第15課
試練と逆境
目的 人生の様々な試練や逆境,苦難に対処するために白らを備える。
試練や逆境,苦難の目的を理解する
「わたしはこの30年間,合衆国や中南米の空をいろいろな機種の飛行機で飛び回ってきました。つい最近,何年ぶりかで合衆国に帰ってくると,親友の一人が買ったばかりの双発セスナ機に乗ってみるように勧めてくれました。……
そこでわたしは,彼の保険がわたしにも適用できるかどうか尋ねました。すると,わたしがこの種の飛行機に乗ったのはかなり以前だということで,資格ある検査官とテスト飛行をしなければならないことが分かりました。
手続きを済ませたわたしは,約束の時間に飛行場で検査官と会いました。わたしは合衆国,アルゼンチン,パラグアイ,エクアドルの飛行機免許証と,セスナ310型機でジャングルや山や砂漠や国境などを越えて飛んだことを示す航空日誌を持って乗り込みました。検査官は穏やかな笑みを浮かべ,事務的な口調でこう言いました。『あなたについて聞きました。飛行経験も十分あるようですが,それはすべてが順調にいっていた場合のフライトと考え,これから,悪条件の下でどれだけできるか見せていただきます。』
それからの1時間,彼はあらゆる悪条件を作り出しました。思いつくかぎりの緊急事態を想定し,入れておくべきスイッチを切り,切っておくべきスイッチを入れました。まったくのパニック状態を引き起こそうとしたのです。このような最悪の状況の中で,わたしがどれだけ操縦できるか見たかったのです。テスト飛行を終えて地上に降り立った彼は,わたしの航空日誌にサインをして,『合格です』と言いました。……
人生の目的の一つは,わたしたちが主にどれだけ奉仕するかを試され,それを証明することです。預言者ジョセフ・スミスは,わたしたちがいかなる艱難の中にあっても主に忠実に奉仕できるかどうかを試されるときがくると語っています。わたしたちは前世で,行く手にはわたしたちを試す数多くの逆境が待ち受けていることを知っていました。事故や病気,誘惑,悩み,失望,落胆,災難,失敗,これらすべてがわたしたちを試み,人格を試すことを知っていました。……
大切な質問はこうです。まったくの悪条件の中でどれだけ上手に操縦できるでしょうか。あらゆる試練と苦難に遭遇して信仰を試されるとき,どれほどそれに耐えて生活できるでしょうか。」(ロバート・E・ウエルズ「悪条件の中を飛ぶ」『聖徒の道』1979年7月号,29-31)
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試練や逆境や苦難の中にあるときにこそ,主に忠実であることが大切なのはなぜですか。(順調なときにだけ忠実だとしたら,ほんとうの意味で従順とは言えない。試練や逆境や苦難の中にあって忠実に生活できるなら,より大きな祝福を受ける。試しにあっても従順であれば,霊的に成長することができる)
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わたしたちが受ける試練にはどのようなものがあるでしょうか。
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一人の生徒に,マタイ5:44-45を読んでもらう。
義人であろうとなかろうと,すべての人が試練や逆境に遭遇します。ジョン・テーラー大管長は,次のように語っています。
「わたしはあるとき,預言者ジョセフが十二使徒にこのように言うのを聞きました。『皆さんはあらゆる種類の試練を経験するでしょう。それは,アブラハムや神の人と呼ばれるほかの人々と同様に,皆さんも試みを受けることが必要だからにほかなりません。神は皆さんを心にかけられるでしょう。そして,皆さんをその手で支え,心の琴線に触れられるでしょう。皆さんはそれに耐えることができなければ,神の日の栄えの王国で受け継ぎを得るにはふさわしくないのです。』」(Journal of Discourses,24:197)
試練や逆境,苦難を乗り越える
ステラ・オークス姉妹は,自分がどのような試練を体験して乗り越えたかを,次のように話しています。「天父と個人的な関係を築くこと,天父がどんな小さなことでも導いてくださることを決して疑わないこと,試練の中にあっても『御心が成りますように』と言えるようになること,それらを通して,信仰によって人生を歩む力が得られるのだと思います。この力は,人が皆つらい経験に耐え,その中から自分なりに学び取らなくてはならないものです。わたしが最も耐え難い試練を受けたのは,結婚してわずか11年目のことでした。夫の命が危くなり,母親として女手一つで子供を育てなくてはならない事態になったのです。この事態を従順に受け入れるかどうか信仰を試されることになりました。……
わたしは,夫のロイドが日に日に衰弱していくのをじっと見守っていました。……
