「食物アレルギー」『障害と奉仕:指導者』
「食物アレルギー」『障害と奉仕:指導者』
食物アレルギー
食物アレルギーや食物に対する反応は,人の心身の健康と,教会の集会や活動に参加する能力に重大な影響を及ぼすことがあります。
食物アレルギーとはどのようなものですか?
食物アレルギーとは,特定の食物に接触したときに,体が誤ってその食物を有害物質として扱ってしまう状態のことです。この反応は,アナフィラキシーというアレルギー反応を引き起こす場合があります。アナフィラキシーは死に至ることもあります。全世界で2億4,000万人から5億5,000万人が何らかの食物アレルギーを持っている可能性があります。一般的なアレルギーとして,ピーナッツ,木の実,魚類,貝類,牛乳,卵,小麦,大豆に対するアレルギーがあります。
教会において,成人,青少年,子供がしばしばアレルギーを誘発する食品にさらされる場合として以下があります。
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教会の催しで出される手作りの料理
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原材料の表示がない食物(パン・菓子製造店の食品や家庭で焼いたパン・菓子類など)
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アレルゲンを含む食物との相互接触
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アレルゲンを含むパンやアレルゲンとの相互接触のあったパンを用いての聖餐の準備やパスを行うことや,そのようなパンを取ること
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アレルゲンを含むおやつやお菓子などの食物
食物アレルギー反応やアナフィラキシーを起こしているかどうか,どのようにして知ることができますか?
以下の症状がないか確認します。これらの症状は軽い場合も重い場合もあります。
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息切れ,喘鳴,咳き込み
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青白い(血色の悪い)肌,失神,弱脈,めまい
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のどの圧迫感,声のかれ,息ぐるしさや飲み込みにくさ
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舌または唇の著しい腫れ
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全身の蕁麻疹,皮膚の広範囲の赤み,かゆみ
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反復的な嘔吐,ひどい下痢
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何か悪いことが起ころうとしているという気持ち,不安,混乱
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血圧の低下
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鼻のかゆみや鼻水,くしゃみ
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口内のかゆみ
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軽い吐き気または不快感
アナフィラキシーとはどのようなものですか?
アナフィラキシーは,突然起こり,死に至ることもある重篤なアレルギー反応です。接触または摂取後,数分または数時間以内に症状が現れます。救急薬のエピネフリン(アドレナリンとも言います)を早期に投与するとともに救急治療を行わないと,死に至る恐れがあります。アナフィラキシーの症状は次のとおりです。
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気道狭窄
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極端な低血圧
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ショック(アナフィラキシー性ショック)
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のどの腫れによる窒息
反応に対する最良の治療法は何ですか?
重篤な反応やアナフィラキシーの治療薬として最もよく使われているのはエピネフリンです。この薬は,処方により,自己注射器として入手できます(EpiPen,Auvi-Q,Adrenaclickなど)。食物アレルギーのある人のほとんどは,このような注射器を携帯しています。食物アレルギーのある会員がいる場合,指導者や教師は,アレルギー反応が起きた場合に備えて,本人または親と治療法について話し合っておくべきです。
アナフィラキシー反応にはどのように対処したらよいですか?
だれかがアナフィラキシーを起こした場合は,次のように対処します。
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エピネフリンをすぐに注射します(この薬がある場合)。
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119番に連絡して救急車を呼び,エピネフリンを持って来てもらいます。
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子供や青少年の場合は,ステップ1と2の後に親に連絡します。
症状が改善しない場合や再び発生した場合は,最初の投与のおよそ5分後にさらにエピネフリンを投与することができます。緊急施設に搬送し,症状が再び発生する場合があるため少なくとも4時間は施設にとどまらせます。抗ヒスタミン剤に頼ってはいけません。抗ヒスタミン剤が役立つのは皮膚の問題だけであり,抗ヒスタミン剤を使用することでアナフィラキシー反応が隠されてしまうことがあります。その結果,エピネフリンの投与が遅れ,死を含む,回復不可能な影響が生じる可能性があります。どうすべきか分からない場合は,エピネフリンを投与し,119番に連絡してください。食物アレルギーのある人が気分が悪くなった場合は,その人を決して独りにしないでください。
食物アレルギーやアナフィラキシーの危険を避けるには,どうしたらよいですか?
