「6:キリストのような特質を伸ばすにはどうしたらよいでしょうか」『わたしの福音を宣べ伝えなさい—伝道活動のガイド』121-132
「6 キリストのような特質」『わたしの福音を宣べ伝えなさい』121-132
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キリストのような特質を伸ばすにはどうしたらよいでしょうか
イエス・キリストはこの世で教え導く業を始められたとき,ガリラヤの海辺を歩いて,二人の漁師ペテロとアンデレを召されました。イエスは「わたしについてきなさい。あなたがたを,人間をとる漁師にしてあげよう」と言われました(マタイ4:19。マルコ1:17も参照)。主はあなたも御自分の業に召してくださいました。そして,御自身に従ってくるよう招いておられるのです。キリストに従ってくるようにとの招きは,キリストの模範に従い,キリストのようになりなさいという意味です。これは,イエス・キリストの贖罪によってのみ可能となります(モーサヤ3:19参照)。
『わたしの福音を宣べ伝えなさい』に収められている幾つかの章では,あなたが宣教師として行う必要のある事柄に焦点が当てられています。すなわちどのように研究し,教え,時間を賢く管理したらよいかということです。しかしながら,あなたが行う事柄と同様にきわめて重要なことは,あなたがどのような人物であり,どのような人物になろうとしているのかということです。これは,最後まで堪え忍ぶという言葉が意味することの一つです。すなわち,キリストを信じる信仰を深め,キリストに頼って日ごろから自分の罪を悔い改め続け,定期的に聖餐を取ることを通して御父と御子と交わした聖約を新たにし,すべての事柄について聖霊の促しに従うのです。
あなたは,回復された福音によって天の御父やイエス・キリストのようになることができます。救い主は,その道を示してくださいました。救い主は完全な模範を示して,御自分のようになるよう命じておられます(3ニーファイ27:27参照)。救い主に学び,救い主の特質を生活に取り入れるようにしてください。主の贖罪の力によって,あなたはこの目標を成し遂げ,ほかの人々を同じ目標に向かって導くことができます。
聖文はキリストのような特質について説明を加えています。これらはあなたが宣教師として,また生涯を通じて育んでいくべき大切なものです。本章の聖文を研究し,またほかの聖文を研究する際に,キリストのような特質が示されている例を見つけてください。
キリストのような特質は神から授けられる賜物です。あなたが選択の自由を義にかなって使うときにもたらされるものです。そのような特質を祝福してくださるよう天の御父に願い求めてください。神の助けなしに,育むことはできません。神に喜んでいただこうという望みを心に抱いて,自らの弱さを認め,進んでよりよい自分になろうと努めてください。
本章を研究するためのアイデア
本章の研究に取り組む方法はたくさんあります。以下のアイデアから一つを選んで,実行してください。
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本章の末尾にある「特質を伸ばすための活動」を完成させて,あなたが最も伸ばす必要のある,または最も伸ばしたいと願う特質を明らかにします。その特質に関する項を研究してから,それを伸ばすための目標を設定してください。
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聖文を研究しないまま,本章を通読して,詳しく調べたいと思う特質を選びます。それから,その特質に関する主要な聖文を研究します。その特質について,本章で採り上げられていないほかの聖文を探します。その特質を伸ばすためのアイデアを学習帳に書き留めておきます。
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研究したいと思う特質を選びます。それから,本章の末尾近くにある「キリストのような特質を伸ばす」の項に記されているパターンを実行します。
イエス・キリストを信じる信仰
キリストに対する信仰を抱く人は,キリストが神の御子であり,肉における御父の独り子であられることを信じています。救い主,贖い主として受け入れ,キリストの教えに従います。主の贖いを通して自分の罪が赦されることを信じています。キリストを信じる信仰とは,キリストを信頼し,キリストから愛されていることを確信するという意味です。
信仰は悔い改め,従順,献身的な奉仕などの行動へと駆り立てます。イエス・キリストを信じている人は,戒めが与えられている理由を完全に理解していないときでも,その戒めに従うほど主を信頼しているのです。主が望んでおられることを成し遂げようとします。自分と人々の生活の中で善いことが起きるよう力を尽くします。主の御心にかなっていれば,奇跡を成し遂げることもできます。勤勉に働くことによって信仰を表すのです。
信仰は力の源です。神は力によって働かれますが,神の力は普通,信仰に応じて行使されます(モロナイ10:7参照)。神は人の子らの信仰に応じて働かれるのです。疑いや恐れは信仰とは反対のものです。
勤勉な研究と祈り,戒めに従うこと,献身的な奉仕,聖霊の促しと戒めに従うことによって信仰は強められます。
イエス・キリストを信じる信仰は,主と主の教えをよく理解するにつれて強くなります。聖文を調べることにより,主の方法,全人類に対する主の愛,主の戒めを学ぶことができます。
聖霊の使命と力を信頼することも信仰の一つです。信仰によって,祈りの答えを受け,主の業において導きとなる個人的な霊感を受けるのです。
希望
希望とは,主が約束を果たされることについて揺るぎない信頼を寄せることです。それは信頼,楽観主義,熱意,忍耐強い粘り強さの中に表されます。何かが起きると信じ,期待することです。希望を持つとき,すべてのことが自分のためになると信頼し,確信をもって試練や問題に立ち向かえます。希望によって落胆を乗り越えることができます。聖文の中ではしばしば,イエス・キリストに対する希望とは,日の栄えの王国において永遠の命を受け継ぐと確信することであると述べられています。
