「第10章:イエス・キリストを信じる信仰を築くよう教える」『わたしの福音を宣べ伝えなさい—イエス・キリストの福音を分かち合うためのガイド』
「第10章」『わたしの福音を宣べ伝えなさい』
第10章
イエス・キリストを信じる信仰を築くよう教える
あなたは,あなたを受け入れるできるかぎり多くの人々に,回復されたイエス・キリストの福音を教えるために召されています。あなたのすべての行いの中心にあるのは,教えることです。主の助けに頼るとき,主は次のように約束してくださっています。
「そして,あなたがたを受け入れる者がだれであろうと,わたしもそこにいるであろう。わたしはあなたがたに先立って行こう。わたしはあなたがたの右におり,また左にいる。わたしの御霊はあなたがたの心の中にある。また,わたしの天使たちはあなたがたの周囲にいて,あなたがたを支えるであろう。」(教義と聖約84:88)
教える能力を高めるために,祈り,研究し,練習してください。本章および本書のほかの章で述べられている原則を応用しましょう。人々を祝福し,神の栄光を現すことができるように,教える賜物を熱心に求めてください。熱心に主を求め,主の言葉を学ぶとき,主はあなたが力と権能をもって教えられるよう助けてくださいます。
救い主が教えられたように教えるよう努める
地上での務めの間,イエスは「巡り歩いて,……教え,……宣べ伝え,……おいやしに」(マタイ4:23)なりました。会堂,家庭,路上など,様々な場所で教えられました。大きな集まりでも,個人的な会話においても教えられました。主の最も力強いやり取りの幾つかは,非常に短く,または普通ではない状況で行われました。主は言葉だけでなく,行いによっても教えられました。
救い主は一人一人を,その人独自の必要に応じて教えられました。例えば,中風の男性のために務めを行ったときには,彼の罪を赦し,彼を癒されました(マルコ2:1-12参照)。姦淫を犯した女性にミニスタリングをしたときには,彼女を守り,もう罪を犯さないように勧められました(ヨハネ8:2-11参照)。永遠の命を望む裕福な男性と話したときには,御自分に従うようにという招きをその若者が拒んだにもかかわらず,「彼〔を〕いつくしんで」(マルコ10:21。17-21節も参照)語られました。
救い主がどのように教えられたかを学ぶことによって,あなたの教え方を改善することができます。例えば,主は御父と,御自分が教えた人々を愛されました。よく祈られました。聖文から教えられました。霊的に備えられました。霊感による質問をされました。信仰をもって行動するよう人々を招かれました。福音の原則を日々の生活に当てはめられました。
救い主のように教えるよう努めることは,生涯にわたる探求です。それは主に従うときに,教えに教えとして与えられるでしょう(2ニーファイ28:30;エテル12:41参照)。
「わたしの言葉を得るように努めなさい」
イエス・キリストの福音を教えるためには,その基本的な教義と原則を知っている必要があります。また,霊的な知識と福音の真理についての確認も必要です。主は,「わたしの言葉を告げようとしないで,まずわたしの言葉を得るように努めなさい」と言っておられます。
主の言葉を「得る」とは,それを研究し,心に深くしみ込ませるということです。このように努力するとき,主は次のことを約束しておられます。「そうすればその後,あなたの舌は緩められる。それから望むならば,あなたはわたしの御霊とわたしの言葉,すなわち人々を確信に導く神の力を受けるであろう。」(教義と聖約11:21)
主はまた,「絶えず命の言葉をあなたがたの心の中に大切に蓄える」(教義と聖約84:85)ように命じておられます。主の言葉を大切に蓄えることで,あなたの知識は増し,証は強まります。福音を教えたいというあなたの望みと能力も増すでしょう(モルモン書ヤコブ4:6-7;アルマ32:27-42;36:26;37:8-9参照)。
聖文と生ける預言者の言葉,そして第3章にあるレッスンを通して,祈りの気持ちで主の言葉を得て,大切に蓄えてください。
御霊によって教える
イエス・キリストの福音は「すべて信じる者に,救を得させる神の力」(ローマ1:16)です。ですから,福音の回復のメッセージは神の力,すなわち聖霊の力によって教えなければなりません。
教えるスキルを伸ばすことは大切です。また,自分が教える教義と原則を学ぶことも大切です。しかし,霊的な真理を教えるとき,おもに自分自身の能力や知識に頼ってはいけません。
霊的な真理は聖霊の力によって教えられます。主は次のように言っておられます。「御霊は信仰の祈りによってあなたがたに与えられるであろう。そして,御霊を受けなければ,あなたがたは教えてはならない。」(教義と聖約42:14。50:13-14,17-22も参照)
御霊によって教えるとはどういうことか
御霊によって教えるとき,あなたは教えとともに聖霊の力があるように祈ります。また,人々が御霊によって真理を受け入れることができるように祈ります。人々が説得されて幾つかの真理を受け入れるとしても,改宗するためには,御霊による経験をする必要があります(教義と聖約8:2-3参照)。
御霊が教えられるようにするために,御霊に使われる者となれるよう,自分自身を備えてください。聖霊を,教えるときのあなたの同僚であると考えてください。
御霊の助けによって言うべきことが分かると信頼してください。御霊はあなたが学んだ教義を思い起こさせてくれます。相手の必要に応じて,レッスンの内容を計画し,調整するのを助けてくれます。
御霊によって教えるとき,御霊はあなたのメッセージを人々の心に伝えてくれます。証を述べるとき,あなたのメッセージを確認してくれます。あなたと,あなたが教える事柄を御霊によって受ける人々は,教化され,互いに理解し合い,ともに喜びます(2ニーファイ33:1;教義と聖約50:13-22参照)。
「この業において最も大切な要素は御霊です。御霊によってあなたの召しを尊んで大いなるものとするならば,あなたは伝道地において,主に代わって奇跡を行うことができます。御霊の助けがなければ,あなたにどれほど多くの才能や能力があったとしても,決して成功することはできません。」(Ezra Taft Benson, seminar for new mission presidents, June 25, 1986)
召しに伴う約束
あなたは,「御霊,すなわち真理を教えるために遣わされた慰め主によって,わたしの福音を宣べ伝える」(教義と聖約50:14)ように召され,任命されています。時には,緊張したり,自分は不十分だと感じたりすることがあるかもしれません。十分な知識がないと心配したり,経験が足りないと感じたりするかもしれません。
しかし,あなたのことを完全に御存じである天の御父は,あなたがイエス・キリストに献身的に従う者としてささげることができるもののゆえにあなたを召されました。主はあなたを見放されることはありません。御霊があなたの能力を大いなるものとし,受け入れる態度を持つ人々に真理を教えてくれると信頼しましょう。
ニール・L・アンダーセン長老は次のように述べています。「伝道に出るという勧めについて深く考えていたとき,わたしは自分が不十分で準備ができていないと感じました。こう祈ったことを覚えています。『天のお父様,わたしはほとんど知識もありません,どうして伝道に出ることができるでしょうか。』わたしは教会を信じていましたが,自分の霊的な知識はとても乏しいものだと感じていました。祈っていると,このような気持ちを抱きました。『あなたはすべてを知っているわけではありません。しかし,あなたは十分に知っています。』この確信は,わたしに宣教師となる勇気を与えてくれました。」(「あなたは十分に知っています」『リアホナ』2008年11月号,13)
教え始める際に御霊を招く
人々との最初の数分間は非常に重要です。誠実さと敬意をもって接してください。心からの関心と愛を示しましょう。彼らの信頼を得られるよう努めてください。信頼を得る一つの方法は,人々があなたとともに御霊を感じることです。
