教科課程の訓練
マスター教義訓練


「マスター教義訓練」『セミナリー教科課程の訓練』

聖文を研究する若い男性

マスター教義訓練

マスター教義の紹介:神の答えを求め,見いだすための規範

ヤコブとシーレム

モルモン書で,ヤコブはシーレムという人との経験について記しています。シーレムは博学で,多くの人の心を惑わし,「キリストの教義を覆〔す〕」ために,多くの甘言と弁舌の力を用いていました(モルモン書ヤコブ7:2-4参照)。ヤコブは,シーレムが「わたしのもとに来る機会をしきりに求めて〔おり〕……そして,彼はわたしの信仰を動揺させることができると思っていた」(ヤコブ7:3,5)と説明しています。しかしヤコブは,「わたしは動揺することはなかった」(モルモン書ヤコブ7:5)と記録しています。ヤコブは生涯を通じて熱心に努めてきたため,いかなる問題や状況があっても,ヤコブがイエス・キリストと主の福音の上にしっかりと築かれた土台から離れることはありませんでした。

「嵐のただ中で確固とする」ミーム

今日,教会の青少年は,信仰を揺るがしかねない多くの難しい問題や状況に直面しています。マスター教義は,生徒がこのような試練に備えるための一つの手段です。生徒はマスター教義を習得することで,イエス・キリストを信じる信仰が決して揺らぐことのないようにより良く備えられるでしょう。十二使徒定員会のM・ラッセル・バラード会長は,セミナリーとインスティテュートの教師にマスター教義について次のように述べています。

「〔マスター教義は〕イエス・キリストを信じる生徒の信仰を築き,深めること,福音を実践し,応用する彼らの能力を増し加えることによって彼らを強化することに焦点を当てます。……

このプログラムは,霊感に基づき,時宜にかなっています。教会の若人にすばらしい影響を及ぼすことでしょう。しかし,『マスター教義』が成功するかどうかは,CESにおけるすべての学習プログラムと同様,大いに,皆さんの働きにかかっています。」(M・ラッセル・バラード「21世紀においてCES教師に与えられている機会と責任」〔中央幹部との夕べ,2016年2月26日〕broadcasts.ChurchofJesusChrist.org)

教科課程におけるマスター教義

教師用手引きには,マスター教義の学習活動が定期的にあります。これは,生徒がマスター教義の成果を達成できるようにするためです。以下の図は,マスター教義の成果を示しています。詳しくは,『マスター教義に関する基本文書』を参照してください。

「マスター教義訓練」チャート

セミナリーの教科課程は,以下の3つの手段により,生徒がマスター教義の成果を達成できるよう助けます。

  1. マスター教義と霊的な知識を得るための原則についての入門レッスン

  2. 『わたしに従ってきなさい』のスケジュールに従い,文脈に沿って教えるマスター教義聖句

  3. 「マスター教義の実践」レッスン

ロッククライマーが険しい峡谷の壁を安全に懸垂下降するために用具を必要とするように,これらの学習経験は,生徒がイエス・キリストを信じる信仰をもって困難な問題や状況を乗り越えるためのスキルを身につけるうえで助けになります。

「困難を乗り越えるためのスキル」ミーム

マスター教義と霊的な知識を得るための入門レッスン

マスター教義のレッスンは5つあり,生徒がマスター教義の目的を理解し,霊的な知識を得るための原則について学ぶのを助けることを目的としています。

  • 「霊的な基を強める:マスター教義の紹介」。マスター教義とは何か,マスター教義を身につけるうえでどのような学習経験をするかについて,全体的なビジョンを生徒に示すものとなっています。セミナリーを始めたばかりの生徒が多い場合は年度初めに,年度途中では復習として教えるのが最適です。

  • 「疑問に対する個人の啓示を求める:霊的な知識を得る—第1部」。聖霊を通して神から導きや啓示を受ける方法を生徒が理解する助けとなります。年度初めに教えるのが最適です。

  • 「答えを見いだすために信仰をもって行動する:霊的な知識を得る—第2部」。疑問への答えを探しながら,イエス・キリストを信じる信仰をもって行動する方法を生徒が理解する助けとなります。年度初めに教えるのが最適です。

  • 「福音のトピックや疑問について永遠の観点から吟味する:霊的な知識を得る—第3部」。概念や疑問について永遠の観点から吟味することで,生徒がイエス・キリストのように概念や疑問を捉える助けとなります。年度初めに教えるのが最適です。

