第124課
ピリピ1-3章
はじめに
パウロはピリピの聖徒たちに,福音に従った生活をすることにおいて力を合わせるよう勧めました。また,彼らに謙遜と無私の心について救い主の模範に従うよう勧告し,神は救いをもたらすために彼らの内で働かれていると教えました。パウロはイエス・キリストに従うために自らが払った犠牲について説明しました。
教えるための提案
ピリピ1章
パウロ,逆境からもたらされる祝福について説明する
授業を始める前に,ブリガム・ヤング大管長の次の言葉をホワイトボードに書いておきます。(この言葉は,『歴代大管長の教え—ブリガム・ヤング』290-291にあります。)下線の引いてある言葉を空欄にしておきます。
次の質問をしてレッスンを始めます。
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過去の歴史や現代の生活の中で,救い主の教会とそれに従う者たちに敵対や妨害する例にはどのようなものがありますか。
ピリピ1章を研究しながら,敵対するものが主の御業にどのように影響するかを理解するのを助ける真理を見つけるよう生徒たちに勧めます。
生徒たちに,『聖書の地図』にある地図13,「使徒パウロの伝道の旅」でピリピを見つけてもらうとよいでしょう。パウロは,2回目の伝道の旅の間にピリピで教会の支部を設立したことを説明します(使徒16章参照)。パウロは後に,おそらくローマで投獄されていたときにピリピ人への書簡(手紙)を書きました。ピリピ1:1-11の要約として,パウロがピリピの聖徒たちに対して感謝と愛を示したことを説明します。
一人の生徒に,ピリピ1:12-14を声に出して読んでもらいます。他の生徒には,聞きながら,パウロが伝道活動中に経験した逆境からもたらされた事柄を見つけてもらいます。
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12節によると,パウロが伝道活動中に経験した逆境によって何がもたらされましたか。(「福音の前進に役立」ちました。)
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13-14節によると,この逆境はどのように福音を前進させるための助けとなりましたか。(「兵営」〔13節〕つまり軍司令部全体の人々は,パウロがイエス・キリストについて教えを宣べ伝えたために投獄されていたことを知っていた。パウロの投獄はまた,他の教会員たちが福音を宣べ伝えることにますます勇敢になるよう鼓舞した。)
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イエス・キリストに従うことで敵対するものに遭遇するときに何がもたらされるかについて,これらの節からどのような真理を学ぶことができますか。(生徒はさまざまな言葉を使うと思われますが,次の真理を見つけていることを確認します。わたしたちがイエス・キリストに従うときに経験する逆境は,御業を進めるために役立つ。)
ホワイトボードのヤング大管長の言葉を見てもらいます。空白を埋めるためにどの言葉を使えばよいかを生徒たちに尋ねます。正しい言葉で空白を埋めます。この文脈での「高い所へ押し上げて」とは,前進させることを意味すると説明するとよいでしょう。
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逆境が救いの主の御業を前進させるためにどのように役立ったかを示す例を挙げてください。
ピリピ1:15-26の要約として,パウロが自分の身に何が起ころうとも,それらによって救い主があがめられることになると述べたと説明します。
一人の生徒に,ピリピ1:27-30を声に出して読んでもらいます。ジョセフ・スミス訳のピリピ1:28では,「かつ,何ごとについても,敵対する者どもにろうばいさせられないでいる様子を聞かせてほしい。このことは,彼らには滅びをもたらすが,福音を受け入れるあなたがたには,救いであって,それは神から来るのである。」となっていることを説明します。他の生徒には,聞きながら,パウロが聖徒たちに何をするように促したかを見つけてもらいます。27節の「生活しなさい」という言葉は,振る舞いを指していると説明します。
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パウロは聖徒たちに何をするよう励ましましたか。
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29-30節によると,教会員は救い主のために何を経験しますか。
生徒たちが先ほど見いだした真理を思い出してもらいます。
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ピリピの聖徒たちは,イエス・キリストに従うことで経験する逆境が主の御業を進める助けとなると覚えておくことによって,どのように祝福されたでしょうか。
ピリピ2章
パウロ,救い主が自らを低くされたことを教え,救いについて聖徒たちを指導する
生徒たちに,ピリピ2:2を黙読しながら,ピリピの聖徒たちに対するパウロの勧告を見つけてもらいます。
