2019
伝道活動—心の中にあることを伝える
2019年5月


17:29

伝道活動—心の中にあることを伝える

皆さんはこの地上のどこにいても,イエス・キリストの福音の良い知らせを伝える機会がたくさんあります。

先月,十二使徒会は,愛する預言者ラッセル・M・ネルソン大管長の招きで,イタリア・ローマ神殿の奉献式に同行しました。その旅行中に,わたしは使徒パウロと彼の旅について考えました。当時はエルサレムからローマまで,40日はかかったでしょう。現在は,わたしの大好きな飛行機で3時間足らずです。

聖書学者たちは,パウロはその手紙の何通かを書いたときにローマにいたと信じています。その手紙は,今日と同様,当時の教会員を強めるうえで非常に重要でした。

パウロと古代の教会のほかの会員たち,すなわち初期の聖徒たちは,犠牲についてよく知っていました。多くの聖徒がひどい迫害を受け,死ぬことさえあったからです。

過去200年,回復されたイエス・キリスト教会の会員,すなわち末日聖徒も,様々な形で迫害を受けてきました。しかし,その迫害にもかかわらず(また,時にはその迫害によって)末日聖徒イエス・キリスト教会は成長し続け,今は全世界に教会があります。

なすべきことが多くある

しかし,ケーキを焼き,花吹雪をまき,この目覚ましい成功を祝う前に,その成長を大きな視点から見るとよいでしょう。

世界にはおよそ75億の人がいるのに対して,末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は約1,600万人です。実に非常に小さな集団です。1

その一方で,世界の一部の地域では,キリスト教信者の人数が減っています。2

主の回復された教会においてでさえ,全会員数は増加し続けているものの,定期的に教会に出席することの祝福を受けていない人はあまりにも多くいます。

言い換えれば,皆さんはこの地上のどこにいても,出会う人やともに学ぶ人,ともに暮らす人,あるいはともに働く人や交流する人にイエス・キリストの福音の良い知らせ3を伝える機会がたくさんあるということです。

これまでの1年間,わたしは世界中で行われているこの教会の伝道活動に深くかかわるすばらしい機会がありました。わたしは,救い主が弟子たち—つまり神の子であるわたしたち—に託された,次のような大いなる務めについてしばしば深く考え,祈ってきました。「それゆえに,あなたがたは行って,すべての国民を弟子として,父と子と聖霊との名によって,彼らにバプテスマを施し〔なさい。〕」4

また,次の問いにも取り組んできました。「わたしたちは会員,またキリストの弟子として,どうすれば日々の生活の中でその大いなる務めを最もよく果たせるだろうか。」

今日,わたしは皆さんに,その同じ問題について心の中でよく考えるよう勧めます。5

伝道活動の賜物

教会の指導者は,これまで数十年間,「すべての会員は宣教師である」という明快な呼びかけを強調してきました。6

イエス・キリスト教会の会員は,過去の時代も現代も,熱心に喜んで友人や知人に福音を伝えてきました。その心はイエス・キリストの証で燃えており,自分が救い主の福音の中に見いだした喜びを,ほかの人にも味わってもらいたいと心から願っているのです。

一部の教会員はこのための賜物を持っているようです。福音の大使でありたいと強く願っています。会員宣教師として,積極的に喜んで奉仕し,その業の先頭に立っています。

しかし,ほかの会員たちはそれよりも消極的です。教会の集会で伝道活動について話し合われるとき,ゆっくりと頭を下げて椅子のうしろに身を隠し,目は聖典に注ぐか,深く瞑想しているかのように閉じ,ほかの会員と目を合わせないようにします。

なぜでしょうか。福音を伝えていないことに罪悪感を抱くのかもしれません。方法が分からないのかもしれません。居心地のよい場所から出るのをためらっているのかもしれません。