ジェームズ・E・ファウスト管長はこのように教えました。
「希望,それは心の錨です。……
希望は神の約束を信頼することです。今行動すれば,願っている祝福が将来成就するという信仰です。……
希望の揺るぎない源は,わたしたちが神の息子,娘であり,御子である主イエス・キリストがわたしたちを死から救われたということです。」(「希望,それは心の錨」『リアホナ』2000年1月号,70-72)
慈愛と愛
あるとき一人の男がイエスに尋ねました。「律法の中で,どのいましめがいちばん大切なのですか。」イエスは答えられました。「『心をつくし,精神をつくし,思いをつくして,主なるあなたの神を愛せよ。』これがいちばん大切な,第一のいましめである。第二もこれと同様である,『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ。』」(マタイ22:36-39)
慈愛とは「キリストの純粋な愛」です(モロナイ7:47)。神のすべての子供たちに対する神の永遠の愛も慈愛です。わたしたちはそのような愛を育むよう努めなければなりません。心に慈愛が満たされていると,神の戒めを守ります。 また,人々に仕え,回復された福音を受け入れるよう助けるためにできることをすべて行います。
慈愛は神から授けられる賜物です。預言者モルモンはわたしたちに,「この愛で満たされるように……熱意を込めて御父に祈」らなければならないと述べています(モロナイ7:48)。この勧告に従い,義にかなった業を行おうとするときに,あらゆる人,特にあなたが働いている地の人々に対する愛が深まります。人々の永遠の繁栄と幸福を心から気にかけるようになります。ほかの人々を,天の御父のようになる可能性を持った神の子供として見るようになって,彼らのために力を尽くすようになります。怒りや嫉妬,情欲,貪欲など,邪悪な気持ちを追い払うようになります。人々を裁いたり,批判したり,だれかに対して否定的なことを言わなくなります。人々を理解し,彼らの見解を理解できるよう努力するようになります。人々に対して忍耐を示し,彼らが苦しんだり落胆したりするときに助けようとします。慈愛は,信仰と同じように行動へと駆り立てます。人々に仕え,自らをささげる機会を求めるときに,慈愛を伸ばすことができます。
徳
徳は心の奥底にある思いと望みから生じるものです。徳は道徳的に高い標準に基づいた思いと行動のパターンです。聖霊は清くない幕屋には住まわれないので,御霊の導きを受けるには徳を身に付けることが前提条件となります。一人でいて,だれからも見られていないと思っているときに考え,行うことによって,自分の徳を的確に測ることができます。
徳高い人は霊的に清く純粋です。義にかなった,人を高める思いに心を向け,不適切な行動につながるふさわしくない思考を頭の中から追い払います。神の戒めを守り,教会指導者の勧告に従います。誘惑を退け,義を行うために,強さを求めて祈ります。罪や悪い行いを速やかに悔い改めます。徳高い人は神殿推薦状を受けるにふさわしく生活します。
人の思いは劇場の舞台にたとえることができます。けれどもこの舞台に立てる役者は一時に一人だけです。舞台にだれも立っていないと,暗黒と罪の思考がしばしば舞台に上がって誘惑します。しかしながら,思いという舞台が健全な思考で占められていれば,そのような思考が力を振るうことはありません。健全な思考とは,誘惑を受けたときに思い出すことのできる,頭にある賛美歌や聖句などです。思いの舞台をコントロールすることで,誘惑に屈し,罪に陥るように促す頑固な衝動を首尾よく抑えることができます。このようにして,あなたは清くなり,徳高い人になることができます。
知識
主は「研究によって,また信仰によって学問を求めなさい」と命じられました(教義と聖約88:118)。主はまた「人が無知で救われることは不可能である」と警告されました(教義と聖約131:6)。知識,特に霊的な知識を求めてください。毎日聖文を研究するとともに,生ける預言者の言葉も研究してください。研究と祈りを通して具体的な疑問,課題,機会について助けを求めてください。回復された福音について教えたり,質問に答えたりする際には,どのような聖句を活用できるか特に注意を払ってください。
どうすれば福音の原則を生活の中で応用できるか考えてください。勤勉に,祈りの気持ちと清い動機をもって研究するときに,聖霊は思いを照らし,教え,聖文と生ける預言者の言葉の意味を理解できるように助けてくださいます。またほかの人々,特に教会指導者に目を向け,耳を傾けることによっても知識を得ることができます。あなたもニーファイのように,「わたしは聖文に喜びを感じる〔。〕わたしは聖文について心に深く考え〔る。〕……見よ,わたしは主に関することに喜びを感じる。わたしの心は,これまでに見聞きしたことを絶えず深く考えている」と言うことができるようになるでしょう(2ニーファイ4:15-16)。
忍耐
忍耐とは,遅れや問題,反対,苦しみを,怒りや落胆,不安を募らせることなく耐える能力です。神の御心を行い,神の定められた時を受け入れる能力です。忍耐する姿勢があれば,試練に耐え,穏やかにまた希望をもって逆境に立ち向かうことができます。忍耐は希望と信仰に関連があります。すなわち,主の約束された祝福が成就するのを待つということです。
日常の経験や人間関係の中で,特に同僚との関係においては忍耐することが求められます。欠点や弱点を克服するために,自分も含め,すべての人に忍耐しなければなりません。
謙遜
謙遜とは主の御心に進んで従い,達成したことについて主に誉れを帰すことです。謙遜であれば,主の祝福に感謝し,主の助けがいつも必要であることを認めます。謙遜は弱さのしるしではなく,霊的な強さのしるしです。へりくだって主を信頼し,その力と憐れみを認めるなら,自分を益するために主の戒めがあると確信できるでしょう。主に頼るなら,主から求められることは何でも果たせるという自信を抱くのです。また主が選ばれた僕たちを心から信頼し,彼らの勧告に進んで従うことでしょう。従順になり,熱心に働き,自分を忘れて奉仕しようと努める中で,謙遜さが助けになってくれます。