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パウロの勧告をどのように要約することができますか。
生徒たちに二人一組になってもらいます。各組ごとにピリピ2:3-8を一緒に声に出して読みながら,パウロが聖徒たちに対して,一致するために何をするよう教えたかを見つけてもらいます。各組の一人の生徒に,見つけた勧告の一つをホワイトボードに書いてもらいます。
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パウロの教えによると,イエス・キリストは謙遜と無私の心に関してどのような模範なのでしょうか。
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パウロの教えから学ぶことができる原則で,わたしたちがさらに一致するための助けとなるものは何ですか。(生徒たちはさまざまな言葉を使うと思われますが,次の原則を見つけるでしょう。謙遜さや無私の心で他の人々を思いやるイエス・キリストの模範に従うなら,わたしたちはさらに一致することができる。)
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家庭,学校,ワードや支部で,わたしたちが謙遜さと無私の心についてイエス・キリストの模範に従うことができる方法には何がありますか。
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人が自分よりも他の人を優先したのを見たのは,どのようなときでしたか。そのような努力はどのように一致を強めるでしょうか。
ピリピ2:9-11に記録されているとおり,パウロは,最終的には全ての人がひざをかがめ,「『イエス・キリストは主である』と告白」(11節)すると教えました。この経験が自分にとってどのようなものとなって欲しいかを生徒たちに深く考えてもらいます。
一人の生徒に,ピリピ2:12-13を声に出して読んでもらいます。他の生徒には,聞きながら,パウロがピリピ人に行うよう勧告した事柄で,主の前にひざをかがめる経験を喜ばしいものとすることができるものが何かを見つけてもらいます。「恐れおののいて」(12節)とは,神に対しての畏敬の念を持ち,喜ぶことであると説明する必要があるかもしれません(詩篇2:11;『聖句ガイド』「畏れ;恐れ」,scriptures.lds.org参照)。
中には,ピリピ2:12のパウロの言葉を,わたしたちが自分自身の行いによって救われるという意味だと間違って解釈している人がいることを指摘します。
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わたしたちのために救いを可能にしてくださったのはどなたですか。どのようにそれは可能になりましたか。
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ピリピ2:13によると,救いに必要な事柄を行おうと努力している人を助けるために神が取られる二つの方法とは何ですか。(神は,「願い」を起こさせ,「神のよしとされるところ」,つまり神の戒めに従うように助けてくださる。生徒に答えてもらった後,次の真理をホワイトボードに書きます。神は,イエス・キリストの贖罪を通して可能となる救いのために必要なことをわたしたちが願い,それを行えるよう助けてくださる。)
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神が与えられて,わたしたちが成し遂げるのを助けてくださる,救いのための必要条件とは何ですか。(生徒たちに信仰箇条の3条と4条を参照してもらうとよいでしょう。)
聖霊の影響を通して,わたしたちが神に従う望みを持てるよう,神はわたしたちの願いを変え,清める助けをしてくださると指摘します(モーサヤ5:2参照)。生徒たちに,神に従いたいと思うよう心を改めるために神がどのように助けてくださったか,さらに,より忠実に神の戒めを守るために神がどのように助けてくださったかを深く考えてもらいます。
ピリピ2:14-30の要約として,パウロが聖徒たちに彼らが「星のようにこの世に輝いている」(15節)ことを思い起こさせ,聖徒たちの幸せな状態を知るために使者を遣わすと彼らに伝えたことを説明します。
ピリピ3章
パウロ,イエス・キリストに従うために払った犠牲について説明する
生徒たちに,価値があると自分が思っている物で,世の中でも貴重だと考えられているもの(例えば,家族,友人,教育,食べ物,科学技術,お金など)について考えてもらいます。可能であれば,彼らが考えたことを表す物を見せてもらいます。生徒たちに,何のためにならこれらの価値あるものを喜んで犠牲にしてもよいかを考えてもらいます。
ピリピ3章を研究しながら,わたしたちも手に入れることができる賞与を得るためにパウロが何を犠牲にしたかを見つけてもらいます。
ピリピ3:1-3の要約として,教会の改宗者は割礼を含む特定のユダヤ人の慣習に従うべきだと説く腐敗した教師について,パウロがピリピ人に警告したことを説明します(New Testament Student Manual〔教会教育システム,2014年〕,436参照)。
