総大会
神は皆さんを御存じで,愛しておられる
2023年10月総大会


12:36

神は皆さんを御存じで,愛しておられる

神の幸福の計画は皆さんのために存在します。皆さんは神の貴い子供であり,大きな価値のある存在です。

6年前の夜,家族でオックスフォード市郊外を旅していました。幼い子供連れならよくあることですが,立ち寄る必要に迫られて,店やレストランの立ち並ぶサービスエリアを見つけました。正確に言えば,揃って車を出てサービスエリアに寄ってから,車までぞろぞろと戻って旅を続けたのです。

15分後,長男がただ事でない質問をしました。「ジャスパーはどこ?」と言うのです。ジャスパーは普段,車の後部座席に一人で座っています。眠ってしまったか,隠れているか,家族をからかっているのだと思いました。

上の息子が車の後部座席をさらにくまなく調べると,この5歳の息子がいないことが分かったのです。血の気が引くような思いでした。サービスエリアに戻るとき,天の御父にジャスパーが守られるようにと懇願しました。警察に連絡して,状況を伝えました。

心配しながら,40分以上たって到着したとき,2台のパトカーがライトを点滅させながら駐車場に停まっているのを見つけました。そのうちの1台にジャスパーがいて,ボタンで遊んでいたのです。わたしは息子に再会できたときに感じた喜びを決して忘れることはないでしょう。

救い主のたとえを用いた教えには,散らされたものや失くしたものを集め,元に戻し,必死に探すことに焦点を合わせたものが多くあります。代表的なのが,迷い出た羊,なくした銀貨,放蕩息子のたとえでしょう。1

ここ何年もジャスパーの一件が頭に蘇る度に,神の子供の神聖な特質と重要性やイエス・キリストの贖いの力について,また,皆さんやわたしを御存じであられる天の御父の完全な愛について思い巡らしてきました。今日,これらの真理について証できればと思います。

I.神の子供

人生は困難なものです。多くの人はくじけそうになったり,孤独や孤立を覚え,消耗しきっています。困難な状況にあるとき,わたしたちは自分が道をそれたり,遅れをとったように感じることもあるでしょう。わたしたちが皆神の子供で,神の永遠の家族の一員であることを理解できれば,帰属意識と目的意識を取り戻すことができます。2

M・ラッセル・バラード会長は次のように述べています。「今もこの先も,わたしたち皆が共有する重要なアイデンティティーがあります。……それは,これまでもこれからも,皆さんが神の息子娘であるということです。……この真理を理解することで,すなわち,ほんとうの意味で理解し受け入れることで,人生は変わるのです。」3

自分が天の御父にとってどれほど大切かを見誤り,過小評価することのないようにしてください。皆さんは,自然が生んだ偶然の副産物でも,宇宙の孤児でも,物質と時間と偶然の結果でもありません。設計物の影には必ず設計者が存在します。

皆さんの人生には意味と目的があります。今なお続くイエス・キリストの福音の回復は,皆さんの神聖な特質について光と理解をもたらしてくれます。皆さんは天の御父の愛する子供です。こうしたあらゆるたとえや教えの本題は皆さんなのです。神は皆さんを心から愛しておられるので,皆さんを癒し,救い,贖うために御子を遣わされました。4

イエス・キリストは,一人一人の神聖な特質と永遠の価値を認めておられました。5パウロは,神を愛し,隣り人を愛するようにという二つの大切な戒め6が,なぜ神のあらゆる戒めの土台であるかを説明しています。わたしたちの神聖な責任の一つは,助けの必要な人々の世話をすることです。7だからこそ,わたしたちはイエス・キリストの弟子として,「互いに重荷を負い合〔い〕,……悲しむ者とともに悲しみ,慰めの要る者を慰めることを望〔む〕」のです。」8

宗教とは,わたしたちと神との関係にかかわるものというだけでなく,お互いの関係にかかわるものです。ジェフリー・R・ホランド長老は,英語で宗教を指すreligionはラテン語のreligare(レリガーレ)に由来し,「結ぶ」(厳密には「結び直す」)という意味だと説明しています。したがって,「まことの宗教とは,わたしたちを神と,またお互いとに結びつけるもの」なのです。9

お互いにどう接するかが実に重要です。ラッセル・M・ネルソン大管長は次のように教えています。「救い主のメッセージは明快です。主の真の弟子は,……人を育て,高め,励まし,説得し,鼓舞〔しま〕す。」10この旅を共にする人々が道を見失い,孤独を覚え,忘れ去られた,排除されたと感じているときには,このことがさらに重要です。

苦しんでいる人を見つけるために遠くまで探しに行く必要はありません。まずは,自分の家族やユニット,地元の地域のだれかを助けることから始めることができます。わたしたちはまた,極度の貧困にあえぐ7億人の人々11や,迫害や紛争,アイデンティティーに基づく暴挙のためにやむなく難民になった1億人の人々12の苦しみを和らげるよう努めることができます。イエス・キリストは,飢えている人や見知らぬ人,病人や貧しい人,獄にいる人など,助けの必要な人々の世話をする完全な模範であられます。主の業はわたしたちの業なのです。