6月のある夜,身も心も疲れ果てたわたしは,祈りの答えを得るにはどうすればよいものかと思案しながら,一人ひざまずいて天父に祈りをささげていました。すると何とも平安な思いに包み込まれるような感じがしました。それと同時に,神が常にともにいてくださり,この経験が主の御心によるものであって,自分に原因がないことが確信できたのです。そして最後には,『御心が成りますように』と言う言葉が口をついて出て,心に平安を覚えることができました。……わたしは信仰によって平安を取り戻し,主に対する信頼を新たに深めた自分に気づいたのです。
しかし心に平安を覚えたとは言え,わたしはまだ眠ることができず,再び明かりをつけました。そして教義と聖約を取ろうと手を伸ばしたとき,……本が床に落ちて,開きました。そこには,〔わたしにぴったりの聖句〕が記されていました。……わたしは主がわたしを愛してくださり,与えられた使命を果たすためにわたしに必要な力を与えてくださることを知りました。そのときからわたしの人生は大きく変わりました。常に主の愛で包まれるのを感じ,その愛によってこれまで支えられてきたのです。あのときから今日まで,幾度となくつらいことや苦しいことを経験してきましたが,その度に,イエスがキリストであり,わたしたちの贖い主であること,またあらゆる障害を乗り越えることができるようにわたしたちを支えてくださるという確信を得ることができたのです。」(“Thy Will Be Done,” in Leon Hartshorn, comp., Remarkable Stories from the Lives of Latter-day Saint Women,第2巻 1973–75年,2:183-84)
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この姉妹は何を学びましたか。どのようにしてそれを知りましたか。
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主の御心を受け入れるようになることはなぜ大切なのですか。(主はわたしたちにとって何が最もよいか知っておられる。天父は,わたしたちがみもとに帰るために試しを経験しなければならないことを知っておられる)
オークス姉妹は信仰を持って祈ることにより,聖典から力と確信を得ました。また,イエス・キリストに頼れば試練に耐えられることを知りました。わたしたちにも同じことが言えます。
祈りと断食
「困窮しているときの祈りは,大きな恵みをもたらします。容易に耐え得る試練においても,ひどい苦しみを伴う試練でも,わたしたちは祈りをささげることによって神に近づき,大きな慰めと助けを得ることができます。」(エズラ・タフト・ベンソン「落胆してはいけない」『聖徒の道』1975年2月号,90参照)
神に特別な祝福を願うときには,断食によって力が得られることを忘れてはなりません。断食して祈れば,御霊を感じ,天父の御心を知ることができます。(『末日聖徒の女性A』第6課「断食」参照)
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問題に対処するとき,祈りはどのように役立ちますか。(導きと慰めをもたらす)
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信仰を持ち,主を信頼して祈ることが大切なのはなぜですか。(信仰があって初めて,祈りの答えを受けられる。主を信頼していれば,祈りの答えがどうであれ受け入れることができる)
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主に重荷を取り除いてくださるように熱心に祈ったときでも,主が重荷をそのままにしておかれることがあるのはなぜですか。(人は何が正しく,何が最良かが常に分かるわけではない。天父はわたしたちが重荷を負っている理由を御存じである)
聖文
聖文には,わたしたちを啓発し,励まし,慰めてくれる言葉が数多く記されています。『旧約聖書』の詩篇は慰めを与え,『モルモン書』は試練のときに励ましを与えてくれます。また,生ける預言者の言葉は,生活の指針を与えてくれます。わたしたちは問題に直面したとき,聖文の言葉に触れることによって,新たな勇気と進むべき道を見い出すことができるのです。
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一人の生徒に,問題を解決するときに聖文がどのように役立ったか経験を話してもらう。
救い主を信じる信仰
神権の祝福を通して信仰を得る
