2020
未来に備えてよい土台を
2020年5月


16:22

未来に備えてよい土台を

これからの数年間,ソルトレーク神殿に加えられる改良が,わたしたちの心を動かし動機づけますように。

ソルトレーク神殿の歴史

これから1847年7月24日の暑い午後2時ごろに戻ってみたいと思います。当時の十二使徒定員会会長であったブリガム・ヤングは,西部に向かう最初の一団を構成する148名の教会員との,111日間の苦難の旅の後,病気になり,高山熱で体が弱っていながらも,ソルトレーク盆地に入りました。

二日後,ブリガム・ヤングは病み上がりの体で,十二使徒定員会の数名とそのほかの人々を率いて探索に出ました。ウィリアム・クレートンはこう記録しています。「野営地から北方におよそ4分の3マイル(約1.2キロ)進んだ所で,西向きにきれいに傾斜している,美しい平坦な台地に到着した。」1

神殿用地に立つブリガム・ヤング
神殿が建つ場所を印すブリガム・ヤング
神殿の場所に印を残す

一行とともにその場所を調査していたときに,ブリガム・ヤングは突如立ち止まると,杖を地面に突き立てて叫びました。「ここに,わたしたちの神の神殿が建ちます」と。同行者の一人であったウィルフォード・ウッドラフ長老は,その言葉が「電光のように〔自分を〕貫いた」と述べています。そして彼は,ヤング会長が杖で印を付けた所に木の枝を打ち込みました。神殿のために40エーカー(約16ヘクタール)が選定され,町は,神殿を中心として「東西南北に真四角に」設計されることとなりました。2

1851年4月の総大会で,教会員は,「主の名のために」神殿を建てるという動議を全会一致で支持しました。32年後の1853年2月14日に,用地は,公開の式典でヒーバー・C・キンボールにより奉献されました。その式典には数千人の聖徒が出席し,ソルトレーク神殿の土台を据える鍬入れが行われました。数か月後の4月6日,式典で神殿の巨大な隅石が据えられ,奉献されました。その入念に計画された式典には,旗手や楽団が参加し,教会の指導者たちを先頭にして,旧タバナクルから神殿用地まで行進があり,用地では4つのそれぞれの石のそばで話がされ,祈りがささげられました。4

ソルトレーク神殿の基礎
ブリガム・ヤング

鍬入れ式で,ヤング大管長は,盆地を調査するため初めてその地に足を踏み入れたときに示現を見たことを回想し,こう述べました。「わたしは〔そのときに〕,今知っているのとまったく同じように,ここが神殿を建てる地点であることを知りました。それがわたしの前にあったのです。」5

10年後に1863年10月の総大会で,ブリガム・ヤングは,次のような預言者としての洞察を与えています。「わたしは,福千年の間も耐えられる方法で建てられる神殿を見たいです。わたしたちが建てる神殿はこれだけではありません。数百の神殿が建てられて,主に奉献されるでしょう。この神殿は,末日聖徒によって,もろもろの山に建てられる最初の神殿として知られるでしょう。……もろもろの山における神の聖徒たちの信仰と忍耐と勤勉さの輝かしい記念物として,神殿が立ち続けることを願っています。」6

建設中のソルトレーク神殿
建設中のソルトレーク神殿

この歴史を短く振り返り,わたしは,ブリガム・ヤングの聖見者の職に畏敬の念を抱きました。第1に,彼が,可能な範囲で,当時その地で利用可能な建築法を用いて,福千年の間中も耐えられる方法でソルトレーク神殿を建てようとしたこと,そして第2に,将来世界各地に神殿が増え,実にその数が数百に達すると預言したことです。

ソルトレーク神殿の改修

ブリガム・ヤングと同様,今日の預言者も,ソルトレーク神殿やそのほかすべての神殿を細心の注意を払って見ています。何年にもわたって,大管長会は,ソルトレーク神殿の土台を強固にするよう管理ビショップリックに時々助言しました。わたしが管理ビショップリックで務めを果たしていたとき,大管長会の要請を受けて,わたしたちはソルトレーク神殿の全体的な施設の点検を行いました。それには,耐震設計と施工法に関する最先端技術の評価が含まれていました。

