インスティテュート
イエス・キリストを信じる信仰を持って質問する


「第3課:イエス・キリストを信じる信仰を持って質問する」『福音に関する疑問の答えを得る 教師用資料』

「イエス・キリストを信じる信仰を持って質問する」『福音に関する疑問の答えを得る 教師用資料』

〔聖典について深く考える若い男性の画像〕

第3課

イエス・キリストを信じる信仰を持って質問する

生徒には多くの質問があります。簡単な質問もあれば,慎重に扱うべきテーマに関する質問もあり,曖昧さや複雑さのある質問もあります。質問することに不安を感じる生徒や,質問を明確に伝える方法が分からない生徒がいるかもしれません。このレッスンでは,生徒は質問することの大切さについて話し合い,曖昧さに対処する方法について考え,イエス・キリストを信じる信仰の観点から疑問を捉える練習をします。

教えるための提案

教え方と学び方を改善する

救い主に焦点を当てる。生徒がこのコースで話し合いたい疑問が,どのような教義的,社会的,歴史的なものであっても,その選んだテーマが救い主と主の福音とどのように関連しているか深く考えるよう勧めます。生徒がイエス・キリストを信じる信仰の観点から話し合いを組み立てられるように助けてください。セミナリー・インスティテュート宗教教育長のチャド・H・ウェッブ兄弟は,次のように語りました。「次世代が信仰を高めるための最も重要な方法は,イエス・キリストをさらに教えと学びの中心に据えることだと理解し,確信するようになりました。そのために,主を知り,主から学び,主のようになるために,意識的に努力できるよう生徒を助けるのです。」(「わたしたちはキリストのことを話し,キリストのことを喜ぶ」〔宗教教育セミナリー・インスティテュート年次訓練放送における説教,2018年6月12日〕ChurchofJesusChrist.org

ミニ訓練を使って,学習スキルと話し合いのスキルを高める

このコースでは,教会の教義や教え,方針,歴史に関するテーマについて学ぶ能力,および話し合う能力を高めるのに役立つミニ訓練に参加する機会があることを生徒に説明します。ミニ訓練からスキルを選択し,生徒とともに訓練を完了します。

信仰を持って質問する

今日は福音学習において質問が果たす役割について研究することを生徒に伝えます。以下の文章を見せ,それぞれの文章対して次のいずれかの言葉を使ってどのように答えるか,生徒に考えてもらいます:(1)まったくそう思わない,(2)そう思わない,(3)どちらでもない,(4)そう思う (5)強くそう思う。これらの文章を基に,この活動の後にグループで話し合いを行うことを生徒に伝えます。

  1. 教会の教義や教え,方針,歴史について質問することは不適切である。

  2. 教会の教義や教え,方針,歴史に関する質問には,常に簡潔で明快な答えがある。

  3. 神への信仰や不信仰は,道徳の意義や人生の目的に関する疑問への取り組み方に影響を与えない。

生徒たちに,最も話し合いたいと思う文章を基に小さなグループを作ってもらいます。(すべての文章について話し合うようにします。)各グループに関連する配付資料を配ります。配付資料の内容と質問に基づいて話し合ってもらいます。

文章1:教会の教義や教え,方針,歴史について質問することは不適切である。

『福音に関する疑問の答えを得る』—第3課

グループで,文章1の的確さについて話し合います。ジョセフ・スミス—歴史1:10-13を読み,質問をすることによってジョセフ・スミスの人生がどのように変わったかを話し合います。その後,以下の教会指導者の言葉を読みます:

ディーター・F・ウークトドルフ管長

求めることは証の始まりです。福音についてまじめな疑問を抱いているために恥ずかしいと思ったり,自分はふさわしくないと感じたりする人がいるかもしれませんが,その必要はありません。尋ねることは弱さの現れではなく,成長の前触れなのです。

神はわたしたちに,分からないことについて答えを求めるよう命じられており,わたしたちがただ『キリストを信じながら,誠心誠意』問うことだけを求めておられます〔モロナイ10:4〕。そうするとき,すべてのことの真理が『聖霊の力によって』明らかにされます〔モロナイ10:5〕。

