インスティテュート
第1課:回復への序曲


「第1課:回復への序曲」『末日聖徒の歴史:1815-1846年 教師用資料』

「第1課」『末日聖徒の歴史:1815-1846年 教師用資料』

第1課

回復への序曲

紹介とタイムライン

地上で務めを果たす間,救い主は御自分の教会を設立されました。救い主の死と復活の後,使徒たちは啓示に導かれるまま教会を管理し続けました。ところが使徒たちが殺されると,神権の鍵と権能は地上から失われてしまいます。そうして,イエス・キリストと使徒たちが教えてきた事柄は変えられ,ゆがめられたのです。これらの出来事は,大背教と呼ばれる時代へとつながり,キリストの教会と,それを管理する権能は地上から取り去られました(「福音のテーマ」「背教」の項,topics.churchofjesuschrist.org)。大背教の時代,主は御自分の教会が回復されるよう道を備えられました。回復へとつながる出来事には,ヨーロッパのルネサンスやプロテスタントの宗教改革,聖書の英語やその他の言語への翻訳,アメリカ合衆国憲法による信教の自由の確立などがあります。ジョセフ・スミスは,主が彼を回復の預言者として育むことのできる時と場所に生まれました。地上に主の福音と教会を回復することにおいて主の神聖な目的を果たすために,主はジョセフ・スミスを強められたのです。

1450年ごろドイツの発明家であるヨハネス・グーテンベルクが活版印刷技術を開発,聖書を含め,一般大衆への本の普及が可能となった。

1500-1611年英語その他の言語において,聖書の新たな翻訳が普及した。

1517-1564年マルチン・ルターをはじめとするヨーロッパの人々が宗教改革を唱えた。

1620-1750年ヨーロッパにおける多くのプロテスタント信者が,信教の自由を求めて北アメリカに移民した。

1787-1791年アメリカ合衆国憲法により,信教の自由が確立された。

1805年バーモント州シャロンにて,ジョセフ・スミス・ジュニアが誕生。

注:幾つかの年代はおおよその推定

教えるためのアイデア

神は福音の回復に向けて道を備えられる

十二使徒定員会のロナルド・A・ラズバンド長老の次の言葉を見せ,生徒の一人に読み上げてもらいます:

ロナルド・A・ラズバンド

「ニール・A・マックスウェル長老はかつてこう語りました:…『〔神は〕「偶然の一致」ではなく「神聖な計らい」によって物事を行われるからです』〔Neal A. Maxwell, “Brim with Joy” (Brigham Young University devotional, Jan. 23, 1996), 2, speeches.byu.edu〕……

福音においても,教会においても,地上における神の王国の発展を推し進める重大な出来事が起こります。そのような出来事は偶然ではなく,神の計画によって起こります。」(ロナルド・A・ラズバンド「神聖な計らいにより『リアホナ』2017年11月号,55)

  • 人によっては偶然だと考えたとしても,あなたは神の計らいにより起こったと思う出来事の例を挙げてください。

今日のレッスンを通して,地上で神の業を進める中で,また神の子供たちの生活において,神の御手を示す原則を生徒に見つけてもらいます。

使徒を聖任されるイエス・キリスト

使徒を聖任される救い主の絵を飾ります。地上での教導の業において,救い主は使徒を召し,神権の権能と鍵を授け,御自分の教会を設立されたことを生徒に思い起こしてもらいます。

主の教会がどのようにして背教に至ったかを,生徒に要約してもらいましょう。(必要であれば,救い主と使徒の死の前「後,福音の原則はゆがめられ,教会の組織と神権の儀式に独断的な変更が加えられ」たことを生徒が理解できるように助けます。「こうして悪が広範囲にわたってはびこったため,主は神権の権能をこの地上から取り去られました」〔「福音のテーマ」「背教」の項,topics.churchofjesuschrist.org〕。)

  • 背教が起こったことを理解することは,回復の必要についてさらに理解するうえでどのような助けとなるでしょうか。

背教がはびこっていた時代,神はキリストの光や聖霊の影響力を通して,御自分の子供たちに霊感を与え続けておられたことにも目を向けます(教義と聖約84:46参照。see also “Statement of the First Presidency regarding God’s Love for All Mankind,” Feb. 15, 1978)。こうした神からの導きは,末日における福音の回復に向けて世を備えるうえで,重要な出来事と変化をもたらす役割を果たすよう,個人に霊感を与えたのです。