  • 「答えを見いだすために神が定められた情報源に頼る:霊的な知識を得る—第4部」。天の御父とイエス・キリストが愛を込めて用意してくださった情報源から真理を探し求めることの大切さを生徒が理解する助けとなります。年度初めに教えるのが最適です。

文脈に沿って教えるマスター教義聖句

マスター教義聖句を含む聖句ブロックからレッスンを教えるときは,その聖句を強調する方法を探してください。その聖句を文脈に沿って教え,その聖句が教えている教義に焦点を当ててください。マスター教義聖句があるときは,いつでもこのアイコンマスター教義アイコンが表示されます。後でその箇所を見つけられるように,各聖句に印を付けるよう生徒に勧めるとよいでしょう。

『マスター教義に関する基本文書』には,各コースで扱う24個のマスター教義聖句の一覧が載っています。学習進度ガイドには,セミナリー開講中にマスター教義聖句を文脈の中で扱うレッスンがすべて含まれているとは限らないため,生徒が24個の聖句すべてを確認できる機会を見つけるようにしてください。

マスター教義聖句をクラスで学ぶときには,生徒がマスター教義聖句で教えられている教義を知り,理解できるように,十分な時間をかけて学ぶようにしてください。マスター教義聖句を含む各レッスンには,生徒がレッスンの一環として参照聖句や鍵となる聖句を暗記する訓練をし,今後のレッスンでも再度訓練できるようにするための提案が含まれています。生徒が聖句の場所や鍵となる聖句を暗記するには,定期的な訓練が必要です。「マスター教義の復習のアイデア」には,生徒が聖句の場所や鍵となる聖句を暗記するのを教師が助ける方法についての提案が載っています。これはセミナリー教師用手引きの付録に載っています。

「マスター教義の実践」レッスン

「マスター教義の実践」レッスンはおよそ4-6週間ごとに,定期的に予定されています。これらのレッスンは,生徒にとって,マスター教義の成果の達成に向けて取り組む機会となります。「マスター教義の実践」レッスンは,それぞれ以下の二つのセクションから成っています。

  1. マスター教義の復習

  2. 霊的な知識を得るための原則を学び,実践する

マスター教義の復習

「マスター教義の復習」セクションでは,生徒はマスター教義聖句を使って教義を理解して説明し,マスター教義聖句の場所を見つけて鍵となる聖句を暗記し,これらの聖句で教えられている教義を当てはめる訓練をします。こうした復習は重要であり,生徒のいつもの学習経験の一環であるべきですが,クラスの時間の大半を「霊的な知識を得るための原則を学び,実践する」セクションに充てられるよう,クラスの時間を効果的に管理するようにしてください。

霊的な知識を得るための原則を学び,実践する

「マスター教義の実践」レッスンでは,「霊的な知識を得るための原則を学び,実践する」セクションに大半の時間を費やすべきです。このセクションでは,生徒がイエス・キリストの福音の教義と霊的な知識を得るための原則を,実際の場面に当てはめる練習をするための機会が設けられています。

各訓練は,霊的な知識を得るための原則を復習することから始めます。たとえ生徒のうち一人か二人がその原則をよく理解していたとしても,ほかの生徒にはもっと時間と訓練が必要な場合があることを覚えておきましょう。生徒全員が自信をもって霊的な知識を得るための原則を用いることができるよう最善を尽くしてください。「霊的な知識を得るための原則を復習するアイデア」には,これらの原則を復習する方法に関する提案が載っています。このアイデアは,セミナリー教師用手引きの付録に収められています。

その後,生徒には,真の教義を正しく理解していれば助けになるような質問や状況を扱ったシナリオが提示されます。生徒はその質問や状況に回答あるいは対応するため,霊的な知識を得るための原則や,マスター教義聖句やその他の聖句,最近学んだ教会指導者の教えから学んだ教義を用いる練習をすることができます。

生徒がマスター教義を習得するには,訓練の機会を数多く設けることが必要です。護身術を体で覚え込むには,どれほどの訓練が必要となるか考えてみてください。体で覚え込むことで,様々な攻撃に対応できるようになるのです。同様に,マスター教義についても徹底した訓練が必要です。生徒が定期的に訓練を重ねるときに,困難に対する信仰深い対応が自然に,また反射的にできるようになります。

「定期的な訓練」ミーム

実践練習の例を確認するには,ChurchofJesusChrist.orgにある以下の動画の一方または両方を視聴するとよいでしょう。視聴しながら,生徒が霊的な知識を得るための3つの原則すべてを使った練習ができるよう、教師がどのように助けているのかを確認してみましょう。