ゲレット・W・ゴング長老は,「神への旅路はしばしば,人との関係を通して見いだされ〔る〕」と教えています。13したがって,わたしたちのワードは神のあらゆる子供たちの避け所であるべきです。わたしたちは受け身の態度で教会に通っているでしょうか。それとも,キリストを礼拝し,キリストを覚え,仕え合うことを目的としたコミュニティーを積極的に築いているでしょうか。14わたしたちは,裁くのを避け,愛を深め,言葉や行いを通してイエス・キリストの純粋な愛を示すというネルソン大管長の勧告を心に留めることができるのです。15

Ⅱ.イエス・キリストの贖いの力

イエス・キリストの贖罪は,天の御父が御自分の子供たちに抱いておられる究極の愛の現れです。16「贖罪」という言葉は,疎遠になった人や離れ離れになった人を「一つにする」という状況を表しています。

救い主の使命は,天の御父のもとに戻る方法を備えることと,この旅の間に助けを与えることでした。救い主は御自身の経験から,人生の苦難の只中にあるわたしたちを支える方法を御存じです。17間違いなく,キリストはわたしたちの救済者であり,わたしたちの霊を癒してくださる御方なのです。

信仰を働かせるなら,困難の中を力強く進めるよう主が助けてくださいます。主は愛と憐れみをもって絶えず次のように招いておられます。

「すべて重荷を負うて苦労している者は,わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。

……わたしのくびきを負うて,わたしに学びなさい。そうすれば,あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。」18

このくびきのたとえには説得力があります。ハワード・W・ハンター大管長が説明しているように,「くびき〔とはある〕道具〔のこと〕で……,〔これ〕を使えば畑を耕したり荷車を引いたりするときに荷重を分散させながら,2頭の動物が『力』を合わせて働くことができました。1頭ではとても負い切れない荷重でも,くびきでつながれた2頭が一緒になれば,それぞれ同じ力で難なく引くことができるのです。」19

ネルソン大管長はこう教えています。「皆さんがキリストのもとに行くのは,主とともに,主の力によってくびきを負い,人生の重荷を一人で引くことのないようにするためです。皆さんは,世の救い主,贖い主とともにくびきを負って人生の重荷を引くのです。」20

では,どうしたら救い主とともにくびきを負う,すなわち主とつながることができるのでしょうか。デビッド・A・ベドナー長老は次のように教えています。

「聖約を交わし守ることにより,人は主イエス・キリストとつながります。……〔要するに〕,救い主は御自分に頼って一緒に荷を引くように招いておられます。……

わたしたちは独りではなく,独りでいる必要もありません。」21

重荷を負い,迷い,混乱している人はだれでも,一人で抱え込む必要はありません。22キリストの贖罪と主の儀式を通して,主とともにくびきを負い,主とつながることができるのです。主は愛をもって,この先の旅路に立ち向かうのに必要な力と癒しを与えてくださいます。主は今もなお,わたしたちの嵐をさける避け所なのです。23

III.天の御父の愛

ちなみに,ジャスパーは利発で愛情深く,賢いやんちゃな子ですが,この話で重要なのは,ジャスパーがわたしの子供だということです。我が息子であり,本人の思う以上にわたしは息子を愛しているのです。不完全なこの世の父親が自分の子供にこうした気持ちを抱いているなら,完全で栄光に満ちた愛にあふれる天の御父が皆さんのことをどう思っておられるか想像できるでしょうか。

Z世代やα(アルファ)世代の愛する若い友人の皆さん,信仰には行いが必要だということを理解してください。24わたしたちは,多くの人が「見えるものしか信じない」時代に生きています。信じることは困難な場合もあり,選ぶことが求められます。しかし,祈りはこたえられ,25答えは感じとることができます。26人生でほんとうに重要なものの中には,目には見えず,感じとり,理解し,経験するものがあります。それらも実在するのです。

イエス・キリストは,皆さんが天の御父を知り,御父との関係を築くよう望んでおられます。27イエスはこう教えています。「あなたがたの中に,一人の息子を持つ者がおり,その子が外に立っていて,『父よ,あなたの家を開けて,わたしが中に入って一緒に食事ができるようにしてください』と言うときに,『息子よ,入ってきなさい。わたしのものはあなたのものであり,あなたのものはわたしのものだから』と言わない者がいるだろうか。」28より身近で愛に満ちた,永遠の父なる神の姿を思い浮かべられたでしょうか。

皆さんはその御父の子供なのです。途方に暮れている人,疑問のある人や知恵に不足している人,現況に苦しんでいる人や霊的に調和できていないことに葛藤している人は,主に頼ってください。慰めや愛,答え,導きを求めて主に祈ってください。どんな必要を抱え,どんな状況にあったとしても,天の御父に心を注ぎ出してください。ネルソン大管長の次の勧めに従ったほうがいい人もいるでしょう。「神は確かに実在されるのか,神があなたのことを御存じなのか,告げてくださるよう神に尋ねてください。あなたについてどう感じておられるか神に尋ね,耳を傾けてください。」29

