セミナリー・インスティテュート
第118課—教義と聖約110章


第118課

教義と聖約第110章

はじめに

1836年4月3日日曜日,カートランド神殿で聖餐会が開かれました。その集会で,預言者ジョセフ・スミスとオリバー・カウドリは神殿にいる会衆から幕で隔てられた場所に行きました。そこで彼らは祈りをささげました。祈りを終えて立ち上がると,イエス・キリストが彼らに現れ,新たに奉献された神殿を受け入れられました。それからモーセ,エライアス,そしてエリヤが現われ,神権の鍵が回復されました。教義と聖約110章はこの示現を記しています。

教えるための提案

教義と聖約110:1-10

主が現れ,カートランド神殿を受け入れられる

どの神殿の外壁にも書かれていることは何か生徒たちに尋ねます。(「主の宮居—聖きを主に捧ぐ」)

  • あなたにとって,「主の宮居」とはどういう意味でしょうか。

この質問について生徒が話し合った後で,奉献されて間もなく主はオハイオ州カートランドの主の宮を訪れられたということを説明してください。この神聖な出来事を取り巻く状況について生徒が理解できるように,一人の生徒に,教義と聖約110章の前書きを読んでもらいます。ほかの生徒には,それを聞きがなら,この示現が起きる前にだれがいて,何をしたのか見つけてもらいます。

  • この示現にはだれがいましたか。この示現が起こる前に彼らは何をしていましたか。

別の生徒に,教義と聖約110:1-3を読んでもらいます。生徒が読む前に,ほかの生徒たちに,それを聞きながら,これらの聖句で述べられていることを想像してもらいます。

生徒たちに,教義と聖約110:4-5を黙読し,主がジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに何を話されたか学んでもらいます。

  • これらの聖句に書かれていることであなたにとって意義深いものはどれでしょうか。なぜでしょうか。

数人の生徒に,教義と聖約110:6-10を順番に声に出して読んでもらいます。ほかの生徒には,それを聞きながら,すべての聖徒が喜ぶと主が言われた理由を見つけてもらいます。

  • 7節によれば,聖徒たちにはどのような喜ぶべき大きな理由があったのでしょうか。(主が神殿を受け入れられ,そこで彼らに御自身を現されると約束された。)

  • 主はどのようにして神殿にいる人々に御自身を現されるでしょうか。(「現〔す〕」という言葉は見せる,あるいは示すという意味です。生徒たちに教義と聖約97章教義と聖約109章を学んだときに,このことについて話し合ったということを思い出してもらいます。ほとんどの場合,主は聖霊の力によって御自身を現されます。)

生徒たちに7-8節の約束から原則を見つけてもらいます。生徒たちは様々な原則を見つけるかもしれませんが,次のことを必ず強調するようにしてください:もしわたしたちが主の戒めに従い,主の宮を聖く保つならば,主の神殿で,主はわたしたちに御自身を現される。この原則をホワイトボードに書くとよいでしょう。

生徒がこれらの原則をよく理解できるように,次の質問をします:

  • どうしたらわたしたちは主の宮を聖く,汚れなく保てるでしょうか。

  • 主の宮で御自身を現される前に,主はなぜわたしたちが従順で清くあるように求められると思いますか。

もし生徒たちが神殿に参入したことがあれば,そこで主を近くに感じたときの経験を思い出してもらいます。あなたが神殿で礼拝するときどのように感じるかを分かち合ってもよいでしょう。

一人の生徒に,教義と聖約110:9-10を読んでもらいます。ほかの生徒には,それを聞きながら,だれが喜ぶのか,そしてその理由を見つけてもらいます。

  • これらの聖句によれば,神殿の祝福の回復によりだれが祝福を受けるでしょうか。

  • 世界は神殿により,そして生者と死者のための救いの業によって,どのように祝福されていますか。

  • あなたの生活において神殿はどのように祝福となっていますか。

教義と聖約110:11-16

モーセ,エライアス,そしてエリヤが現れ,神権の鍵がジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに回復される