“Doctrinal mastery practice application, example 3”(「マスター教義の実践練習—例3」)

4:51

“Doctrinal mastery practice application, example 4”(「マスター教義の実践練習—例4」)

5:26

生徒の必要に合わせるために,状況に応じてシナリオや提案されている質問,その他の学習活動を調整してください。また,生徒が霊的な知識を得るための原則を応用する順序を変更することもできます。どのように調整するのであれ,生徒が霊的な知識を得るための原則と教義を現実に起こりうる状況で実践する練習をする機会になるようにしてください。シナリオを調整する場合は,シナリオの軸となっている質問や懸念事項は残すようにしてください。各シナリオの軸となっている質問や懸念事項は,セミナリーの4年間を通して入念に計画されたものです。

実践練習を適切に調整するためのアイデアについては,ChurchofJesusChrist.orgにある以下の動画を一つ以上視聴するとよいでしょう。

“Adapting doctrinal mastery curriculum: inviting students to make the scenario more relevant.”(「マスター教義の教科課程に調整を加える:シナリオをより適切なものにするため生徒を招く」)

3:59

“Adapting doctrinal mastery curriculum: adjusting scenarios to address specific needs.”(「マスター教義の教科課程に調整を加える:特定の必要に合わせてシナリオを調整する」)

3:25

“Adapting doctrinal mastery curriculum: helping students view themselves in the scenario.”(「マスター教義の教科課程に調整を加える:生徒がシナリオを自分に当てはめられるよう助ける」)

2:21

“Adapting doctrinal mastery curriculum: creating activities to help students use all three principles.”(「マスター教義の教科課程に調整を加える:生徒が3つの原則すべてを使えるような活動を用意する」)

3:13

マスター教義を効果的に教えるためのスキル

以下の訓練は,生徒がマスター教義を身につけるのに役立つスキルを教えるものです。効果的なのは,これらのスキルを少しずつ取り入れていくことでしょう。

スキル:マスター教義の活動を行う理由を説明する

定義する

マスター教義の活動を行う理由を生徒に分かち合ったり,生徒から分かち合ってもらったりすることで,この活動に取り組む生徒のやる気を引き出すことができます。また,聖霊からこの活動の大切さについて教えていただけることもあります。クラスで何をするか伝えたら,その活動を行う理由を一つか二つ紹介するか,その活動が役に立つと思う理由を生徒に分かち合ってもらいます。

「クラスの皆さん,これから数分間,ルカ2:10-12から学べる,イエス・キリストは世の救い主であられるという教義について説明します。この教義を学ぶ一つの理由は,なぜイエス・キリストが自分たちにとって大切なのかと尋ねられたら,自信を持って答えられるようにするためです。」

実施方法の例を確認するには,ChurchofJesusChrist.orgにある以下の動画を1つ以上視聴してください。

“Sharing a reason for a doctrinal mastery activity”(「マスター教義の活動を行う理由を分かち合う」)

1:17

“Helping students discover a reason for a doctrinal mastery activity”(「生徒がマスター教義の活動を行う理由を見いだせるよう助ける」)

2:39

“Helping students share reasons for a doctrinal mastery activity”(「生徒がマスター教義の活動を行う理由を分かち合えるよう助ける」)

3:14

実践する

以下の中から一つ選び,文を完成させてください。

「マスター教義聖句の場所と重要語句を暗記する活動をしましょう。これを暗記する努力をしている理由の一つは……ためです。」

「これから数分間,霊的な知識を得るための原則を幾つか復習します。これらの原則を知っていると,……ための助けになります。」

「霊的な知識を得るための3つの原則を使う練習をします。この3つの原則を使うと,……ことができます。」

分析する

  • マスター教義の活動を行う理由を説明する練習をする中で,どのようなことを学びましたか。

取り入れる

生徒に,マスター教義の活動を実践してもらう準備をする中で,その活動が生徒にとって価値あるものである理由を少なくとも一つ書き出してください。

スキル:霊的な知識を得るための原則を生徒に復習してもらいます。

定義する

霊的な知識を得るための原則をクラスで定期的に復習するならば,生徒はその原則を思い出して必要なときに使えるよう,聖霊に助けていただけるようになります。原則の復習は,シナリオを提示する前に行ってもらっても,生徒がシナリオに取り組んでいる間に行ってもらうように勧めてもよいでしょう。復習してもらう方法としては,少なくとも一つの原則を復習する機会を設けたり,時間を決めて原則を復習するよう指示したり,学んだことを発表する機会を設けたりするなどの方法があります。これを行うことにより,生徒は学んだ原則を実践練習でうまく活用することができるようになります。この方法についてのアイデアは,セミナリー教師用手引きの付録にある「霊的な知識を得るための原則を復習するアイデア」を参照してください。

