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単元1,第4日—新約聖書の紹介とその背景


単元1—第4日

新約聖書の紹介とその背景

はじめに

新約聖書には,イエス・キリストの教えと贖罪,キリストの生涯,教会の設立,キリストの弟子による初期の時代の教導の業と教えが記録されています。このレッスンでは,多くのユダヤ人がイエスをメシヤまたは救い主として拒んだ理由なども含めて,新約聖書の歴史的,文化的背景について学びます。またイエスを救い主として謙遜に受け入れ,従った人々についても学ぶことができます。

新約聖書の背景

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detail from stoning of Stephen, stoning of Stephen

右側の絵を手で覆ってください。左側の絵だけを見ると,どんな出来事を描いた絵だと思いますか。右側の絵を覆っていた手をどけてください。

絵の全体を見ることで,どのように出来事の理解が深まるでしょうか。

頭に青い布を被っている人は,イエス・キリストの弟子であるステパノです。使徒7:56-59を読んで,この絵が何を表しているのかを学んでください。

絵の全体を見ることが,聖典の理解にどのようにたとえられるかを考えてください。

この活動は,聖文の背景を理解することの大切さを示しています。「背景」という言葉は,聖句,出来事,物語を取り巻く状況を意味します。新約聖書の歴史的,文化的背景の知識が深まるにつれて,そこから学ぶ教えをさらに理解し,当てはめることができるようになります。

このレッスンの次の部分には,新約聖書の背景についてさらに理解するのに役立つ情報が書かれています。

救い主が教導の業を行われた時代のユダヤ人宗教指導者たち

モルモン書の預言者ヤコブは,イエス・キリストの教え導く業を取り巻く状況を理解する助けとなる預言を記録しています。2ニーファイ10:3-5を読んで,救い主の教導の時代におけるユダヤ人の霊的な状態を表すのにヤコブが使った言葉や表現を見つけてください。

2ニーファイ10:5にある「偽善売教」という言葉は,神の民の幸いを求めることではなく,説教をして「利益と世の誉れ」を得ることを意味します(2ニーファイ26:29)。偽善売教を行っていた者たちは,おもにユダヤ人の間の邪悪な宗教指導者であり,人々を迷わせていました。

モーセの律法への追加とその他の誤った哲学

宗教指導者がどのように人々を迷わせていたかをさらに理解できるように,次のモーセの律法を現す丸の周りにもう1つの丸を描いて,「口伝律法」と書いてください。

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words Law of Moses in circle

モーセの律法とは,預言者モーセを通して神が古代のイスラエルに与えられた戒めと教えを意味します。ユダヤの教師たちは,彼ら独自の規則と解釈を律法に付け加えました。口伝律法または口承として知られるこれらの追加の規則と解釈は,神の律法を破るのを防ぐためにありました。例えば,口伝律法によると,安息日に結び目を両手で解くことは禁じられていました。それをすることは労働とみなされ,安息日を破ることを意味しました。しかしながら,片手のみで結び目を解くことは許されていました。

  1. 人が作った規則を神の戒めに加えることはどのような危険性を持っているか,あなたの考えを聖典学習帳に書き込んでください。

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Elder Bruce R. McConkie

十二使徒定員会のブルース・R・マッコンキー長老は次のように説明しています。「主の教導の時代,またその前の時代において」一部のユダヤ人の宗教指導者たちは「純粋な宗教の中から分かりやすく簡単な教えを選び,自分たちの勝手な解釈を加えました。多くの儀式典礼を付け足し,飾り立てたのです。礼拝から幸福と喜びを奪い,儀式典礼による制約的で縮小された,よどんだ制度へと変質させたのです。主の律法の持つ生き生きとした精神はユダヤ人の手で塗り変えられ,形骸化したユダヤ人特有の儀式主義に陥ったのです。」(The Mortal Messiah: From Bethlehem to Calvary,全4巻〔1979-1981年〕,第1巻,238)

マッコンキー長老によると,ユダヤ人宗教指導者たちは独自の解釈を加えることによって神の律法をどのようなものにしてしまったのでしょうか。

イエスの時代のユダヤ人は背教の状態にありました。アロン神権の権能と儀式は彼らの中で存続しましたが,多くのユダヤ人は神がモーセに明らかにされた宗教の真の実践から道を外れてしまっていました(教義と聖約84:25-28参照)。ユダヤ人の指導者たちによって加えられた口承は,純粋な宗教と記された神の言葉よりも優先されるようになっていました。