彼らの背景や,あなたの訪問に対して彼らが期待していることを理解するために,幾つかの簡単な質問をしましょう。注意深く耳を傾けてください。
始める前に,その場にいる全員がレッスンに参加するよう招きます。主の御霊が感じられるように,気を散らすものを取り除くよう勧めます。
毎回のレッスンは祈りによって始め,祈りによって終えることを説明します。始めの祈りをすることを申し出ます。あなたの教える人々に生活のあらゆる面で神の祝福があるように,簡潔に,かつ,心から祈りましょう。レッスンの内容が真実であることを彼らが感じられるよう祈ってください。「義人の祈は,大いに力があり,効果のあるものである」(ヤコブの手紙5:16)ことを忘れないでください。
聖霊の持つ改心を促す力を信じてください。御霊に導かれるままに,レッスンを始めるに当たって以下のような思いを話すとよいでしょう:
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神は愛にあふれたわたしたちの天の御父です。わたしたちは皆,兄弟姉妹です。わたしたちに喜びを経験してほしいと思っておられます。
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わたしたちは皆,試練や困難を経験します。あなたがどんな経験をしているときでも,イエス・キリストと主の教えはあなたを助けてくださいます。あなたが平安と希望,癒し,幸福を見いだせるよう助けてくださいます。人生の試練に対してより強くなれるよう,イエスは助けてくださいます。
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わたしたちは皆,過ちを犯し,それは罪悪感と羞恥心,後悔をもたらします。悔い改めて神の赦しを求めるときにのみ,これらの感情は消え去ります。イエス・キリストの贖罪を通してのみ,わたしたちは自分の罪から完全に癒されることができるのです。
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メッセージが真実であることを御自分で知っていただくために,わたしたちは案内役を務めます。聖文を読む,祈る,教会に出席するなど,幾つかのことを行うようにお招きします。わたしたちの役割は,あなたがこれらの招きに基づいて行動するのを助け,あなたが受けることのできる祝福について説明することです。どうぞ質問をしてください。
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わたしたちは自分たちが知っていることを分かち合うよう,神の預言者から召されています。わたしたちはメッセージが真実であることを知っています。
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わたしたちは神と聖約を,つまり特別な約束を交わす方法をお教えします。これらの聖約は,あなたを神とつなぎ,あなたが喜びと強さと特別な約束を神から受けることを可能にします。
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あなたは生活において変化を起こし,イエス・キリストと主の教えに従う方法を学ぶことができるでしょう。イエス・キリストの最も重要な教えの一つであり,わたしたちが最初に交わす聖約は,主の模範に従って正当な権能によってバプテスマを受けることです(ヨハネ3:5;教義と聖約22章参照)。
レッスンの前に,これから教える事柄の簡単なまとめを説明してください。その内容がどのように自分に関係があるかが分かるよう,人々を助けてください。例えば,次のように言うことができます。「わたしたちはイエス・キリストが今日地上に御自分の教会を設け,わたしたちを導くために生ける預言者を召しておられるというメッセージをお伝えするために来ました。」またはこう言ってもよいでしょう。「わたしたちは神があなたを愛し,あなたの幸福のために計画を用意しておられることを,あなたに知っていただくために来ました。」
イエス・キリストの福音を受け入れ,福音に従って生活することは,すべての人にとって益となります。天の御父はあなたが見つけた人々を,貴重な霊的な準備をもって祝福してこられたかもしれません(アルマ16:16-17参照)。
最初の訪問で御霊を招き,真理を分かち合うことによって,あなたが主の僕であることを人々に知ってもらうことができます。
聖文を用いる
回復されたイエス・キリストの福音を教える際の基本となる資料は,教会の標準聖典です。レッスンの基盤として聖文を用いることが大切な理由はたくさんあります。例えば,次のようなことが挙げられます:
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聖文はあなたが教えるときに聖霊を招きます(ルカ24:13-32参照)。
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聖文はほかのどのようなことよりも民の心に力強い影響を及ぼします(アルマ31:5参照)。
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聖文は人の心の奥底にある問いについて言及しています(第5章参照。2ニーファイ32:3;モルモン書ヤコブ2:8も参照)。
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聖文はあなたの教えに権威と信頼性を与えます。
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主と主の預言者がわたしたちにそうするよう言っておられます(教義と聖約42:12,56-58;71:1参照)。
教える際に聖文を用いることによって,人々が自分で聖文を研究し始めるきっかけを与えることができます。あなたの聖文への愛が明らかであれば,人々の研究の励みとなります。聖文の研究がどのようにして福音を学び,神の愛を感じる助けとなるかを示してください。疑問への答えを見つけ,導きと強さを得るのを聖文がどのように助けてくれるか,例を挙げてください。
効果的に聖文から教えることができるように,聖文の研究に献身的に取り組んでください(第2章参照)。聖文から教える能力は,あなたが個人で,また同僚とともに,毎日聖文研究を重ねるにつれて高まっていきます。
聖文(特にモルモン書)の研究を通じて,人々がイエス・キリストを信じる信仰を育むのを助けてください。以下の提案を参考にしてください:
聖句を紹介する
聖句の背景を短く説明します。以下は聖句を紹介する方法の幾つかの例です:
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「ジョセフ・スミスの歴史の中で,ジョセフは祈るために森へ入ったときの出来事について,自らの言葉で述べています。ジョセフはこう言っています。『わたしは……光の柱を見た。……』」
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「この聖句で,預言者アルマは貧しい人々に,神の言葉を信じる信仰を働かせるよう教えています。アルマは神の言葉を,わたしたちの心に植えることのできる種にたとえています。……節から読んでいただけますか。」
聖句を読む
あなたか教えている相手が,聖句を声に出して読みます。読むことがあまり得意でない人には,配慮が必要です。聖句が難解であれば,一緒に読んで,必要に応じて説明します。難しい言葉については意味を説明します。あるいは,教えている相手にはより簡単な聖句を読んでもらいます。聖句の中から特定の事柄を見つけるように招きます。
聖句を応用する
