2019
でも,おなかがすいた
2019年1月


でも,おなかがすいた

イサドラ・マルケス

(ブラジル,サンパウロ)

画像
missionaries and money on the ground

イラスト/アレン・ガーンズ

コロンビアで伝道していたある雨の日,わたしと同僚が帰宅しなければならない時間まで1時間ほどありました。一日中歩いておなかがすき,疲れていました。教える人を見つけることはできませんでした。

お金を持って来ておらず,しかもまだ買い出しもしていなかったので,家に帰ったところで何も食べるものがないのです。わたしはそんな後ろ向きな思いを押しのけながら,伝道に集中しようとしました。

「これ見つけたんだけど,見て。」同僚が突然叫びました。

地面に落ちていたお金を見つけたのです。表情から,わたしと同じことを考えていることが分かりました。何か食べるものを買えるのです。

ですが,すぐに同僚はこう言いました。「いえ,だめね。このお金はわたしたちのものじゃないもの。」

「でも,おなかがすいた」とわたしは思いました。

「だれのものだろうと,夜のこんな時間じゃ,持ち主を見つけられないわよ」とわたしは言いました。

同僚は祈ることを提案しました。それが正しいことだと分かってはいましたが,あり得ないと思う自分もいました。わたしたちは一日中,一生懸命働いたのです。そしておなかがすいていました。お金を見つけたことは,奉仕に対する祝福かもしれません。

そのとき,母のことを思い出しました。子供のころ,母はわたしと妹たちにいつも正直でいるよう教えてくれました。母は手本であり,わたしたちが正直でいる強い心を持てるよう祈ってくれました。もし母がここにいたら,わたしが間違った選択をすれば悲しむだろうと考えました。

そこで,わたしたちは祈りました。持ち主が見つかるよう,天の御父に助けを求めました。数分後,若い男性が何かを探しながら近くを通りかかりました。目には涙をため,気が動転しているようでした。同僚と二人で話しかけると,彼の探し物はまさにわたしたちが拾ったものでした。

お金を返すと,何度も感謝してくれました。それは大学に納めるお金だったそうです。納めなければ,学生としての登録が取り消されてしまうのです。わたしの目は涙でにじみ,拾ったお金を使いたいと思ったことを悔い改めました。彼の連絡先をもらい,彼とほかにも5人に福音を教えることができました。その夜,わたしは良い模範となってくれたことを同僚に感謝しました。

正直であるなら,神が祝福してくださることを知っています。その夜は結局何も食べるものがありませんでしたが,おなかをすかせたまま眠った覚えはありません。お金を見つけたことは,やはり祝福だったのです。

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