総大会
特権にふさわしく生きる
2024年10月総大会


特権にふさわしく生きる

神権の儀式と聖約に伴う約束により,どのように神の力が自分の生活に注がれるのかを学んでください。

最近,夫のグレッグに病気の診断が下り,集中的な手術と数か月に及ぶ化学療法を受けなければならなくなりました。同様の状況に直面したことのある皆さんの多くと同じように,わたしたちは直ちに天の助けと神の力を求めて祈り始めました。グレッグの手術後に迎えた日曜日,病院に聖餐を届けてもらいました。

このとき,聖餐を取ったのはわたしだけでした。そこにあったのは一かけらのパンと一杯の水です。教会で聖餐式に出席するとき,わたしの意識はたいてい,聖餐が準備され,祝福され,配られるという聖餐を届けるシステムに向かいがちです。しかしその午後は,その一かけらのパンと一杯の水を取りながら,神聖な儀式そのものと,交わしている聖約を通してわたしがあずかることのできる神の力の賜物について思いをはせました。それは,わたしが天からの力を必要としていた時期でした。この心痛と疲弊,不安の中,切実に必要としていた主の力をもたらすことのできるこの賜物について思い巡らしました。聖餐を取ることにより,主の御霊はさらにわたしとともにいてくださり,それにより神の力という賜物にさらにあずかって,天使のミニスタリングをさらに受け,乗り越える力を救い主からさらにいただくことができるでしょう。

大切なのはだれが儀式を執行するかだけでなく,その儀式とそれに伴う聖約がもたらすものにも目を向ける価値があるということを,このときほどはっきりと気づいたことはなかったと思います。神権の儀式と,聖約により,神はわたしたちを聖め,生活の中で不思議な業を行うことがおできになります。しかし,それはどのように起こるのでしょうか。

まず,儀式により神の力が生活の中に現れるには,神の御子から授けられた権能によりその儀式が執り行われなければなりません。儀式を届けるための手順は重要です。御父はイエス・キリストに,神の神権の儀式を届けるのを監督する鍵と権能を委ねられました。主の導きのもと,また主の神権の秩序の中で,神の息子たちは,神の御子の代理を務めるよう聖任されています。

第二に,わたしたちは聖約を交わすだけでなく,それを守らなければなりません。多くの福音の儀式において,わたしたちは神聖な聖約を神と交わします。そして神は,わたしたちがそれらの聖約を守るときに祝福を授けると約束してくださっています。わたしたちが神の力にあずかるには,神権の儀式を受けることと,聖約を守ることの両方が組み合わさる必要があるということがわかるでしょうか。

その午後わたしは,神の聖約の娘である自分は果たして,神権の儀式を通して神の力という賜物にあずかる方法と,自分の中で作用する神の力を認識する方法を,真に理解しているだろうかと考えました。

2019年,預言者は教会の女性たちに,救い主の力を生活に招き入れる方法を教え,あることをするよう招きました。ラッセル・M・ネルソン大管長は,ペンシルべニア州ハーモニーでエマ・スミスに授けられた啓示である教義と聖約25章を研究するよう招かれたのです。その招きに応じることは,わたしの人生を変えました。

先月,わたしは思いがけずハーモニーを訪問する機会がありました。ハーモニーのカエデの木の下で,ジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに神権が回復されました。カエデの木の近くには,ジョセフとエマの家の玄関があり,その家の暖炉の向かい側に窓があります。わたしはその窓のそばに立って,エマはこの窓の外に立つ木々の向こうを眺めながら何を思ったのだろうと考えていました。

1830年7月,エマは26歳でした。まだとても若かったのです。結婚して3年半が過ぎ,初めての赤ん坊を亡くしました。赤ん坊の小さなお墓は,家の前の小道を歩いてすぐのところにあります。窓辺に立っていたわたしにとって,エマがどのような思いでいたかは想像に難くありませんでした。きっとエマは,家計のことや,ますます安全を脅かすようになりつつあった迫害や,将来について心配していたでしょう。それでも,神の業はエマの周りの至るところで行われていました。エマは,計画における自分の立場や,神の王国における自分の目的,神の目から見た自分の可能性についても考えたでしょうか。