ニーファイは次のように述べています。「わたしは……すべての聖文を自分たちに当てはめ〔た。〕それが自分たちの利益となり,知識となるようにするためであった。」(1ニーファイ19:23)「当てはめる」とは,聖文を自分の生活に応用することです。
物語や原則が教えている相手にとって個人的にどのように関係しているかを示すことによって,聖句をあなたの教えている人々に当てはめてください。以下はその例です:
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「あなたのように,アルマの民は重荷を負っていました。それは耐えられないほどの重荷でした。しかし信仰を働かせて祈ったとき,神は彼らを強めて,彼らが困難に耐えられるようにされました。そして,彼らを試練から救い出されました。神はこれらの人々になさったのと同じように,あなたが……するときに,試練にあってあなたを助けてくださると知っています。」(モーサヤ24章参照)
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「アルマがモルモンの泉で人々に与えた教えは,今日のわたしたちにも当てはまるものです。佐藤さん,あなたは進んで……なさいますか。」(モーサヤ18章参照)
自分で聖文を「当てはめる」方法を人々に教えてください。聖句を個人の状況に応用する方法を見いだすことで,神の言葉を生活に取り入れ,その力を経験することができます。
自分で読むよう人々を招き,助ける
あなたが教えている人々は,真理についての証を得るために,聖文,特にモルモン書を読む必要があります。レッスンの中で聖文を効果的に用いることによって,人々が自ら聖文を研究し始めるきっかけを与えることができます。
訪問を終える度に,課題として特定の章や節を読むよう提案してください。読むときに考えるとよい質問を幾つか提案してください。毎日個人の聖文研究と家族の聖文研究の両方を行うよう勧めてください。会員に,次回のレッスンまでの間に一緒に読んでくれるよう頼んでもよいでしょう。
次回のレッスンを始める前に,読むように招いた箇所について話し合うことによってフォローアップします。必要に応じて,彼らがその箇所を理解し,「当てはめる」ことができるように助けてください。思いや疑問を記録するよう勧めましょう。
人々が聖文(特にモルモン書)を読み,理解し,応用するのを助けるとき,彼らは神の言葉について霊的な経験をするようになります。さらに自分で読み,聖文を生活の重要な一部とすることができるようになります。
人々が聖文を利用できるよう助ける
聖文と生ける預言者の言葉は,かつてなかったほど多くの方法で,そして多くの言語で利用することができます。あなたが教える人々にとって,どのような印刷版およびデジタル版の選択肢があるかを把握してください。人々が自分の必要と好みに合った方法で聖文を利用できるよう助けてください。以下のことを検討してください:
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どの言語で聖文を読んだり聞いたりしたいかを人々に尋ねます。
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読むのが難しい人や,読んだことを理解するのが難しい人は,一緒に声に出して読んだり,オーディオ版を聞いたりするとよいかもしれません。オーディオ版は教会のアプリやウェブサイトで無料で利用することができます。
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その人がデジタル機器を持っている場合には,機器を使って聖文(特にモルモン書)を利用できるよう助けます。「モルモン書」アプリと「福音ライブラリー」は無料で利用でき,簡単に共有することができます。
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携帯メールやチャット,電子メールを使っている場合には,聖句のリンクや画像を送りましょう。ビデオチャットでレッスンを行う場合は,一緒に聖句を読めるよう,画面を共有するとよいでしょう。
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人々が生ける預言者の言葉を自分で読めるよう助けてください。
証を分かち合う
証とは,聖霊により与えられる霊的な証拠です。証を述べるとは,福音の真理について知っていることや信じていることを,簡潔かつ率直に宣言することです。証を述べるなら,聖文から教えた真理について,個人的な証言を付け加えることになります。
証を述べることは,御霊を招き,人々がその影響を感じるのを助ける力強い方法です。聖霊の使命の一つは,天の御父とイエス・キリストについて証することです。聖霊はしばしば,あなたが証を述べるときにあなたとともにいることによって,この使命を果たされます。
証の力強さは,雄弁さや声の大きさではなく,あなたが心にどれほど強い確信を抱き,また誠実であるかにかかっています。証するときに急いだり,芝居がかった表現をしたりしないよう注意してください。あなたが教えた事柄が真実であると聖霊が証してくださるのを感じる機会を人々に与えてください。
あなたの証は,「イエス・キリストはわたしたちの救い主,贖い主です」や「わたしはモルモン書が真実であることを自分で知っています」といった簡潔なものかもしれません。その証をどのようにして得たかに関する経験を手短に述べてもよいでしょう。
教えるとき,レッスンの終わりだけでなく,促しを感じたときに証を分かち合ってください。同僚が教えているときは,同僚が教えた事柄に対して第二の証人となって,あなたの証を述べてください。
あなたが教えている原則に従うならば人生に祝福が注がれることについて,あなたの証を述べてください。その原則に従って生活することによって人生でどのような祝福を受けてきたかを話してください。心から証することで,聖霊が真理を確認されるのを感じられる環境が作り出されるでしょう。
相手の必要に合わせてレッスンを計画し,調整する
あなたが教える人はそれぞれ異なっています。その人の霊的な関心や必要,懸念を理解するよう努めてください。質問をして,注意深く耳を傾けてください。その人の必要を完全には理解できないかもしれませんが,天の御父はすべて御存じだということを覚えていてください。御父が聖霊を通してあなたを導かれるでしょう。
御霊にレッスンの順序を導いてもらう
御霊の導きに従って,レッスンを教える順序を決めてください。あなたは教えている相手の必要,疑問,状況に合わせて,柔軟に,最適な方法でレッスンを教えることができます。
時折,その人の必要や関心に対応するために,異なるレッスンからの原則を組み合わせてもよいでしょう。以下の3つの例を見てください。
ユキはあなたをオンラインで見つけ,教会に属している彼女の友人が喫煙や飲酒をしない理由を尋ねてきました。あなたは彼女に,第3章の以下のセクションを使って,戒めがもたらす祝福について教えることができます:
サミュエルはどこにも居場所がないと感じています。あなたは彼に,第3章の以下のセクションを使って,神の家族の一員としての彼のアイデンティティーと居場所について教えることができます:
タチアナは多くの宗教について学んできましたが,この教会が特別である理由を知りたいと思っています。あなたは彼女に,第3章の以下のセクションを使って,イエス・キリストの福音の回復について教えることができます:
天の御父は御自分の子供たちを御存じです。ですから,教える準備をする際にする判断については霊感を求めてください。何を教えるかを決めるとき,識別の賜物を祈り求めてください。もたらされる思いや気持ちに注意を払ってください。
人々が学んでいることを応用する時間を提供する
教えるときは,人々が学んでいることを応用する時間を提供します(3ニーファイ17:2-3参照)。彼らが決意したことを守れるようにサポートする適切な方法を探してください。祈ることや聖文を読むこと,教会に出席することといった,信仰の基礎を築く行いをするよう彼らを助けることに焦点を当ててください。そうすれば,彼らはさらなる決意ができるようになります。
