第18課
将来に備える
目的 主の導きに従って将来に備える方法を学ぶ。
賢明に備えることの大切さ
エズラ・タフト・ベンソン長老は次のように語っています。
「わたしたちには霊的な面だけでなく,物質的な面でも生き残る義務があります。原則を曲げて生き残ろうというのではありません。それはわたしたちを破滅へと導く確実な道だからです。そうではなく,周到な準備によって生き残るという意味です。やがて,道徳的,物質的な強さを試される日がくるでしょう。」(Conference Report,1967年4月,61;Improvement Era,1967年6月号,59)
ベンソン長老は,来るべき日のために「霊的な面だけでなく,物質的な面でも」備えなくてはならないと言っていますが,これはどういう意味でしょうか。(主はわたしたちが全力を尽くして生活に必要なものをまかなうように期待しておられる。全力を尽くしていなければ,人に助けを求めることはできない)
教会では霊的な備えについて教える中で,将来のために物質的な備えをするように奨励しています。1936年,ヒーバー・J・グラント大管長は,啓示により,教会福祉活動プログラムを発表しました。このプログラムは,主より与えられた資源を賢明に用いるように教えています。それに従うならば,わたしたちは自分の家族だけでなく,援助を必要とする人々の必要を満たすことができます。福祉プログラムは家族から始まるのです。
家族の備え
家族一人一人の必要に心を配るのは家族の義務です。わたしたちは日ごろから,義にかなった行いによって互いに必要なものを分かち合い,愛し合い,励まし合わなければなりません。そして問題が起こったときには,家族で助け合って解決に当たるのです。「個人は自分自身を,両親は子供を,子供は年老いた両親や祖父母を」扶養する義務があります(ビクター・L・ブラウン「福祉活動における教会と家庭」『聖徒の道』1976年8月号,425参照)。
一人の生徒に,『福音の原則』第27章の「家族の責任」の項目について発表してもらう。家族に対する父親の責任は何ですか。母親や子供の責任は何ですか。
実際に人の世話をするためには,準備が必要です。すべての家族は,どのような状況や非常事態にあっても互いに助け合うことができるように計画し,備えておかなくてはなりません。
生活の中でどのような変化に備える必要がありますか。(老後,病気,転職や引っ越し,扶養者の死,失業,年老いた両親や障害のある子供の世話)
主は災害に見舞われる日が来ると警告しておられます。「雹を伴う嵐が……地の作物を損なう」(教義と聖約29:16),「荒廃をもたらす病気が地を覆う」(教義と聖約45:31),「地の面に戦争がある」(教義と聖約63:33),「あちこちに,ききんが起り,また地震がある」(マタイ24:7)と預言されています。
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わたしたちはどのような事態に備える必要があるでしょうか。(死,けが,失業,火事,飢謹)
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このようなときのために,どのような備えをすることができますか。(可能なかぎり1年分の食糧,燃料,衣料を蓄える,遺言を用意する,負債を避ける,本職以外の技能を身に付ける,貯蓄する)
マサチューセッッ州ボストンステークの会員たちは,激しい吹雪のために非常事態に見舞われました。雪が強い風に吹き寄せられて3メートル以上も積もり,道路は何日も閉鎖されました。
ステーク会長のゴードン・ウィリアムズ兄弟は,次のように語っています。
「多くの教会員は,店を利用できない友人や近所の人たちに,自分の家で貯蔵した食糧を分け与えました。中には食糧の蓄えがない人のためにパンを焼く会員もいました。かんづめや粉ミルク,蜂蜜なども分け合っていました。」
この地域では,吹雪のために100人から150人の死者が出ました。ステーク扶助協会会長のルース・ティンギィ姉妹は,以前から食糧を貯蔵し,まきストーブと十分なまきを用意していました。ティンギィ姉妹はこう述べています。「吹雪のためにどういう事態になろうとも,何とかやって行けるだろうという自信はありました。わたしたちには暖房器具がありましたから,あの経験は冒険みたいなものでした。中には悲劇を招いた家族や,大変深刻な事態を経験した人もいました。」(ジャネット・ブリガム,“Saints Dig Out, Clear Up during Harsh Winter,” Ensign,1978年4月号,77-78)
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ボストンに住むこれらの家族は,前もって備えておいたことにより,緊急時のための家族の備えについて,どのような心構えを持つことができたでしょうか。
主が預言者を通して命じられるとおりに備える家族は,非常時にほかから援助を受けることなく,自給することができるでしょう。
スペンサー・W・キンボール大管長は,次のように勧告しています。「わたしたちは,すべての末日聖徒の家族が自立し,自活するように励ましています。」(“Prophet Urges Home Food Production,” Church News,1976年4月3日付,8)
家族の備えのための領域
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視覚資料18-a「個人と家族の備え」を見せる。