マタイ12:14を読んで,パリサイ人の口伝律法や伝統を軽視したイエスに対して彼らは何をしようとしていたか見つけてください。

他国による統治とメシヤによるイスラエル解放への期待

背教的ユダヤ人の伝統によってだけでなく,メシヤ降誕への誤った期待によって多くのユダヤ人がイエスを拒むことになってしまいました。

  1. 次の段落を読み,そこに書かれている質問の答えを聖典学習帳に書いてください。

    独立していた一時期を除き,新約聖書の時代までユダヤ人は500年以上にわたって支配された民として暮らしていました。ユダヤ人愛国者の一家であったマカベア家が率いた反乱により,キリスト誕生前の160年間は独立がもたらされました。しかし,キリストの誕生までには,イスラエルはローマにより征服されてしまいます。マカベア家と婚姻関係にあったヘロデ王が,イスラエルを統治するようローマによって任命されました。ローマの支配に反感を持っていたユダヤ人は,ローマ人から救い出してくれると彼らが信じていた約束されたメシヤを熱心に待ち望んでいました。多くのユダヤ人は外国の支配から救ってくれるメシヤを期待していたため,自分たちの救い主としてのイエス・キリストを拒みました。

    1. 多くのユダヤ人が来るべきメシヤに期待していたことは何だったでしょうか。

    2. この誤った期待が,メシヤとしてのイエスを拒絶するように,多くのユダヤ人を導いたのはなぜだと思いますか。

多くの謙遜なユダヤ人は,イエスをメシヤすなわち救い主として受け入れた

あるユダヤ人たちはキリストを拒みましたが,中には謙虚で霊的に敏感であったユダヤ人もいて,イエスをメシヤや救い主として認めていました。

ルカ2:25-33を読んで,ヨセフとマリヤが幼いイエスを神殿に連れて来たときに,シメオンという名の義人が何を行い,何と言ったか見つけてください。

ルカ2:30-32によると,なぜイエスは地球に送られたのでしょうか。

これらの聖句から,次のことがわかります。イエス・キリストは全ての人々に救いをもたらすために遣わされた。

  1. 全ての人が救われるようにイエス・キリストが行われた事柄を聖典学習帳に書き出してください。

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John baptizing Jesus

バプテスマのヨハネは,民をイエス・キリストの降誕に備えるために神に召されました。イエスにバプテスマを施した次の日,ヨハネは「見よ,神の子羊」とイエスの証をしました(ヨハネ1:36)。ヨハネ1:37-42を読んで,ヨハネがイエスについて証するのを聞いたヨハネの2人の弟子たちが何をしたかを見つけてください。

イエスこそがメシヤであるとのバプテスマのヨハネの証を聞いたアンデレは何をしましたか。アンデレが彼の兄弟であるシモン・ペテロにこの知らせを伝えたくてたまらなかったのはなぜだと思いますか。

ヨハネ1:43-44に記録されているように,救い主はピリポという名の人に弟子になるように言われました。ヨハネ1:45-46を読んで,イエスがメシヤであることを知ったピリポが何をしたか見つけてください。

ピリポはナタナエルにどうするように言いましたか。

新約聖書のこれらの例から,次の原則を完成させてください。わたしたちがイエス・キリストのもとに来るとき,願いをより強く持つようになる。

わたしたちがイエス・キリストのもとに来ると,なぜ周りの人にもそうするように招く願望がさらに強くなるのだと思いますか。

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President Henry B. Eyring

大管長会のヘンリー・B・アイリング管長は,わたしたちが周りの人にイエス・キリストのもとに来るよう招く時に,大きな祝福を受けると言われました。「最善を尽くして人々をキリストのもとに招くなら,自分の心も変わります。……人々が主のもとに来るのを助けることにより,あなた自身も主のもとに来たことを悟るでしょう。」(「キリストのもとに来なさい」『リアホナ』2008年3月号,54)

  1. 次の質問の答えを聖典学習帳に書きましょう。

    1. 周りの人をキリストのもとに来るよう招くことで,わたしたちがキリストにさらに近づくようになるのはなぜだと思いますか。

    2. あなたを救い主と福音に近づくよう招いたのは誰でしたか。その結果,あなたの人生はどのようなに祝福されてきましたか。

    3. 誰をイエス・キリストに近づくよう招くことができるか考えてください。周りの人をキリストに近づくよう招くには何ができると思いますか。

今年新約聖書を学習するにつれ,救い主に近づくようにと常に救い主があなたを招かれるのを感じるでしょう。その招きを受け入れる時,周りの人々もキリストに近づくように助けたいという願いであなたの心は満たされるでしょう。

  1. 聖典学習帳の今日の課題の下に,次の言葉を書いてください。

    _月_日,「新約聖書の紹介とその背景」のレッスンを学習し,終了しました。

    教師に伝えたいこと(質問,思ったことや分かったこと)—

次のページの表は,マタイ,マルコ,ルカ,ヨハネの福音書で今後学習する,イエス・キリストの生涯の記録におけるその背景をさらによく理解するのに役立てることができます。

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