第19課
家族と個人の歴史
目的 家族の記録の大切さを理解し,記録を作成する方法を学ぶ。
個人と家族の記録をつける必要があるのはなぜか
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視覚資料19-a「日記をつける若い女性」を見せる。
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次の物語を読む。
「父親の遺品を整理していたエリザベスは,『個人の歴史』というラベルの付いた数冊のバインダーを見つけました。その中の1冊を手に取り,そっとページをめくりました。手紙や数枚の写真,思い出の品があり,父親が自らの手で書き入れた家族の重要な出来事がそこかしこに見られました。子供の誕生,バプテスマや聖任,家族旅行のことが短く記されていました。エリザベスは,父親が夜遅くまで『日記』を書いていたことや,子供たちに日記をつけるように励ましていたことを思い出しました。父親の記録には,神の祝福とそれに対する感謝の言葉が至る所に書かれていました。
エリザベスは数冊のバインダーに目を通しました。ページをめくる毎に,父親の人生が浮き彫りにされていきます。やがて『60歳の誕生日に家族にささげる』という一節が目に留まりました。今から12年前に書かれたものです。エリザベスは最初からゆっくりと読み始めました。父親が育った家庭や彼女の祖父母について,母親について,また子供たち一人一人について,父親の気持ちが記されています。エリザベスは,自分について書かれている箇所を読んで,心が安らぐのを覚えました。まるで父親がまだそこにいて,自分に語りかけているかのようでした。その文はこう結んでありました。『わたしは救い主を知っている。みんなも救い主を知るようになるまで,忠実で,また従順でいて欲しい。』
エリザベスは読みながら,両親の尊い模範に従い,両親が大切にしていた家族のきずなを強めようと決意しました。」(『扶助協会テキスト』1978-79年,8参照)
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父親は他界してからも,エリザベスにどのような影響を与えることができましたか。
世の始めから,神聖な記録をつけて用いるのは主の民にとって重要なことでした。アダムの時代に,神は「覚えの書」(モーセ6:4-6参照)を記すように命じておられます。モーセも記録をつけました(モーセ1:40-41参照)。アダムの時代から預言者たちは,神の戒めに従って記録を残してきたのです。
「主の民が神と交わった歴史や彼らの経験したことが,現在の聖文を形作っています。それは聖なる家族の歴史以外の何ものでもありません。聖霊の御霊の導きによって書き記されたので,聖文になったのです。」(セオドア・M・バートン,“The Inspiration of a Family Record,” Ensign,1977年1月号,17)
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預言者たちが残した記録は,わたしたちの生活にどのような影響を与えるでしょうか。
現代の民と神のかかわりの歴史を記録するように求められている人はほとんどいませんが,わたしたちは個人の歴史を書くように勧められています。神との交わりを記録に残すことは特に大切です。わたしたちが御霊とともにあるとき,「主はわたしたちの心にささやかれ,そのときに記す言葉は,子孫にとって霊感を与えるものとなります。わたしたちが御霊によって書き記し,子孫が御霊によってそれを読むなら,わたしたちと彼らの間に霊的な結び付きが生まれるのです。」(セオドア・M・バートン,“The Inspiration of a Family Record,” Ensign,1977年1月号,17)わたしたちが記す家族の記録は,子孫が信仰と証を築くのに役立つでしょう。
スペンサー・W・キンボール大管長は,総大会で次のように語りました。
「わたしはこの教会の全会員に,自分の家族の歴史に深く関心を寄せるように,また両親や祖父母に彼らの日記を書くことを勧めるように,切にお願いします。いかなる家族も,子供や孫やその子孫のために自分の記憶にある事柄を書き残さずに永遠の世界に行くことのないようにしてください。これは義務であり,責任です。すべての親が子供たちに個人の歴史や日記を書かせるようにしてください。」(「生命と救いに至るまことの道」『聖徒の道』1978年10月号,3参照)
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個人と家族の歴史を記録することにより,家族にどのような祝福がもたらされますか。
主の勧告に従って個人と家族の記録をつけるならば,信仰と証を増すことができます。また自分の経験を読み返して,生活を改善しようと決心するなら,信仰を強め,勇気を得ることができるのです。
家族の記録に記すべき事柄
後に主の預言者になったジョセフ・フィールディング・スミス長老は,家族の記録に記すべき事柄について具体的に述べています。「家族について正確な記録をつけ,出生,結婚,死亡の年月日,儀式,そのほかすべて重要な事柄について正確に記録することは必要である。生涯における重要な出来事はすべてわたしたちが自分で記録しなければならない。」(『救いの教義』2:189)
家族の記録には覚えの書のほかに,個人と家族の歴史や各自の日記が含まれます。
個人の歴史
個人の歴史は生涯の報告書であり,様々な出来事や自分の気持ちを交えて記録するとよいでしょう。内容としては,以下のような事柄が挙げられます。
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氏名
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出生:生年月日,生まれた病院または家,出生地,当時の家族の状態