教会の指導者は,自立するための方法として以下の事柄を行うように奨励しています。
就職に有利な技能の習得
通常は父親が家族を扶養する立場にあります。しかし,病気や事故,あるいは父親が自分の責任を顧みないために,母親や子供が働きに出て生活費を賄うこともあります。家族は非常時のために備える必要があります。子供たちには将来の職業に備えて準備をさせる必要があります。母親は子供が親の手を離れるまでは,非常時を除き,働きに出るのを避けるべきです。
家族がよりよい職に就くために,マービン・J・アシュトン長老は次のように提案しています。「正規の教育をできるだけ多く修めてください。職業訓練学校に通うこともその中に含まれます。これは投資する価値のあることです。さらに備えるために夜学や通信教育のクラスを利用してください。長期の失業状態に陥らないように,何らかの特殊技能や技術を身に付けてください。失業している人は,たとえ一時的でも働くに足る職があればそれに就くべきで,『自分にあった職』が与えられるまで待つべきではありません。」(「家庭における財政管理」『聖徒の道』1976年7月号,304参照)
次に挙げる事例を取り上げ,どのような解決方法があるか考えてみましょう。ジョンは2児を抱えて失業しました。ある仕事を見つけてしばらく働いてみましたが,自分には向かないという理由で,ほかの職に就く当てもなく退職しました。家賃の支払い期限がきています。妻は病気がちで,働きに出ることができません。
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この家族が問題を解決するにはどうすればよいでしょうか。父親は何をすべきでしょうか。妻としてどのように助けることができますか。子供たちや,親戚,教会員にできることは何ですか。
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父親は現在の仕事に満足できないとき,家族を支えながら転職に備えるために何ができますか。若い男性がよい職に就く備えをするように,若い女性としてどのように励ますことができるでしょうか。
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若い女性が職業技術を習得する必要があるのはなぜですか。(結婚までの間自立できる,夫に先立たれたときや夫が働けなくなったときに自活できる)
金銭,資産,所有物の賢明な使用
金銭や財産は賢明に用いる必要があります。子供たちにも貯金をし,金銭を計画的に使うことを教えるべきです。金銭を賢明に用いると,予算を立てて家族の必要を賄うようになるため,生活に不安を感じたり物資の欠乏に戸惑ったりすることがありません。また,什分の一やささげ物を納め,ほかの人々と物資を分かち合うことができます。金銭を賢明に用いることにより,教会や地域社会,ひいては世の中に大きな貢献をすることができるのです。
ある家族は財政管理について,次のように提案しています。「一つのよくないことは『これはわたしのお金だから,わたしの好きなように使いたい』という考えです。夫婦のどちらが得た収入であっても,お金はすべて二人の共有でなければなりません。夫であれ,妻であれ,『これはわたしのお金だから』と言って使う権利はないのです。」(オーソン・スコット・カード「家庭経済」『聖徒の道』1979年5月号,18参照)
適切な場合,家計にかかわる決定に子供たちを参加させれば,金銭の使い方を教えることができます。ある親は次のような経験について話しています。
「1年前からピアノが欲しいと思っていたので,わたしたちは子供たちを連れてピアノを見に行きました。何台かのピアノを見た後,店員に,家族で話し合ってからまた来ますと言いました。そして家族全員で話し合い,ほかの出費を切りつめることになってもピアノを買おうと決めたのです。子供たちは,それが自分たちの決定であると感じているので,節約に進んで協力してくれました。」(オーソン・スコット・カード「家庭経済」『聖徒の道』1979年5月号,18参照)
金銭を今以上に無駄なく使うことができますか。貯金を殖やすにはどうしたらよいでしょうか。
賢明な財政管理が家族に平安や満足,安心感をもたらすのはなぜでしょうか。(すべての家族が金銭の使い道をよく理解していたら,争いはなくなり,必要な物を最初に購入できる。必要なものが計画的に購入できると知って,安心感が得られる)
家庭菜園と貯蔵,生活必需品の確保
わたしたちは将来に備えて,食糧と衣類,できれば燃料も含めた1年分の貯蔵を今から始める必要があります(本書第25課「家庭貯蔵」参照)。可能であれば,食糧を生産し,缶詰を作り,衣類を縫って,必要な物資を手ずからそろえるようにすべきです。所有物を正しく手入れすることは,将来の備えとなります。衣服を繕い,家具を修理すれば,それらを長期間使用できます。
1年分貯蔵すべきものには何がありますか。自分の家では1年分の食糧,衣料,燃料を貯蔵するために何をしていますか。ほかに何ができますか。
適切な食事,運動,休息
体力を増進し,健康を維持するには,そのための規則に従わなくてはなりません。栄養価の高い食物を取り,病気を予防するために家庭や身のまわりを清潔にします。また,主の勧告に従って適度な休息を取ります。「疲れることのないように,早く床に就きなさい。あなたがたの体と精神が活気づけられるように,早起きをしなさい。」(教義と聖約88:124)自分の体力に合わせて,適度な運動を定期的に行うことも大切です。
