第7課
正直
目的 正直になる。
正直であるべきことを信じる
-
黒板に「正直であるべきことを信じる」(信仰箇条1:13)と書く。
-
正直であるとはどういうことでしょうか。(生徒の答えを黒板に書く)
次の話は,正直の意味をよく物語っています。
ベネズエラのカラカス第3支部のルーベン・ダリオ・パチェオ支部長は,家族で神殿に参入したいと強く望んでいました。「彼の家族は多大な犠牲と霊的な準備の末,ようやく神殿に行く費用を得ることができましたパチェオ支部長は500ドルを下ろすために,娘を銀行にやりました。彼は次のように語っています。『妻はお金の入った封筒を受け取ると,中を確かめずにそのままにしておきました。出発の前夜のことです。わたしはお金について尋ねてみて,初めて封筒が妙に重いことに気づきました。中味を数えてみたところ,4065ドルも入っているではありませんか。ただ驚くばかりでした。レシートには500ドルとしか打っていませんでしたから,銀行側にしてみれば,3500ドル以上もの損をしたことになります。
その夜,家に来ていた教会外の友人たちは,合衆国への旅を楽しむためにそのお金を使うようにわたしを説得しようとしました。わたし自身,そのような大金を目にしたことはありませんでした。けれども,きっぱりとこう言いました。「この金を持っているわけにはいかないよ。これはわたしたちのものではないのだからね。わたしたちが旅行に行くのは,神殿に行って主と聖約を交わすためだ。それなのに不正直な態度を取ったりしたら,聖約を交わす意味がどこにあるって言うんだい。」
わたしたちはそのお金を銀行に返しました。銀行では,その額が紛失していることに気づいてはいましたが,だれに支払ったのか記録がありませんでした。その日,銀行員の幾人かに尋ねられました。「なぜ返しに来られたのですか。だれもあなたがお金を持っていることを知らないのに。」わたしの答えはこうでした。「それはわたしが末日聖徒だからです。」』」(マリオ・G・エチェベリ,“Venezuela,” Ensign,1977年2月号,30)
-
主と聖約を交わすことについて語ったパチェオ支部長の言葉には,正直さがどのように表れていますか。
-
彼の行いには,正直さがどのように表れていますか。
パチェオ支部長の言葉と行いには,自分自身や主に対する正直さがどのように表れていますか。
ブリガム・ヤング大管長は次のように語っています。「正直でありなさい。聖徒であると自称しながら,正直でない者は災いである。正直な行いは,正直な心から生まれる。」(スペンサー・W・キンボール,Faith Precedes the Miracle『奇跡に先駆ける信仰』234より引用)
主は,わたしたちが私生活や対人関係において正直であるように戒め,次のように言っておられます。「あなたは盗んではならない。」(教義と聖約59:6)
不正直-サタンの武器
サタンは,天父が与えてくださったあらゆる戒めに背くようわたしたちを誘惑します。聖文には次のように記されています。「彼はサタン,すなわち,あらゆる偽りの父である悪魔となって,人々を欺き,惑わし,……自分の意のままにとりこにする者となった。」(モーセ4:4)
キンボール大管長は不正直の例を具体的に記しています。「家庭,銀行,職場で盗みを働く人たちがいます。責任を回避する雇い主,会社の金を横領する従業員……婦人の財布をひったくる人,パーキングメーターから金を盗む人,税金をごまかす人,商品を不正表示する人。
返済能力がないのに借金する人……厳粛に聖約を交わしておきながらそれを平気で破る人,宿屋のタオルを持って行く人,釣銭を余分にもらっても黙っている人,金銭を不正に取り立てて事業に成功している人,さらには堂々と盗みを働く人。
交通法規を破って得意気になっている人,警察の目をかすめて平気で悪事をする人,関税を払わずに密輸品を国外に持ち出して自慢する人。
不当な条件で超過勤務をさせておきながら,十分な賃金を支払わない人もいます。」(Faith Precedes the Miracle,234-34)
-
一般によく行われている不正直な行為には,ほかにどのようなものがありますか。
