2020
キリストに喜びを見いだす
2020年11月


9:56

キリストに喜びを見いだす

この世でキリストに喜びを見いだす最も確実な方法は,主とともに人々を助けることです。

主は青少年であるアロン神権者に全てをするようには求めませんが,主が彼らに求められることは驚嘆すべきものです。

数年前,わたしたちの小さな家族はこの堕落した世で多くの家族が直面することを経験しました。末息子のタナー・クリスチャン・ランドががんに侵されたのです。9歳児にはありがちなことですが,タナーはとてつもない魂の持ち主でした。とんでもなくひょうきんで,同時に驚くほど霊的にさとく,悪魔のようでありながら天使のような,わんぱくで優しい子でした。タナーがまだ幼く,彼の思いもよらない,いたずらに日々驚かされていたころ,この子が成長した暁には,預言者になるのだろうか,それとも銀行強盗だろうかと思ったものです。どちらにせよ世に足跡を残すであろうと思いました。

それから,タナーはひどく体調を崩してしまいました。それからの3年間,タナーの命を救うため,2度の骨髄移植を含む,思い切った処置と現代医療が併せて施されました。この骨髄移植の間にタナーは肺炎にかかり,10週間人工呼吸器をつけたまま,意識不明の状態で過ごすのを余儀なくされました。奇跡的に,短い間帰宅することができたのですが,それからまたがんが再発したのです。

タナーが亡くなる少し前,がんが骨に転移していたため,強い痛み止めを使っても痛みは消えず,起き上がるのがやっとの状態でした。ある日曜の朝,家族が教会に向かう前に,母親のカレンが様子を見るためにタナーの部屋に入ると,タナーがどうにか服を着替え,ベッドの端に座り,苦しげにシャツのボタンと格闘しているのを見てカレンは驚きました。カレンは息子のそばに座り,こう言いました。「タナー,ほんとうに教会に行っても大丈夫なの?今日は家で休んでいたほうがいいんじゃない?」

タナーは床をじっと見つめていました。タナーは執事で,定員会の一員で,ある割り当てを受けていたのです。

「今日は聖餐を配ることになってるんだ。」

「きっとほかの子が代わってくれるわ。」

タナーは言いました。「うん。でもね,聖餐を配るとき,みんなからどう見られているか分かるんだ。それがみんなの役に立つと思う。」

カレンはタナーのワイシャツのボタンをかけネクタイを締めるのを手伝い,二人は車で教会に向かいました。明らかに,何か重要なことが起きていたのです。

わたしは前の集会から教会に来ていたので,タナーが執事の列に座っているのを見て驚きました。カレンはタナーがその場にいる理由と,タナーが「それがみんなの役に立つ」と言ったことを静かに話してくれました。

そこでわたしは,執事が聖餐の台に向かうのを見守りました。祭司からパンのトレイを渡されるとき,タナーは別の執事にそっともたれかかっていました。タナーは指定された場所まで足を引きずっていくと,体を安定させるために座席の端をつかみながら,聖餐を配りました。

礼拝堂内の皆の視線がタナーに注がれ,皆が苦戦しながらこの単純な役割を果たすタナーを見て心が打たれている様子でした。 たどたどしい足取りで列から列へと厳かに移動していく中で,タナ―は静かな説教を説いていたのです。髪のない頭に汗し,執事として救い主を代表していました。かつては何事にも屈しなかった,この執事の体もまた,いささか傷つき,砕かれ,仕えるために苦しむことをいとわず,救い主の贖いの象徴をわたしたちの人生に刻み込んだのです。

タナーの個人的な聖別されたささげものを目にしたことで,わたしたちは聖餐について,すなわち救い主について,また,執事,教師,祭司について,これまでとは違った考え方をするようになりました。

わたしは,その朝,奉仕するようにという静かな細い呼びかけに,勇敢にこたえるようにと駆り立てた,この若い執事の人生に起こった言葉なき奇跡について,また神の大隊に加わり,救いと昇栄の業に携わるようにとの預言者の呼びかけにこたえようと自らを駆り立てる,成長を続けるあらゆる青少年の力と能力について,思いめぐらします。

執事が聖餐のトレイを手にする度に,わたしたちは最後の晩餐,ゲツセマネ,カルバリ,園の墓に関する神聖な話を思い起こします。救い主が使徒たちに,「わたしを記念するため,このように行いなさい」1と言われたとき,主は時代を超えてわたしたち一人一人にも語りかけておられました。主は,未来の執事,教師,祭司たちが主の象徴を示し,主の贖いの賜物を受け入れるよう主の子供たちを招くときに,主がもたらされる奇跡について語っておられたのです。

聖餐の儀式の象徴はすべて,わたしたちの意識をその賜物に向かわせるものです。わたしたちは,主がかつて割かれたパンについて,また,今はわたしたちの前にいる祭司たちが割いているパンについて思いをはせます。聖餐の祈りの言葉が,若い祭司の口からわたしたちの心と天へ厳かに届けられ,キリストの救いの力そのものにわたしたちを結びつける聖約を新たにするとき,わたしたちは当時の,また現在の聖別された液体の意味について考えます。また,執事が神聖な象徴をわたしたちのもとに携えてきて,イエスがそこにおられたら立たれるであろう場所に立っているとき,わたしたちはそこで,主がわたしたちの重荷や苦痛を取り除くよう申し出ておられることの意味について考えることができます。

