学習経験12
教える方法を決める:効果的な質問をする
概要
この学習経験は以下の概念を取り上げています。
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質問の重要性を理解する
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具体的な結果を求める質問を作る
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効果的な質問をする
重要な概念
質問の重要性を理解する
クラス討論,教師の提示,筆記活動など,クラスで使える教えるための効果的な技術は多くあります。これら全ての方法は教え学ぶ過程を充実させますが,他のどの方法より重要であると思われる方法があります。大管長会のヘンリー・B・アイリング管長は,次のように教えています。
「質問をし,質問に答えることが,全ての教え学ぶことの核心です。」(“The Lord Will Multiply the Harvest”〔ヘンリー・B・アイリング長老との夕べ,1998年2月6日〕,si.churchofjesuschrist.org:強調付加)
よく考えられた良い質問を作れるようになるには,時間,努力,練習が必要です。この学習経験では,生徒に深い影響を与えられるような質問をすることを学びます。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions”(『質問をする』)(2:42)を視聴してください。ビデオを視聴しながら,効果的な質問をすることの重要性に関する洞察を探してください。
目的をもって質問を作る
質問は,生徒が学習パターンの要素を応用できるようなものであるべきです。各要素は異なる結果につながるので,質問の種類も望んでいる結果によってさまざまです。
例えば,求めている結果が聖文の背景と内容を生徒に理解してもらうことであれば,質問は人々,話の筋,文化的背景に関する質問をします。しかし,求めている結果が教義や原則を生徒に応用してもらうことであれば,生活の中に教義や原則を取り入れる方法を考えさせるような質問をします。
基本と典型的な質問を学ぶ
以下は,それぞれの学習の基本に関連した質問の例です。背景と内容を理解するから始まって,教義と原則を応用するへ移行する間,各段階の質問がどのように互いに積み上がっているかに注意してください。
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背景と内容を理解する
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この話に出てくる人は誰でしょうか。
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この部分では何が起こっていますか。
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これらの出来事はどこで起きていますか。
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教義と原則を見つける
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どのような教義と原則が見られますか。
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その話の教訓や要点は何ですか。
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記録者はわたしたちに何を学ばせようとしたのでしょうか。
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教義と原則を理解する
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あなたはこの原則について何を知っていますか。
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なぜ,この原則が今日のわたしたちにも大切だと思いますか。
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この原則を他の人にどのように説明したらよいでしょうか。
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この原則に従っている人にはどんな行いや特質が見られますか。
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教義と原則が真実であり重要であることを感じる
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この原則が真実だと感じたのはいつですか。
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この原則が真実だとどのようにしてわかりますか。
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この原則に従って祝福されたのはいつでしたか。
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教義や原則を実践する
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今日感じたことのために何をしようと思いますか。
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生活の中でこの原則を実践するために,何を変えることができるでしょうか。
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生徒が背景と内容を理解できるような質問をする
聖句ブロックの背景と内容を生徒が理解できるように,読んでいることについての情報を探させるような,また見つけたことを分析させるような質問をします。
生徒が情報を探すよう助ける質問
クラスが聖句ブロックの背景と内容を理解できるよう助けるときは,人々,話の筋,文化的背景,その他の詳細に関する情報を探すよう励ます質問をします。これらの質問の答えは,そのまま聖文の文中に,または脚注,聖句ガイド,聖典の地図と写真などの聖典学習補助資料の中に見つけられることがよくあります。これらの資料は,聖句ブロックの具体的な詳細を生徒が理解する助けとなります。例えば,以下のような質問ができます。
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1ニーファイ3:1-4によると,ラバンのところに行って記録を取り返すようにニーファイに命じたのは誰ですか。
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1ニーファイ16:10を見てください。リアホナはどのようなものでしたか。
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聖句ガイドで「使徒」という言葉を調べてみましょう。この言葉はどういう意味でしょうか。(ルカ6:13を生徒が読んだ後でこの質問をしてもよいでしょう。)
『福音を教え学ぶ』の手引きの59-60ページにある5.1.1の項を読んでください。読みながら,情報を探すよう生徒を励ます質問をすることが,どのように聖句ブロックの背景と内容を知る助けとなるのか理解するのに役立つ言葉に印をつけてください。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions: Searching for Information”(『質問をする—情報を探す』)(1:36)を視聴してください。このビデオでは,あるセミナリーの教師が,教義と聖約1:1-4の背景と内容に関する大切な情報を生徒が探すような質問を作ります。
生徒が背景と内容を分析できるような質問
生徒がある部分の基本的な詳細を理解した後で,話の筋や人々,状況の詳細を分析するような質問をしてください。
例えば,ルカ5:1-11を研究するとき,生徒はペテロが夜通し漁をしても何もとれなかったと学びます。生徒がこの部分をさらに深く分析するように,以下のような質問ができるでしょう。