生徒を二人一組,あるいは少人数のグループに分け,付随する配付資料「ルネサンスと宗教改革」を配ります。各グループで資料を読み上げてもらい,福音の回復に向けて道を備える助けとなった,神から霊感された個人や出来事の例を見つけてもらいます。

ルネサンスと宗教改革

ロバート・D・ヘイルズ

「聖文の入手を可能にし,神の子供たちが読み方を学べるようにすることが福音の回復への最初の段階でした。元来聖書はヨーロッパの一般市民にはなじみのないヘブライ語とギリシャ語で書かれていました。救い主の死後約400年がたつと,聖書はヒエロニムスによってラテン語に翻訳されました。しかしまだ聖文が広く行き渡るという状態ではありませんでした。……

……やがて聖霊の影響を受けて,人々の心に学術への関心が芽生えました。ルネサンス,つまり『文芸復興』の運動がヨーロッパに広まりました。14世紀後半に聖職者ジョン・ウィクリフがラテン語から英語に聖書の翻訳を始めました。……

聖書を翻訳するよう霊感を受けた人がいる一方で,聖書を発行する手段を備えるよう導かれた人もいました。1455年までにヨハネス・グーテンベルクが組み替え可能な活字を発明し,聖書は最初に印刷された書物の一つとなりました。ようやく初めて聖書が同時に何冊も,しかも工面できる価格で印刷できるようになったのです。……

……16世紀初頭,若きウィリアム・ティンダルがオックスフォード大学に入学しました。……ティンダルは研究を進めるうちに,神の御言葉への愛を育み,神の子供たちが皆自分自身で御言葉を味わえることを願うようになりました。

それと同時期に,ドイツの聖職者で教授でもあるマルチン・ルターが当時の教会の95か所の間違いを見つけ,大胆にもその論題を手紙に書いて上位の聖職者に送りました。スイスではフルドリッヒ・ツビングリが改革の67か条を印刷しました。スイスのジョン・カルビン,スコットランドのジョン・ノックスなど多くの人がこの運動に加担しました。宗教改革が始まったのです。

その間ウィリアム・ティンダルは……ギリシャ語やヘブライ語から英語に直接翻訳した方が,ラテン語から翻訳したウィクリフのものより,さらに正確になり,読みやすくなると確信していました。そして神の御霊に啓発されたティンダルは,新約聖書,さらに旧約聖書の一部を翻訳しました。友人たちはそんなことをすれば殺されると警告しましたが,ティンダルの決意は変わりませんでした。ある学識のある人との議論の中で彼はこのように言いました。『神がわたしを生き長らえさせてくださるのであれば,何年もしないうちに,鋤を引いて畑を耕している農家の子供でさえ,あなたがたよりもはるかに聖書に精通させてみせよう。』〔quoted in S. Michael Wilcox, Fire in the Bones: William Tyndale—Martyr, Father of the English Bible (2004), 47

……国内の分裂に通じていたイギリス国王のジェームズ1世は,聖書の公式の版を新しく定めることに同意しました。欽定訳聖書には,ウィリアム・ティンダル訳の旧約聖書のかなりの部分……と新約聖書の80パーセント以上が,そのまま生かされていると推定されています。やがて時が来てこの欽定訳聖書は新世界に渡り,ジョセフ・スミスという14歳の農家の少年が読むことになりました。」(ロバート・D・ヘイルズ「回復と再臨の備え—『わたしの手はあなたのうえにある』」『リアホナ』2005年11月号,89-90参照)

配付資料:ルネサンスと宗教改革

十分に時間を取ってから,クラスに向けて見つけたことを生徒に発表してもらいます。

  • 福音の回復に向けて世を備えるうえで,神の子供たちが聖典を読めるようにすることは,なぜ重要な段階だったのでしょうか。

十二使徒定員会のロバート・D・ヘイルズ長老(1932-2017年)が語った次の言葉を見せ,生徒の一人に読み上げてもらいます。ほかの生徒には,回復に向けて道を備えたさらなる出来事に注意して聴いてもらいます。

ロバート・D・ヘイルズ

「イギリスの宗教弾圧は,……多くの人が新世界に自由を求める結果を生みました。そのような人々にピルグリムファーザーズがいました。彼らは1620年にアメリカに上陸しました。……ほかの入植者たちもすぐに後に続きました。ロードアイランド州の創始者や知事のロジャー・ウィリアムズもその一人で,キリストの真実の教会を探し続けた人です。ウィリアムズはこう言いました。『この地上には正しく設立された教会はないし,主の教会の儀式を執行する権能を持つ者もいない。それらが実現するのは,教会の偉大な管理者であられる御方から新しい使徒たちが遣わされる時であろう。わたしはその訪れを待ち望んでいる。』

