キリストの喜びにのみ込まれて
天の御父は皆さんの涙ながらの嘆願を聞いて常に完全な知恵でこたえてくださることを，わたしは証します。
キアロン長老，わたしたちはあなたを愛しています。長老の英語のアクセントを10分程お借りできますでしょうか。
待ち望んできた奇跡
新約聖書に，目の見えないバルテマイが奇跡を望んでイエスに向かって叫んだ話があります。「そこでイエスは言われた，『行け，あなたの信仰があなたを救った』。すると彼は，たちまち見えるようにな……った。」
別の機会には，ベツサイダの男性が癒しを求めました。しかし対象的に，この奇跡はすぐには実現しませんでした。イエスが二度祝福されてから「なおっ〔た〕」のです。
3つ目の例では，使徒パウロが苦難の中で「三度も主に祈〔りました〕」が，聖書を読む限り，その熱烈な願いは聞き届けられませんでした。
3人の異なる人物には，三者三様の経験がありました。
そこで質問です。待ち望んできた奇跡を早くに与えられる人がいる一方で，忍耐強く耐え忍んで主を待ち望む人がいるのは，なぜなのでしょうか。わたしたちは，苦難の理由がいつも分かるわけではありませんが，あり難いことに，「〔わたしたちを〕愛しておられ」，「〔わたしたち〕の繁栄と幸いのためにあらゆることを行われる」のがどなたかなのかは，常に知っています。
神の目的
初めから終わりを御存じである神は，「あなたの逆境とあなたの苦難は，つかの間にすぎ〔ず，〕」それは聖別されて「あなたの益と〔な〕……る」と約束しておられます。
試練にもっと意味を見いだせるよう，オーソン・F・ホイットニー長老は次のように教えています。「わたしたちが味わう苦痛，経験する試練が無駄になることはありません。それはわたしたちの教師で〔す〕。……根気よく堪え忍ぶすべての事柄は，わたしたちの人格を築き上げ，心を清め，魂を精錬し，優しく慈愛に満ちた人物へと変え……てくれます。……この世へ来て身に付ける教育は，悲しみと苦しみ，苦労と苦難を経験して得るのであり，それがわたしたちをより天の父母に似た者としてくれるのです。」
使徒パウロは，苦難の中で「キリストの力が〔自分に〕宿る」ことを理解していたので，謙遜にこう言いました。「わたしが弱い時にこそ，わたしは強い〔。〕」
人生の試練は人を試します。救い主でさえ，「苦難をとおして」「従順を学び，」「全うされた」のです。
神の視点
何年も前，ラッセル・M・ネルソン大管長は，貴重な教えを分かち合いました。「永遠の観点ですべての物事を見るとき，重荷は著しく軽くなるでしょう。」
妻のジルとわたしは最近，痛ましい火事で12歳の息子のトレーを亡くした，ホリー・ポーターとリック・ポーター夫妻の忠実な人生を見て，この教えが真実だと悟りました。愛する息子を救おうとして重いやけどを手足に負いながら，ホリーは後にワードの聖餐会で証しました。家族がつらいときに主が平安と喜びを豊かに注いでくださったそうです。「奇跡的」「驚くべき」「すばらしい」という言葉を使っていました。
この愛すべき母親の耐え難い悲しみが，ある思いが浮かんだときに，瞬く間にそれをしのぐ喜びに変わりました。「わたしの手で人を救うことはできない。救いの手は救い主が持っておられる！やけどのあとを見て，自分ができなかったことを思い出すのではなく，救い主の傷跡を思い起こそう。」
ホリーの証は，預言者の約束を成就しています。「日の栄えの考えを抱くと，試練や敵対するものに新しい光を当てることができます。」
D・トッド・クリストファーソン長老は次のように述べています。「逆境を乗り越えて成長するというやりがいのある課題は，神が前世で贖いの計画を示されたときにわたしたちの心を魅了したと，わたしは信じています。天の御父がわたしたちを支えてくださると知っている今，わたしたちはその課題に取り組むべきです。ただし，必ず御父に頼らなければなりません。神に頼らなければ，苦しみや逆境の暗い経験は，落胆や失望，恨みさえもたらすでしょう。」
天の原則
人生のつらい試練のさなかにあって，不満の闇に迷い込むのではなく，大きな平安と希望，さらには喜びまで見いだせるようになるための天の原則を，皆さんへの招きとして3つ紹介します。
その1。イエス・キリストを第一にすると信仰が強くなる。主は，こう宣言しておられます。「あらゆる思いの中でわたしを仰ぎ見なさい。疑ってはならない。恐れてはならない。」ネルソン大管長は次のように教えています。
「〔わたしたち〕の永遠の命は，〔キリスト〕と主の贖罪に対する信仰にかかってい〔ます〕」。
「最近のけがによる激痛と闘っていたとき，わたしはイエス・キリストと主の贖罪という計り知れない賜物に対して，より深い感謝の念を抱きました。考えてみてください。救い主は，必要なときにわたしたちを慰め，癒し，救うことができるように，『あらゆる苦痛と苦難と試練を受けられ』ました。」