計画し,教える際に,分かち合おうとしている新しい情報の量にも配慮する必要があります。あなたがレッスンを教えるおもな目的は,その人がイエス・キリストを信じる信仰を築き,それが悔い改めにつながるよう助けることです。あなたの目的は,どのくらいの量の情報を提供できるかを見ることではありません。
教える相手一人一人に合ったペースで教えましょう。質問をして,あなたの教えている事柄をその人がどのくらいよく学び,応用しているかを把握できるよう注意深く耳を傾けてください。
あなたが教える真理と聖霊の力の組み合わせによって,キリストを信じる信仰を築くような方法で選択の自由を行使するよう人々に影響を与えることができます。学んだことを応用することによって主を信じる信仰を働かせるとき,彼らは福音が真実であることを御霊によって知るようになります。
様々な教える機会を活用する
教える機会には,直接の訪問,ビデオチャット,電話,携帯メール,ソーシャルメディアなど,様々な形があります。
人々の時間を尊重する
レッスンはシンプルで短いものにしましょう。あなたが人々の時間や要求を尊重するなら,彼らがあなたと会う可能性は高くなります。あなたの訪問に対して彼らがどのくらいの時間を取ることができるか尋ねてください。対面レッスンでもオンラインレッスンでも,合意した時間どおりに会話を始め,終わらせます。地域によっては,電話やビデオチャットは高額になる可能性があることに注意してください。
一つのレッスンに含まれている原則を教えるために,複数回にわたって会う必要が出てくるでしょう。一般的に,訪問時間は30分を超えるべきではありません。少なくとも5分あれば教えることができます。相手の時間に合わせて,教え方を調整してください。
テクノロジーを賢く使う
あなたにはテクノロジーを使って人々を教える機会が多くあるかもしれません。電子的手段でやり取りする便利さとプライバシーを好む人々もいます。あなたが対面で訪問する人々も,テクノロジーを通じてさらにサポートを受けることができます。コミュニケーションのために利用可能なリソースについて話し合ってください。そしてフォローアップを行い,連絡を保ちましょう。一人一人の好みに基づいてやり取りを行うようにしましょう。
ビデオ通話のようなテクノロジーは,多忙な人や遠くに住む人を教える際に特に役立ちます。会員にとって,テクノロジーを経由してレッスンに参加する方が簡単なこともあります。
子供たちが学ぶのを助ける
地上での務めの間,救い主は弟子たちにこう言われました。「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。」(マルコ10:14)子供たちを教えるときは,彼らの必要に合わせて取り組み方やメッセージを調整します。子供たちになじみのある事柄について話し合うことで,彼らが福音を学ぶのを助けてください。子供たちがあなたの教えている事柄を理解しているか確認しましょう。
同僚と一致して教える
主は「あなたがたはわたしの御霊の力をもって出て行き,二人ずつ組んで……わたしの福音を宣べ伝え……なければならない」(教義と聖約42:6)と言っておられます。また主はあなたとあなたの同僚に,「一つとなりなさい」(教義と聖約38:27)と命じておられます。あなたと同僚が一致して働くなら,その教えはより力強く,興味深いものとなります。交代で,レッスンの短い部分を教えましょう。
同僚学習で,二人が一致して教えるための方法について話し合い,練習してください。オンラインで人々を教えるときにどのように一緒に働くか,準備をしてください。第2章で示されているテクノロジーを使用するための保護策に従ってください。
同僚が教えているときは,同僚のために祈り,耳を傾け,そちらに視線を向けます。同僚が教えた真理に対して第二の証人となることにより,同僚を支持してください(アルマ12:1参照)。何かを言うように御霊の促しを受けたら,その印象に従ってください。
自分が教える人々に心からの関心を持ってください。彼らの話に耳を傾けてください。相手または自分が話しているときは,アイコンタクトを取ります。彼らの反応を注意深く観察し,霊的な促しに耳を傾けてください。
参加するよう会員を招く
あなたが働きかけている人々を教え,サポートするのを助けてもらえるよう,会員を招いてください。対面でもオンラインでも助けてもらうことができます。毎週の調整集会で,だれに助けてもらえるかについてワードの指導者と相談してください。
会員はレッスンやフェローシッピングに参加するとき,新たな洞察を提供し,友人としてのつながりを作ることができます。伝道活動の喜びを感じることでしょう。
レッスンを助けてくれるよう会員を招く
レッスンの前に,会員とともに,どのように協力するかについて計画します。携帯メールや短い電話によって,あなたが教える予定の内容,だれが祈るか,だれが会話をリードするか,そのほかの詳細について確認するとよいでしょう。
レッスンに同席する会員のおもな役割は,心からの証を述べ,個人の経験を短く分かち合い,レッスンを受けている人々との関係を育むことです。レッスンで採り上げる特定の原則を会員がどのように学び,受け入れ,実践することができたか話してもらうとよいでしょう。改宗者の会員であれば,どのようにして教会に加わる決意をしたかを分かち合ってもらえるよう招きましょう。
会員がだれかをリフェローした場合には,リフェローされた人を教える時にその会員にレッスンに参加するようお願いしましょう。このような状況では,会員はより深くかかわってくれるでしょう。どのような形で参加したいかについて本人と話し合ってください。
会員とともに教えるときにテクノロジーを用いることがどのような点で適切かを検討してください。テクノロジーによって,会員は対面での訪問で求められるような時間を割かずに参加することができます。
毎週の調整集会で,ワードの指導者とともに,会員に可能なかぎり多くのレッスンに参加してもらうよう計画を立てます(第13章参照)。新会員に,レッスンの助けを依頼するとよいでしょう。
サポートしてくれるよう会員を招く
次回のレッスンまでの間も,会員は人々に貴重なサポートをすることができます。携帯メールでやり取りしたり,一緒に聖文を読んだり,人々を自宅や活動に招いたり,教会で一緒に座るよう招いたりすることができます。質問に答えたり,教会員としての生活がどのようなものかを示したりすることもできます。彼らはその人生経験や視点を通して,人々のことを,時として宣教師が彼らのことを理解するのとはまったく異なった形で理解することができます。
レッスンの訪問以外のときに,どのように協力して人々をサポートできるかについて会員と話し合いましょう。
理解できるように教える
イエス・キリストの福音を人々が理解できるように教えましょう。分かりやすく教えることができるように,聖文とレッスンを研究してください。分かりやすく教えることができるようになるほど,聖霊が真理について証してくださる機会も増えていきます。
教えたことについて人々が考える助けとなるような質問をしてください。それから耳を傾けて,彼らが内容を理解し,受け入れているかを確認してください。
理解できるように教えることには,語句や概念を説明することが含まれます。以下の方法によって,福音を教える能力を高めることができます:
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自分が使う言葉についてよく理解する。
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人々が理解できないかもしれない言葉の意味を説明する。
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「今ご説明したことをどのように理解したか,話していただけますか」や,「今お話ししたことを要約してみていただけますか」といった質問をする。