各家族で健康の増進に役立つことをすべて行う必要があります。
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健康な体を持つ必要があるのはなぜですか。若い女性が特に健康に注意しなくてはならないのはなぜですか。家族の健康を増進するために何ができますか。
神と人に対する安らぎと幸福
一人一人が人生の問題や悲しみに押し流されずに,それらを受け入れるとき,家族は平安や幸福という霊的な面で備えられるでしょう。このことについて,十二使徒定員会のボイド・K・パッカー長老は次のように勧告しています。
「人生はチャレンジに満ちていると言われています。多少の不安や失意や落胆,そして失敗に苦しむのは,普通のことです。……
苦しい日が時々あっても,あるいはそのような日がしばらく続いても……ぐらつかずにまっこうから立ち向かってください。そうすれば事態は改善されていくでしょう。
人生で経験する苦難には,大きな目的があるのです。」(Conference Report,1978年4月号,140;Ensign,1978年5月,93)
わたしたちはチャレンジに遭うとき,家族の中で互いを愛し,支え,理解し,励まします。助け合うことによって,現在や将来の問題を克服する情緒的な強さを育むのです。
十二使徒定員会のマービン・J・アシュトン長老は,この強さを得たある家族について,次のように語っています。
「最近,あるステーク大会に出席する割り当てを受け,傑出した十二使徒地区代表と一緒に行きました。飛行機でソルトレーク・シティーからサンフランシスコに向かう間,彼は奥さんと3人の息子と2人の娘について話してくれました。わたしは興味深い話に耳を傾けました。彼には5人の子供がいましたが,17歳になる末の女の子が昨年亡くなりました。彼女は生まれたときに脳に重大な損傷を受けたために,16年の間,成長することも学ぶこともできませんでした。愛にあふれた母親はいつもその子の世話をし,優しい父親は忍耐をもって温かく見守り,3人の立派な兄と思慮深い姉は思いやりを示しました。その子は家族にとって特別な存在でした。わたしは,一緒に旅をする彼の話に理解の眼が開かれる思いでした。『家族にとって,あの子がどれほど大きな祝福だったか分かりません。あの子の世話をするだけで,どんなにお金を出しても買うことのできない,愛と忍耐と謙遜における一致が,家族にもたらされたのです。』ここにあった一つの悲劇は,永遠の家族が様々な祝福を身に付けて分かち合う機会となったのです。」(“Family Home Storage,” 1977 Devotional Speeches of the Year,1977年,69)
アシュトン長老は,さらに次のように述べています。「神は,家族が互いに助け合うように定められました。また,家族が互いの祝福となるように定められました。……
わたしたちは家族一人一人と手を取り合い,わたしたちの愛が真実で永遠に続くことを示さなければなりません。」(Conference Report,1973年10月,131;“He Took Him by the Hand,” Ensign,1974年1月号,104)
わたしたちは他の家族にも愛を示し,仲よく生活しなくてはなりません。近所同士で互いに助け合うのです。
近所の人に愛を示すことによって,どのように将来に備えられますか。(問題が起きたときに協力し合える。自分の家族と同じように,近所の人の福祉に関心を持つ。互いに助け合える)
読み書きの能力と教育
すべての人は,読み書きの能力と基本的な計算力を身に付けるべきです。そうすれば,よりよい仕事に就き,金銭を賢明に使えるようになります。わたしたちは福音について,また主が教えてくださった問題解決の方法について学ぶために,聖文を読む必要があります。教育上の訓練は,もっと効果的に奉仕し,さらに良い主婦になるために役立ちます。
南アメリカのある国に住む会員たちは,読み書きを学んだ後で次のような感想を述べています。「一人の学生は『賛美歌の歌詞が読めるようになって,わくわくします』と語り,ある母親は『料理のレシピが読めてうれしいわ』と話していた。また,ある父親はこのように述べた。『字が読めるのを誇りに思います。わたしは,妻や子供たちに教えるつもりです。』」(“Reading Skill Brings Thrift to Indians” Church News,1975年10月25日付,5)
読み書きや学習活動は,頭脳の働きを活発にし,新しいアイディアや冒険をもたらします。ブリガム・ヤング大管長は次のように語っています。
「わたしたちは,すばらしい学校の中にいます。わたしたちは熱心に学び,天と地の知識を蓄え続け,良書を読まなければなりません。……良書を読み,神の御霊の助けを受けて,その中からできる限り多くの知恵と理解を得るようにしてください。」(Discourses of Brigham Young,248)
「個人と家族の備え」(視覚資料18-a参照)に記されているすべての分野について家族を備えるならば,約束されているように,「人生の問題の多くは解決し,激変のさなかに平静を,不安のさなかに安心を,そして困窮のさなかに食物を得るでしょう。」(ビクター・L・ブラウン「教会福祉活動」『聖徒の道』1976年6月号,272参照)
教会の備え
