リアホナ
聖約と責任
2024年5月号


15:11

聖約と責任

イエス・キリストの教会は,神と聖約を交わすことを強調する教会として知られています。

「あなたの教会はほかの教会とどう違うのですか。」この重要な質問に対する答えは,わたし自身が成長し,教会が発展するにつれ変わってきました。1932年にわたしがユタ州で生まれた頃,教会員の数はわずか70万人程度で,その大半がユタ州と近隣の州に住んでいました。その当時,神殿は7つしかありませんでした。今では,約170か国にいる末日聖徒イエス・キリスト教会の会員数は1,700万人を超えています。4月1日現在,189の奉献された神殿が様々な国に点在し,さらに146の神殿が計画や建設の段階にあります。わたしは神殿の目的と,礼拝における聖約の歴史と役割について話すべきだと感じました。これはすでにお話しされた話者の霊感に満ちた教えを,補足するものになります。

I.

契約とは,特定の責任を果たすという決意です。個人的な決意は,個人の生活における自己管理や社会が機能するうえで不可欠なものです。近年,この概念に異議が唱えられようとしています。主張の激しい少数派が組織的権威に反対し,個人の自由を制限する拘束からの解放を求めています。しかし,わたしたちは数千年にもわたる経験から,個人の自由をいくらか放棄することで,組織化されたコミュニティーで生活することの利点を得ることができると知っています。このような個人の自由の放棄は,主に,明示的か黙示的かを問わず,決意や契約に基づいています。

軍人。
医療関係者。
消防士。
専任宣教師。

わたしたちの社会における契約上の責任の例をいくつか挙げましょう。(1)裁判官,(2)軍人,(3)医療関係者や(4)消防士。こうした身近な職業に携わる人は皆,割り当てられた義務を果たす決意をしますが,それはしばしば正式な誓約や契約によって行われます。教会の宣教師たちも同じです。その特徴的な装いや名札は,身に着ける人が聖約の下にある,すなわち教え仕える義務があることを示し,その奉仕の助けとなるものです。ほかにも,着用者に自分の聖約の責任を思い起こしてもらうという目的もあります。特徴的な衣服や象徴そのものに仕掛けがあるわけではなく,着用者が引き受けた特別な責任を思い起こすのに必要なものにすぎません。婚約指輪や結婚指輪が象徴する事柄についても同じようなことが言えます。それらは,身に着ける人が契約の責任の下にあることを見る人に伝え,身に着ける本人に思い起こさせるものです。

結婚指輪

Ⅱ.

契約が個人の生活における自己管理の基礎であることについてわたしが述べたことは,特に宗教上の聖約にも当てはまります。多くの宗教団体の基盤や歴史,また宗教上の条件は,聖約に基づいています。例えば,アブラハムの聖約は幾つかの偉大な宗教的伝統の基礎となっています。それは,神が聖約を通して神の子供たちに約束しておられる神聖な概念を伝えています。旧約聖書では,アブラハムとその子孫との神の聖約について頻繁に言及されています。1

旧約聖書の時代に書かれたモルモン書の最初の箇所は,イスラエルの歴史と礼拝における聖約の役割を明確に示しています。ニーファイは,その時代のイスラエルの記録は「ユダヤ人の記録であって,主がイスラエルの家に立てられた聖約が載って〔いる〕」ことを告げられました。2ニーファイの書では,アブラハムの聖約3と,イスラエルが「主の聖約の民」4であることが頻繁に言及されています。神や宗教指導者と聖約を交わす習慣は,ニーファイや,エジプトのヨセフ,ベニヤミン王,アルマ,司令官モロナイに関するモルモン書の記録にも残されています。5

Ⅲ.

イエス・キリストの完全な福音が回復されるべき時に,神は預言者ジョセフ・スミスを召されました。この若い預言者に対する,天使モロナイの初期の指示の全容は分かっていません。しかし,「神が〔ジョセフ〕のなすべき業を備えておられること」や,「先祖に与えられた約束」を含め,「完全な永遠の福音」が世に広められなければならないことを告げたというのは分かっています。6また,若いジョセフが教会を組織するように指示される前から熱心に読んでいた聖書には,彼がモルモン書の中で翻訳した聖約に関する多くの教えが含まれていることも分かっています。その聖書こそが,神が御自分の子供たちのために定められた計画を含めた,完全な福音を回復するための主要な情報源です。そして,モルモン書の至る所で聖約について言及されています。

聖書に精通していたジョセフは,救い主が「イスラエルの家およびユダの家と,新しい契約を結ぶ」意向をお持ちであることに言及するへブル書の記述を知っていたことでしょう。7さらに,へブル書にはイエスが「新しい契約の仲保者」だとあります。8重要なことに,救い主の現世での務めについて書かれた新約聖書(“The New Testament”〔訳注―直訳すると「新たな証」〕)は,事実上「新たな聖約」と同義語です。