第3章にある教義を教える際,人々が理解できないかもしれない語句や概念をメモしておきます。『聖句ガイド』や「福音トピックス」など,「福音ライブラリー」にあるリソースを活用してこれらの意味を説明しましょう。
レッスンはシンプルで短いものにしましょう。イエス・キリストの福音に絶えず焦点を当て,基本的な教義と原則についての理解を育んでください。聖霊からもたらされる理解を求めるよう,人々を助けてください。この理解を得るにつれて,彼らは福音のメッセージを信じるようになっていきます。
質問する
救い主は,御自分が教えた真理について人々が考え,深く感じるよう働きかける質問をされました。主の質問は内省と決意を促すものでした。
良い質問は教えるうえで重要です。質問することで,人々の関心や懸念,疑問を理解することができるでしょう。良い質問は御霊を招き,人々が学ぶのを助けます。
霊感された質問をする
良い質問をするときは御霊の導きを求めてください。適切なときに適切な質問をすることは,人々が福音を学び,御霊を感じるための助けとなります。
霊感された質問をして心から耳を傾けることで,人々はより安心して率直に話し,気持ちを伝えてくれるようになります。これは証が強まっていくのに人々が気付く助けとなります。また,分からないことや懸念がある場合に,より気楽にあなたに質問できるようになります。
次の表は霊感された質問をすることについての幾つかの原則と具体例を示しています。
霊感された質問の原則と例
原則 |
例 |
御霊を感じる助けとなるような質問をする。 |
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シンプルで理解しやすい質問をする。 |
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人々があなたの教えている事柄について考える助けとなるような質問をする。 |
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あなたが教えている事柄に対する人々の理解度を知る助けとなる質問をする。 |
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人々が感じていることを話す助けとなるような質問をする。 |
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愛と気遣いを示す質問をする。 |
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人々が学んだ事柄を応用する助けとなるような質問をする。 |
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効果的でない質問や行き過ぎた質問を避ける
以下のような質問をしないように努めてください:
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答えが分かり切っている。
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答えを知らない場合にだれかが恥ずかしい思いをする。
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複数の概念を含んでいる。
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まだ教えていない教義に関連している。
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明確な目的がない。
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行き過ぎている。
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人々を詮索している,または人々をいらだたせ,気分を害する。
以下は,あまり効果的でない質問の例です:
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最初の預言者はだれでしたか。(相手は答えを知らない可能性がある。)
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体を清く保つことは,御霊を受けるために,また神の預言者に進んで従うことを表すために,どのような助けとなるでしょうか。(複数の概念を含んでいる。)
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神の戒めについて知ることは大切でしょうか。(はい・いいえで答えられ,答えは明白である。)
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神を近くに感じるために,日々の生活の中でどのようなことができるでしょうか。(「祈り」という具体的な答えを求める場合には曖昧な質問。)
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ノアの次の預言者はだれでしたか。(相手は答えを知らない可能性があり,あなたのメッセージにとって重要ではない。)
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わたしの言っていることが分かりますか。(相手は見下されていると感じる可能性がある。)
耳を傾ける
人々の話に注意して耳を傾けるなら,その人々をよく理解することができます。彼らは自分の考えや気持ちが大切にされていることが分かると,あなたの教えを受け入れようとする気持ちになり,個人的な経験を話し,決意を固めようとするものです。
耳を傾けることによって,レッスンを彼らの必要や関心に合わせて効果的に教える方法が分かるようになります。どの福音の真理が最も彼らの役に立つかが,よりよく理解できるようになります。
特に御霊のささやきに注意して耳を傾けてください。人々が自分の気持ちを話しているとき,聖霊があなたに考えやアイデアを与えてくださるかもしれません。また,御霊は人々が伝えようとしていることを理解するのも助けてくれます。
心からの思いやりをもって聞く
耳を傾けるには努力と心からの思いやりが必要です。人々が話している間,話の内容に集中するようにしましょう。自分の言うことを決めておこうとする傾向を避けてください。
ジェフリー・R・ホランド長老は次のように教えています。「話すよりもはるかに大切なのは聞くことでしょう。これらの人々は,バプテスマの統計のためにいる命なき存在ではありません。……この友人たちに,彼らが最も関心を持っていることについて尋ねてください。彼らが最も大切にしているもの,彼らが愛おしいと思っているものについて尋ねてください。それから,耳を傾けてください。適切であれば,恐れていることや切に望んでいること,生活の中で欠けていると感じているものについて尋ねてもよいかもしれません。お約束します。彼らの話を聞くうちに,皆さんが証を伝えたり,もっと分かち合ったりすることのできる福音の真理が,常に,浮き彫りになることでしょう。……わたしたちが愛をもって耳を傾けるなら,何を言うべきか悩む必要はありません。御霊,そして友人自らが,語るべき言葉を教えてくれることでしょう。」(「わたしの証人」『リアホナ』2001年7月号,15参照)
言葉によらないメッセージを観察する
人々はボディーランゲージを通してもコミュニケーションを取ります。人々の座り方,顔の表情,手のしぐさ,声の調子,目の動きに注意を払ってください。こうした言葉によらないメッセージを観察すれば,あなたが教えている人々の気持ちを理解する助けとなります。