主はわたしたちに,家族以外の人も助けるように求めておられます。
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教義と聖約52:40を読む。
教会は自立のできない個人や家族のために必要な援助を行います。わたしたちは,生活に困っている教会員を助けるために,必要な食糧や衣料,金銭を差し出すように勧められています。教会指導者はそのようにして集まった物資を断食献金とともに用いて,貧しい人や困っている人を助けます。これが「教会の備え」と呼ばれているものです。
次の話は,「教会の備え」が実際に行われた例です。
「合衆国サウスダコタ州ラピドシティーで大洪水が起きたとき,その地域の聖徒たちは,さかまく洪水の中で直ちに被災者の救援活動を開始しました。衣料や寝具,温かい食べ物が地元の教会組織の世話で提供されました。……他の地域から輸送されて来たのは……ベビーフード,おしめ,毛布などがトラック1台分だけでした。」(ジュニア・ライト・チャイルド「福祉こそ教会である」『聖徒の道』1974年3月号,107参照)
スペンサー・W・キンボール大管長は,次のように語っています。
「わたしたちはこれまでに数々の災害を経験してきました。毎日あるいは1日おきに,地震や洪水,トルネード,そのほかの災害によって,多くの人々が被害を受けているようです。わたしは,教会員と指導者の皆さんが自助の精神を理解するようになってきたことをうれしく思っています。……
もっと頻繁に災害が起こり,今まで以上に多くのトルネードや洪水,……地震に見舞われる日が来ていると思います。……この世が終わりに近づくにつれて,恐らくその数は増大していくことでしょう。ですから,わたしたちはそのときに備えなければならないのです。」(Conference Report,1974年4月,183-84)
災害を乗り切るには,教会として,また個人や家族として,非常時の備えをしておく必要があります。
教会が地域において完全に組織されると,末日聖徒は非常用の食糧や衣料,家庭用品を備えるために協力する機会が与えられます。聖徒が生活に困窮し,その家族ができるかぎりのことをしても自立できないときには,教会からこれらの物資を受けることができます。教会員はできるかぎりの援助をし合う必要があります。この奉仕活動を行うならば,自分が困ったときに援助を受けるにふさわしくなれるでしょう。教会から何らかの援助を受けるときは,最善を尽くしてそれに相当する働きをすべきです。
まとめ
教会の指導者は,自らの手で家族を扶養するように助言しています。この中には,将来の必要に対して周到な計画を立てることも含まれます。主は啓示の中で,末日には地上の住民に多くの問題が降りかかると言われました。しかし,「備えていれば恐れることはない」(教義と聖約38:30)と約束しておられます。わたしたちは個人として,家族として,また教会として,将来のために備えなければなりません。
チャレンジ
個人と家族の備えの表について検討する。自分や家族にとって備えが必要だと思われる分野を一つ選び,準備を始める。健康の律法に従って生活する。今まで以上に,必需品を家庭で生産するように計画する。将来に備えて貯蔵する。生活に困っている人の必要に注意を払い,いつでもどこでもできるかぎり援助する。地域で福祉活動プログラムが実施されていれば,その活動に参加する。伴侶を亡くした人や孤児,精神的な悩みのある人,病人,そのほか問題を抱えて困っている人のために,毎月惜しみなく断食献金を納める。
参照聖句
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1ヨハネ3:17(分かち合いは神の愛を表す)
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アルマ34:28(困っている人に分け与える)
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教義と聖約42:42(食物や衣服を得るために働く)
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教義と聖約56:16-17(豊かな人は分け与え,貧しい人は働く)
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教義と聖約68:30-32(怠惰になってはならない)
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教義と聖約78:7,13-14(自立できるように備える)
教師の準備
レッスンの前に,以下の事柄を行う。
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『福音の原則』第27章「労働と個人の責任」と,第37章「家族の責任」について学ぶ。
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黒板とチョークを用意する。
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『福音の原則』第27章から「家族の責任」の項目について報告するように,一人の生徒に割り当てる。
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本課の引用文と聖句の発表を生徒に割り当てる。