それから100年以上が過ぎ,このような宗教感情がアメリカ大陸の新しい国の創始者たちを導きました。彼らは神の御手の下に,霊感を受けて起草された権利章典ですべての市民に宗教の自由を保証しました。その14年後の1805年12月23日,預言者ジョセフ・スミスが生まれたのです。回復の準備は,終わりに近づいていました。」(ロバート・D・ヘイルズ「回復と再臨の備え—『わたしの手はあなたのうえにある』」『リアホナ』2005年11月号,90)

  • 福音の回復に信教の自由が必要とされたのは,なぜでしょうか。

ロバート・D・ヘイルズ長老の次の言葉を見せ,生徒の一人に読み上げてもらいます。

ロバート・D・ヘイルズ

「ジョセフは若いころ宗教に関して『心の中で深く考えさせられ』ました〔ジョセフ・スミスー歴史1:8〕。宗教の自由な地で生まれたので,あらゆる教会のうちどれが正しいのかを問うことができたのです。そして聖書が英語に翻訳されていたので,神の御言葉に答えを探し求めることができました。……この貧しい農家の少年が,この末日に古代のイエス・キリストの教会と神権を回復するよう神に選ばれた預言者だったのです。」(ロバート・D・ヘイルズ「回復と再臨の備え—『わたしの手はあなたのうえにある』『リアホナ』2005年11月号,90)

  • 預言者ジョセフ・スミスの誕生に至るまでの数世紀の間に起こった霊感された出来事から,わたしたちは何を学べるでしょうか。(生徒たちが答えた後,次の真理をホワイトボードに書きます:無限の知恵により,神は福音の回復に向けて道を備えられた。

  • 回復へ向けた備えに見られる神の先見の明と無限の知恵を理解することは,神への信仰を深めるうえでどのような助けとなるでしょうか。

神はごく普通の不完全な人々に霊感を与え,大いなる者とし,彼らを通して御自分の業を果たされるということを教会歴史は物語っている

学識ある牧師に対するウィリアム・ティンダルの言葉を生徒たちに思い起してもらいます。「神がわたしを生き長らえさせてくださるのであれば,何年もしないうちに,鋤を引いて畑を耕している農家の子供でさえ,あなたがたよりもはるかに聖書に精通させてみせよう。」(ロバート・D・ヘイルズ「回復……の備え」89-90参照)ティンダルの言葉を分かち合った後,七十人のマーカス・B・ナッシュ長老の説教を紹介します。

マーカス・B・ナッシュ

「同様に興味深いことに,300年後,1830年代の著名な巡回説教師ナンシー・トウルが,『モルモン』をじかに見るためにカートランドを訪れました。そして,ジョセフ・スミスやほかの教会指導者たちと話をし,教会を手厳しく批判しました。

トウルの記録によれば,ジョセフが何も言わないため,彼女はジョセフの方を向いて,天使が金版のある場所を示したと誓って言うように求めました。するとジョセフは快く応じながらも,自分は決して誓わないと言いました。ジョセフをいらだたせることができなかったトウルは,ジョセフに恥をかかせようとしました。『あなたはこのような疑わしい主張をして恥ずかしいと思わないのですか』と,トウルは言いました。『あなたはこの国のどこにでもいる,ただの無知な農家の少年にすぎないわ。』

ジョセフは静かに答えました。『昔,無学の漁師たちに与えられたように,また再び賜物が与えられたのですよ。』〔Vicissitudes Illustrated, in the Experience of Nancy Towle, in Europe and America (1833), 156, 157〕」(マーカス・B・ナッシュ「ジョセフ・スミスー弱さを強くされる『リアホナ』2017年12月号)

  • 巡回説教師,ナンシー・トウルのジョセフ・スミスに対する発言からすると,ジョセフが天使を目にし,神から預言者となるように召されたのを信じることが彼女にとって困難だったのはなぜでしょうか。

  • ナンシー・トウルに対し「無学の漁師たち」と言及することで,預言者ジョセフ・スミスはどのようなメッセージを伝えたと思いますか。(必要であれば,「無学の漁師たち」はイエス・キリストが最初に召された使徒であるということを指摘します。使徒のうち何人かは貧しい漁師でした。)

二人の生徒に,交代で1コリント1:26-29教義と聖約124:1を音読してもらいます。ほかの生徒には,聞きながら,これらの聖句がジョセフ・スミスの召し,また預言者としての使命に関して何を教えているかを見つけてもらいます。