生徒たちに,家族がお互いに一時的に離れたときのことについて話してもらいます。離れている間,どのように感じたか話してもらいます。生徒たちが教義と聖約110:11-16を学びながら,この示現で,どのようにして家族があらゆる別離を乗り越えることができるか見つけてもらいます。

以下の表をホワイトボードに写してください。括弧内の言葉を先に書かないでください。

モーセ

教義と聖約110:11

エライアス

教義と聖約110:12

エリヤ

教義と聖約110:13-16

回復された神権の鍵

(イスラエルの集合の鍵)

(アブラハムの福音の神権時代)

(この神権時代の鍵)

これらの鍵が導くもの

(伝道活動)

(日の栄えの結婚と永遠の子孫)

(神殿と家族歴史の業を含む結び固めの力)

救い主の示現が閉じると,ほかの3人の方が一人ずつジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに現れたということを説明します。モーセとエリヤの絵を提示します(『福音の視覚資料集』,14番,20番:LDS.orgも参照)。生徒たちに,モーセとエリヤがどのような人であるのか,また彼らがした重要なことを幾つか挙げてもらいます(もし助けが必要な場合,『聖句ガイド』でこれらの預言者の名前を調べるように提案してもよいでしょう)。エライアスはアブラハムの時代に生きていた預言者かもしれないと説明します。エライアスは名前に加えて,先駆ける者,あるいは回復する者という称号を意味します(『聖句ガイド』「エライアス」の項,scriptures.lds.org参照)。

十戒
バールの祭司に立ち向かうエリヤ

クラスを3つのグループに分けます。ホワイトボードに書いた表の3人の名前を一人ずつ各グループに割り当てます。それぞれの使者が神権の鍵をジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに委ねたことを説明します。生徒たちに割り当てられた名前に関連した聖句を読んでもらい,天の使者が何を回復したか見つけてもらいます。十分な時間を取った後,それぞれのグループから一人の生徒に,割り当てられた聖句を読んでもらいます。それぞれのグループから二人目の生徒に出てもらい,使者が回復したものをホワイトボードの表「回復された神権の鍵」の下に書き出してもらいます。

生徒たちがイスラエルの集合の鍵について理解できるよう次の質問について話し合います。

  • 今日,主はどのようにして子供たちを主の王国に集められますか。

生徒の答えに付け加え,あるいは確認するために,一人の生徒に,十二使徒定員会のラッセル・M・ネルソン長老の次の説明を読んでもらいます。

ラッセル・M・ネルソン長老

「伝道活動はイスラエルの集合に欠かせません。……教会の宣教師たちは多くの国で散らされたイスラエルを探してきました。」(「散らされたイスラエルの集合」『リアホナ』2006年11月号,81)

ホワイトボードの「モーセ」の下の「これらの鍵が開けるもの」の列に「伝道活動」と書きます。

  • 伝道活動を司る鍵をモーセが回復したことにより,あなたの人生はどのように影響されましたか。

エライアスによりジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに委ねられたアブラハムの福音の神権時代は,主がアブラハムと交わされた約束を回復しました。エライアスにより回復されたアブラハムの福音の神権時代について生徒たちに理解してもらうために,一人の生徒に,十二使徒定員会のブルース・R・マッコンキー長老の次の説明を読んでもらいます。

ブルース・R・マッコンキー長老

「エライアスが携えてきたのは『アブラハムの福音』です。それは偉大なアブラハムの契約であり,忠実な者たちが永遠に増し加えられるという約束です。日の栄えの結婚を通して彼らの子孫が浜の真砂のように,また空の星のように増えるのです。エライアスは,アブラハム,イサク,ヤコブが古代において受けた約束を授けました。今の世の人々とその子孫によってあらゆる世代の人々が祝福を受けるという約束です。わたしたちは今,受けたいと思うすべての人々にこのアブラハム,イサク,ヤコブの祝福を差し上げています。」(「王国の鍵」『聖徒の道』1983年7月号,38)

  • マッコンキー長老によれば,どのような約束がアブラハムに与えられましたか。(生徒たちが答える間,ホワイトボードの「エライアス」の下の段に日の栄えの結婚と永遠の子孫と書きます。)