そのときに大管長会に提出された点検報告にはこうあります。「ソルトレーク神殿の設計と建設では,最善の工学技術,熟練労働者,建設資材,調度品,そのほか当時利用可能なリソースが用いられました。1893年の奉献以降,神殿はしっかりと立っており,信仰と希望のかがり火として,また民への光としての役割を果たしてきました。神殿を良い状態で運営し,清潔にし,維持管理するために,細心の注意が払われてきました。花崗岩の外装と内部の床用根太と支柱梁の状態は良好です。最近の研究により,ブリガム・ヤングが神殿のために選んだ場所は非常に良い土壌で,圧密特性が優れていることが確認されました。」7

その点検報告は,通常の修理と,外部のテラスや表面エリア,旧式のユーティリティシステム,バプテスマエリアなど,神殿を最新の状態にする改良が必要であるという言葉で結ばれています。しかし,それとは別に,神殿の土台から上部に至るまでさらに大規模な耐震補強を考慮することも推奨されました。

神殿の土台

思い起こせば,ブリガム・ヤング大管長自身が,最初の神殿の土台の設置にきわめて深くかかわっています。それが127年前の完成以降,神殿をしっかり支えてきました。新たに提案された神殿用耐震補強パッケージは,基礎免震技術を利用します。この技術は神殿の建設当時にまったく想定されていませんでした。これは最高の最先端耐震技術を考慮したものです。

神殿改修図
神殿改修図

最近開発されたこの技術を,神殿の土台そのものから適用していきます。これで地震による損傷をしっかりと防ぎます。基本的に,その地と周辺で非常に大きな地震が起こっても,神殿は構造上強化されてしっかりと耐えられます。

この技術を用いる神殿の改修が,昨年大管長会から発表されました。作業は,管理ビショップリックの指示の下で,数か月前の2020年1月に開始されました。およそ4年で完了すると見込まれています。

個人の土台を確かなものとする

わたしは,この美しく,壮大で,気高く,荘厳なソルトレーク神殿の今後4年間について考えるとき,それを閉館の期間としてではなく更新の期間として思い描きます。同様に,わたしたちはこう自分に問い掛けることができます。「ソルトレーク神殿のこの大規模な更新は,自分の霊的な更新,再構築,再生,再活性化,あるいは回復をどのように促しているだろうか」と。

自分を振り返ってみれば,わたしたちも家族も,何らかの必要なメンテナンスと改修作業を,また耐震補強さえも,実施することから益を得られることは明らかです。次のように問い掛けることでこのようなプロセスを開始できます。

「自分の土台はどのような状態だろうか。」

「証がその上に築かれる個人の土台の一部である,厚く,安定した,強固な隅石は,何だろうか。」

「自分と家族が確固として揺るぎなくあるようにする,また生涯の間に必ず起こる地震や動乱のきわめて重大な出来事にさえも耐えられるようにする,霊性と情緒の基本的な要素は何だろうか。」

地震と同じように,このような出来事は,しばしば予測が困難であり,様々な規模で起こります。例えば,様々な疑問や疑いとの闘い,苦難や逆境に遭うこと,教会の指導者や会員,教義,方針に対する個人的なつまずきに対処することなどです。これらに対する最善の防御は,霊的な土台にあります。

どのようなものが個人や家族の生活の霊的な隅石となるでしょうか。福音生活の簡潔で,明瞭で,貴重な原則が隅石となります。例えば,家族の祈り,聖文研究,神殿参入,モルモン書,『わたしに従ってきなさい』を用いる福音学習と家庭の夕べなどです。そのほか,霊的な土台を強化する有益なリソースとして,信仰箇条,家族の宣言,『生けるキリスト』もあります。