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わたしたちは教会の女性として,神権の祝福を受ける特権が与えられています。この祝福は,病気や試練のとき,あるいは悩み落胆しているときに受けることができます(『末日聖徒の女性A』第12課「神権の儀式」参照)。
試練のときに神権の祝福によって力づけられた経験について生徒に話してもらう。
エズラ・タフト・ベンソン大管長は,次のように勧告しています。「精神的に疲れ果てたときや重大な危機に直面したときは,神権者の手から祝福を受けることができます。
預言者ジョセフ・スミスでさえ,自ら求めてブリガム・ヤングの手から祝福を受けることにより,慰めと導きを得たのです。」(「落胆してはならない」『聖徒の道』1975年2月号,91参照)
祝福師の祝福も将来を見極め,人生の方向づけをするうえで役立ちます。祝福文をよく読んで考えることにより,問題の答えが得られることがしばしばあります。
奉仕と仕事を通して信仰を得る
わたしたちは人を助けるときに,自分の問題に執着していた心をほかに向けることができます。あるとき,ロレンゾ・スノー大管長は次のように語っています。
「少しふさぎ込んでいるときは,周囲を見回して,自分より苦しい状態にある人を捜しなさい。それからその人の所に行って,苦しみの原因を見いだし,主から授けられた知恵をもってそれを取り除くように努めなさい。そうすると自分のふさいだ気持ちは晴れて,楽になるでしょう。そして主の御霊と光を感じて,すべてが輝いてくるでしょう。」(Conference Report,1899年4月,2-3)
人から援助を受けることにより信仰を得る
わたしたちが問題を抱えているときに耳を傾け,助言や励ましの言葉を与えてくれるまことの友は,試練のときに大きな助けとなります。預言者ジョセフ・スミスは,友人を持つ喜びを,次のように語っています。「友人の声がどれほど快いものかまったく想像できないでしょう。それは,あらゆる同情心を目覚めさせ行動を起こさせる,何かの源からの友情の一つのしるしです。」(Teachings of the Prophet Joseph Smith, sel. Joseph Fielding Smith,1976年,134)
最高の友情はわたしたちの家庭の中に始まり,教会の組織へと広がっていきます。わたしたちは互いの重荷を友人と負い合って軽くすることができます。
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友人の重荷を軽くするために,どのような助けができますか。
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モーサヤ18:8-9を読む。
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わたしたちはバプテスマのとき,どのような責任を引き受けると聖約したでしょうか。(互いに重荷を負い合う,悲しむ者とともに悲しむ,慰めの要る者を慰める)
わたしたちの最良の友であるイエス・キリストは,わたしたちが求めるならば重荷を軽くしてくださいます。
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マタイ11:28-30を読む。
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イエス・キリストのもとへ行く人には,どのような祝福が約束されていますか。(魂に休みが与えられる)
苦難に耐えることにより信仰を得る
預言者ジョセフ・スミスは,1839年に無実の罪でミズーリ州リバティーの監獄に捕われていたとき,主への熱烈な祈りの答えとして一つの啓示を受けました。この啓示は教義と聖約121章に記されています。この章では,わたしたちが苦難に耐えなければならない理由が述べられています。
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教義と聖約121:7-8を読む。
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ジョセフ・スミスに約束された祝福は何ですか。(敵に打ち勝ち,神の所に上げられる)
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「よく堪え忍ぶ」とは,どのような意味ですか。(忍耐と主への信頼をもち,不平を言わずに耐える)
ジョージ・A・スミスは,ジョセフ・スミスから受けた勧告を次のように回想しています。「ジョセフはわたしに,どのような苦難に遭遇しようと,決して落胆してはならないと言った。たとえノバスコシアの炭坑の底に埋められてロッキー山脈全体を頭上に積まれても,落胆せずに主に頼り,信仰を働かせ,勇気を持ち続けるならば,山の頂に連れ出されるであろう。」(Memoirs of George A. Smith,『主から託されたわたしの使命-メルキゼデク神権定員会用個人学習ガイド』203に引用)
