大管長会メッセージ
乱気流の中で安全に着陸する
先日,妻のハリエットとわたしは,空港で巨大な飛行機が次々と着陸するのを見ました。それは風の強い日のことで,着陸しようとしている飛行機に突風が吹きつけ,そのためにどの飛行機も近づいて来るときに進路を外れ,激しく揺れました。
自然と機械のこの闘いを見ながら,わたしは自分が受けた飛行訓練と,そこで学び,そして後に他のパイロットを訓練する際に教えた原則を思い出しました。
「乱気流の中で飛行機の制御装置と闘ってはならない」と,わたしはいつも彼らに言ってきました。「平常心を保ち,取り乱さないこと。滑走路のセンターラインから目を離さないこと。目標の進入路から外れた場合,迅速に,しかし注意深く修正すること。飛行機の能力を信頼し,乱気流を乗り切ること。」
経験豊かなパイロットは,周りで起こることを必ずしもコントロールできるわけではないということを理解しています。乱気流をなくすことはできません。雨や雪をやませることはできません。吹く風を止めることや風向きを変えることはできません。
しかし,彼らは乱気流や強風を恐れること,また特にそれらによって制御不能に陥るのを恐れることは間違いであるということも理解しています。状況が理想的とは言えない場合に安全に着陸する方法は,できるだけ完全に正しい着陸コースを保つことです。
わたしは飛行機が次々に最終着陸態勢に入るのを見て,パイロットとして長年学んできた原則を思い出しながら,わたしたちの日々の生活に応用できる教訓があるのではないかと思いました。
わたしたちは人生の道中に訪れる嵐を必ずしも制御することはできません。時折,どうしても思いどおりにはいかないことがあります。失望や疑念,不安,悲しみ,ストレスの乱気流にあおられ,吹き飛ばされていると感じることがあるかもしれません。
そのようなときに,うまくいかないあらゆることに心を奪われ,それしか考えられなくなってしまうことがよくあります。救い主と,真理に対する自分の証にではなく,直面している試練に集中するという誘惑に駆られます。
しかしそれは,人生におけるチャレンジを乗り越える最善の方法ではありません。
経験豊かなパイロットが嵐ではなく,滑走路のセンターラインと的確な着地点に集中し続けるように,わたしたちも信仰の中心である救い主,福音,また天の御父の計画に,そして最終的なゴールである天の目的地に安全に帰ることに集中し続けなければなりません。神を信頼し,また弟子として歩む道にとどまることに努力を集中しなければなりません。進むべきだと分かっている道を歩んで生きることに,目と心と思いを集中し続けなければなりません。
戒めを喜んで守ることによって天の御父を信じる信仰と御父への信頼を示すことは,わたしたちに幸せと栄光をもたらします。進路から外れていなければ,乱気流がどれほど激しく見えても,わたしたちはそれを乗り切り,天の家に安全に帰れるのです。
周囲の空が晴れていようと,あるいは雨になりそうな雲が垂れ込めていようと,わたしたちはイエス・キリストの弟子として,まず神の王国と神の義を求めます。そうすれば,最終的に必要なものが全て与えられることが分かります(マタイ6:33参照)。
何と大切な人生の教訓でしょう。
困難,苦闘,疑念,不安に心を奪われれば奪われるほど,事態はもっと難しくなる可能性があります。しかし,天にある最終目的地に集中し,弟子の道に従うこと,すなわち神を愛し,隣人に仕えることに伴う喜びに集中すればするほど,困難と乱気流の時期を首尾よく乗り越えやすくなります。
愛する友である皆さん,死すべき世の風がわたしたちの周囲でどれほど激しく吹き荒れようと,イエス・キリストの福音は常に,天の御父の王国に安全に到達する最善の方法を示してくれるのです。