苦しい時期を切り抜ける

エリック・B・マードック

教会機関誌

試練を乗り越えることについて，ヨブから多くを学ぶことができます。

「なぜ善良な人に悪いことが起こるのでしょうか」
この問いはこの世の始まりからあるように思われます。そして答えるのが難しい疑問です。不幸なことが起こったとき，「なぜこのようなことが起こらなくてはならないの？」「なぜ今？」と尋ねるのは簡単かもしれません。しかし，このような問いは，いずれにしてもあまり役には立ちません。わたしたちには分からないことや，理解できないことがとてもたくさんあります。幸いなことに，わたしたちには天の御父の愛と，より良い方法を示してくれるイエス・キリストの回復された福音があります。

「なぜ？」よりも良い質問
この世で学べる最もすばらしいことの一つは，悪いことが起こるのはなぜかに思いを向けるのをやめ，「自分はどのように応じるか」を自問することです。それが旧約聖書のヨブが見いだしたことでした。

ヨブの試練

ヨブは義にかなった人で，大家族と豊かな富に恵まれていました（ヨブ1：1－3参照）。しかし，すべてが取り去られたとき，神に対するヨブの信仰と忠誠心が試されます。

まず，ヨブは家畜を盗まれたり，殺されたりしました。それから，強い風が家を壊し，中にいた息子たちの命を奪いました。ヨブは怒ることなく，次のように言いました。「主が与え，主が取られたのだ。主のみ名はほむべきかな。」（ヨブ1：21）

さらなる試練がやって来て，ヨブは「その足の裏から頭の頂まで，いやな腫物」（ヨブ2：7）に苦しみました。友人たちはヨブに，その苦しみは罪によって引き起こされたに違いないと言いました。彼らは，「神をのろって死になさい」（ヨブ2：9）とさえ勧めました。（どのような「友人」が，こんなことを勧めるでしょうか！）

それでも，ヨブは主をのろうことを拒み，忠実であり続けました。（これこそが，真の友の勧めることです！）

その間ずっと，ヨブは絶望の時を経験しました。しかし，主はヨブの忠実さを御覧になり，ヨブを祝福して「すべての財産を二倍に」（ヨブ42：10）増やされました。

ヨブは自分が苦しまなければならない理由をすべて知ってはいませんでした。しかし主はヨブに，困難なときに信仰と忍耐を持つべき理由を示されたのです。ヨブの模範は，試練に直面したときにわたしたちを助けてくれます。

義人を含め，すべての人に試練が訪れる

ヨブの友人たちは，神は何らかの罪のためにヨブを罰しておられるに違いないと，誤ったことを言い出しました（例えば，ヨブ22章参照）。苦しみが罪の結果である場合もありますが，実際には，義にかなった生活をしているときでさえも，わたしたちのだれもが試練を経験します。イエス・キリストはかつて生を受けた中で唯一の完全な御方でしたが，それでもほかのだれよりも苦しまれました。聖文は，試練や困難は「正しい者にも正しくない者にも」（マタイ5：45）降り注ぐと教えています。

たとえ沈黙しておられるときでも，神はそばにおられる

ヨブの苦しみは，神が自分をお見捨てになったと感じたときに，さらに深くなりました。神の沈黙に耐えられなくなったとき，ヨブはついに苦しみの声を上げました。「わたしがあなたにむかって呼ばわっても，あなたは答えられない。」（ヨブ30：20）時に，わたしたちはヨブのように感じることがあるかもしれません。神がわたしたちの苦しみに際して沈黙しておられるように思えるとき，どうすればいいのでしょうか。

わたしたちはヨブの模範に従い，拒絶感や怒り，痛み，悲しみを抱えながらもなお神に頼ることができます。その瞬間には気づかないかもしれませんが，神はわたしたちとともにおられるのです。試練から救い出してはくださらないかもしれませんが，助けが必要なときにわたしたちを強めてくださいます。ヨブの試練の後，主は再びヨブに語って，ヨブを教え，友人たちの誤りを正し，ヨブを大いに祝福されたことを覚えておきましょう。

イエス・キリストは御存じである

つらい時期の最中に，あなたの気持ちを理解できる人がいるとは想像できないかもしれません。しかし，ヨブを理解している御方がおられたのであり，その御方はあなたが経験していることも理解しておられます。

イエス・キリストは「あらゆる苦痛と苦難と試練を受けられ」（アルマ7：11）ました。主がそうされたのは，わたしたちの経験する試練や困難，心の痛み，苦しみを御自分で感じ，知ることができるようになさるためでした。主はこれらのことを御存じなので，わたしたちが乗り越えられるように助ける方法も御存じなのです。（アルマ7：12参照）

すべてが正される

ヨブほどひどい苦難に見舞われた人はほとんどいないでしょう。とはいえ，あなたの抱えている苦しみもまた現実のものです。ヨブの模範を通して，わたしたちは忠実であり続け，神の御心を信頼し，信じない理由がたくさんあるように思えるときに信じることを選ぶことでもたらされる祝福を見ることができます。

十二使徒定員会のデール・G・レンランド長老は次のように教えています。「天の御父とイエス・キリストは，永遠の時の中であらゆる不公平を解決してくださいます……。御二方はその方法と時期を明らかにはされません。確かなのは，必ず解決してくださるということです。」¹

ヨブのように，難しい試練に忠実に応じるならば，わたしたちはほかの方法では決して得られないであろう方法で学び，成長し，祝福を受けるでしょう。

ですから，踏ん張って，忠実であり続け，神が常にともにいてくださることを覚えていてください。