恐れずに尋ねてください。好奇心を持ってください。でも疑わないでください。皆さんが受けてきた信仰と光に常にしっかりとつかまってください。」(“President Dieter F. Uchtdorf: The Reflection in the Water,” Church News, Nov. 1, 2009, thechurchnews.com)

ラッセル・M・ネルソン大管長

疑問の答えを,主とその他の正確な情報源に求めてください。信じたいという望みをもって研究してください。預言者の人生の断片にある傷や聖文の食い違いを見つけようと思いながら研究するのではありません。そのようなことについて,疑い深い他の人々と語り合って自分の疑いを増長することはやめてください。霊的な発見の旅を主に導いていただけるようにしてください。(ラッセル・M・ネルソン「キリストはよみがえられた—キリストを信じる信仰は山を動かす『リアホナ』2021年5月号,103)

ローレンス・E・コーブリッジ長老

主要な疑問と,二次的な疑問があります。最初に主要な質問の答えを得てください。すべての質問が等しいというわけではありませんし,すべての真理が等しいわけではありません。主要な疑問がいちばん大切です。その他のことはすべて,重要度において劣ります。主要な疑問は少ししかありません。そのうちの4つについてお話しします。

  1. わたしたちの御父である神は存在するのか。

  2. イエス・キリストは神の御子,世の救い主なのか。

  3. ジョセフ・スミスは預言者だったのか。

  4. 末日聖徒イエス・キリスト教会は,地上における神の王国なのか。

これに比べて,二次的な疑問は数限りなくあります。……

主要な疑問に答えられれば,二次的な疑問にも答えられますし,答えられなくともあまり気にならなくなるでしょう。理解できることとできないこと,賛成できることとできないことをうまく処理することができるようになり,教会を離れることもなくなります。(Lawrence E. Corbridge, “Stand Forever” [Brigham Young University devotional, Jan. 22, 2019], speeches.byu.edu)

次の質問について話し合います:

  • 主は質問することについてどう感じておられるでしょうか。自分の疑問を主に尋ねるとき,わたしたちは主から何を受けることができるでしょうか。

  • 信仰を持って質問することと,疑いを持って尋ねることの違いは何ですか。(さらに深く掘り下げるには,信仰を持って質問を尋ねた例としてアルマ22:4-12を,疑いを持って質問を尋ねた例としてアルマ11:21-22,26-35を読むとよいでしょう。)

  • 主要な疑問と二次的な疑問の違いを見いだすのはなぜ大切なのでしょうか。主要な疑問をないがしろにし,二次的な疑問だけに焦点を当てるとどうなるでしょうか。

  • あなたの疑問の答えを,主や他の忠実な人々や信仰を高めてくれる情報源に求めることで,あなたの人生における学びと成長はどのように育まれましたか。

この話し合いの中で学んだことに基づいて,文章1を修正したものを書き留めてください。修正した文章と学んだことをクラスで発表する準備をしておいてください。

文章1:教会の教義や教え,方針,歴史について質問することは不適切である。

教師用配付資料

文章2:教会の教義や教え,方針,歴史に関する質問には,常に簡潔で明快な答えがある。

『福音に関する疑問の答えを得る』—第3課

グループで,文章2の的確さについて話し合います。1ニーファイ11:14-17を読み,御霊からの質問に対するニーファイの答えの重要性について話し合ってください。それから,次の文章を読んでください。

ブルース・C・ヘーフェン長老,マリー・K・ヘーフェン

回復された福音の基本的な教えは,力があり,明確で,明瞭です。しかし,聖文にも多少の曖昧さが含まれています。例えば,非常に重要な霊的な記録を手に入れるためにラバンを殺するように指示されたニーファイの話について考えてみてください。そのような状況には不透明さが伴います。……

人生は曖昧さに満ちており,理想と現実の間の隔たりをうまく処理することを学ぶことは,現世の計画の一つの目的です。神の計画により,わたしたちは皆,「すべての事物〔の〕反対のもの」に直面します(2ニーファイ2:11)。……