  • ジョセフ・スミスの召し,また預言者としての使命に関して,これらの聖句から何を学びましたか。

  • 主が御自分の業を果たされるとき,「地の弱い者たち」を召されるのはなぜだと思いますか(教義と聖約124:1)。

十二使徒定員会のニール・A・マックスウェル長老(1926-2004年)が語った次の言葉を見せ,生徒の一人に読み上げてもらいます。ほかの生徒には,聞きながら,ロレンゾ・スノー大管長と預言者ジョセフ・スミスとの個人的なかかわりを通してマックスウェル長老が教えたことを見つけてもらいます。

ニール・A・マックスウェル

「ロレンゾ・スノーも預言者ジョセフ・スミスには幾つか不完全なところがあると言っています。しかし,後に大管長となった,このスノー長老は,その不完全さにもかかわらず,主がジョセフを用いておられることを理解していたのです。これでおそらくロレンゾ・スノー長老(後のスノー大管長)は,自分も主の器として働くことができると感じたのではないでしょうか。

主はジョセフ・スミスを末日において『優れた聖見者』として用いられました。この事実が伝えている大切なメッセージは,わたしたちにも望みがあるということです。主はわたしたちに弱点があっても召しを与え,わたしたちが主のみこころを果たせるよう助けを与えてくださるのです。」(ニール・A・マックスウェル「優れた聖見者『聖徒の道』1987年12月号,34)

  • 預言者ジョセフ・スミスの不完全さに気づいたことで,ロレンゾ・スノー自身に希望がもたらされたのはなぜでしょうか。

  • マックスウェル長老の話から,わたしたちはどのような原則を見いだすことができますか。(生徒が見つける原則の例:主は弱く不完全な人々を召し,彼らを大いなる者とし,御自分の目的を果たされる。

  • この原則は,現在や過去の教会員,あるいは指導者の中に人の弱点を目にして信仰が揺らいでいる人にとって,どのような助けとなるでしょうか。

生徒の一人に,十二使徒定員会のM・ラッセル・バラード会長が述べた次の言葉を読み上げてもらいます。

M・ラッセル・バラード

「教会指導者と会員は完全であるか,完全に近くなければならないと,非常に多くの人が考えています。彼らは,主の恵みが十分であり,死すべき者を通じて御業が成し遂げられるということを忘れているのです。教会の指導者は誠意がありますが,わたしたちは時折間違いを犯します。これは教会での関係に限ったことではなく,同じことが友人,隣人,職場の同僚,配偶者と家族の関係にさえも起こります。

他の人の中に人間としての弱さを探すことは,割に容易です。しかし,わたしたちは,互いの人間性にのみ目を向け,神から召された者を通して働く神の御手を見ようとしないことによって,重大な間違いを犯します。」(M・ラッセル・バラード「神が舵を取っておられる『リアホナ』2015年11月号,25)

  • 弱さや不完全さがあっても主の業を行うよう,主がだれかに霊感を与え,大いなる者とされたのを目にしたことがありますか。(自分自身の例を分かち合ってもよいでしょう。必要であれば,人のことを批判したり,あまりにも個人的あるいは私的なことを話さないよう生徒たちに注意します。)

本コースでは,ジョセフ・スミスの少年時代から1846年のノーブー神殿奉献に至る末日聖徒の歴史を学習することを生徒に説明します。神の恵みを受け,神の御心を行おうとする中で,平凡で不完全な人々がいかにして神の業を成し遂げたかを生徒は学ぶことでしょう。

『聖徒たち—末日におけるイエス・キリスト教会の物語』第1巻「真理の旗」1815-1846年,この本を見せ,すべての生徒用読書課題はこの資料からのものであることを説明します。生徒に向けて,churchofjesuschrist.orgと福音ライブラリーアプリからこの資料にアクセスする方法を見せてもよいでしょう。

『聖徒たち』第1巻の概要を説明するには,「教会歴史の出来事の略年表:1805-1846年」を掲示するか,配付資料として個別に配ります。第1巻を学習するに当たり,生徒が年表から学ぶ重要な出来事を幾つか挙げます。

生徒が『聖徒たち』第1巻を完読できるように励ましてください。主を信じ,主の御心に従おうと努める平凡で不完全な男女を通して,主がどのように働きをなされたかに注目してもらいます。

次のレッスンまでに『聖徒たち』第1巻1-2章を読んでくるように言います。

配付資料:ルネサンスと宗教改革