第11課
人の価値
目的 キリストの愛を持って神のすべての子供たちに接するようになる。
わたしたちは皆,愛ある天父の子供である
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視覚資料11-a「世界の子供たち」を見せる。
わたしたちは時々,「神がすべての人を創造されたのですか」という質問を耳にします。聖文には,神がこの地上に住む全人類を創造され,地上に生を受ける時間と場所を定められたと記されています(使徒17:26参照)。
わたしたちは皆,個性ある特別な存在として創造されました。それぞれ体の大きさも違えば,格好や肌の色,顔形も違います。それと同じように,属性や才能,興味,技術,能力も人によってそれぞれ異なります。
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教義と聖約18:10を書いた紙を見せ,一人の生徒に読んでもらう。
わたしたちは皆,異なった肉体と人格を備えた天父の子供であり,永遠の家族の一員なのです。天父はわたしたち一人一人を愛し,その価値を認めておられます。
わたしたちは時々,文化や社会環境,体つき,人種などの異なる人とどう接したらよいか分からないことがあります。そのため自分と異なる人に対して,差別意識や恐れの気持ちを持ったり,避けたり,無視したりすることが往々にしてあります。
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教義と聖約18:10を読む。
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教義と聖約18:10を書いた紙を提示して,一人の生徒に読んでもらう。
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すべての人々を兄弟,姉妹として受け入れていることを示すには,どうすればよいでしょうか。
自分を愛するように隣人を愛する
イエスは模範によって人を愛する方法を示し,互いに愛し合うように命じられました(ヨハネ15:17)。そして,たとえを使ってその方法を教えておられます。主は,罪のない御自身の命を「すべての人のあがない」としてささげることによって愛を示し,わたしたちが罪に打ち勝つことができるようにしてくださいました(1テモテ2:6;教義と聖約18:11-13参照)。
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割り当てを与えておいた姉妹に,以下に挙げる『聖書』の物語を手短に話してもらう。それから,各々の話の後に記されている質問をする。
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良いサマリヤ人(ルカ10:29-37)。このたとえ話からどのような教訓を学ぶことができますか。(すべての人は兄弟であり,援助する価値がある)
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ザアカイ(ルカ19:1-7)。救い主はザアカィに対してどのように接しておられますか。(兄弟として彼の家に泊まられた)使徒たちは救い主の行動をどのように感じましたか。(罪人の家に泊まるべきでない)
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姦淫の罪で捕えられた女(ヨハネ8:3-11)。わたしたちは罪に悩む人に接するとき,どうしたらよいでしょうか。(自分も罪人であることを自覚する。常に思いやりと愛と理解の心をもって接する)
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救い主が,社会でさげすまれているこれらの人々を価値ある者とされたのはなぜですか。
キリストは人の価値を知っておられます。主は貧しい人々に教えを説き,体の不自由な人や絶望に打ちひしがれた人を癒されました。また,目の不自由な人を見えるようにし,罪人と食事をともにし,姦淫の罪で捕えられた女性をかばわれました。さらに,いなくなった羊や失われた銀貨,放蕩息子のたとえ話を使って,人の価値を説かれました(ルカ15章参照)。主は御自身のすべての行いを通して,「自分を愛するように,あなたの隣人を愛」する模範となられました(マタイ19:19)。救い主は「行って同じようにしなさい」(ルカ10:37)と教えておられます。
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自分と異なる環境の人々に対して,わたしたちはどのような責任があるでしょうか。
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自分を愛するように隣人を愛するとは,どういう意味ですか。
キリストの愛をもって人に接するにはどうしたらよいか
人々に親切にして心からの関心を示すとき,わたしたちはキリストの模範に従っています。N・エルドン・タナー副管長は次のように述べています。「わたしたちは,相手に期待しているものを常に見る傾向があるようです。だれでも知っているように,完全な者は一人もいません。欠点や弱点を指摘すると,欠点にばかり心が奪われて,その人の長所を見落としてしまうのです。」(「悪を言うな」『聖徒の道』1973年10月号,435参照)人の価値を十分に理解していれば,わたしたちは長所に目を向け,すべての人に愛と忍耐と親切な態度をもって接することができるのです。
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もしわたしたちが,次の話に登場する女性の価値を理解し,自分を愛するように彼女を愛するならば,どのような態度を取るでしょうか。
「マーガレットが聖餐会に出席したのは,数年ぶりのことでした。彼女は礼拝堂に入ると,そそくさと席を見つけて座りましたが,居心地の悪さを感じていました。マーガレットはこれまで,知恵の言葉の問題をひきずって生活してきました。……監督は……彼女に頻繁に教会に出席して,もっと祈るようにすればするほど,悪い習慣を克服するのは難しくなくなるでしょう,と言いました。
ワードの会員はほとんど知らない人ばかりでしたが,マーガレットの心には,長旅から自分の家に帰ったかのような安堵感が徐々に広がっていきました。……マーガレットは閉会の祈りが終わるとすぐに席を立ち,みんなにまじってそっと外に出ました。そのとき,自分の近くでひそひそとささやく声が聞こえました。気になって耳をそばだてると,突然それが鋭い叫び声のようにはっきりと聞こえて,彼女の心の奥底まで刺し貫いたのです。『ところで,タバコのにおいがしなかった?わたし,においが気になって話も満足に聞けなかったわ。今度から,座る場所を考えなくてはね。』」(ヘレン・シリー,“And Jesus Wept,” Ensign,1973年,14)
