「赦すことができるでしょうか」「被害者への支援」
「赦すことができるでしょうか」被害者への支援
赦すことができるでしょうか
赦しは,救い主イエス・キリストの力を通してのみ可能です。あなたがこれまでずっと虐待の被害者であったとしたら,赦すことなどおよそできないように感じるかもしれません。虐待による苦痛がもたらす不健全な考えや感情は,強烈なものになる場合があります。そうした考えや感情から解放されることは決してないように,あなたには感じられるかもしれません。また虐待のことは単に「赦し,忘れる」ようにというプレッシャーを感じたり,なかなか赦せないでいる自分に対して罪悪感を抱いたりするかもしれません。
虐待によって生じる肉体的,情緒的,精神的,霊的な損傷の度合いは様々です。あなたがどれほど苦痛を感じているかは,あなたのほかだれにも分かりません。どのような損傷であれ,癒しには時間がかかります。紙による切り傷よりも骨折した腕の方がさらに長い期間の治療が必要となるように,より深い傷を癒すためには,さらに多くの時間が必要となります。肉体的,情緒的,精神的,あるいは霊的であれ,その傷が深ければ深いほど,癒しにかかる時間もさらに長くなるものなのです。
赦しには時間がかかる場合がある
癒しの過程において,あなたは主の助けを受けて,自分を傷つけた人を赦し始めることができます。すぐさま赦すことはできないかもしれません。赦す能力は,わたしたちの救い主イエス・キリストからもたらされます。救い主は贖罪を通して,あなたが今感じている大きな苦痛を御自身に受けてくださったからです(アルマ7:11-12)。こうした苦痛が及ぼす影響から,あなたは解き放たれることができます。その苦悩がどれほど深くても,あるいは癒しにどれほど長く時間がかかろうとも,主は皆さんを愛しておられます。
ジェームズ・E・ファウスト管長はこう述べています。「赦すということは必ずしも,……即座にできるものではありません。……多くの人にとって,痛みと喪失感を乗り越えるためには時間が必要です。また,赦しを先送りする理由はどこにでも見つかります。加害者が悔い改めるまでは赦さないという人もいるでしょう。しかし,赦しを引き延ばすことで,わたしたちは得られるはずの平安と幸福を失ってしまいます。」(「赦しのもたらす癒しの力」『リアホナ』2007年5月号,68)
赦しがもたらすもの
赦しは,わたしたちが今一度平安と喜びをもって生活する助けになります。
ファウスト管長はシドニー・サイモン博士の次のような言葉を引用しています。「赦しとは,これまで恨みを持ち,怒りを抱き,いまだ癒されない傷をかばうために費やしていたエネルギーを解き放つこと,そしてそのエネルギーをより効果的に利用することを指す。赦すとは,常に自分に備わっていた強さを再発見することであり,周りの人と自分自身をどこまでも理解し受け入れるだけの度量を手に入れることである。」「赦しのもたらす癒しの力」,68)
赦しとは, かつて経験した不快な出来事を忘れることでも,そうした出来事が起こらなかったかのように振る舞うことでもありません。虐待行為が続くままにしておくという意味でもなければ,すべての関係が和解に至ることが可能であるという意味でもありません。また,虐待をする者が自分の行いに対して責任を問われることがないという意味でもありません。赦しが意味するところは,救い主はあなたを解き放つことがおできになるということなのです。
十二使徒定員会のジェフリー・R・ホランド長老は,深刻な罪の赦しとはどのようなものかについて教えています。ホランド長老によると,「現在苦悩の中にいる人にとって,〔救い主〕がおっしゃらなかったことに注目するのは大切なことです。主は,『ほかの人のせいでつらい経験をしたからといって,それは真の苦しみやほんとうの悲しみを味わっているわけではない』とは言っておられず,『完全に赦すためには,再度不快な人間関係に戻ったり,あるいは暴力的,破壊的な環境に戻ったりしなければならない』とも言っておられません。しかし,どんなにひどく傷つくことがあろうとも,その苦しみを乗り越えることができるのは,わたしたちが真の癒しの道に足を踏み入れたときだけです。その道とは,『わたしに従ってきなさい』とわたしたち一人一人に呼びかけるナザレのイエスが歩まれた,赦しの道です。」(「和解の務め」『リアホナ』2018年11月号,79参照)
自分自身を赦す
あなたは虐待のせいで,自分自身を赦す必要があると思っているかもしれません。ほかの人々の行いに対してあなたが責めを負うことはないことを心に留めておいてください(「もし虐待が自分のせいだと感じたらどうしますか」参照)。
あなたはまた,虐待による痛みに対処しようして取った自分の良くない選択のせいで,自分自身を赦せずに苦しんでいるかもしれません。自分自身に思いやりを持つ術を学ぶのは大切なことです。主は「人の子らの状態に応じて憐れみを施す」と言っておられます(教義と聖約46:15)。あなたが必要としているもの,またどうすればあなたを助けることができるかを主は御存じです。
地域社会および教会のリソース
(下記のリソースの中には,末日聖徒イエス・キリスト教会によって作成,維持,管理されていないものもあります。これらの資料は,追加のリソースとして役立てるように意図されていますが,教会の教義や教えと一致しない内容について,教会が是認するものではありません〔一部のリソースは英語のみ〕。)
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“Faith to Forgive Grievous Harms: Accepting the Atonement as Restitution,” James R. Rasband (Brigham Young University devotional, Oct. 23, 2012)
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「 贖罪と現世の旅」デビッド・A・べドナー『リアホナ』2012年4月号
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「和解の務め」ジェフリー・R・ホランド 『リアホナ』2018年11月号
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“Forgiveness,” Steve Gilliland, Ensign, Aug. 2004
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“Forgiving Others: Misconceptions and Tips,” Elizabeth Lloyd Lund, Ensign, Apr. 2018
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“Friends Again at Last: Justice and Mercy in the Warming Glow of Charity,” Lance B. Wickman, Ensign, June 2000
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“Perfection Pending,” Russell M. Nelson, Ensign, Nov. 1995
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“Forgiveness – Letting go of grudges and bitterness,” Mayo Clinic