その気持ちはよく分かります。

しかし,覚えておいてください。主は決して熟達した完璧な伝道の取り組みを求めてはおられません。むしろ,「心と進んで行う精神」を求めておられるのです。7

すでに楽しく伝道活動を行っているのであれば,どうぞ,それを続けて,ほかの人への模範となってください。主はあなたを祝福してくださいます。

しかし,福音のメッセージを伝えることにこれまで消極的であったと感じているのなら,救い主から与えられた,イスラエルの集合を手伝うという大いなる務めに参加するために,だれにでもできる,罪悪感を抱かずに済む,5つのことを提案します。

5つの簡単な提案

第1に,神に近づきます。第一の大切な戒めは神を愛することです。8それが,わたしたちがこの地上にいる一番の理由です。こう自問してください。「自分はほんとうに天のお父様を信じているだろうか。」

「自分は御父を愛し,信頼しているだろうか。」

天の御父に近づけば近づくほど,御父の光と喜びがあなたの内から輝きます。ほかの人々は,あなたには何か独特で特別なものがあることに気づくでしょう。そしてそれについて尋ねるでしょう。

第2に,ほかの人々に対する愛で心を満たします。これは第二の大切な戒めです。9周囲のすべての人は神の子供であると心から考えるようにします。彼らにミニスタリングを行います。彼らの名前があなたのミニスタリングシスターやブラザーの担当リストにあるかどうかにかかわらずです。

ともに笑い,ともに喜び,ともに涙を流し,彼らを尊重し,癒し,励まし,強めます。

キリストの愛に倣ってほかの人を思いやるように努めてください。あなたに不親切な人や,あなたをあざけり,あなたに危害が及べばよいと思っている人にさえもです。天の御父の同じ子供として彼らを愛し,彼らに接します。

第3に,弟子としての道を歩むように努めます。神と神の子供たちに対する愛が深まると,イエス・キリストに従うあなたの決意は強くなります。

主の言葉をよく味わい,また現代の預言者と使徒の教えを心に留めて実践することによって,主の道について学びます。素直でへりくだった心で天の御父と話すときに,主の道に従う自信と勇気が増します。

弟子としての道を歩むには,練習が必要です。そのために毎日少しずつ「恵みに恵み」10「規則に規則」11を加えます。時には,2歩進んで1歩下がることもあります。

大切なのは諦めないこと,できるようになるまで努力し続けることです。そのうちにもっとよく,もっと幸せに,もっと本物になるでしょう。あなたが信じていることについてほかの人に話すことが,普通で自然になります。実際に,福音はあなたの生活に欠かせない大切なものとなり,それについてほかの人と話さないことが不自然だと感じるようになります。すぐにはそうならないかもしれません。それは生涯にわたる取り組みだからです。しかし,必ずそうなります。

第4に,心の中にあることを伝えます。わたしが求めているのは,皆さんがメガホンを持って街角に立ち,モルモン書の言葉を叫ぶことではありません。そうではなく,自然な普通の方法で,あなたが信じていることを人々に伝える機会をいつも探すことです。直接的にも,またオンラインでもです。いつでも福音の力の「証人になる」こと,12そして必要なときに言葉を用いることです。13

「(キリストの)福音……は,……救いを得させる神の力」ですから,それを伝えるときに,あなたは自信と勇気を持ち,謙虚になることができます。14自信と勇気と謙虚さは相反する特質のように思えるかもしれませんが,そうではありません。それらは,福音の価値と原則を枡の下に隠すことなく,光を輝かして,善い行いによって天の御父に栄光を帰すようにという救い主の勧めを反映するものです。15

これを行うのに普通で自然な方法は多くあります。日々の思いやりある行いから,YouTube(ユーチューブ)やFacebook(フェイスブック),Instagram(インスタグラム),Twitter(ツイッター)上での自分の証,出会う人々との簡単な会話まで様々です。今年,わたしたちは家庭と日曜学校で新約聖書を学んでいます。救い主について一緒に学ぶために友人や隣人を教会や家庭に招くのには最高の機会です。福音ライブラリーのアプリを紹介してください。『わたしに従ってきなさい』を見つけることができます。若い人々とその家族を知っていれば,『若人の強さのために』の小冊子を渡して,教会の若人がどのようにそれらの原則に従って生活しようと努めているかを見に来るよう招いてください。