また,あなた自身の身振りも意識しておきましょう。心から耳を傾けることによって,関心と熱意を伝えてください。
人々が考え,返答する時間を提供する
救い主はしばしば,人々が返答するのに時間を必要とするような質問をされました。あなたが質問をするとき,少し間を置いて,相手の人に考え,返答する機会を与えてください。沈黙を恐れないでください。人々は質問について考え,答えるために,または自分の気持ちを表現するために,時間を必要とする場合が多くあります。
質問をしたり,霊的な経験を分かち合ったりした後,あるいは人々が自分の気持ちをうまく表現できないでいるときには,少し間を取ります。あなたが次の言葉を話す前に,相手に考えをまとめる時間を提供してください。相手が話しているときに,話の腰を折るようなことをしてはいけません。
思いやりをもって返答する
相手が質問に答えたら,適切な場合はまず思いやりを示すことから始めてください。それによって,あなたがほんとうに相手を気にかけていることが示せます。結論を急いだり,即座に解決策を提示したり,すべての答えを知っているかのように振る舞ったりすることは控えてください。
人々の言っていることが理解できているか確認する
相手の言っていることを理解しようと努めるときには,あなたが理解できているか確かめるための質問をしてください。例えば,「つまり,あなたがおっしゃっているのはということですね」と尋ねたり,「わたしの理解が正しければ,あなたはと感じていらっしゃるのですね」と尋ねることができます。自分の理解に不安があれば,分からない部分を説明してもらうようにします。
難しいやり取りに対処する
あなたはおもに,イエス・キリストの福音を教えることによって人々を助けます。中には自分が多く話したいという人もいます。時々,人はただ自分の葛藤や気持ちに思いやりを持って耳を傾けてくれる人を必要としているだけのこともあります。会話を支配したり,議論をしたりしようとする人もいます。
このような状況に巧みに,愛を持って対処する方法を学んでください。相手の人が分かち合ってくれたことを採り上げるために,レッスンに変更を加えることができるかもしれません。または,彼らの懸念について別の機会に話し合いたいと丁寧に言う必要があるかもしれません。難しい状況でどのように返答すればよいか分かるよう,御霊が助けてくれます。
人々が気兼ねなくほんとうの気持ちを分かち合えるように助ける
恥ずかしさから,質問に対してほんとうの気持ちを伝える代わりに,あなたが求めているであろう答えを口にする人々もいます。気兼ねなく本音を話してもらえるような関係を築くよう努めてください。
人々を理解し,人々とつながることによって,彼らを助け,彼らの関心や必要を満たし,救い主の愛を伝えることができます。彼らに対して正直であり,宣教師としての適切な関係を保ち,敬意を示すことによって信頼関係を築いてください。
人々が疑問や懸念に対する答えを見つけるのを助ける
人々の疑問に対処し,彼らが自分の懸念を解決するのを助けるために熱心に取り組みましょう。ただし,すべての質問に答えることはあなたの責任ではありません。最終的には,人々は自分の疑問や懸念を自分で解決しなければなりません。
すべての疑問や懸念が完全に答えられるわけではないことも理解しましょう。答えが明確になるまでに時間がかかることもあります。まだ明らかにされていない答えもあるでしょう。福音の基本的で本質的な真理についての堅固な基を築くことに焦点を当てましょう。この基が,答えの出ない疑問や難しい疑問があるときに,あなたとあなたの教えている人々が忍耐と信仰を持って前進する助けとなります。
このセクションでは,疑問に答えることに関する原則の一部を紹介します。
懸念を理解する
あなたが教える事柄の一部は,人々にとって難しかったり,なじみのないものであったりするかもしれません。彼らが疑問や懸念を抱えている場合には,まず相手のことを明確に理解するよう努めてください。人々の懸念は氷山のようである場合があります。水面上に見えるのは,ほんの一部にすぎません。これらの懸念は複雑なものである場合があります。識別の賜物を祈り求め,どのように返答すればよいかについて御霊に従ってください。天の御父はすべての人の心と経験していること(氷山全体)を御存じであり,その人にとって最善のことが分かるようにあなたを助けてくださいます。
多くの場合,懸念となっているのは教義上のことよりも人間関係に関することです。例えば,教会に入ることで家族の反対を受けることを不安に思っている人々がいるでしょう。あるいは職場の友人から否定されるのを恐れているかもしれません。
質問をし,耳を傾けることで,懸念の源を理解するよう努めてください。懸念が生じているのは,回復が真実であるということについてその人が霊的な確認を得ていないからでしょうか。それとも,その人が福音の原則に従って生活する決意をしたくないと思っているからでしょうか。彼らの懸念の本質を知ることが,証と決意のどちらに焦点を当てたらよいかを知る助けとなります。
疑問に答える助けとして聖文,特にモルモン書を用いる
聖文の中にある真理がどのようにして自分の疑問に答え,懸念に対処する助けとなるかを人々に示してください(第5章の「モルモン書は人の心の奥底にある問いに答えてくれる」参照)。人々が聖文を研究し,応用することによって霊感を求めるとき,主の声を聞き,主に従う彼らの能力が高まります。主を信じる信仰が増します。信仰が増すことによって,証が強まり,悔い改め,バプテスマの儀式を受けるようになります。
「あるときは教義を知るために聖文を読みます。または,導きを得るために聖文を読むときもあります。心の中で質問を思い浮かべながら読むのですが,おおかたの場合,その質問は次のようなものです。『神はわたしに何をするように求めておられるのだろうか。』または『神はわたしに何を感じるように望んでおられるのだろうか。』そうすると,今までになかった,新しい発想や考えが浮かんできて,霊感と導きと,質問に対する答えを受けるのです。」(ヘンリー・B・アイリング「聖文研究について語る」『リアホナ』2005年7月号,8)
イエス・キリストの福音についてわたしたちが理解している事柄の多くは,預言者ジョセフ・スミスとその後継者たちに明らかにされてきたことに由来していると説明することは有益でしょう。ジョセフ・スミスが神の預言者であったという証を得ることで,福音の真実性に関する疑問を解決することができます。モルモン書を読み,この書物について祈ることは,この証を得るための欠かせない方法です。
人々がイエス・キリストを信じる信仰を強めることに焦点を当てるよう助けてください。モルモン書を読み,この書物について祈ることは,彼らの信仰を強めるための重要な方法です。
信仰をもって行動するよう人々を招く
回復された福音についての証を育み,強めるにつれて,人々は信仰の基に立って自分の疑問や懸念に対処できるようになっていきます。自分が信じている真理に基づいて信仰をもって行動するとき,福音のほかの真理についても証を得ることができるようになります。
以下は,信仰をもって行動する幾つかの方法です:
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霊感と導きを求めて度々真心から祈る。
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聖文,特にモルモン書を研究する。
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教会に出席する。
研究して祈るためのものを残していく
毎回,レッスンの訪問の最後に,人々が次回への準備として研究し,深く考え,祈るためのものを用意してください。次回のレッスンまでの間に読み,祈り,深く考えることで,彼らの生活に聖霊の影響を招き入れることができます。