-
サタンはなぜ,わたしたちが不正直になるように望んでいるのですか。
-
不正直が原因になる罪には,どのようなものがありますか。
不正直は小さなことから始まる
正直な人が,ある日突然に不正直になるということはありません。不正直はほんのささいなことから始まり,徐々に生活すべてを支配していきます。不正直な考え,ねたみ,利己心,人をだますこと,真理を語るべきときに沈黙し続けること,これらはわたしたちを不正直な行動に追いやり,天父から遠ざけます。
教会が回復された当時,トーマス・B・マーシュは妻の不正直な行為がきっかけとなって背教し,破門されました。そのとき,マーシュ長老は十二使徒定員会の会長を務めていました。
聖徒たちがファーウェストに住んでいたころ,マーシュの妻とハリス姉妹が,お互いにできるだけ大きなチーズが作れるように牛乳を出し合うことにした。牛乳だけでなく『凝固分』も一緒に渡すという条件である。この約束をハリス夫人は忠実に守ったが,マーシュ夫人は牛一頭につき『凝固分』を1パイント(約0.5リットル)ずつ自分で取ってしまった。やがてこのことが知れると,話が教師たちの下に出され,教師たちはマーシュ夫人を罪ありとした。
これに対してマーシュ兄弟は妻を支持し,心をかたくなにした結果,教会に違背するようになった。彼らは不正直な行動によって生じた敵愾心により,たちまちのうちに教会員資格を失ってしまったのであった。」(ハイラム・M・スミス,ヤンネ・M・ショダウ,The Doctrine and Covenants Commentary, rev. ed.,1972年,167)
-
ささいなことにも正直でいる必要があるのはなぜですか。
-
どのような不正行為も支持すべきでないのはなぜですか。
正直になる
わたしたちは善悪を知らない,罪のない状態でこの世に生まれました。しかし,導き手として主の御霊を与えられているので,真理へ導いてくださる主に従って正直にならなければなりません。
教会の指導者は不正直について勧告し,わたしたちがそれらを見分けて,自ら行わないように助けています。また,子供たちに正直であることを教えるように勧めています。N・エルドン・タナー副管長は次のように言いました。「この正直の訓練は,家庭から始まります。わたしたちにはそれぞれ個人の所有物があります。おもちゃやゲーム,人への奉仕は,分かち合うことができますし,またそうすべきものです。しかし,金銭や宝石,衣服などは個人の所有物であって,所有者の同意なしには持ち出せないものです。家庭でそのような正直の原則を尊重する子供は,家庭外でこの原則を破ろうとはしません。……そのような訓練が欠けていると,人の権利や所有物を軽視する気持ちを増長させることになります。
子供は成長して働き始めるとき,自分が手にする収入に見合う仕事を正直に行うように〔教えられていなければなりません〕。」(「適切な推薦を受けるにふさわしく」『聖徒の道』1978年10月号,66)
-
なぜ正直な行いをすることが大切なのでしょうか。
-
無断で人の所有物を使ったり,持ち出したりしないように子供に教えることは,子供の正直さを育むうえでどのように役立つでしょうか。
キンボール大管長は,孫たちが正直について教えを受けることを願って,次のように語りました。
「わたしは皆さんが,子供たちに正直であることを教えるように望んでいます。この世には
わたしたちはこうした強力な風潮に低抗しているかもしれません。しかし,罪は罪として子供たちに教えなければならないのです。
悪に対する抵抗力を若人につけさせる必要性が日に日に増していることをわたしは心から憂いています。」(“What I Hope You Will Teach My Grandchildren and All Others of the Youth of Zion,” [address to seminary and institute personnel at Brigham Young University,1966年7月11日,2)
わたしたちは,小さな盗み,偽り,欺きを見過ごしにしないと自覚することが大切です。ごまかしや法律違反を軽くみたり,笑ってすませるようなことをしてはならないのです。