ネルソン大管長はこう続けました。「わたしはこのけがの痛みにより，『イスラエルの聖者の偉大さ』を何度も何度も思い返しました。けがから回復する間，主は安らかで疑いようのない方法で，主の聖なる力を現してくださいました。」
救い主はこのように勇気づけておられます。「あなたがたは，この世ではなやみがある。しかし，勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている。」
その2。自分の永遠の行く末を思い描くと明るい希望が湧いてくる。リンダ・リーブス姉妹は「御父が将来大いなる祝福を約束しておられることに，日々，焦点を定め」ていることから生まれる力について語り，こう証しています。「なぜこれほど多くの試練があるのか分かりませんが，個人的には，その報いがとても大きいと感じています。その報いの日に，わたしたちは憐れみと愛に満ちた御父に『ほんとうに試練はあれで全部だったのですか』と尋ねたくなるほど，わたしたちの理解を超えた喜びに満ちています。これらの試練が，……最後に……神の王国で永遠の命……を得る資格を与えてくれるものだとしたら，ここで苦しむことは一体どれほどのものでしょうか。」
ネルソン大管長はこう言っています。「ジョセフ・スミスがリバティーの監獄からの開放を嘆願したとき，主から与えられた答えについて考えてください。主は預言者ジョセフに，非人道的な扱いが彼に経験を与え，彼の益になると教えられました。そして，『神はあなたを高い所に上げるであろう』と約束されました。主はジョセフに，日の栄えの考えを抱き，当時のひどい苦難に焦点を当てずに，永遠の報いを心に描くように教えました。」
この視点の変化により，ジョセフはさらに聖められました。そのことは，友人への次の手紙に表れています。「5ヶ月間，牢獄の壁の中に閉じ込められて思うのは，この経験を経て，わたしは以前よりも常に優しくいられるようになるだろうということです。……もし不当な扱いを受けていなかったとしたら，今感じているような気持ちを感じることは決してなかったと思います。」
その3。喜びに目を向けると大きな力が湧いてくる。永遠の最も重要で苦しい時間に，救い主は身を引くことなく，苦い杯を飲まれました。どうしてそれができたのでしょうか。「〔キリストは〕自分の前におかれている喜びのゆえに……十字架を忍び，」その御心が「御父の御心にのみ込まれ〔た〕」ことが分かります。
この「のみ込まれる」という言葉に，わたしは心を動かされます。「のみ込まれる」という言葉は，スペイン語では「吸収される」と訳されると知って，さらに興味を引かれました。ドイツ語では「吸い上げられる」，中国語では「包み込まれる」と訳されるのだそうです。ですから，人生の試練が最もつらく，圧倒されるようなときには，神のこんな約束を思い出すようにしています。それは，「キリストの喜びにのまれて〔吸収され，吸い上げられ，包みこまれて〕しまう苦難のほか，……どのような苦難も受けることがない」という約束です。
わたしは皆さんの中にも多くの人が，人生の苦い杯が取り去られていないにもかかわらず「人知ではとうてい測り知ることのできない」喜びを感じているのを目にしています。自分の交わした聖約を守り，神の証人として立ってくださり，ありがとうございます。「心の中には，外からは見えない悲しみがある」のに，皆を祝福するために手を差し伸べてくださりありがとうございます。救い主の安らぎを人々にもたらすとき，皆さん自身がそれを見いだすのだと，カミール・N・ジョンソン会長は教えています。
神の約束
さて，聖餐会でのことに話を戻しましょう。ホリー・ポーターの家族が主に救われるという奇跡を目の当たりにした聖餐会です。わたしはこのすばらしい家族とその愛する友人たちを慰めるために何を言おうかと考えながら座っていると，こんな考えが浮かびました。「救い主の言葉を使いなさい。」その安息日にそうしたように，「傷ついた心を癒す」御言葉で話を締めくくります。
「すべて重荷を負うて苦労している者は，わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。」
「またわたしは，あなたがたの肩に負わされる荷を軽くし，あなたがたが奴隷の状態にある間，あなたがたの背にその荷が感じられないほどにしよう。……主なる神であるわたしが，苦難の中にいる自分の民を訪れるということを，あなたがたが確かに知ることができるようにするためである。」
わたしの証
喜びをもって厳かに，救い主が生きておられ，主の約束が確かであることを証します。特に悩んでいる人や，「どんなことでも苦しんでいる」皆さんに対して，天の御父は涙ながらの嘆願を聞いてくださり，常に完全な知恵でこたえてくださることを，わたしは証します。主が，わたしたち家族のためにしてくださったように，「キリストの喜びにのみ込まれる」ほどに，皆さんの「重荷を軽くしてくださるように。」イエス・キリストの聖なる御名により，アーメン。