愛する兄弟姉妹の皆さん,

  • 天の御父を知ってください。御父は完全で愛にあふれた御方です。

  • イエス・キリストがどんな御方かを知ってください。30主はわたしたちの救い主,贖い主です。自らと皆さんの愛する人を主に結びつけてください。

  • 自分が何者であるかを知ってください。自らの神聖な本質を理解してください。神の幸福の計画は皆さんのために存在します。皆さんは神の貴い子供であり,大きな価値のある存在です。神は皆さんを御存じで,皆さんを愛しておられます。

これらの簡潔で基本的な真理について,イエス・キリストの御名により証します,アーメン。

  1. ルカ15:4-32参照

  2. Preach My Gospel: A Guide to Sharing the Gospel of Jesus Christ(2023),1参照

  3. M. Russell Ballard, “Children of Heavenly Father” (Brigham Young University devotional, Mar. 3, 2020), speeches.byu.edu.

  4. ヨハネ3:16モーサヤ15:13ニーファイ17:6-10

  5. Preach My Gospel, chapter 3参照

  6. マタイ22:36-40参照

  7. 『総合手引き—末日聖徒イエス・キリスト教会における奉仕』1.2,福音ライブラリー参照

  8. モーサヤ18:8,9

  9. Jeffrey R. Holland, “Religion: Bound by Loving Ties” (Brigham Young University devotional, Aug. 16, 2016), speeches.byu.edu.

  10. ラッセル・M・ネルソン「平和をつくり出す人が必要です『リアホナ』2023年5月号,99

  11. “The number of people in extreme poverty rose by 70 million to more than 700 million people” (“Poverty,” Nov. 30, 2022, World Bank, worldbank.org).

  12. “More than 100 million people are forcibly displaced” (“Refugee Data Finder,” May 23, 2022, United Nations High Commissioner for Refugees, unhcr.org).

  13. ゲレット・W・ゴング「宿屋に居場所を『リアホナ』2021年5月号,25

  14. 『総合手引き』1.3.7,福音ライブラリー参照

  15. ラッセル・M・ネルソン「平和をつくり出す人が必要です」『リアホナ』98年5月号,98-101

  16. ヨハネ3:16参照

  17. アルマ7:11-12教義と聖約122:8参照

  18. マタイ11:28-29

  19. ハワード・W・ハンター「わたしのもとに来なさい『聖徒の道』1990年1月号,19参照

  20. The Mission and Ministry of the Savior: A Discussion with Elder Russell M. Nelson,” Ensign, June 2005, 18.

  21. デビッド・A・ベドナー「容易に重荷に耐えられるように『リアホナ』2014年5月号,88

  22. カミール・ジョンソン会長は次のように述べています。「兄弟姉妹の皆さん,わたしには一人ではできません。その必要もありませんし,そうすることはありません。神と交わした聖約によって救い主イエス・キリストとつながることを選ぶとき,『わたしを強くして下さるかたによって,何事でもすることができる』のです。」〔『ピリピ4:13〕(「イエス・キリストは安らぎです」『リアホナ』2023年5月号,82)

  23. 詩篇62:6-8参照

  24. ヤコブ2:17参照

  25. マタイ7:7-8ヤコブの手紙1:5参照

  26. 「聖霊は,慰め主であられます(ヨハネ14:26)。愛にあふれる親の優しい声が泣く子をなだめるように,御霊のささやきはわたしたちの恐れを静め,絶えずつきまとう人生の不安を消し去り,悲しむときには慰めを与えてくれます。聖霊は,わたしたちの心を『希望と完全な愛』で満たし,『王国にかかわる平和をもたらす事柄を〔わたしたち〕に教え』てくださいます(モロナイ8:26,;教義と聖約36:2)(福音トピックス「トピックと質問」の「聖霊」を参照)。

    聖霊は『御父と御子について証をされ』ます(2ニーファイ31:18)。聖霊の力によらなければ,父なる神と御子イエス・キリストについての確かな証を得ることはできません。

    「聖霊は真理を証されます。わたしたちは聖霊の力によって『すべてのことの真理を知る』(モロナイ10:5)のです。」(「聖霊は真理を証してくださる」『リアホナ』2010年3月号,14,15参照)

    『わたしが父のみもとからあなたがたにつかわそうとしている助け主,すなわち,父のみもとから来る真理の御霊が下る時,それはわたしについてあかしをするであろう(ヨハネ15:26)。」

  27. ヨハネ14:6-717:3参照

  28. ジョセフ・スミス訳マタイ7:17(「ジョセフ・スミス訳付録」)

  29. ラッセル・M・ネルソン「わたしに従ってきなさい『リアホナ』2019年5月号,90

  30. マルコ8:27-29参照