このような気持ちで試練に耐えるために,次のように自問してみるとよいでしょう。「この経験を祝福とするにはどうしたらよいだろうか。この経験から学ぶことは何だろうか。」
「何年も問題がなく過ごしてきていたのに,突然大きな不幸に見舞われ,担い難いほどの重荷を感じることもあるでしょう。しかし,そのような苦難の中にあっても,わたしたちには二つの確かなよりどころがあります。(1)わたしたちは地上に来る前にこのような状態を予想していたが,終わりまで忠実な者に与えられる永遠の昇栄を得るために,この世に来ることを望んだ。(2)耐えられないような試練は決して与えられない。」(ロバート・E・ウエルズ「悪条件の中を飛ぶ」『聖徒の道』1979年7月号,30)
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1コリント10:13を読む。
苦難の後に与えられる祝福
主が約束しておられるように,わたしたちは苦難の中にあっても平安を得ることができます。
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ヨハネ16:33を読む。
大きな苦難を堪え忍んだヨブは,後に祝福を受けました。主はヨブを受け入れ,大いなる祝福を与えられました。「そして主はヨブのすべての財産を二倍に増された。主はヨブの終りを初めよりも多く恵まれた。」(ヨブ42:10,12)
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教義と聖約58:2-4を読む。
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祝福を受ける前に,自分がふさわしいことを証明しなければならないのはなぜですか。(自分がふさわしいことを証明するとき,自ら祝福を形作っていく)
イエス・キリストでさえ,すべてのことを耐えた後に栄光を受けられました。わたしたちも同じことが言えます。「しかし,確固としていて打ち負かされない者は救われる。」(ジョセフ・スミス-マタイ1:11)
まとめ
この人生には様々な困難が待ち受けています。主は預言者ジョセフ・スミスが多くの試練を受けることを告げ,その理由を明らかにされました。「息子よ,あなたはこのことを知りなさい。すなわち,これらのことはすべて,あなたに経験を与え,あなたの益となるであろう。」(教義と聖約122:7)ジョセフ・スミスは,この言葉に慰められて,与えられた試練を堪え忍ぶことができたのです。ジョセフ・スミスに与えられた約束は,そのままわたしたちにも当てはまります。「それゆえ,人のなし得ることを恐れてはならない。とこしえにいつまでも,神はあなたとともにいるからである。」(教義と聖約122:9)
チャレンジ
逆境に耐える方法を知るために,特に教義と聖約121,122章を中心に聖文を学ぶ。試練をよく堪え忍び,克服することができるように力と導きを求めて祈る。苦難に耐えた後に大いなる祝福が与えられることを心に留める。
今週,次の「主のみ言葉は」(『賛美歌』46番)の歌詞を毎日読むか,暗記する。
3.おそるな,われは汝が神常に汝とともにあり
助け与え,強くしてわが正しき力をもて
汝をささえ励まさん
4.深く行けと召すときは水は汝を溺らさじ
われ汝とともにあり汝を助け悩みはらし
祝福の恵み与えん
5.つらき試しのあるときわがあわれみ与えられん
試し汝をそこなわずただ黄金と屑とを分け
えらぶための手段なり
7.主われに,たよるものの霊敵の手には渡し得ず
地獄かれに迫るともわれその霊を見捨てはせず
必ずわれは見捨てず
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閉会のときに,「主のみ言葉は」から上記の3,4,5,7節を全員で歌う。
参照聖句
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詩編23章(主はわたしの牧者)
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マタイ5:10-12(義のために迫害されてきた人たちは,さいわいである)
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ピリピ1:29(キリストのために苦しむ)
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1ペテロ2:20(苦しみを耐える)
教師の準備
レッスンの前に,以下の事柄を行う。