わたしにとって,神殿推薦状を受ける際に語り合う質問の中に含まれている原則は,霊的な土台の大きな要素となっています。特に,最初の4つの質問がそれです。わたしはそれらを霊的な隅石と見ています。

もちろん,その質問はよく知られています。ラッセル・M・ネルソン大管長が前回の総大会でそれを一つずつ読み上げたからです。

  1. あなたは永遠の父なる神とその御子イエス・キリストと聖霊に対して,信仰と証を持っていますか。

    神会
  2. イエス・キリストの贖罪と,あなたの救い主,贖い主としてのイエス・キリストの役割に対して,証を持っていますか。

    イエス・キリストの贖罪
  3. イエス・キリストの福音の回復に対して,証を持っていますか。

    回復
  4. 末日聖徒イエス・キリスト教会の大管長を預言者,聖見者,啓示者として,また,すべての神権の鍵を行使する権限を託された,地上で唯一の人として支持していますか。8

    預言者

これらの質問はどのような点で,個人の土台を築いて強化するのに有益な要素だと見なせるでしょうか。パウロはエペソ人に,教会は「使徒たちや預言者たちという土台の上に建てられたものであって,キリスト・イエスご自身が隅のかしら石である。このキリストにあって,建物全体が組み合わされ,主にある聖なる宮に成長〔する〕」と教えました。9

確固とした土台の上に建つ神殿

わたしの生涯で最大の喜びの一つは,イエス・キリストと福音を信じる信仰の生きた模範である全世界の教会員と知り合い,鼓舞されることです。彼らは個人の土台を強固に築いているため,生活を揺るがすような出来事に遭って心痛や苦しみがあるときも,揺るぎない知識を持って耐えることができるのです。

わたしはもっと個人的なレベルでお話ししたいと思います。最近,美しく,明るい若い妻であり母親である女性(わたしたち家族の友人でもある人)の葬儀で話しました。彼女は,歯学生の夫に会って結婚したとき,活動的なディビジョン1〔訳注—スポーツ競技における全米大学の区分け〕のサッカー選手でした。二人は,美しいおませな娘に恵まれました。彼女は,様々な種類の癌と6年間果敢に闘いました。絶えず付きまとう情緒的また肉体的苦悩を経験したにもかかわらず,愛にあふれる天の御父を信頼しました。彼女の言葉はソーシャルメディアのフォロワーによって広く引用されました。その有名な言葉がこれです。「神は細かいところまで見ておられます。〔訳注—英語では“God is in the details”〕」

彼女が書いたソーシャルメディアの投稿の一つに,ある人から次のように尋ねられたとあります。「苦しみに取り巻かれているのに,それでも信仰を持っているのはなぜですか。」彼女はきっぱりと次のように返答しました。「信仰がなければ,この暗い時を乗り越えられないからです。信仰があれば悪いことが何も起こらない,というわけではありません。信仰があれば,将来再び光があると信じることができます。そしてその光はさらに明るくなります。暗闇の中を歩いてきたからです。長年暗闇を目の当たりにしましたが,それ以上の光を目の当たりにしてきました。数々の奇跡を見てきました。天使たちを感じました。天の御父が支えてくださっていたことを知っています。人生が容易であったら,これらのことを経験できなかったでしょう。この先の人生については分からないかもしれませんが,自分の信仰はそうではありません。信仰を持たないという選びをすれば,暗闇の中を歩くだけという選びをすることになります。信仰がなければ,残されているのは暗闇だけだからです。」10

主イエス・キリストを信じる彼女の揺るぎない信仰の証,その言葉と行動に見られる証は,ほかの人々を鼓舞しました。たとえ体は弱まっていても,人々を高め,さらに強くしたのです。