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父親:氏名,生年月日,出生地,父親の名前,母親の結婚前の名前
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母親:旧姓,生年月日,出生地,父親の名前,母親の結婚前の名前
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兄弟・姉妹:名前,生年月日,出生地,伴侶と子供の名前,その他の情報
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祝福:命名と祝福の年月日,場所(ステーク,ワード,所在地),執行者名
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バプテスマ:年月日,場所(ステーク,ワード,所在地),執行者名,記録の保管場所(ワード,ステーク,支部,伝道部)
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確認の儀式:年月日,場所(ステーク,ワード,所在地),執行者名,記録の保管場所(ワード,ステーク,支部,伝道部)
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祝福師の祝福:年月日,場所,祝福師の名前
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学業:小学校入学年度,学校名および所在地,在学校名,最も心に残っている教師,卒業証書,賞状,特別な経験
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結婚:伴侶の名前,結婚年月日,場所(所在地),交際当時や結婚式の模様
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子供のころの思い出:特別な経験,事件,考えた事柄,楽しかった出来事,友人など
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信仰を強めた経験:個人的なもの,家族から影響を受けた事柄,改宗当時の状態
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健康:病気や事故の記録
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家庭生活:家庭における義務,家族の活動,兄弟姉妹とのかかわり合い,家族が住んだ場所,家族旅行,ペット
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趣味および才能:音楽,美術,創造力,習い事,好きな事柄
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目標と人生設計:職業,家庭生活,教会奉仕の各分野で達成したい事柄
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そのほかの出来事:教会における経験を含む
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記録した事柄に関連のある絵や写真
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姉妹たちに,上記の項目について考えるように言う。これらの項目が個人の歴史の中で重要なのはなぜですか。
家族の歴史
家族の歴史には,個人の歴史の各項目について家族全員の情報を集めます。できれば,家族に個人的な情報を提供するように依頼します。経験談や出来事,人伝えに聞いた事柄,祖父母や先祖の所持品の中から得た情報なども記録してください。例として以下の事柄が挙げられます。
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先祖のおこり
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居住地と在住期間
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職業
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末日聖徒イエス・キリスト教会に最初に改宗した家族の名前,教えを受けた宣教師の名前
子供の生年月日,死亡年月日,結婚年月日,儀式を受けた日,伝道に召された期間などを記録し,証明書を保管します。子供たちに個人の歴史や記録をつけるように励ましてください。
個人の日記
経験したことを毎日または1週間分まとめて日記に記録します。日記は有意義な経験を記録するうえで大変役立ちます。
「オクラホマ州タルサに住むリネッタ・クンツ・ビンガム姉妹は……常時ノートを持ち歩いています。旅行のときも例外ではありません。彼女は出来事を簡単に書き留め,それをまとめて年間記録を作成しているのです。特に霊的な経験を記録し,機会があればそれを人々に話して個人の記録を書くように勧めています。
『このような経験は,自分が落胆して気がめいってしまったとき,とても助けになります。』彼女はさらにこう語っています。『特にこの作業を行うように人々を導ければ,その人の人生に指針を与えることになります。』」(ジョン・ウェブ,“Beyond Pen and Ink,” Ensign,1977年1月号,19-20)
スペンサー・W・キンボール大管長は,すべての家族にチャレンジを与えています。「子供たちがまだ小さい内から,重要な出来事を日記に書くようにしつけてください。そして学校や伝道で親元を離れ始めるときには,それが身に付くようにしてください。」(「正義を基として」『聖徒の道』1978年2月号,2参照)