  • 日の栄えの結婚と永遠の子孫の祝福はあなたにとってどのような意味がありますか。それらはなぜあなたにとって大切なのですか。

生徒たちがエリヤにより回復された鍵を理解するために,二人の生徒に,次の言葉を読んでもらいます:

ジョセフ・フィールディング・スミス大管長

ジョセフ・フィールディング・スミス大管長は次のように教えました:「エリヤに授けられたこの結び固めの力は,夫と妻,そして子供たちと両親をこの世と永遠にわたって結びつける力です。これは,すべての福音の儀式に存在する拘束力のある力です。……救いに関する儀式のすべてはこの力によって結び固められます。(二人のもとに)現れ,この力を回復することはエリヤの使命だったのです」(“Elijah the Prophet and His Mission” [1957], 5)。

デビッド・A・ベドナー長老

十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は次のように説明しました:「キリストの回復された教会の会員であるわたしたちは,自分の先祖を探し出し,先祖のために福音の救いの儀式を行うという聖約を伴う責任を負っています。そういうわけで,わたしたちは家族歴史の探求を行い,神殿を建て,身代わりの儀式を執行しています。そのために,地上でも天でもつなぐ結び固めの権能を回復するためにエリヤが遣わされたのです。」(「子孫の心は向かうであろう」『リアホナ』2011年11月号,25)

  • これらの説明によれば,エリヤはどのような力または権能を回復しましたか。(生徒たちが答える間,ホワイトボードの「エリヤ」の下の段に神殿と家族歴史の業を含む結び固めの力と書きます。これらの神権の鍵がなければ「〔主の〕再臨の時に,全地はことごとく荒廃する」ということを生徒に気づかせてもよいでしょう〔教義と聖約2:3〕。)

  • 結び固めの力の回復によりあなたはどのように祝福を受けてきましたか。

ジョセフ・フィールディング・スミス大管長はカートランド神殿が「主として権能の鍵の回復のために建設され,鍵が回復されて全き福音の儀式が啓示される」と指摘したことを説明します(Doctrines of Salvationcomp. Bruce R. McConkie, 3 vols. [1954–56], 2:242)。教会の大管長と十二使徒定員会は今日でもこれらの神権の鍵を行使し続けています。

ホワイトボードに次の文章を未完成のまま書いてください:伝道活動,永遠の家族,神殿の業の鍵は,わたしたちが___をするのを助けてくれる。

生徒たちに,教義と聖約110:11-16を黙読し,どのようにしてこの原則を完成させるか見つけてもらいます。

  • これらの聖句によると,なぜ伝道活動,永遠の家族,神殿の業が必要なのでしょうか。(生徒たちが答える間,ホワイトボードの文章を完成させてください。彼らの答えは,恐らく以下の原則を反映するはずです:伝道活動,永遠の家族,神殿の業の鍵は,わたしたちが主の再臨の備えをするのを助けてくれる。

生徒たちがこの原則を理解できるように,それぞれのグループに以下の質問の一つを割り当てて,よく考えてもらいます。(1)伝道活動はどのようにして人々を主の再臨に備えさせるでしょうか。(2)永遠の結婚と家族の約束はどのようにして人々を主の再臨に備えさせるでしょうか。(3)神殿の業はどのようにして人々を主の再臨に備えさせるでしょうか。十分な時間を取った後,それぞれのグループから一人ずつ,この質問にどう答えるか尋ねます。

次の質問をホワイトボードに書き,生徒たちにクラスノートや聖典学習帳に答えを書いてもらいます:

回復された神権の鍵によりあなたはどのように祝福されてきましたか。

これらの回復された鍵の一つを通してだれかが祝福されるためにあなたは何ができますか。

十分な時間を取った後,生徒に二人一組になって,互いに思ったことを話し合ってもらいます。これらの神権の鍵が回復されたことにより,あなたの人生がどのように祝福されてきたか話してもよいでしょう。

注釈と背景情報

教義と聖約110:10「この家の名声は諸外国に広まるであろう。」

十二使徒定員会のボイド・K・パッカー会長は次のように説明しました:

ボイド・K・パッカー会長

「〔1836年,〕主は『この家の名声は諸外国に広まるであろう』と預言されました。(教義と聖約110:10)当時の状況においては,それはたかだか起こりそうにないことでした。教会の会員は新天地の農村地域に散らばっている一握りの聖徒たちでした。しかしこれら初期の迫害,苦闘,試しにもかかわらず,現在は文字どおり世界中に信徒が散らばり,数万の宣教師が迎え入れられるすべての家に証を携えているのです。」(“The Holy Temple” [1980], 135

教義と聖約110:11イスラエルの集合

ジョセフ・フィールディング・スミス大管長は次のように説明しました:「モーセはイスラエルの集合の鍵を持っていました。彼はイスラエルの民をエジプトからカナンの地へ導きました。この神権時代にあって,現代における集合のために地上に訪れてこれらの鍵を回復するのは彼の使命でした。」(“Church History and Modern Revelation”2 vols. [1953], 2:48)カートランド神殿でのこの示現から間もなく,預言者ジョセフ・スミスはこれらの鍵を行使して世界中のあらゆる場所からイスラエルの集合を始めました。例えば1837年にはヒーバー・C・キンボール長老とオーソン・ハイド長老やほかの宣教師たちはイギリスに派遣され,そこで彼らは伝道を通して,2,000人近くの人々を,回復されたイエス・キリストの教会に集める助けをしました。

教義と聖約110:13エリヤの再訪

「この偉大な示現と啓示が授けられたのは,1836年4月3日,復活祭の日曜日であった〔教義と聖約110章の前書き参照〕。時満ちる神権時代の中で,この日ほど復活の真実性を確認するにふさわしい日がほかにあるだろうか。その週末はユダヤ教の過越の祭でもあった。ユダヤ人の家族では何世紀もの間,過越の食卓に空席を用意する。エリヤの再訪を期待してのことである。エリヤは来た。しかし,それは過越の席にではなく,カートランドの主の神殿にであった。」(『時満ちる時代の教会歴史』第2版〔教会教育システム手引き〕,167)

教義と聖約110:13-16結び固めの鍵は,父の心と子供たちの心を向けさせる

ジェームズ・E・ファウスト管長は次のように教えています。

ジェームズ・E・ファウスト管長

「教会員は,崩壊しつつある家族生活を救う最も効果的な治療法を知っていると思います。それは,男性と女性,そして子供たちが,家庭での父親と母親の神聖な役割を尊び,敬うことです。そうすることによって家族本来の姿が取り戻され,すべての教会員の心に互いへの尊敬と感謝の念が育まれるでしょう。こうして,マラキによって告げられ,エリヤによって回復された偉大な結び固めの鍵が効力を表わすのです。『父の心をその子供たちに向けさせ,子供たちの心をその父に向けさせる。これはわたしが来て,のろいをもってこの国を撃つことのないようにするためである。』(教義と聖約110:15マラキ4:6)……

恐らくわたしたちは,エリヤによってもたらされた権能を,神聖な場所で執り行われる正式な儀式だけにかかわるものとして考えているのではないでしょうか。しかし,これらの儀式は私たちの日々の生活の中にその真の意義が表れてこそ,力を発揮し善を生み出すのです。マラキは,エリヤの権能は父と子の心を互いに向けさせると告げました。心は感情の中心であり,啓示が注がれる場所でもあります(マラキ4:5-6参照)。この結び固めの権能は,家族関係や,人を養い育てる環境で培われた属性や徳,また愛ある奉仕の中にこそ,その力を発揮するのです。これらはすべて家族を結ぶきずなとなります。」(「父親よ,家庭に戻りなさい」『聖徒の道』1993年7月号,40)

十二使徒定員会のラッセル・M・ネルソン長老は次のように教えています:

ラッセル・M・ネルソン長老

「この〔神権の鍵の〕回復に付随するのがエリヤの霊と呼ばれているものです。言葉を換えれば,家族が神聖な起源を有していることを証する聖霊の現れです。」(「新たな収穫の時」『聖徒の道』1998年7月号,38)