週末をどう過ごしたかについて尋ねられたら,ためらわずに,教会で経験したことについて話してください。会衆の前に立ち,イエス様のようになるためにどうしているか熱意を込めて歌っている,幼い子供たちについて話してください。高齢者施設で高齢者の個人史の作成を手伝っている青少年について話してください。日曜日の集会スケジュールに関する最近の変更と,それが家族にどのような祝福をもたらしているかを話してください。あるいは,この教会がイエス・キリストの教会であること,また古代の教会の会員が聖徒と呼ばれていたように,わたしたちが末日聖徒であることを強調しているのはなぜかを説明してください。

どんな方法であれ,あなたにとって自然で普通であると思われる方法で,イエス・キリストと教会が自分にとってなぜ大切であるかを人々に伝えてください。「きて見〔る〕」ように誘ってください。16それから,来て手伝うように勧めてください。教会には手伝う機会がたくさんあります。

選民を宣教師が見つけられるようにと祈るだけでなく,来て目にし,来て助ける人々,そして,来てとどまる人々を自分が見つけることができるよう,心を尽くして日々祈ってください。専任宣教師にあなたが行っていることを伝えてください。宣教師は天使のようであって,手伝う備えができています。

良い知らせ,イエス・キリストの福音を伝えるときには,愛と忍耐をもって行います。すぐに白い服を着て,最寄りのバプテスマフォントへの行き方を尋ねてくることだけを期待して人々と交流するとしたら,それは間違っています。

来て見る人の中には恐らく教会に入らない人もいるでしょうし,後になって入る人もいるでしょう。それは彼らの選びです。それでも,わたしたちの愛は変わりません。来て見るように,来て手伝うように来てとどまるようにという,個人や家族を招き続けるわたしたちの熱烈な努力は変わりません。

第5に,奇跡を起こしてくださる主を信頼します。人々を改心させるのはあなたの仕事ではないことを理解してください。それは聖霊の役割です。あなたの役割は自分の心の中にあることを伝え,自分が信じていることに従って生活することです。

ですから,人がすぐに福音のメッセージを受け入れなくても,がっかりしないでください。あなたのせいではありません。

それは,その人と天の御父の間の事柄なのです。

あなたの役割は,神を愛し,隣人,つまり神の子供たちを愛することなのです。

信じ,愛し,行ってください。

この道に従ってください。そうすれば神はあなたを通して奇跡を行い,御自分の貴い子供たちを祝福されます。

以上の5つの提案は,昔からイエス・キリストの弟子たちが行ってきたことをあなたが行う助けとなるでしょう。イエス・キリストの福音と教会は,あなたの生活にとって,またあなたが何者で,何をなすべきかについて重要な位置を占めています。そのためあなたは,来て見るように,来て手伝うようにほかの人々を招きたくなるでしょう。神は救いの業を行われ,彼らは来てとどまるでしょう。

しかし,難しかったらどうしようか

しかし,こう思うかもしれません。「あらゆる手を尽くしても人々の反応が鈍かったら,どうしようか。教会について批判的だったら,どうしようか。友達に絶交されたら,どうしようか。」

確かに,そのようなことがあるかもしれません。昔から,イエス・キリストの弟子はしばしば迫害されてきました。17使徒ペテロは,「キリストの苦しみを共に負えるのだから喜びなさい」と言っています。18初期の聖徒たちは「御名のために恥を加えられるに足る者とされたことを」喜びました。19