以下の指針に従ってください。これらの指針は,教会において食物アレルギーのある人の安全を守るのに役立ちます。
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すべての食物アレルギーを深刻に受け止めます。食物アレルギーは死に至ることがあります。
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食物アレルギーのある会員がいる場合は,本人と,また子供や青少年の場合は親と話し合います。
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避ける必要がある食物について把握し,その食物の代替となる安全な食物があるかどうか確認します。
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食物がいつ出されるのか知らせます。
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パン・菓子製造店の食品や家庭で焼いたパン・菓子類を避けます。これらの食物は,通常,相互接触の危険が高いうえ,必ずしもラベルに表示されている原材料だけを含むとはかぎりません。
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手作りの料理に原材料を表示します。
食物アレルギーのある人が安全に聖餐を受けられるようにするには,どうしたらよいですか?
指導者や教師は,食物アレルギーが人の心身に及ぼす影響に敏感に対処し,聖餐を受けることも含めて,すべての活動と礼拝に人々が安全に参加できるようにする方法を考えるべきです。以下の指針が役立つでしょう。
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グルテン不耐症などの食物アレルギーのある会員は,ビショップリックの一員にそのことを知らせ,聖餐を受ける際にどのような調整をしてもらうのが適切か話し合っておきます。
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会員は,自分用にアレルゲンを含まないパン,または割いたパンのような代替品を持参することができます。会員は,あらかじめ割いておいた代わりのパンを,密封したビニール袋に入れて持参し,神権者に渡して別のトレイに置いてもらうとよいでしょう。
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聖餐の際に,神権者は,通常のパンは割きますが,アレルゲンを含まないパンの袋は開けず,触れることもしません。パンを祝福するための祈りは,通常どおりささげます。
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ビショップリックは,神権者がどの会員にアレルゲンを含まないパンを配るべきか分かるようにします。聖餐の準備,執行,パスを行う人は,相互汚染を避ける方法について訓練を受けるべきです。
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関係者の人数や個々の状況に応じて,ビショップリックは手順を変更することができます。
相互汚染を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?
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相互接触とはどのようなことか,また避けるにはどうしたらよいかを理解します。相互接触は,ある食物が別の食物または表面に触れたときに起こります。この接触によって,別の食物または表面に微量の食物アレルゲンが付着します。微量であるため,たいていは見えませんが,一般に安全と考えられている食物にアレルゲンが混入することがあります。きわめて微量の食物アレルゲンでも,生命を脅かすアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
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聖餐の際には,以下の指針に従って相互汚染を避けます。
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聖餐の準備をする前に,石鹸と水で手を適切に洗います(手指消毒剤では食物アレルゲンは除去されません)。
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アレルゲンを含まないパンの取り扱いが済んでから,アレルゲンを含むパンを取り扱います。アレルゲンを含むパンに触れた場合は,アレルゲンを含まないパンに触れる前に,必ず石鹸で手を洗ってください。
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アレルゲンを含まないパンはすべて,アレルゲンを含まないパン用の別のトレイに置きます。
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会員がアレルゲンを含まないパンをあらかじめ割かれた状態で密封容器に入れて持参した場合は,容器を開けずに,アレルゲンを含まないパン用の別のトレイに置きます。
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その他のリソース
食物アレルギーとアナフィラキシーについてや,アレルギー反応の認識方法と対処方法の詳細については,以下のリソースを参照してください。〔日本語のないリソースも含まれます〕
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印刷用ポスターや標識
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Avoiding Cross-Contact with the Sacrament Sign(聖餐での相互接触の回避の標識)(英語)
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Avoiding Cross-Contact with the Sacrament Sign(聖餐での相互接触の回避の標識)(スペイン語)
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Avoiding Cross-Contact with the Sacrament Sign(聖餐での相互接触の回避の標識)(ポルトガル語)
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Avoiding Cross-Contact with the Sacrament Sign(聖餐での相互接触の回避の標識)(フランス語)
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Food Allergy and Anaphylaxis Emergency Care Plan(食物アレルギーとアナフィラキシーの救急医療計画)
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リサ・A・トムソン「教会で食物アレルギーに対処する」『リアホナ』2020年6月号,22-27
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World Allergy Organization White Book on Allergy: Update 2013 (World Health Organization, 2013), worldallergy.org.
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