きっと考えたと思います。

道のすぐ向かい側で,神の神権の権能と鍵という賜物が地上に回復されました。それは,エマが実際に天からの力を必要としていた時期でした。きっとエマは心痛と疲弊,不安の中,切実に必要としていた主の力をもたらすことのできる,神の神権という賜物について思い巡らしたのではないでしょうか。

エマは単に窓辺に立って物思いにふけっていたのではありません。

預言者ジョセフが鍵や役職,儀式,そして神権の務めについて教えを受けていたときに,主御自身が主の預言者を通してエマに啓示をお授けになりました。この啓示は,「ノーブー扶助協会会長のエマ」にではなく,ハーモニーに住む「26歳のエマ」に対して授けられたものです。エマはこの啓示を通して,自分の内面の聖めと,聖約による結びつきにより,これらの神権の儀式が自分の生活の中で作用する能力を増すことについて学びました。

第一に,主はエマに,主の計画におけるエマの立場を思い起こさせて,エマが何者であり,どなたのものであるか,すなわち主の王国の娘であることなどをお伝えになりました。エマは「徳の道を歩む」よう招かれました。徳の道には,エマが聖約を守るならば神の力をもたらすことのできる儀式が含まれていました。

第二に,エマが深い悲嘆に暮れていた時季に,主はエマに目的をお与えになりました。エマは最前列で回復を目撃しただけでなく,起こっていたその業に欠かせない参加者だったのです。エマは「聖文を説き明かし,教会員に説き勧めるために」任命されました。エマの時間は「記録することと,多く学ぶこと」に費やされることになりました。エマは,聖徒を礼拝に備えるという神聖な役割を与えられました。聖徒の主への歌は祈りとして受け入れられ,「それに対する答えとして,彼らの頭に祝福が注がれ〔ます〕。」

最後に主は,エマを昇栄に備える内面の聖めの過程の要点を示されました。次のように説明されています。「あなたはこのことを行わなければ,わたしのいる所に来ることはできない。」

25章を慎重に読むと,重要な進歩が起こっていることに気づきます。エマは王国の娘から「選ばれた婦人」に,さらには女王へと変わっていくのです。アロン神権とメルキゼデク神権の儀式を受け,交わした聖約を守ることで,エマはさらに御霊および天使と交わり,神の導きにより人生を歩む力を得たことでしょう。神の力を通して,神はエマの心を癒し,能力を高め,エマがなり得ると神が御存じの姿へと変えてくださったことでしょう。そして,メルキゼデク神権の儀式を通して,エマの生活に「神性の力が現れ」,主は幕を裂いて,エマが主から理解を得られるようにしてくださったことでしょう。これこそが,神の力がわたしたちの中で作用する方法です。

ラッセル・M・ネルソン大管長は,次のように教えています。

「〔ハーモニー〕で起こったことはどれも皆さんの人生にとって深い意味があります。神権の回復は,エマに主がお与えになった勧告とともに,皆さん一人一人にとって指針となり,祝福となり得るのです。……

人生で神の力にあずかるためには主がエマと皆さん一人一人に指示されたことを行わなければならない,ということです。」

ハーモニーの家の窓の両側で,重要な出来事が起こっていました。その一つは,主が召された「選ばれた婦人」に啓示が授けられ,その啓示は神の娘であるエマ・スミスを強め,励まし,教えを授けたことです。

わたしの孫娘のイザベルが名前と祝福を授けられたときに,彼女の父親は,イザベルが神権を理解できるよう祝福しました。そして,イザベルが神権を通して生活の中で受けることのできる祝福に対する理解を増し,学ぶことができるよう,また理解が増し続けるにつれ,神権を信じる信仰が増すよう祝福しました。

神権を理解できるように,また神権の儀式と聖約による約束がどのように神の力を受けるうえで役立つかを学べるように,という祝福を受ける女の子の赤ん坊は多くはありません。しかし,わたしはエマのことを思い出し,「いいことだわ」と思いました。この小さな娘には,神の王国における「選ばれた婦人」に,そしてやがて女王になる可能性があるのです。神の神権の儀式を通して,また聖約を守ることを通して,神の力は彼女の中で,また彼女を通して発揮され,彼女は人生のどのような経験も乗り越え,彼女がなり得ると神が御存じの女性になることができるでしょう。このことを,ぜひ王国の一人一人の娘たちに理解してもらいたいと思います。

