「教会指導者は虐待の被害者をどのように支援することができるでしょうか。」「助ける方法」
「教会指導者は虐待の被害者をどのように支援することができるでしょうか。」助ける方法
教会指導者は虐待の被害者をどのように支援することができるでしょうか。
ビショップおよび支部会長,ステーク会長は,虐待の事実が分ったら直ちに宗務ヘルプラインに連絡して助けを求めます。これは,被害者を助け,通報義務を果たすためです。支援を受けたら,それを,虐待の被害者を支援するワード評議会の取り組みの指針としてください。
虐待のトラウマから,被害者は身体的,霊的,精神的,情緒的な影響を受けている可能性があります。指導者として,助ける方法について分からない点があるかもしれません。
虐待の影響に関する知識と理解が深まると,支援やミニスタリング,霊的な導きやサポート7をうまく行うことができるようになります。
被害者を理解する
虐待の被害者は,考え方,感じ方,行動が虐待を受ける前とは変わっているかもしれません。被害者を支援することを望むなら,慎重に対応するための情報を求めてください。(支援する方法に関する詳しい情報は,虐待を受けた人をどのように支援すればよいでしょうかを参照してください。)
被害を受けた会員を助ける際には,以下の事柄に配慮してください:
信頼関係を築く
虐待を受けると人を信頼することが難しくなります。家族や友人,教会指導者,神など,最も信頼すべき存在に対する信頼までもが揺らぎます。被害者が支援を求めてあなたのもとに来たとしても,あなたを信頼しているからではない可能性があります。被害者は信頼してもよい人を探しているのかもしれません。
虐待の被害者が経験の一部だけを話すのは,よくあることです(「人を信頼できない場合はどうしたらよいのでしょうか」参照)。さらに時間を取って信頼関係を築き,安全その他の懸念事項に対処する必要があるかもしれません。
あなたにできること:
-
愛をもって対応するように努める。
-
彼らの話を信じる。
-
心を開いて正直に話す。
-
話し合いの間,会員に安心してもらうために自分に何ができるか,頻繁に会員に尋ねる(例:付き添ってくれる人が欲しいか尋ねる。会う時期と場所を虐待の被害者に選んでもらい,話し合うテーマは不快でないかどうか言ってもらう)
-
自分の考えや行動を明確に説明し,理解できない場合は質問するよう被害者に勧める。
-
言葉に気をつける。「そんなことは忘れなさい」とか「先に進まないと」などと言うと,気づかってもらえていないとか,反応が過剰だと思われているなどと感じさせてしまうことになるかもしれません(「性的虐待被害者(サバイバー)が一般的に経験する感情,思考,および行動」参照)。
-
一貫したやり取りを行う。
-
自分が行うと言ったことは行う。
自分の価値とふさわしさを再確認させる
虐待はしばしば,被害者の信仰を揺るがせます。ほとんどの被害者は神に見捨てられたと感じていて,なぜ神は守ってくださらなかったのか,虐待を止めてくださらなかったのかと考えます。虐待を自分のせいにすることがよくありますが,これは間違いです。ほとんどの被害者は,自分の価値を疑います。自分はふさわしくないという気持ちを埋め合わせるために過度に宗教にしがみつこうとする人もいれば,希望を失って信仰を保つのが難しくなる人や,霊的な活動から離れる人もいます。
あなたにできる助け:
-
被害者に,自分は価値のあるふさわしい人間だと考えられるようになってもらう。
-
個人の価値とふさわしさに関する福音の原則を慎重に教える。
-
天の御父と救い主が彼らを愛しておられることを強調する。
-
虐待はあなたのせいではないと説きつけて被害者を安心させる(「もし虐待が自分のせいだと感じたらどうしますか」および「わたしにはまだ価値があるのでしょうか」参照)。
逆境を明確にする
被害者は,虐待されたことを,何かを学べるように天の御父から与えられた試練だったと考えているかもしれませんが,これは間違いです。彼らは,虐待を経験することが自分の成長に必要だとか,それは人生の計画の一部だなどと言われたことがあるのかもしれません。これは間違った教えです。主は御自分の子供たちの人生における残虐行為の根源でも原因でもありません(ヤコブの手紙1:13,17;2ニーファイ26:24;オムナイ1:25;アルマ5:40;モロナイ7:12参照)。このような間違った考え方をしていると,彼らは自分の置かれている状況の良い面を探すようになり,その苦しみから目をそむけようとするようになるかもしれませんし,自分がそのように苦しむことを神が望んでおられると思うようになるかもしれません。
あなたにできること:
-
神がこの試練を与えられたのは何かを学ばせるためだったとか,これれを経験することにあなたは前世で同意したなどと被害者に言うことは避ける。
-
虐待はほかの人が選択の自由を使って間違ったことを選んだ直接的な結果であることを理解してもらう。
-
神があなたを愛していて,あなたは「試練や災難や苦難の中にあって支えられ,また終わりの日に高く上げられる」と(アルマ36:3),被害者に教える。
時がたてば癒され,赦すことができるようになることを強調する
被害者は,まだその準備ができていないのに加害者を赦さなければというプレッシャーを感じることがよくあります。早く赦すようにと言われると,自分が癒されることよりも加害者が赦されることの方が大切なのだと,彼らは感じるようになるかもしれません。被害者は,癒されると赦す力が湧いてきます。
あなたにできること:
-
被害者が自分自身の癒しに集中できるよう助ける。
-
自分から赦したいという気持になるまで忍耐強く待つことができるよう被害者を助ける。癒しと赦しの時期を決めないようにしてください。被害者の話に耳を傾け,赦せるよう努力する準備が整った頃合いを見計らいます。癒しの段階に入ると,赦すことができるようになります(「癒しは得られるのでしょうか」および「赦すことができるでしょうか」参照)。