「今日は,『マスター教義に関する基本文書』から霊的な知識を得るための原則を復習する予定です。三人一組になったら,グループ内の生徒一人一人に異なる原則を復習してもらいます。

3,4分時間を取ってその原則について読んでもらい,困難な問題を抱えている人や大変な状況にある人をその原則を使って助ける方法をグループの人たちに話せるよう準備してもらいます。」

生徒が霊的な知識を得るための原則を復習できるよう助ける方法の一例として,ChurchofJesusChrist.orgにある“Provide students opportunities to review all three principles of acquiring spiritual knowledge”(「生徒が霊的な知識を得るための3つの原則すべてを復習する機会を設ける」)を視聴してください。

2:54

実践する

生徒に霊的な知識を得るための原則を復習してもらうための別の方法を書いてください。

分析する

  • 霊的な知識を得るための原則を復習するよう生徒を招くことについて,どのようなことを学びましたか。

取り入れる

次回の「マスター教義の実践」レッスンを準備する際に,生徒に霊的な知識を得るための原則を復習するよう招く方法を計画してください。

スキル:霊的な知識を得るための原則が,実際の場面でどのように役立つかを,生徒に言葉で表現してもらえるような質問をする

定義する

生徒が霊的な知識を得るための原則を復習したら,シナリオを提示して,そのシナリオに役立つと思われる原則をグループ内で言葉に出して話してもらい,後でクラス全体で発表するよう招きます。こうすることで,生徒が生活の中でこれらの原則を用いる自信をつける助けとなります。

霊的な知識を得るための原則を復習し,シナリオを紹介した後で,以下のような質問をしてもよいでしょう。

  • 「霊的な知識を得るための原則のうち,このシナリオに役立つと思うものはどれですか。また,なぜそう思いましたか。」

  • 「このシナリオにあるような疑問に直面したとき,これらの原則はどのような助けになると思いますか。」

例として,ChurchofJesusChrist.orgにある以下の動画の一方または両方を視聴してください。

“Doctrinal mastery practice application, example 1”(「マスター教義の実践練習—例1」)

5:3

タイムコード1:28付近で教師がこのスキルを実演していることに注目してください。

“Doctrinal mastery practice application, example 2”(「マスター教義の実践練習—例2」)

3:31

タイムコード2:25付近で教師がこのスキルを実演していることに注目してください。

実践する

以下のシナリオにおいて友人に返答する際に,霊的な知識を得るための原則がどのように役立つかを生徒が言葉で表現できるような質問を幾つか書き出してみましょう。

信仰を持たない友人の一人が最近,公園で一組の宣教師が何人かの人々と話しているのを見かけました。その友人からこう言われました。「なぜ君の教会の宣教師たちは,出かけて行って,イエスについて教えを説いているのかな。自分の信じていることを人に押し付けているように見えるんだけど。そのままで幸せなのに,なぜ,そっとしておかないのかな。」

分析する

  • 霊的な知識を得るための原則をどのように用いるかを言語化することが,生徒にとって重要なのはなぜだと思いますか。

  • 霊的な知識を得るための原則を用いることは,生徒の生活にどのような影響を及ぼすと思いますか。

取り入れる

  • 霊的な知識を得るための原則が,自分やほかの人が難しい問題を抱えている場合や大変な状況にある場合にどのような助けになるかを生徒が言葉で表現するのを助けるために,あなたには何ができるでしょうか。

まとめ

セミナリーでマスター教義の成果の達成に向けて一貫して取り組むことで,生徒が質問や懸念事項にどのように対処できるようになるかを想像してみてください。最初のうち,生徒は霊的な知識を得るための原則や教義を実際の場面に当てはめるために,教師である皆さんの助けやサポートをもっと必要とすることでしょう。生徒が教義をマスターして,霊的な知識を得るための原則を自信をもって用いることができるようになるには時間がかかります。しかし,定期的に実践する機会を設けるならば,生徒は自然に実践できるようになっていきます。これが,生徒がイエス・キリストという岩の上に堅固な基を築き,イエス・キリストと主の教義への改心を深めるのを手助けできる一つの方法なのです。