それは,「特権にふさわしく生きる」ことです。

神権の儀式と聖約により,どのように神の力がさらに効果的に自分の生活に注がれ,あなたの中で,またあなたを通して神の力が作用して,あなたが目的を果たし,能力を最大限に発揮できるよう強め,備えてくれるかを学んでください。

アロン神権とメルキゼデク神権による儀式について,またそれぞれの儀式で交わす聖約について,そしてこれらの儀式を通して授かる神の力について,慎重に研究し,考えてください。

大切なのはだれが儀式を執行するかだけではありません。その儀式と聖約による約束がもたらすものにも目を向ける価値があるということを心に留めてください。

毎週パンと水を取ることにより,あなたが乗り越えられるよう,あなたの中で神の力が作用していることを毎週思い出すことができます。聖なる神権のガーメントを身に着けることにより,あなたがなるべき人物になれるよう,あなたの中で神の力が作用していることを毎日思い出すことができます。

わたしたちは皆,神の力という賜物にあずかることができます。

聖餐を取るたびに,

神殿の敷居をまたぐたびにです。

そのことが,安息日の一番のハイライトです。そのことが,神殿推薦状を大切にする理由です。

「この神権の儀式によって神性の力が現れ〔ます〕。」

この賜物について,イエス・キリストの御名によって証します,アーメン。

  1. 教義と聖約107:20参照

  2. D・トッド・クリストファーソン長老はこう教えています。「すべての儀式において,特に神殿の儀式において,わたしたちは高い所から力を授けられます。この『神性の力』は聖霊の影響力によってわたしたちにもたらされます。……神は聖約を尊ぶ人に約束を果たし〔てくださいます〕。……神は,御自身の聖なる御霊により,神聖な力で皆さんを満たしてくださいます。」(「聖約の力『リアホナ』2009年5月号,22,23)

  3. ダリン・H・オークス「アロン神権と聖餐『リアホナ』1999年1月号,45参照

  4. 「神権の儀式に参加し,神と聖約を交わして守るすべての男性とすべての女性は,神の力に直接あずかることができます。」(ラッセル・M・ネルソン「永遠の聖約『リアホナ』2022年10月号,10)

  5. ヨシュア3:5参照。デール・G・レンランド長老は,次のように説明しました。「これらの聖約を通して,わたしたちは主の力にさらにあずかることができるようになります。誤解のないように言っておきますが,バプテスマと神殿の聖約自体が力の源というわけではありません。主イエス・キリストとわたしたちの天の御父こそが力の源なのです。聖約を交わして守ることで,御二方の力がわたしたちの人生に流れ込みます。」(「キリストの教義の力強く高潔なサイクル『リアホナ』2024年5月,82)

  6. 教義と聖約107:1-3ジョセフ・スミス訳ヘブル7:3(聖典の付録);アルマ13:2,16参照。ダリン・H・オークス管長はこう教えています。「またわたしたちは聖文を通して,神権を行使する人は,主に代わって働くのだということを知っています(教義と聖約1:3836:2参照)。ここで教師,祭司,執事が聖餐の準備,祝福,パスなどの神聖な責任を主に代わって果たすときに,どのようにすべきかを提案したいと思います。」(「アロン神権と聖餐『リアホナ』1999年1月号,45)

  7. 『総合手引き—末日聖徒イエス・キリスト教会における奉仕』3.5.1-2,「福音ライブラリー」参照

  8. 教義と聖約107:18-20ピリピ1:6参照

  9. ラッセル・M・ネルソン「霊の宝『リアホナ』2019年11月号,77

  10. ペンシルベニア州ハーモニーの教会史跡に再現されたスミス家について詳しくは,ジョセフ・スミスとエマ・スミスの自宅(ChurchofJesusChrist.org)を参照。