-
正直な態度を取るように教え励ますために,自分の家庭で何ができますか。
-
模範によって正直を教えなければならないのはなぜですか。
正直な者は祝福される
正直な態度がすぐに報われるとはかぎりません。時には,人格が試され,友を失い,嘲笑されることもあるでしょう。しかし,正直であれば心に平安を覚え,良心の呵責に悩むことなく,この世と永遠にわたって喜びを味わうことができます。
ある若い女性が友人にあてた手紙の中で,不正直な態度を取るように誘いを受けたときの気持ちを次のように記しています。
「親愛なるスー,
昨日あなたが怒ってしまったこと,とても残念に思います。あなたとの友情は,とても大切なものです。でもわたしには,ああするしかなかったのです。分かってください。あなたから,簡単だから宝石棚からブレスレットを取るように言われたとき,だれも見ていなかったし,そばには店員もいませんでしたね。これまで捕まったことがないというあなたの言葉に,恐れる気持ちが薄らぐようでした。でも,もしブレスレットを盗んでいたら,捕まっても捕まらなくても,自分の不正を絶対に忘れられないでしょう。あのブレスレットを身に付けることもないでしょう。それを見る度に,愚かな選択を思い出しては嘆くに違いありません。
あなたが,わたしといてもつまらないし時間の無駄よ,と言って立ち去ったとき,とても心が痛みました。今でもそうです。でも,わたしはこの痛みを感じながら生きていくと思います。どんなにつらくても,デパートに行く度に罪の意識に責められ,両親や監督に顔向けができず,自分のしたことが心に刻み込まれている状態で生活するよりは,ずっと楽だからです。」
-
この若い女性は正直であるために,何を犠牲にしましたか。
-
正直な態度を取ったことによって,どのような恵みを受けましたか。
-
正直であることの恵みを永遠の観点から理解することが大切なのはなぜですか。(完全に正直になりたいと望むようになる)
ハワード・W・ハンター長老は,正直であることのもう一つの祝福について語っています。「正直な人に与えられる喜びがあります。正直であれば救い主との関係を築き,聖霊の御霊を受けることができます。……
わたしたちは自分自身に対して,神に対して,そして隣人に対して正直でなければなりません。」(“Basic Concepts of Honesty” New Era,1978年2月号,5)
-
正直であることの祝福として,ハンター長老は何を挙げていますか。
聖霊はわたしたちが正直になれるように,どのような助けを与えてくださるでしょうか。(正直な行動が取れるように促す,正直な行動を取ったときによい気持ちにさせる,不正直な態度を取ったときに罪悪感を感じさせる)
-
神に対して正直であるとはどういうことですか。
まとめ
正直は福音の基本原則であり,神の戒めです。この戒めを守るには,不正直を認識して避けることと,思いや会話,行いにおいて正直になることが大切です。わたしたちは家庭や教会,地域社会で正直な態度を取ることによって,子供たちに正直であるように教えます。正直であれば,祝福を受けて,良心に何ら責められることなく,平安を感じることができます。また自尊心を育み,聖霊を伴侶とすることができます。
チャレンジ
次週までに自分の思いや言葉,行動を分析して,正直という戒めにどの程度従っているか評価する。日常生活の中で不正直な態度を改められるように,主に助けを求める。家庭において子供にこの義の原則を教える方法を考える。言葉と行いにおいて正直の模範となる(ピリピ4:8-9参照)。
参照聖句
-
ローマ13:12-13(つつましく歩く)
-
ヘブル13:18(正しく行動しようと願う)
-
教義と聖約97:8(心の正直な者)
-
教義と聖約136:25-26(借りたものを返す,紛失したものはそれに相当するものを返す)
-
信仰箇条1:13(正直であるべきことを信じる)
教師の準備
レッスンの前に,以下の事柄を行う。
-
『福音の原則』第31章「正直」を読む。
-
黒板とチョークを用意する。
-
本課の引用文と聖句の発表を生徒に割り当てる。