聖約は福音の回復において基盤となるものでした。それは,主が御自身の教会を組織するにあたり,当初預言者に指示されたことを見れば明白です。モルモン書が出版されるとすぐに,主は御自身の教会を回復して組織するよう指示され,間もなく末日聖徒イエス・キリスト教会と名付けられました。91830年4月に記録された啓示には,人が「自分のすべての罪を心から悔い改めたことと,最後までイエス・キリストに仕える決心をして進んでイエス・キリストの名を受けること」を「証明」(厳粛に証するという意味)したならば,彼らは「バプテスマによってキリストの教会に受け入れられる」との指示があります。10

この同じ啓示には,「主イエスの記念としてパンとぶどう酒〔水〕を受けるために,しばしば集まることが必要である」との指示があります。この儀式の重要性は,儀式を執り行う長老または祭司のために明確に記された聖約の言葉に表れています。彼らは,象徴であるパンを「頂くすべての人々が,……進んで御子の御名を受け,いつも御子を覚え,御子が与えてくださった戒めを守ることを,永遠の父なる神……に証明して,いつも御子の御霊を受けられるよう」11祝福します。

主の啓示が初めて出版された際,主が与えてくださった序文によって,回復されたばかりの教会の聖約の中心的な役割はより確かなものとなりました。その中で主は,地に住む者が「わたしの定めから離れ去り,わたしの永遠の聖約を破った」12ので,ジョセフ・スミスが召されたことを宣言しておられます。この啓示には,「〔主〕の永遠の聖約が確立されるため」13に主の戒めが与えられているとも説明されています。

今日わたしたちは回復された教会と,教会員の礼拝における聖約の役割について,理解しています。ゴードン・B・ヒンクレー大管長は,バプテスマと毎週聖餐を受けることが及ぼす影響について次のように述べています。「バプテスマの水をくぐった教会の会員はすべて,神聖な聖約の当事者となります。わたしたちは主の晩餐である聖餐にあずかるたびに,その聖約を新たにします。」14

わたしたちは,この大会で多くの話者から,預言者ラッセル・M・ネルソン大管長が,しばしば救いの計画を「〔神〕のもとへ導〔く〕」,「聖約の道」であり,「根本にあるのは,わたしたちと神の関係」15であると言及していることを思い起こさせられました。また,ネルソン大管長は,神殿儀式における聖約の意義について教え,初めから終わりを見据え,「日の栄えの考え」を持つようにと教えています。16

IV.

では,神殿の聖約についてもう少しお話ししましょう。イエス・キリストの完全な福音を回復する責任を果たすため,預言者ジョセフ・スミスは,イリノイ州ノーブーに神殿を建設するための指示を出すことに晩年の大半を費やしました。ジョセフを通して,主は後継者が神殿で執り行うべき神聖な教え,教義,聖約を明らかにされました。当時,エンダウメントを受けた人々は,神の救いの計画を教えられ,神聖な聖約を交わすよう招かれました。それらの聖約に忠実に生活した人々は,永遠の命を約束され,「すべてのものは彼らのものであり」,彼らは「とこしえにいつまでも神とそのキリストの前に住む」17ことになります。

ノーブー神殿で行われたエンダウメントの儀式は,初期の開拓者が追放されて西部の山地へ向かう歴史的な旅を始める直前に執り行われました。ノーブー神殿でエンダウメントを受け,キリストと結ばれたことにより受けた力を糧としたことで,西部まで壮大な旅をしてその地で自らを確立することができた,と数多くの開拓者たちが証言しています。18

神殿でエンダウメントを受けた人々は,衣服の下に着るので外からは見えない神殿のガーメントを着用する責任があります。それはエンダウメントを受けた会員に,自らが交わした神聖な聖約と,聖なる神殿で約束された祝福を思い起こさせるものです。そのような聖なる目的を達成するため,明らかに着用が難しい例外的状況を除き,わたしたちは神殿ガーメントを常に着用するよう指示されています。聖約を守るのに休みはないため,ガーメントを着ないことは,付随する聖約の責任と祝福を放棄することだと考えられます。これとは対照的に,忠実にガーメントを着用し,神殿の聖約を絶えず守る人は,主イエス・キリストの弟子としての役割を確固なものとします。

神殿の地図。

末日聖徒イエス・キリスト教会は,世界中に神殿を建設しています。その目的は,神殿での礼拝,聖約によりキリストと結ばれることから受ける神聖な責任と力,特有の祝福により,神の聖約の子らを祝福することです。

ブラジル・サンパウロ神殿。

イエス・キリストの教会は,神と聖約を交わすことを強調する教会として知られています。聖約は,この回復された教会にて執行される,救いと昇栄のそれぞれの儀式特有のものです。バプテスマの儀式とそれに付随する聖約は日の栄えの王国に入るための条件です。神殿の儀式と付随する聖約は,日の栄えの王国での昇栄のための条件です。昇栄とは,永遠の命を受けることであって,「神のあらゆる賜物の中で最も大いなるもの」19です。これこそが末日聖徒イエス・キリスト教会が見据えているものなのです。

イエス・キリストが,この教会の頭であられることを証します。そして,この神聖な聖約を守るすべての人に,主の特別な祝福を残します。 イエス・キリストの御名により,アーメン。