謙遜の反対は高慢です。高慢は聖文の中で非難されています。高慢とは,神や神の僕たちよりも,自分自身に大きな信頼を寄せている状態を意味します。神に関することよりも,この世のことを優先させるという意味もあります。高慢な人は神に栄光をもたらすよりも,自分自身の名誉を求めます。高慢さは競争心をかき立てます。高慢な人は,人よりも多くのものを求め,自分が人よりも優れていると思い込むのです。たいてい,高慢は怒りと嫌悪感を引き起こします。それは大きなつまずきの石となるものです。
勤勉(熱心)
勤勉とは堅実に,一貫して,熱心に,精力的に主の業に励むことです。主は勤勉(熱心)に働くよう望んでおられます。粘り強く,努力と注意を傾けて働くことです。勤勉な宣教師は効果的に,また効率よく働きます。勤勉に伝道活動を行うことは,主と主の業に対して愛を表すことです。勤勉であるなら,自分の働きに喜びと満足を見いだすことでしょう。
自由意志によって多くの善いことを行ってください(教義と聖約58:27参照)。何を行うべきか指導者が告げてくれるのを待たないことです。疲れていても,できるすべてを行うまで続けてください。最も大切なことに焦点を当てて,時間を無駄にしないでください。導きと強さを求めて祈ってください。定期的に,また効果的に計画を立ててください。あなたの思いや行いを大切なことからそらす,あらゆるものを避けてください。
従順
あなたは宣教師として,進んで戒めを守り,伝道部の規則に従い,指導者の勧告に従うことを求められています。従順は天の第一の律法であり,信仰に基づく行為です。時々,完全には理解していないことを行うよう求められるかもしれません。従順であるならば,信仰,知識,知恵,証,守り,自由が増し加えられます。主と生ける預言者,伝道部会長に従順であるよう努めてください。
キリストのような特質を伸ばす
本章で説明されている特質や,聖文に見られるほかの特質を研究し,伸ばすよう努力するときに,以下のパターンに従うとよいでしょう。
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伸ばしたいと思う特質を見つける。
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その特質の定義と説明を書く。
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研究する中で答えるための質問を記録しておく。
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その特質について教えている聖句をリストにして,詳しく研究する。
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感じたことや印象を記録しておく。
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目標を決めて,生活の中でその特質を応用する計画を立てる。
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その特質を伸ばせるよう主の助けを祈り求める。
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個々の特質について定期的に進歩状況を評価する。
研究と応用のためのアイデア
個人学習
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本章で説明されている特質の一つについて,5分間の話を準備してください。
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『聖句ガイド』を活用し,本章で説明されている特質について,救い主がどのような模範を示されたか探してください。学んだことを学習帳に記録します。
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本章の最後にある「特質を伸ばすための活動」を定期的に完了してください。
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本章で採り上げている特質を一つ選んで,次のように自問します。
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どうすればこの特質を伸ばせるだろうか。
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この特質を伸ばすうえで,自分の心,思い,行動に関して何を改める必要があるだろうか。
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聖約を守ることは,この特質を伸ばすうえでどのように助けとなるだろうか。
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聖なる御霊を受けるにふさわしくなり,イエス・キリストの福音をいっそう力強く伝える教導者となるために,この特質を伸ばすことはどのような助けとなるだろうか。
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生活の中でキリストのような特質を示した男女の例を聖典から探します。感じたことを学習帳に書き留めてください。
同僚との勉強会
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福音ライブラリーその他,承認されたリソースから,キリストのような特質に言及している部分を研究してください。
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様々な特質の相互関係について話し合ってください。例えば,