-
加害者の人生を裁くのは究極的には主の正義の律法であることを被害者が理解できるよう助けてください。
自分自身を赦せるよう助ける
被害者は,虐待のトラウマや痛みに対処する方法として不健全な選択をするかもしれません。例えば,アルコールや薬物を使って痛みや外傷をまごそうとすることがあるかもしれませんし,そうすることによって自分を赦すのが難しくなることがあるかもしれません。
あなたにできること:
-
自分が愛されていることを思い出してもらう。
-
何を赦す必要があると思うのか,何を悔い改める必要があると思うのかを話してもらう。
-
加害者の行動を容認することなく,被害者がこれから取る行動と,その行動が虐待のトラウマへのどのような対処法になるかについて,思いやりをもって被害者と話し合う。
-
救い主の憐れみと愛があることを伝えて安心させる。
-
彼らに対してあなたが持っている肯定的な気持ちは揺るがないことを伝えてください。
-
彼らが自分を赦せるようになる道を歩めるよう助ける。
-
悔い改める必要のあることと悔い改める必要がないことを区別できるようビショップが助けてくれることを,理解してもらう。
パーソナルスペースを知る
虐待の被害者の多くは,自分の周囲のスペースに敏感です。身体的な接触を不快に思うことがよくあります。抱き締めてもいいか尋ねられると,はいと口では言っても,本心は拒否したいと思っていることが多いのです。
あなたにできること:
-
被害者のパーソナルスペースを尊重しながら被害者を助ける。
-
被害者に,不快でない身体的な接触について話してもらう(一切接触してほしくないのか,握手だけとか,ハグだけならよいかなど)。この話は,被害者側から始めてもらうように導く。そうでないと,余計なプレッシャーを感じさせてしまうことになるかもしれません。
-
被害者は自分が楽になることをさて置きほかの人を喜ばせようとすることがよくあることを,知っておく。
トラウマがよみがえっている最中であることを理解する
虐待のトラウマは,何かが引き金になってよみがえります。つまり,過去の出来事が思い出されるのです。この引き金がいつどこで発動するかは,分かりません。引き金は,何かを見たり,何かのにおいがしたり,何かが聞こえたりなどすると,発動します。引き金が「発動」すると,被害者には虐待を受けたときと同じような症状が現れることがしばしばあります。これには,周囲の物事に対する注意過敏や,不安の増大,心拍数の増加,発汗,震え,パニック,人からの隔離の必要性などの症状があります。
あなたにできること:
-
被害者がそのような症状をあなたに伝えたら:
-
確かにその症状が出ていることが認められると被害者に伝える。
-
この状況の中で何をしてほしいかを,被害者に言ってもらう。
-
何をする必要があるかを被害者に確認する。
-
-
あなたと一緒にいるときにトラウマがよみがえった場合
-
心配ないと言って被害者を安心させる。
-
その場を離れる必要を本人が感じたら,その場を離れてもらう。
-
被害者のパーソナルスペースを広く取る。あなたはその場を離れる必要があるかもしれません。トラウマの発現には被害者自身に対処してもらいます。
-
被害者に安心感を与える
被害者に身体的にも情緒的にも安心してもらうことは,難しいことがよくあります。被害者が気兼ねなく話せる環境を作ることによって,信頼関係を築き,被害者に癒しを見いだしてもらうことができます。
被害者と会うときは,以下の事柄を考慮してください:
-
(被害者が自分で選んだ)ほかの人に同席してもらいたいかどうか尋ねる。
-
ドアを開けたままにしてほしいかどうか尋ねる。
-
自分にとって最も居心地の良い場所に座ってもらう。
被害者が加害者と同じ集会に集っている場合,被害者の安全がいちばん大切だということを忘れてはいけません。被害者が教会の奉仕や活動に安心して参加できるようにするために何ができるか考えてください。
被害者を助ける
被害者は癒しの過程を歩むに当たって,多くの支援が必要になるかもしれません。ビショップその他の教会指導者は,可能な地域ではファミリーサービスに相談して,最善の方法で被害者を支援する方法を知り,利用可能な資料や機関を見つけてください。
被害者が支援を受けられるようにする際には,以下の事柄を考慮してください:
-
専門家の助けを受けられるよう助けることを被害者に申し出る。
-
カウンセリングがいつまで続くのかを明言するのは避ける。カウンセリングがどのくらいの期間続くのかは本人の状況によって異なることを,知っておいてください。
(ビショップのみ)
-
許可が与えられた場合は,被害者のセラピストに定期的に相談する。
-
被害者の支払い能力にかかわらず,専門家によるカウンセリングの費用を負担することを検討する(これには断食献金をあてることができます)。
地域と教会のリソース
(下記のリソースの中には,末日聖徒イエス・キリスト教会によって作成,保持,管理されていないものもあります。これらの資料は,追加のリソースとして役立てるように意図されていますが,教会の教義や教えと一致しない内容について,教会が是認するものではありません〔一部のリソースは英語のみ〕。)
-
“Agency, Accountability, and the Atonement of Jesus Christ: Application to Sexual Assault,” Benjamin M. Ogles (Brigham Young University devotional, Jan. 30, 2018)
-
“Jesus: The Perfect Leader,” Spencer W. Kimball
-
子供時代の悪い経験,childwelfare.gov