……自分の霊的な成長の重要なステップである,曖昧さを認識する能力は,理解の最終形ではなく,始まりにすぎないのです。…

〔確実なことと〕不確実なことの隔たりに対する最善の対応は,成長し続けることです。……

複雑さに対して最初の驚きに遭遇したとき,細心の注意を払って,芽を出そうとしている信仰の種を育てなければなりません。太陽が照りつけるときに苗木が枯れないようにするのです。(Bruce C. Hafen and Marie K. Hafen, Faith Is Not Blind [2018], 9–10, 13–14, 18)

シェリー・L・デュー姉妹

信仰によって学ぶことは,研究によって学ぶことと同じくらい重要です。なぜなら,書物からは学べないものが幾つかあるからです。

ダリン・H・オークス長老は次の真理を強調しています。「記録をすべて公にしたとしても,研究では解決できない基本的な疑問が会員に残ることもあります。…信仰によってしか学べないことが幾つかあります〔教義と聖約88:118参照〕。わたしたちが最終的に頼るべきは,聖霊から受けた証を信じる信仰なのです。」〔「すべての事物には反対のものがある『リアホナ』2016年5月号,117〕…

…疑問が生じることは…あなたが証を持っていない,あるいは福音が真実でないことを示すものではありません。それは,霊的に成長するようにという招きです。…

…疑問,特に難しいものは,主に導いていただけるように,わたしたちを霊的な苦闘へと駆り立てます。…

霊的に成長し,疑問に対する答えを受けるかどうかは,御霊のささやきを感じ取り,聞き,理解する能力にかかっています。個人の啓示を受けられるようになるために霊的な苦闘を経験することは価値ある行為です。なぜなら,聖霊にしかできない方法で御霊がわたしたちの心と思いに証してくださるときにのみ,何が真実かを知ることができるからです。(Sheri Dew, “Will You Engage in the Wrestle?”[Brigham Young University–Idaho devotional, May 17, 2016], byui.edu)

次の質問について話し合います:

  • 教会の教義や教え,方針,歴史に関する疑問の幾つかには,曖昧さや不確実さ,複雑さが伴う可能性があることを認識することは,なぜ大切なのでしょうか。

  • ヘーフェン長老夫妻とデュー姉妹によると,曖昧さや複雑さをもたらす難しい福音の疑問や人生の疑問に対処するための実りある方法には,どのようなものがあるでしょうか。

  • あなたが曖昧さや不透明さ,複雑さに直面したときに,イエス・キリストとその福音を信じる信仰に忠実であり続けるうえで,最も助けになったのは何ですか。

この話し合いで学んだことに基づいて,文章2を修正したものを書き留めてください。修正した文章と学んだことをクラスで発表する準備をしておいてください。

文章2:教会の教義や教え,方針,歴史に関する質問には,常に簡潔で明快な答えがある。

教師用配付資料2

文章3:神への信仰や不信仰は,道徳の意義および人生の目的に関する疑問に対する取り組み方に影響を及ぼさない。

『福音に関する疑問の答えを得る』—第3課

グループで,文章3の的確さについて話し合います。アルマ30:12-18を読み,コリホルの信条が彼の道徳観や人生の目的に対する視点にどのような影響を与えたか話し合います。それから,次の文章を読んでください。

ブルース・C・ヘーフェン長老,マリー・K・ヘーフェン

信じるという行為は,見る人の心に生じるものです。救い主は周りの人々に,「聞く耳のある者は聞きなさい」と言われました(ルカ8:8)。…

リーハイの4人の息子は,同じ善い親から生まれました。信じる者たちの間に生じた違いは,彼らに起こった出来事ではなく,出来事に対する態度の違いでした。その態度は自分の心に端を発するもので,信じるかどうかは自ら自由に選ぶのです。…

…〔神〕は,わたしたちが進んで神を信じ,神を受け入れ,神を求めるかどうかをコントロールすることはできません。ただわたしたちに手を差し伸べ,もしわたしたちがその手を取ることを選ぶならば,わたしたち自身の成長に必要なものが何であろうと,わたしたちを導いてくださるのです。(Bruce C. Hafen and Marie K. Hafen, Faith Is Not Blind [2018], 81, 88)

