関係の境界線を設ける

G・シェルドン・マーティン

最良の友達付き合いでさえ，明確に定めた境界線を必要とします。

境界線はどこにでもあり，それには正当な理由があるんです！考えてみてください。スポーツでは，しばしばフィールドやコートを区切る線があります。劇で役を演じる人は，どこで舞台に上がったり降りたりするかを知っています。学校では，テストのときに資料として使えるものと使えないものの間に境界線が設けられます。明確な境界線がなかったらどうなるか想像してみてください。たくさんの問題が生じることでしょう！

同様に，人間関係も境界線があるときに最も健全なものとなります。この境界線は，人と交わるときに自分が何を心地よいと感じるかを明確に表すのに役立ちます。境界線を設けると，相手はわたしたちがどのように接してほしいと期待しているかが分かりますし，「あなたの隣り人を愛せよ」（マタイ22：39）という救い主の教えによりよく従う助けにもなります。

境界線と自尊心

境界線を設けるとき，わたしたちは自分自身への敬意と，自分の福利への配慮を示します。イエス・キリストは現世での務めの間，境界線を設けることで自分を大切にする方法について教え，模範を示されました。時々，主は人々から離れて瞑想し，祈られました。「そして群衆を解散させてから，祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても，ただひとりそこにおられた。」（マタイ14：23）この御自身だけの時間を持つことは，人々によりよく仕える助けとなりました。

境界線を設け，信頼を築く

互いの境界線を理解して尊重するとき，互いに信頼し合うことができます。人間関係において，信頼は銀行口座に少し似ています。「入金」によって信頼を増し，「引き出し」によって信頼が減じるのです。だれかと信頼の口座を作る際に，心に留めておくべきことを幾つか紹介しましょう。

あなたは口座を持っています。どのような振る舞いが「入金」（敬意や正直など）または「引き出し」（不正直，人目を盗む，過ちを隠すなど）になるかを判断します。
準備ができたら，信頼しましょう。だれかを信頼しなくてはというプレッシャーを感じないでください。信頼には，築き養う時間が必要です。
境界線を明確に定めましょう。どのような行いがあなたの信頼を築いたり，奪ったりするのかを，相手に知らせてください。
人間関係の親密さはあなた次第です。その人に対する信頼の度合いに基づいて，どの程度親しくするかを決めるのはあなたです。¹相手が進んであなたとの信頼関係を築いたり，立て直したりするのが分かるとき，関係は育まれていくでしょう。
聖霊の促しに耳を傾けましょう。啓示を求め，思いや心に受けた印象に従って行動するとき，あらゆる状況に最も良く対処する方法について御霊の導きを受けることができます。
率直であり確固としていましょう。だれかの気持ちを傷つけるのではないかと心配になるかもしれませんが，率直であること，そして自分の決めた境界線をしっかり保つことが大切です。自分を落ち着かなくさせるものに対して「はい」と言わないでください。より健全で自分にとってバランスの取れた代替案を示せることもありますが，はっきり断ることが適切な場合もあります。

相手の境界線を尊重する

相手があなたの境界線を尊重する必要があるのと同じように，あなたも相手の境界線を尊重する必要があります。だれかが「いいえ」と言ったら，それを受け入れましょう。自分が相手に求める時間と努力に意識を向けてください。また，相手の設けた境界線について，説明を迫ることはしないでください。その人の境界線の理由をすべて知る必要はありません。必要なのは，ただ尊重することです。

境界線が尊重されない場合

悲しいことに，境界線を無視し，周囲の人を虐待することを選ぶ人々もいます。虐待は境界線を最も深刻な仕方で侵害する行為です。あなたが虐待の被害者である場合，あなたの安全が最優先事項です。虐待行為を堪え忍ぶべき人など一人もいません。信頼できる大人に話しましょう。助けを得るためのリソースを教えてくれ，さらなる虐待から身を守るための計画を立てるのを助けてくれるでしょう。とにかくそこから立ち去る必要のある場合もあります。²自分を守るために必要なことを行う勇気を祈り求めてください。

境界線を持って前進する

境界線を設けても，人間関係の問題がすべて解決されるわけではないかもしれません。それでも，自尊心や自信，情緒的な健康を強め，敬意を持ちながら安全に人と交流する助けとなります。今日から，健全な境界線を設けて，それが自分にどのような違いをもたらすかを見てみましょう。