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信仰は勤勉さとどのような関係にあるでしょうか。
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謙遜さは愛とどのような関係にあるでしょうか。
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知識はどのように忍耐心を強めてくれるでしょうか。
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ディストリクト評議会,ゾーン大会,および伝道部リーダーシップ評議会
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ディストリクト評議会,ゾーン大会,あるいは伝道部リーダーシップ評議会の数日前,本章あるいは聖典で採り上げられている特質を一つ選び,その特質について5分間の話を準備するよう宣教師たちに伝えます。自分にとって助けとなった聖句の引用も含めてもらいましょう。
集会の中で何人かの宣教師に話を分かち合ってもらう時間を取ってください。
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宣教師を3つのグループに分けて,各グループに以下の割り当てを与えます。
グループ1—1ニーファイ17:7-16を読んで,以下の質問に答えてください。
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ニーファイはどのように信仰を行使したでしょうか。
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ニーファイのどのような行為がキリストのようだったでしょうか。
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ニーファイが忠実であって,戒めを守ることを条件に,主はどのような約束を与えられたでしょうか。
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この出来事は伝道活動にどのように応用できるでしょうか。
グループ2—モルモン書ヤコブ7:1-15を読んで,以下の質問に答えてください。
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ヤコブの信仰がシーレムの攻撃に耐え得るほど強かったのはなぜでしょうか。
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ヤコブはシーレムと話すときに,どのように信仰を行使したでしょうか。
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ヤコブの行動は,どのような点においてキリストのようだったでしょうか。
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ヤコブのような信仰を育むにはどうすればよいでしょうか。
グループ3—ジョセフ・スミス—歴史1:8-18を読んで,以下の質問に答えてください。
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ジョセフ・スミスはどのような方法でイエス・キリストへの信仰を行使したでしょうか。
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ジョセフの信仰はどのように試されたでしょうか。
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ジョセフのどのような行いが,キリストのようだったでしょうか。
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ジョセフ・スミスの模範に従うために,わたしたちはどのようなことができるでしょうか。
各グループが割り当てを終えたら,集合して,話し合ったことを発表してもらいます。
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ほかの人の信仰によって祝福を受けた経験,または鼓舞された経験を分かち合ってください。
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宣教師に「特質を伸ばすための活動」を開いてもらいます。白紙を1枚ずつ配って,答えを書いてもらいます。
「特質を伸ばすための活動」が終わったら,個人の目標を立ててもらいます。
何人かの宣教師に,この活動で学んだことや感じたことを発表してもらいます。
キリストのような特質を伸ばすことの大切さについて,あなたの証を分かち合ってください。
伝道部会長夫妻と顧問
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宣教師に,新約聖書の四福音書の一書または第三ニーファイ11章-28章を読ませ,救い主が行われたことの中で自分たちにも実行できる事柄に傍線を引かせてください。
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目標設定と計画を使って,宣教師に勤勉(熱心)について教えてください。熱心に人々に関心を向けることは,愛の現れであることを示しましょう。
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面接や会話において,宣教師が伸ばそうと努力している特質について話してもらいます。
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ゾーン大会または伝道部リーダーシップ評議会で,同僚が持っているキリストのような特質について宣教師たちに話をしてもらいます。