モルモン書の特定の章を読むように人々を招くのもよいでしょう。または,「福音ライブラリー」などの教会のリソースを使って,疑問の答えを見つけたり,特定のトピックについて学んだり,ビデオを視聴したりするよう勧めることもできます。次回の訪問の際,それを最初に話題にすることができます。
短いレッスンを頻繁に行っている場合は特にそうですが,人々に課題を出しすぎることは避けてください。
依存症の人々を助ける
依存症を克服するのに苦労している人々を助ける方法として,彼らの苦しみについて愛をもって話し合い,彼らを支え,必要なリソースを紹介することができます。教会の依存症立ち直り支援グループに出席するよう勧めることもできるかもしれません。グループの集会は,対面またはオンラインで行われます(AddictionRecovery.ChurchofJesusChrist.org参照)。また,「福音ライブラリー」の「ライフヘルプ」にある「依存症」セクションのリソースを利用するよう勧めてください。
地元の教会指導者と会員も支援することができます。依存症を抱える人の中には,専門的な医療およびメンタルヘルスの治療を必要とする人もいるかもしれません。
依存症を克服しようと苦心している人々を支援するにはどうしたらよいか,以下の提案を参考にしてください:
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キリストのもとに行こうとする彼らの努力を支えてください。天の御父とイエス・キリストは,立ち直り,癒しを受けようとする彼らの努力を認め,高く評価しておられることを,彼らが理解できるように助けましょう。救い主と主の贖罪を通して強さが得られることを彼らに教えてください。主は善い行いをしたいという彼らの心の思いを完全に御存じです。
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彼らのために個人的に祈り,また一緒に祈ってください。必要に応じて,地元の神権指導者から神権の祝福を受けるよう勧めましょう。
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イエス・キリストの福音を教え続けてください。天の御父と救い主と聖霊は彼らを愛しておられ,彼らの成功を願っておられることを教えてください。
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定期的に教会に出席し,会員たちと友情を育むよう勧めてください。
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逆戻りしてしまったときは特に,前向きに励ましてください。
依存症の克服は難しく,逆戻りしてしまうこともあります。教会指導者と会員は,これに動じないようにするべきです。彼らを裁くのではなく,愛を示すべきです。
教会に出席しなくなった新会員は,かつての依存症に戻ってしまい,自分はふさわしくないと肩を落としてしまっているのかもしれません。すぐに訪問して励ましを与え,サポートすることにより,助けることができます。会員たちは言葉と行いにより,教会がキリストの愛を見いだせる場であることを示す必要があるのです(3ニーファイ18:32参照)。
キリスト教の背景を持たない人々を教える
あなたが教えている人々の中には,キリスト教の背景を持たない人や,天の御父とイエス・キリストを信じていない人もいるかもしれません。しかし,人々の多くは,自分にとっての神聖な信条や慣習,神聖な場所を持っているものです。彼らの宗教上の信条や伝統に敬意を払うことが大切です。
神がどのような御方であられるかを理解できるよう助ける
キリスト教の背景を持たない人々を教える際に,レッスンをどのように調整すればよいだろうかと悩むかもしれません。信仰を築く助けとなる原則は,すべての文化において同じです。神とイエス・キリストの神聖な使命について正しく理解できるよう人々を助けてください。これらの真理を学ぶのに最も良い方法は,自分自身で霊的な経験をすることです。そのような経験ができるよう助ける方法を以下に幾つか挙げます:
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神がわたしたちの天の御父であり,わたしたちを愛しておられることを教えます。わたしたちは神の子供です。そのことについての証を自ら求めるよう人々に働きかけてください。
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救いの計画について教えます。
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父なる神とイエス・キリストが預言者ジョセフ・スミスに御姿を現されたことを教えます。
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どのように天の御父の愛を感じているか,なぜイエス・キリストに従うことを選んでいるかなど,福音についての心からの証を述べます。
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あなたと一緒に,そして個人でも,簡単で心のこもった祈りをささげるよう働きかけます。
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あなたと一緒に,そして個人でも,毎日モルモン書を読むように働きかけます。
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教会に出席するよう招きます。
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自分がどのようにして天の御父とイエス・キリストを信じるようになったかについて説明してくれる教会員を紹介します。
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戒めを守るよう招きます。
ほとんどの人は,神とより深いつながりを築き,人生に目的と意味を見いだしたいと望んでいます。その人が,自分は愛にあふれた天の御父の子供であることと,御父が自分のために計画を用意しておられることを理解できるよう助けてください。例えば,まず以下のように言って始めるとよいでしょう:
神はわたしたちの天の御父であり,わたしたちを愛しておられます。わたしたちは神の子供です。生まれる前,わたしたちは神とともに住んでいました。わたしたちは皆神の子供なので,わたしたちは皆,兄弟姉妹です。神はわたしたちにみもとに帰って来てほしいと願っておられます。天の御父はわたしたちへの愛のゆえに,御子イエス・キリストを通してわたしたちがみもとに帰るための道を備えてくださいました。
必要に応じてレッスンを調整する
キリスト教の背景を持っていなかった多くの改宗者は,宣教師が教えていたことをあまり理解していなかったと言います。しかし,御霊を感じて,宣教師から勧められたことを行いたいと思ったということです。人々が福音の教義を理解できるように,全力を尽くしてください。忍耐強く,協力的であってください。人々が自分の気持ちに気づき,それを表現できるようになるには多少の時間がかかるかもしれません。彼らを助けるために,教えるペースや内容の深さを調整する必要があるかもしれません。
キリスト教の背景を持たない人々を教える準備をする際に役立つアイデアを幾つか紹介します:
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どのような霊的な必要や関心に基づいて,人々があなたと会うよう促されているかを理解します。
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各レッスンについて簡単なまとめを説明し,復習をします。
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彼らが理解したこと,経験したことを話してもらいます。