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自分がマーガレットだったら,どのような気持ちがしますか。マーガレットのような隣人に対して,わたしたちは何ができるでしょうか。
N・エルドン・タナー副管長は,別の面でもっとキリストに近づくように忠告しています。
「わたしたちは皆,隣人の噂をしたがる傾向が強いようです。……どういうわけか,人の長所よりも短所について語る方がずっと易しいようです。単なる噂にせよ,事実にせよ,人から聞いた隣人を傷つけるような話を言いふらすのです。その話は尾ひれが付いて雑草のように広まっていきます。したがって,最も大切なのは,この問題について主が語られた言葉に耳を傾けることです。
良き隣人になりたいと思うなら,真理とあらゆる事実を見いだして,言葉を慎むべきです。
次の話は,反省を促してくれます。退職して早朝の庭の手入れを日課にしているある老人が,通りの向かい側の家に,毎朝決まって牛乳配達人が立ち寄るようになったのに気づきました。その配達人は,夫が仕事に出かけた直後にやって来て,30分ほど家にいました。チャーミングなその家の妻は初等協会の教師で,ほとんど欠かさず聖餐会に出席していました。
このような日が数週間続いたので,老人は彼女の及ぼす影響や教えている子供たちのことが心配になり,近所の人にそのことを話し始めました。そして,監督に報告すべきだと思ったときには,その話はワード中に広まっていました。
事態に驚いた監督は,牛乳販売店の主人に電話し,その配達人の名前を聞いてどんな人物か尋ねました。主人はその配達人に会って,言葉巧みに聞きました。『リンカーン通りに新しいお客さんができましたね。何がきっかけだったんですか。』
『お客ですって。』牛乳配達人は言いました。『あれはわたしの娘です。毎朝わたしに朝食を作ってくれて,毎週金曜の夜は,妻と二人で孫たちの面倒を見ているんですよ。それがどうかしたんですか。』」(「悪を言うな」『聖徒の道』1973年10月号,434参照)
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うわさ話や悪口が人を傷つけるのは,なぜでしょうか。(うわさ話をした人とされた人の両方の立場から考える)
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うわさ話や悪口を避けることは,キリストのような愛を持って人々と接するうえで,どのように役立ちますか。
自分と違う面を持つ人に対して取る行動は,その人に対する気持ちを表しています。もし自分の態度を改善したいと心から望むなら,次のように自問する必要があります。「天父の子供たち一人一人を受け入れて,寛容と愛を示すには,どうすればよいだろうか。」
わたしたちはまた,最近の改宗者に関心を示さなければなりません。そして,彼らとの間にキリストが示されたような関係を築きたいと願う必要があります。スペンサー・W・キンボール大管長は次のように述べています。
「現在わたしたちが認識しているように,神の王国,すなわちイエス・キリストの教会は,世界の教会になりつつあります。全世界にその力が及ぶ日は,速やかにやって来ます。わたしたち教会員は自制に努め,全人類,すなわちあらゆる国々のすべての兄弟姉妹を愛するようにならなければなりません。確かに,わたしたちが敵意や悪意や恨みを完全に抱かなくなる日が来るのです。」(「赦しの力」『聖徒の道』1978年2月号,75参照)
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エペソ2:19を読む。
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「神の家族」の一員(教会員)として,わたしたちは互いにどのように接するべきでしょうか。
まとめ
一人一人を愛しておられる天父の子供として,わたしたちは次の聖句にあるような態度で互いに接する必要があります。
「すべての無慈悲,憤り,怒り,騒ぎ,そしり,また,一切の悪意を捨て去りなさい。
互に情深く,あわれみ深い者となり,神がキリストにあってあなたがたをゆるしてくださったように,あなたがたも互にゆるし合いなさい。」(エペソ4:31-32)
チャレンジ
人の長所を見るように努め,批判やうわさ話を避ける。子供に人々を受け入れ,忍耐強く親切な態度で接するように教え,自らも模範を示す。
参照聖句
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エペソ4:29(正しい言葉だけを語る)
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ガラテヤ3:26-28(キリストにあって一つとなる)
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使徒10:34(神は人を偏りみない)
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4ニーファイ1:15-17(心の中に宿っていた神の愛のために,民は一つとなった)
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教義と聖約112:11(すべての人を愛しなさい)
教師の準備
レッスンの前に,以下の事柄を行う。
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『福音の原則』第2章「天の家族」
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生徒に各自の聖典を持参するように言う。
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教義と聖約18:10を記したポスターを作成する。
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レッスンの終わりに「神の子です」(『子供の歌集」2,『賛美歌』189番)を歌えるように準備する。
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本課の引用文と聖句の発表を生徒に割り当てる。良いサマリヤ人,ザアカイ,姦淫で捕えられた女の話を割り当てる。