  11. 神権の権能と鍵のために,神権の儀式を受け,関連する聖約を守る人々の生活に神の力が注がれる。(『総合手引き』3.5,「福音ライブラリー」参照)

  12. ジョセフ・スミス―歴史1:71,脚注参照

  13. 教義と聖約25章参照

  14. 教義と聖約25:1参照

  15. 教義と聖約25:2

  16. 教義と聖約25:13参照。「聖約という言葉の語源はラテン語のcon venireで,この言葉は文字どおり『一体となる』という意味です。神権の文脈に照らすと,『聖約』とは『神と人が一体となること』,あるいは『神と人との間での合意』を意味します。聖約は,神と人が一体となって契約を交わし,約束や規定,特権,責任について合意することを前提としています。

    このような形で交された契約は不変で変えることができません。聖約は人をしっかりと固定し,将来期待されていることのための,堅固で確かな基を築くのです。」(Dale G. Renlund and Ruth Lybbert Renlund, The Melchizedek Priesthood: Understanding the Doctrine, Living the Principles [2018], 60).

  17. 教義と聖約25:7

  18. 教義と聖約25:8

  19. 教義と聖約25:12

  20. 教義と聖約25:15参照

  21. 教義と聖約25:15。ダリン・H・オークス管長はこう教えています。「バプテスマの儀式とそれに付随する聖約は日の栄えの王国に入るための条件です。神殿の儀式と付随する聖約は,日の栄えの王国での昇栄のための条件です。昇栄とは,永遠の命を受けることであって,『神のあらゆる賜物の中で最も大いなるもの』〔教義と聖約14:7〕です。」(「聖約と責任『リアホナ』2024年5月号,96)

  22. 教義と聖約25:1参照

  23. 教義と聖約25:3

  24. 教義と聖約25:15参照

  25. ダリン・H・オークス「アロン神権と聖餐『リアホナ』1999年1月号,41-43参照。オークス管長は次のように教えています。

    「密接なつながりがあるこれらのアロン神権の儀式は,天使の働きにとっても重要なものです。……

    天使のメッセージは声,あるいは心に浮かぶ考えや感じという形でも伝えられる場合があります。」(ダリン・H・オークス,「アロン神権と聖餐」『リアホナ』1999年1月号,42)

    さらに,預言者ジョセフ・スミスは扶助協会の姉妹たちに次の約束をしました。「もし与えられている特権にふさわしく生きるなら,天使は皆さんの友とならずにはいられないでしょう」(『歴代大管長の教え—ジョセフ・スミス』454)

  26. 教義と聖約84:19-20参照

  27. 教義と聖約107:18-19参照

  28. ラッセル・M・ネルソン「霊の宝」77。「ウィラード・リチャーズは次のように報告している。『ジョセフ・スミス大管長は,……エマ・スミスへの啓示……を読み,……エマだけでなく,ほかの人々も同じ祝福を得るだろうと述べました。』」(『歴代大管長の教え—ジョセフ・スミス』453-454)See also Nauvoo Relief Society Minute Book, March 17, 1842, in The First Fifty Years of Relief Society: Key Documents in Latter-day Saint Women’s History (2016), 1.2.1, churchhistorianspress.org.

  29. 教義と聖約24章,前書き参照。ここでは,次のように述べられている。「次の三つの啓示は,このときに,彼らを強め,励まし,教えるために与えられたものである。」

  30. 『歴代大管長の教え-ジョセフ・スミス』454

  31. ラッセル・M・ネルソン「霊の宝」77-79。「よく祈って,神権の力について見いだせる真理をすべて学んでください。教義と聖約の84章107章から始めるとよいでしょう。この二つの章を読むと,ほかの聖句も読みたくなるはずです。聖文や,現代の預言者,聖見者,啓示者の教えの中には,そのような真理がたくさんあります。皆さんの理解が深まり,皆さんが主と神権の力を信じる信仰を働かせるならば,主が与えてくださるこの霊の宝に頼る皆さんの能力は,高められます。」(ラッセル・M・ネルソン「霊の宝」,79)

  32. 教義と聖約109:22参照

  33. 教義と聖約84:20

印刷