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ペテロが再び漁を始めるのをためらったのはなぜだと思いますか。
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なぜ救い主はペテロにこう命じられたと思いますか。
『福音を教え学ぶ』の手引きの60ページにある5.1.2の項の副題「分析して理解するように生徒を導く質問」の段落を研究してください。生徒に背景と内容を分析させる質問をすることが,生徒の聖文の理解を深め,豊かにするということを理解させてくれた言葉に印をつけてください。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions: Analyzing Context and Content”(『質問する—背景と内容を分析する』)(1:45)を視聴してください。このビデオの中で,あるセミナリー教師が教義と聖約1:1-4の背景と内容を分析するように生徒を導く質問をしています。
生徒が教義と原則を見つけられるような質問をする
生徒が教義と原則を見つけられるような質問をするときは,学んだ重要な真理に気づき,はっきりと文章にするよう導きます。
例えば,ニーファイが真鍮の版を取り戻す話を学んだ後で,「ニーファイが大きな困難があっても真鍮の版を取り戻すのに成功した話は,どんな原則を表していますか」と聞きます。これにより,主がお命じになるなら,わたしは偉大なことを成し遂げることができる,というように,生徒は教義や原則を見つけて自分の言葉で文にするよう導かれます。
『福音を教え学ぶ』の手引きの60-61ページにある副題「生徒が福音の原則と教義を見つけるのに役立つ」の段落を研究してください。教義と原則を見つけるよう生徒を導く質問をすることの重要性を明らかにしている言葉に印をつけてください。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions: Identifying Doctrine and Principles”(『質問する—教義と原則を見つける』)(0:42)を視聴してください。このビデオでは,イスラエル軍が戦いで優勢となるように両手を上げるモーセの話が記された出エジプト17章について,あるクラスが話し合っています。ビデオを視聴しながら,物語から原則を見つけるために教師がクラスに尋ねたことを探してください。
生徒が教義と原則を理解するのに役立つ質問をする
生徒が教義または原則を理解したら,クラスが以下のことを理解できるような質問をしてください。(1)その教義または原則が意味していることは何か(2)その教義や原則は今日ではどのように当てはまるか例えば,生徒たちが神にはできないことは何もない(ルカ1:37参照)という原則を見つけた後で,「できないという言葉の意味は何だと思いますか」,また「今日この原則を理解する必要があるのはなぜでしょうか」というような質問をすることができます。
『福音を教え学ぶ』の手引きの61ページにある副題「生徒が原則と教義をより深く理解するようになるのに役立つ」の段落を研究してください。教義と原則を理解するよう生徒を導くような質問をすることの重要性を明らかにする言葉に,印をつけてください。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions: Understanding Doctrine and Principles”(『質問する—教義と原則を理解する』)(0:41)を視聴してください。このビデオでは,インスティテュートの教師が生徒にある原則を紹介し,その原則の理解をさらに深めるような質問をします。
教義と原則が真実であり重要であることを生徒が感じられるような質問をする
経験や証を分かち合うように勧める質問をして,原則が真実で重要であると生徒が個人的に感じるよう助けることができます。また,生徒が自分の生活の中において原則が与えた影響について証すると,他の生徒たちはその原則を取り入れたいと思うようになります。
例えば生徒たちが,神にできないことはない(ルカ1:37)という原則に対する理解を深めた後で,次のような質問をします。「あなたや知人が不可能に思っていたことを神が助けてくださったときのことについて思い出してください。その経験は,神の力に対する証をどのように強めましたか。」
『福音を教え学ぶ』の手引きの61-62ページにある5.1.3の項を研究してください。教義と原則が真実で重要であると生徒が感じられるような質問をすることの大切さを明らかにしている言葉に印をつけてください。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions: Inviting Feelings and Testimony”(『質問する—気持ちと証を分かち合うよう招く』)(0:48)を視聴してください。このビデオでは,アルマ7章の原則についてクラスが話し合っています。原則が真実で重要であると生徒が感じられるように,教師がどのような質問をしているかに注意してください。
教義と原則を応用するよう生徒を促す質問をする
生徒が原則の真実性を理解し重要だと感じていても,生活に応用するという選択しなければなりません。教師としての役割は,現在や将来の状況に福音の原則をどう応用するか,生徒が深く考えるような質問をすることです。例えば,神には何もできないことはない(ルカ1:37)という原則についてクラスで話し合った後,「不可能だと思えるような状況に直面したとき,どのように神を信頼するでしょうか」と聞くことができます。
生徒の答えは個人的または配慮が必要なものかも知れないので,このような質問の答えはクラスで分かち合ってもらうのではなく,学習帳に記録してもらうほうが良いかもしれません。
『福音を教え学ぶ』の手引きの62ページにある5.1.4の項を研究してください。日々の生活で教義と原則を生活に応用するよう生徒を励ますような質問をすることの大切さを明らかにしている言葉に印をつけてください。
churchofjesuschrist.orgにあるビデオ“Asking Questions: Encouraging Application”(『質問する—応用するよう励ます』)(0:50)を視聴してください。このビデオでは,あるクラスがルカ5:12-26の原則について話し合っています。原則をどのように生活に応用するか深く考えるように生徒を助けるため,教師がどのような質問をするかに注意してください。
教師用手引きの質問を使う
効果的な質問の例の良い資料の一つに,教師用手引きがあります。それぞれの課には,レッスンで使うか検討すべき質問が提案されています。教師用手引きの多くの質問は,生徒が学習パターンの要素を実行できるようになっています。
質問を作る技術を改善するよう努めるにあたり,よく考えられた質問の特質をさらに理解するために,教師用手引きの質問を見てみると参考になるでしょう。
まとめと応用
覚えておくべき原則
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質問し,質問に答えることは,全ての学習と教授の核心です。
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効果的な質問をすることは,教師として身につけられる最も大切な技術の一つです。
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よく考えられた質問を使うと,あなたも生徒も具体的で,意図された結果を出すことができます。
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よく考えられた良い質問を作れるようになるには,時間,努力,練習が必要です。
「考えさせるような,慎重に作られた質問をしてください。答えが完全ではなくても,大切な教訓が学べる可能性が高まるでしょう。」(“To Understand and Live Truth”〔リチャード・G・スコット長老との夕べ,2005年2月4日〕,3,si.churchofjesuschrist.org)
「それゆえ,どうしますか?」
この学習経験を完了するために,今日学んだ原則に基づいて行おうと思うことを幾つか書き留めてください。