をしていたときに,クラスにサッカーボールを持参するようにという提案を目にしました。そして,その実物を使ったレッスンの目的が,サッカーボールの歴史を詳しく知ることで,サッカーボールの価値が左右されることを生徒に理解してもらうことだと気づきました。

生徒にとって最も効果的な方法でこの目的を達成したいと思ったリー兄弟は,少しの間,自分が持参できるもので生徒が一番理解しやすいアイテムは何だろうかと考えました。そこで,レッスンを調整して,何の変哲もないネックレスをクラスに持って行くことにしました。生徒たちがそのネックレスがどれほどの価値があると思うか話し合ってから,そのネックレスの制作者と由来を知ったことで,それを知らなかった場合よりも自分にとってはるかに価値あるものとなったことを説明しようと思っています。

採用と調整のための提案

教科課程にあるどの題材にも調整を加えることはできますが,以下の図は,レッスンの様々な部分がほかの部分よりも調整を加えるのにどの程度適しているかを示しています。

例えば,レッスンの目的やブロックの背景,太字になっている真理は,調整を加えるのが適切ではないかもしれません。しかしレッスンを始める方法や,教師が太字の真理についてどのような例を分かち合うかはより調整が必要かもしれません。左側に近いものほど採用されることが多く,右側にあるものほど調整が加えられることが多い可能性があります。これらは提案であることに留意してください。教師は,左側にあるものをすべて採用するよう求められていないのと同様に,右側にあるものすべてを調整することが求められているわけではありません。

図:教師は教科課程をどのように調整できるか

まとめ

祈りをもって主の言葉を研究し,神の息子娘に祝福をもたらすためにレッスンを準備するなら,天の御父は聖霊を通して皆さんを導いてくださいます。また,教科課程で用意されている内容をどのように取り入れ,生徒をもっとよく助けるために,どのような場合に調整を加えるべきかを理解できるよう助けてくださいます。