ダリン・H・オークス管長

力強く影響力のある社会の見解に,「道徳的相対主義」があります。絶対的な善悪はないという考え方です。この考えの裏には,神は存在しない,あるいは神が存在するとしても,今日のわたしたちに当てはまる戒めは与えておられない,という仮定があります。…

末日聖徒は明らかに,違った前提を起点としています。すなわち,永遠の律法の源である神がおられて,多くの選択の善悪を定める戒めを与えておられる,という前提です。わたしたちは道徳的相対主義に反対します。また,青少年がこの偽りの前提に基づいて論じ,結論を出すことによって,欺かれたり丸め込まれないように助けなければなりません。

真理かどうかの判断や,多種多様な提案が容認できるかを判断する際,起点となる前提をどこで探せばよいのでしょうか。わたしたちは神の言葉を自分自身のいかりとします。その言葉は聖文や現代の預言者の教えに含まれています。わたしたちの主要な前提であるこれらの真理にいかりをおろしていなければ,わたしたちの結論が間違いないことを確信することはできません。(Dallin H. Oaks, “As He Thinketh in His Heart” [evening with a General Authority, Feb. 8, 2013])

注:前提とは,出発点,すなわち視点の土台です。仮定とは,あなたが真実だと推測するものの,真実ではないかもしれないものです。)

次の質問について話し合います:

  • わたしたちの前提(出発点)は,なぜ疑問に対する答えにそれほど大きな違いを生むのでしょうか。

  • 神を信じる信仰を根本的な前提として疑問について考えるとき,どのような違いが生じるでしょうか。

  • 神を信じることが選択の問題であることを理解することは,なぜ大切なのでしょうか。

この話し合いの中で学んだことに基づいて,文章3を修正したものを書き留めてください。修正した文章と学んだことをクラスで発表する準備をしておいてください。

文章3:神への信仰や不信仰は,道徳の意義および人生の目的に関する疑問に対する取り組み方に影響を及ぼさない。

教師用配付資料3

グループでの話し合いに十分な時間を取った後,各グループから一人の生徒に,修正した文をホワイトボードに書いてもらうとよいでしょう。これらの文章には,次のような考えが含まれるかもしれません:

  1. 教会の教義や教え,方針,歴史に関して信仰に促された質問をすることは,わたしたちの霊的な成長にとって適切であるだけでなく必要でもある。

  2. 教会の教義や教え,方針,歴史について,必ずしも簡潔で明快な答えがあるわけではない。

  3. 神への信仰や不信仰は,道徳の意味や人生の目的に関する疑問に対してどのように取り組むかに影響を与える

時間を取り,生徒に訂正した文章と,話し合いから学んだことを説明してもらいます。生徒が自分の気付きを分かち合うときに,信仰を持って質問したり答えたりするとはどういう意味かをさらに理解できるよう,補足質問をするとよいでしょう。例えば,次の質問のいずれか一つ,あるいは両方を尋ねるとよいでしょう:

  • この洞察は,信仰を持って質問するとはどういう意味かをさらに理解するうえでどのように役立つでしょうか。

  • 自分の疑問の一つに対する答えを求めていたときに,この洞察が助けとなったのはどのようなときですか。

クラスの準備として,教会の教義や教え,方針,歴史に関する自分の疑問を書き留めるように勧められていたことを生徒に思い出してもらいます。今日学んだことによって自分の疑問に対する見方が変わった生徒がいるか尋ね,自分の考えを分かち合いたい人を招きます。

イエス・キリストを信じる信仰の観点から質問をしたあなた自身の経験と証でクラスを終えるとよいでしょう。

次回に向けて

次のクラスでは,神の恵みの賜物について話し合うことを説明します。一週間の間少し時間を取り,「福音ライブラリー」から神の恵みの賜物について学べることがないか見てみるよう,生徒に勧めます。