幸いなことに,若い男性と女性は,救い主に仕えることに喜びと目的を見いだすために,病を患う必要はありません。

ベドナー長老は,成長し,宣教師のようになるには,宣教師がしていることを行うべきであり,その後「教えに教え,訓戒に訓戒を加えることによって,……〔わたしたちは〕救い主が期待しておられるような宣教師に次第に近づいていくことができる」と提案しています。2

同様に,「イエス様のように〔なりたい〕」3と願うなら,イエスがなさることを行わなければなりません。主は驚くべき一文の中で,御自身がなさることを説明し,こう述べておられます。「見よ,人の不死不滅と永遠の命をもたらすこと,これがわたしの業であり,わたしの栄光である。」4

救い主の使命とは,御父の子供たちを救うことにより,常に,また永遠に御父に仕えることです。

そして,この世でキリストに喜びを見いだす最も確実な方法は,キリストとともに人々を助けることです。

これこそが,「子供と青少年」プログラムの起点となる簡潔な真理です。

「子供と青少年」の活動と「子供と青少年」の教えはすべて,若人が主の救いと昇栄の業に主とともに携わることにより,さらにイエスに似た者となることができるように助けることを目的としています。

「子供と青少年」は,初等協会の子供たちが弟子となるよう成長し,信仰を持った視野で幸福への道を理解できるよう助けるものです。子供たちはまた,キリストのような奉仕をすることによって人々を助ける喜びを感じることのできる,バプテスマを受け,聖霊の賜物を受け,やがて定員会や若い女性のクラスに加わるという,聖約の道における通過点や道しるべを待ち望み,憧れを抱くようになります。また,大小様々な目標を設定し,さらに救い主に似た者となるにつれ,生活のバランスが取れるようになります。FSYカンファレンス,機関誌,『フレンド』,「福音実践」アプリは,青少年がキリストに喜びを見いだすことに集中するうえで助けとなるでしょう。青少年は限定神殿推薦状を持つことで得られる祝福を待ち望むようになり,神殿・家族歴史活動をを通して得られる祝福を追い求めるときに聖霊の影響力を通してエリヤの霊を感じるようになるでしょう。また,祝福師の祝福から導きを受けるようになり,やがて,神殿に参入して力を授けられ,喜びを見いだし,何があろうと,家族と永遠に結ばれる自らの姿を目の当たりにするでしょう。

パンデミックの逆風と災難の中,この新しい「子供と青少年」プログラムの可能性を十分に発揮することは未だ実現しておらず,急務となっています。青少年は,この世が正されるまで,救い主を知るのを待つことはできません。今も,自分の真の姿や救い主について知っていたら下さないであろう決断をしている青少年がいます。

ですから,運命を決する訓練における,神の大隊からの緊急の呼びかけは,「総員出動!」なのです。

母親と父親の皆さん,皆さんの息子たちがバッジやピンといった重要度の劣ることのため熱心に取り組んでいたころにも勝って,これまで無かったほどに,今,彼らを熱心にサポートする必要があります。母親と父親,神権指導者と若い女性指導者の皆さん,青少年が悩み苦しんでいるのなら,「子供と青少年」は彼らを救い主のもとに導く助けとなり,救い主が彼らに平安をもたらしてくださることでしょう。5

定員会およびクラス会長会の皆さん,立ち上がって,主の業において自分が担うべき役割を果たしてください。

ビショップの皆さん,皆さんの鍵を定員会会長の鍵と結びつけてください。そうすれば,皆さんの定員会,ひいてはワードは永遠に変わるでしょう。

次世代を担う皆さん,皆さんは神の愛する息子,娘であり,神は皆さんのなすべき業を備えておられることを証します。わたしはそのことを知っています。

皆さんが,心と,勢力と,思いと,力を尽くして自らの召しを最大限に果たし,人々を祝福するために働くなら,皆さんは神を愛し,聖約を守り,主の神権に信頼を置くようになるでしょう。まずは自分の家庭から始めましょう。

皆さんが,この時期に適したいっそうの活力をもって,日々奉仕し,信仰を行使し,悔い改め,向上するために,また神殿の祝福とイエス・キリストの福音によってのみもたらされる永続する喜びを受ける資格を得るために,励むことができるよう祈っています。イエス・キリストの真の弟子になることにより,皆さんが最終的になり得ると約束されている,勤勉な宣教師,忠実な夫や妻,愛に満ちた父親や母親になる備えができるよう祈っています。

皆さんが,キリストのもとに来て主の贖いの祝福を受けるようすべての人を招くことにより,救い主の再臨に世を備える助けをすることができますように。イエス・キリストの御名により,アーメン。

  1. ルカ22:19

  2. デビッド・A・ベドナー「宣教師になる『リアホナ』2005年11月号,46

  3. 「わたしもなりたい イエス様のように言葉,行いで 愛をしめそう」(「イエス様のように」『子供の歌集』40-41)

  4. モーセ1:39

  5. これまでの歴史の中で,若い人々の成長を助けてきた雄々しく献身的なご両親と指導者の方々に個人的な感謝の想いをお伝えします。これまでのプログラムにおける活動や達成されてきた事柄があっての「子供と青少年」プログラムであることを認識しています。