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重要な言葉や原則について説明します。教えるときにあなたが使う言葉の多くは,人々にとってなじみの薄いものかもしれません。
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以前に教えたレッスンに戻って,教義をもっと分かりやすく教えます。これは教える過程において,常に必要となるかもしれません。
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人々が福音の祝福を経験するのを助けるために提案できる事柄を見つけます。
以下に挙げるのは,キリスト教の背景を持たない人を助ける際に用いることのできる「福音ライブラリー」にあるリソースです:
研究と応用のためのアイデア
個人学習
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あなたは以下の状況に置かれているとします。本章にある原則とスキルをどのように使って,これらの人々の進歩を助けることができるでしょうか。それぞれの状況でどのように応用するかを計画してください。
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バプテスマの準備をしている人から,もう訪問してほしくないと言われました。
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これまで2年以上にわたって複数の宣教師からレッスンを受けてきた人と会う予定があります。これがあなたにとって7回目の訪問になります。進歩している様子はほとんど見られません。
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宣教師のレッスンから,いずれか一つを選んでください。主要な原則のそれぞれについて,一つか二つの聖句を選びます。本章の「聖文を用いる」の項で説明されている方法を使って,これらの聖句をもとに教える練習をしてください。
同僚学習と同僚交換
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アルマ18-19章からアンモンとラモーナイ王の話を,アルマ22:4-18からアロンの話を読んでください。アンモンとアロンが以下をどのように行ったかを見つけ,説明してください:
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御霊に従い,愛をもって教えた。
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教え始めた。
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相手の必要に合わせて教え方を調整した。
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証を述べた。
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聖文を用いた。
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質問し,耳を傾け,自分が教えている人々が問題を解決できるよう助けた。
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自分が教えている人々に決意を勧めた。
彼らの奉仕と教えがラモーナイ王やその父親やエービシにどのような影響を与えたかについて話し合ってください。
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ディストリクト評議会,ゾーン大会,伝道部リーダーシップ評議会
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会員または現在レッスンを受けている人々を集会に招きます。招いた人たちに,宣教師が大切なメッセージを分かち合う能力を改善したいと思っていることを説明します。レッスンとスキルをそれぞれ一つ選びます。宣教師たちに,あなたが指定するスキルを中心にして,一人または複数を相手に,指定されたレッスンを20分間で教えてもらいます。20分後に教える相手を交代してもらいます。宣教師たちのレッスンが終わったら,全員に集合してもらいます。レッスンを受けた人々に,最も効果的だった教え方と,どのように改善できるかを一つ宣教師たちに伝えてもらいます。
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レッスンを行っている宣教師や人々に話しかけている宣教師の例のビデオを見せます。採り上げるスキルを一つ選び,その宣教師はそのスキルの原則をどのくらい上手に応用していたかについて話し合ってください。
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採り上げるスキルを一つ選び,そのスキルの裏づけとなる教義または聖句を見つけてください。そのスキルの教義的な根拠を宣教師に教えます。
伝道部指導者と伝道部会長会顧問
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時々宣教師のレッスンに同行してください。あなたがどのようにレッスンに参加できるか,計画してください。
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地元の指導者に,宣教師のレッスンに同席するよう勧めてください。
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良い質問をすることや耳を傾けることなど,本章で採り上げられているレッスンスキルの一つを実演し,宣教師たちが練習するのを助けてください。
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ゾーン大会,伝道部リーダーシップ評議会,面接において宣教師を教える際,聖文の効果的な使い方を実際にやって見せてください。彼らと一緒にレッスンを行うときも同様にしてください。
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宣教師たちが聖文を理解し,聖文に対する愛を育むよう助けてください。ジェフリー・R・ホランド長老は伝道部指導者に次のように助言しています。
「皆さんの伝道部の文化において,神の言葉への愛を絶対的中心として据えてください。……啓示に親しみ,標準聖典を日常的に用いることが,皆さんの伝道部の宣教師たちの生涯にわたる主要な特質の一つとなるようにしてください。
宣教師たちを教えるときには,皆さんは絶えず教えているわけですが,聖文から教えてください。皆さんの強さと霊感の源がどこにあるかを,宣教師たちに示してください。これらの蓄積されてきた啓示を愛し,それに頼るよう,宣教師たちを教えてください。
〔わたしの〕伝道部会長は,わたしたちの前ではいつでも,モルモン書と〔そのほかの〕聖典から教えていました。またはそのように思われました。個人の面接でも,随所に聖句が織り込まれていました。集会の……概要も,標準聖典から引かれていました。……
当時のわたしたちは分かっていませんでしたが,会長はわたしたちの両手に武器を持たせて,決して滅びることがないように鉄の棒にしっかりつかまるよう〔1ニーファイ15:23-25参照〕,自分の持つ勢力と能力を尽くしてわたしたちに勧めてくれていたのです。」(“The Power of the Scriptures” seminar for new mission leaders, June 25, 2022)