日記には次のような事柄を記録することができます。
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目標,望み,抱負
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仕事の経験
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問題とその解決法
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家族の喜びや悲しみ
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人間関係
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最も深く考えた事柄
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信仰を強めた経験
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家族の特別な行事
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逆境を乗り越えたときの経験
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特別な学習経験
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個人的な証
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日記を読む子孫への助言
七十人第一定員会会員のセオドア・M・バートン長老は,次のように勧告しています。
「わたしたちは主の民として,子孫に神聖な記録を残すために,日常の出来事や自分の経験を書き記す必要があります。今日のわたしたちが古代の聖文から受けているように,精神を高揚し信仰を鼓舞する力を子孫に残さなければなりません。」(Ensign,1977年1月号,17)
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日記をつけると,どのような祝福がありますか。
記録をつけ始める
記録を始めるための簡単な方法があります。ボイド・K・パッカー長老は,次のように語っています。「どこから手を付けてよいか分からなければ,まず自分自身の記録から始めなさい。どのような記録を収集したらよいか分からなければ,手元にあるものから始めなさい。」(“Someone Up There Loves You,” Ensign,1977年1月号,10)
まず次のような資料を集めます。戸籍謄本,祝福やバプテスマや聖任の証明書,卒業証書,免状,賞状,写真など。自分の半生に関係のある書き物や公文書,記録などをすべて集めるべきです。そして,箱やフォルダー,ファイルに整理します。その際,大きく3つの時期,すなわち幼年期,青年期,成人期に分類します。それらの資料を収集してから,個人の歴史の編集に取りかかります。
書くことだけが記録を残す方法ではありません。家族と個人の歴史は,力セットテープに録音することもできます。収録の準備をする場合は,概要にそって出来事を年代順に整理しておくと役立ちます。
手始めにノートを用意し,この課で提案されている項目の幾つかを今日のうちに書いてみるとよいでしょう。記録日とページ番号を入れ,人名や地名は正確に書いてください。時間を決めて記録作成に当たれば,成功するでしょう。
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閉会の祈りの後,割り当てておいた姉妹に自分の日記を生徒たちに紹介してもらう。
まとめ
記録をつけることは,神の民にとっていつの時代にも重要なことでした。記録の方法について学び,個人と家族の記録を実際につけていくとき,家族に対する愛と尊敬の気持ちが深まっていきます。個人の日記には,子供たちに良い影響を与える日常生活の大切な出来事を記録できます。簡潔な家族の記録は,後の子孫に影響を及ぼすことができるのです。
チャレンジ
個人の歴史を作成する準備を今日から始める。家族の歴史をテーマにした家庭の夕べを特別に計画する。まだ行っていなければ,日記をつけ始めて重要な出来事を記録する。
参照聖句
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マラキ3:16-18(義人のために覚えの書が記される)
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アブラハム1:28,31(アブラハムが記録をつけて保管する)
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モーセ1:40-41;6:4-5,45-46(モーセが子孫のために記録を残す)
教師の準備
レッスンの前に,以下の事柄を行う。
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本課の中に記されている個人や家族の歴史を準備するための提案について研究する。できれば提案されている資料を幾つか集め,生徒に提示する。
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日記や歴史を記録してきた人がいれば,クラスに招待して,生徒にその記録を紹介してもらう。
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本課の引用文と聖句の発表を生徒に割り当てる。