忘れないでください。主は奇跡的な方法で働かれます。拒絶に対するあなたのキリストのような対応で,かたくなな心が和らぐかもしれません。

主イエス・キリストの使徒として,わたしは皆さんに,福音の価値を証する生ける証人となる自信と,末日聖徒イエス・キリスト教会の会員としていつも認められる勇気と,天の御父とその子供たちに対する愛を表現するために主の御業を支援する謙虚さを持てるように祝福します。

愛する友人の皆さん,皆さんは,「力と大いなる栄光とをまとってすべての聖なる天使たちとともに」来られるキリストの来臨に備え,長年預言されてきたイスラエルの集合において,自分が重要な役割を果たす者であることを知って喜ぶことでしょう。20

天の御父は皆さんを御存じです。主は皆さんを愛しておられます。神は皆さんを祝福してくださいます。この業は神によって定められたものであり,皆さんはこれを行うことができます。わたしたちはこれを一緒に行うことができます。

イエス・キリストの御名によって証します,アーメン。

  1. 神の小羊の教会が「地の全面に」広がっても,世の悪事のために教会の人々の「数は……少な〔い〕」のを,偉大な預言者ニーファイは示現の中で見た(1ニーファイ14:12ルカ12:32も参照)。

  2. 例えば,ピュー研究所による最近の調査で以下のことが明らかになった。アメリカ合衆国の「キリスト教徒を自称する成人(18歳以上)の比率は,ほんの7年間で8パーセント近く減少しました。すなわち,2007年の78.4パーセントから,2014年には70.6パーセントまで減少しています。同じ期間に,無神論者や不可知論者や『特になし』という,宗教団体に属していないアメリカ人の比率は,16.1パーセントから22.8パーセントに,6パーセント以上跳ね上がっています。」(“America’s Changing Religious Landscape,” Pew Research Center, May 12, 2015, pewforum.org)

  3. 福音」という言葉は「良い知らせ」を意味する。良い知らせとは,イエス・キリストが全人類を死から贖い,各自の行いに応じて報いを与える完全な贖罪の業を成し遂げられたということを知らせるものである。この贖罪は,前世における主の任命から始まり,主の現世の生活の間続き,主の栄光ある復活で頂点に達した。主の現世における生活と教導の業と犠牲に関する聖書の記録は福音書と呼ばれる。マタイ,マルコ,ルカ,ならびにヨハネによる福音書がそれである。

  4. マタイ28:19

  5. 「まことに,わたしは友であるあなたがたに言う。あなたがたの心の中で深く考えるように……。」(教義と聖約88:62

    「見よ,わたしはあなたに言う。あなたは心の中でそれをよく思い計り,その後,それが正しいかどうかわたしに尋ねなければならない。もしそれが正しければ,わたしはあなたの胸を内から燃やそう。それゆえ,あなたはそれが正しいと感じるであろう。」(教義と聖約9:8

  6. デビッド・O・マッケイ大管長は,1922年から1924年までヨーロッパ伝道部を管理していたときに,「すべての会員〔に〕宣教師」となるよう促し,1952年には総大会でそのメッセージを教会全体に伝えた(see “‘Every Member a Missionary’ Motto Stands Firm Today,” Church News, Feb. 20, 2015, news.ChurchofJesusChrist.org)。

  7. 教義と聖約64:34

  8. マタイ22:37-38参照

  9. マタイ22:39参照

  10. 教義と聖約93:12

  11. イザヤ28:10

  12. モーサヤ18:9

  13. この考えはしばしばアシジの聖フランシスコによるものとされている。ヨハネ10:36-38も参照

  14. ローマ1:16

  15. マタイ5:15-16参照

  16. ヨハネ1:46;強調付加

  17. ヨハネ15:18 参照

  18. 英語標準版1ペテロ4:13より和訳。キリストに従う者は福音のための苦しみをどのように見るべきかについて,さらに詳しくは1-19節も参照。

  19. 使徒5:41

  20. 教義と聖約45:44