一人の生徒に,ピリピ3:4-6を声に出して読んでもらいます。他の生徒には,聞きながら,パウロが自身のユダヤ人の伝統についてどのように言ったかを見つけてもらいます。
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ユダヤ人社会において,パウロはかつてどのような社会的および宗教的優越性を有していましたか。(イスラエルの血統,パリサイ人としての地位,ユダヤ教への熱意,律法の厳守。)
一人の生徒に,ピリピ3:7-11を声に出して読んでもらいます。他の生徒には,聞きながら,パウロは自分がかつてユダヤ人社会で有していた特権をどのように見なしていたかを見つけてもらいます。
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パウロは,イエス・キリストに従うために犠牲にしたものをどのように見なしていましたか。
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パウロが自ら進んで「全てを失った」(8節)のはなぜですか。(それは,イエス・キリストを知るため,「キリストのうちに自分を見いだすようになるため」〔9節〕,つまり主と忠実な聖約を交わす関係にあるため,主を信じる信仰によって義とされるため,主のために苦難にあずかるため,正しい人,つまり「義人のうちからの復活」に達するためでした。〔ジョセフ・スミス訳ピリピ3:11〕)
一人の生徒に,ピリピ3:12-14を声に出して読んでもらいます。他の生徒には,聞きながら,パウロが彼自身の霊的な成長について気づいた事柄を見つけてもらいます。この文脈における「捕え〔る〕」という言葉は,手に入れるという意味であることを説明します。
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パウロは,捨ててきたものに固執するかわりに,何を得ようと前進しましたか。(「上に召して下さる神の賞与」〔14節〕とは永遠の命であることを説明します。)
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イエス・キリストを知り,永遠の命を得るためにわたしたちが行わなければならないことに関するパウロの模範から,どのような原則を学ぶことができますか。(生徒はさまざまな答えを挙げると思われますが,次の原則を見つけていることを確認します。もしわたしたちが,イエス・キリストに従い,信仰を持って前進するために必要となる全てのものを犠牲にするならば,主を知り,永遠の命を得ることができる。)
一人の生徒に,ゴードン・B・ヒンクレー大管長の次の話を声に出して読んでもらいます。これは,高度な訓練を受けるために他の国から訪米し,滞在中に教会員になった海軍士官との出会いについての話です。他の生徒には,聞きながら,この青年がイエス・キリストに従うため何を喜んで犠牲にしたかを見つけてもらいます。
「わたしが彼を知ったのは,彼が祖国に帰る直前のことです。……わたしはこう言いました。『故国の人々はキリスト教徒ではありませんね。キリスト教徒として,特にモルモン教徒として帰国されることで,何か支障はありませんか。』
彼は顔を曇らせ,こう語りました。『家族はがっかりするでしょう。家から追い出し,わたしを死んだものとみなすかもしれません。仕事の上でも将来的にあらゆる機会から見放されると思います。』
わたしはこう尋ねました。『福音のためにそれほど大きな代価を,喜んで払うおつもりですか。』
すると,黒い瞳に涙を浮かべたこの青年は,整った褐色の顔をさっと輝かせ,こう言いました。『福音は真実です。違いますか。』
わたしはこのような質問をしたことを心に恥じながら答えました。『そのとおりです。確かに真実です。』
『それなら,他のことを気にする必要はないわけですね』という言葉が返ってきました。(「福音は真実です,違いますか」『聖徒の道』1993年10月号,4参照)
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この青年は,救い主に従うために何を喜んで犠牲にしましたか。
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あなた(またはあなたの知人)は,救い主に従うために何を犠牲にしましたか。
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イエス・キリストを知り,永遠の命に向かって進むという価値ある行動は,なぜあなたが払った犠牲に値する価値があるのでしょうか。
より完全にイエス・キリストに従うために諦める必要があることはないかどうか,生徒たちに深く考えてもらいます。それを実行するための目標を書いてもらいます。
ピリピ3:15-21の要約として,この世での快楽だけに関心を示す者たちを待つ滅びについてパウロが警告したことを説明します。パウロは,イエス・キリストがわたしたちの不完全な肉体を,キリストと同じ不死不滅の肉体に変えてくださることも教えました。
このレッスンで見いだした真理についての証を述べて,レッスンを終わります。