わたしは,ほかの大勢の教会員,この姉妹のような戦士たちについて考えています。彼らは日々信仰をもって歩み,救い主イエス・キリストの真の不屈の弟子になろうと努めています。キリストについて学び,キリストについて説き教えます。キリストに倣おうと努めます。日々の生活の状況が安定していようと不安定であろうと,自分の霊的な土台が強く不動であることを知っているのです。

これらの人は,「主のみ言葉は信仰の固き基」という歌詞の深い意味を理解している献身的な人々で,「主のみもとに逃れ行きし者〔たち〕」です。11聖徒の名にふさわしい霊的な土台を備えてきた人々,強く確固としていて,人生の多くの混乱によく耐えている人々の中を歩めることを,わたしは計り知れないほど感謝しています。

個人の生活でこのような固い土台を据えることの大切さは,いくら言っても言い過ぎることはないと思います。初等協会の子供たちは,幼いときから,これがまことに真実であると歌で教えられます。

賢い人…… 岩の上に家を建て

雨が降って 水がわき……

雨が降って 洪水に

〔それでも〕家は 大丈夫12

聖文はこの基本的な教義を補強しています。救い主はアメリカ大陸の民にこう教えられました。

「あなたがたはいつもこれらのことを行うならば,わたしの岩の上に建てられているので,幸いである。

しかし,あなたがたの中で,これ以上のこと,あるいはこれに及ばないことを行う者は,わたしの岩の上に建てられておらず,砂の土台の上に建てられているのである。雨が降り,洪水が起こり,風が吹いてこれらの者に打ちつけると,彼らは倒れてしまう。」13

ソルトレーク神殿の大幅な改修によって,「福千年の間も耐えられる方法で建てられる神殿」を見たいというブリガム・ヤングの願いがかなえられるようにというのが,教会指導者たちの心からの望みです。これからの数年間,ソルトレーク神殿に加えられるこれらの改良が,わたしたち個人や家族の心を動かし動機づけ,わたしたちも,比喩的な意味で「福千年の間も耐えられる方法で建てられ」ますように。

「真のいのちを得るために,未来に備えてよい土台を自分のために築き上げるように」という使徒パウロの教えにこたえるときに,そうなります。14わたしたちの霊的な土台が確かで確固としたものとなり,イエス・キリストの贖罪と,救い主,贖い主としての主の役割についての証がわたしたちの隅のかしら石になるよう,心から祈ります。イエス・キリストの御名により証します,アーメン。

  1. William Clayton journal, July 26, 1847, Church History Library, Salt Lake City.

  2. See “At the Tabernacle, Presidents Woodruff and Smith Address the Saints Yesterday Afternoon,” Deseret Evening News, Aug. 30, 1897, 5; “Pioneers’ Day,” Deseret Evening News, July 26, 1880, 2; Wilford Woodruff journal, July 28, 1847, Church History Library, Salt Lake City.

  3. “Minutes of the General Conference of the Church of Jesus Christ of Latter-day Saints, held at Great Salt Lake City, State of Deseret, April 6, 1851,” Deseret News, Apr. 19, 1851, 241.

  4. See “The Temple,” Deseret News, Feb. 19, 1853, 130; “Minutes of the General Conference,” Deseret News, Apr. 16, 1853, 146; “Minutes of the General Conference,” Deseret News, Apr. 30, 1853, 150.

  5. “Address by President Brigham Young,” Millennial Star, Apr. 22, 1854, 241.

  6. “Remarks by President Brigham Young,” Deseret News, Oct. 14, 1863, 97.

  7. 2015年10月,大管長会へのソルトレーク神殿に関する管理ビショップリックのプレゼンテーション

  8. ラッセル・M・ネルソン「はじめに『リアホナ』2019年11月号,121

  9. エペソ2:20-21

  10. キム・オルセン・ホワイトによるソーシャルメディアの投稿

  11. 「主のみ言葉は」『賛美歌』46番

  12. 「かしこい人とおろか者」『子供の歌集』132

  13. 3ニーファイ18:12-13;強調付加

  14. 1テモテ6:19;強調付加