自立
8:学ぶ


「ビジネスのキャッシュフロー管理:学ぶ」始める,育てる,わたしのビジネス 自立に向けて

「ビジネスのキャッシュフロー管理:学ぶ」

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所要時間:60分以内

1.利益とキャッシュフローの違い

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ビジネスを成功させるには,毎日記録をつける必要があることをこれまで学んできました。ビジネスでお金の出入りがある度に,記録をしなければなりません。また,損益計算書の作成方法も学びました。損益計算書とは,特定の期間にビジネスから得られた利益(または損失)の概要を表すものです。利益とは,ビジネスの収益から経費を差し引いた後に残る金額を指します。

利益は重要な数値ですが,ビジネスオーナーが注目すべき数値はそれだけではありません。キャッシュフローとは,ビジネスにおいて日々お金が出入りするタイミングに焦点を当てたものです。キャッシュフローは,あなたのビジネスの活力の源です。ビジネスで使用可能な現金があれば,発展に向けた選択肢を追及したり,投資したり,不測または緊急事態に備えて貯蓄することができます。

損益計算書上ではビジネスが利益を生んでいるように見える場合も,債務を支払う現金が十分にないと,倒産することになりかねません。キャッシュフローの問題は,ビジネスが失敗する原因として最もよく見られるものの一つです。

2.キャッシュフローを理解する

読む:

キャッシュフローには2種類あります。

プラスのキャッシュフローは,一定期間にビジネスに入ってくる現金の総額が,同時期にビジネスから出ていく現金の総額よりも大きいときに起こります。あなたはこの,プラスのキャッシュフローサイクルを目指すべきです。

マイナスのキャッシュフローは,一定期間にビジネスから出ていく現金の総額が,同時期にビジネスに入ってくる現金の総額よりも大きいときに起こります。これはリスクの高い,望ましくない状態であり,あなたは可能なかぎり早く現金を生み出し,コストを削減するべく直ちに措置を取るべきです。

キャッシュフローの圧迫や,ビジネスオーナーとしての対応策を理解するために,これから3つの例を見ていきましょう。あるビジネスが,ある月の経営を300の現金で始めたとします。そのビジネスは通常,毎週月曜日に200,水曜日に200の現金を受け取ります。そして,毎週金曜日に300を現金で支払います。下の例Aは,3週間にわたるこのビジネスのキャッシュフローサイクルを表しています。ビジネスにおける現金は,予測できるパターンで出入りしています。

A:理想的なキャッシュフロー

理想的なキャッシュフロー

残念なことに,どのようなビジネスでも不測の事態や停滞を経験します。下の例Bは,マイナスのキャッシュフローに備えていないビジネスに何が起きるかを示しています。このケースでは,2人の顧客が請求書の支払いをしていないために,400の未回収売掛金(不良債権とも呼ばれる)が発生しました。ビジネスオーナーは,従業員への給与支給のために,このお金を当てにしていました。さらに,直ちに支払いをする必要のある緊急の出費も発生しました。

B:マイナスのキャッシュフロー —備えがない場合

マイナスのキャッシュフロー:備えがない場合

下の例Cでは,例Bと同様の不測の事態や停滞を示していますが,このケースにおいて,ビジネスオーナーは備えができています。彼女はビジネス運営を維持するために,信用供与を頼みにしています。できるかぎり早急に信用供与の残高を払い戻します。

C:見込まれるマイナスのキャッシュフロー —備えている場合

見込まれるマイナスのキャッシュフロー

話し合う:

これらの例は,キャッシュフローを管理する難しさについてどのようなことを教えていますか。

読む:

ビジネスオーナーにとって,キャッシュフローにかかわる問題を抱えることはよくあることです。以下のような課題が考えられます。

  • 新しいビジネス—売掛や掛買いで取り引きすることが難しくなる

  • 事業拡大—手元の現金総額が減る可能性がある

  • 在庫を抱える—現金の流れが停滞する

  • クレジット払いの顧客—現金による収益総額の受け取りが遅れる

  • クレジット払いによる,ほかのビジネスへの販売—現金による収益総額の受け取りが遅れる

  • 季節またはその他の要因による不規則な売り上げ—手持ちの現金総額の増減を生じさせる

  • 不測の出費

  • 顧客の不払い(不良債権)

話し合う:

あなたのビジネスのキャッシュフローでは,どのような問題が発生する可能性がありますか。

3.キャッシュフローを改善するための戦略

読む:

ビジネスにおいてプラスのキャッシュフローサイクルを生み出し,起こり得る不測の事態や停滞に備えるためにできることは多くあります。例えば,あなたの業界における標準的な支払い期限を調べるとよいでしょう。一部の業界では,90日かそれ以上,売り手が支払いを待ってくれる場合もあります。別の業界では,30日以内に支払いを求められることも少なくありません。あなたの業界での標準的な支払期限を理解すると,自分のビジネスにとってより望ましい期限を交渉することができます。

話し合う:

多くの場合,ビジネスオーナーはできるだけ速やかに現金の受け取りや回収を行い,現金による支払いは期限の直前まで伸ばしたいと望むものです。表面的に見ると,こうした原則は,「何事でも人々からしてほしいと望むことは,人々にもそのとおりにせよ」(マタイ7:12)という救い主の教えと相反するように思えるかもしれません。ビジネスオーナーとして,あなたはこれらの原則とどう折り合いをつけますか。

読む:

ビジネスにおいてプラスのキャッシュフローサイクルを生み出そうと努めるに当たり,誠実さをもって行うことが肝要です。あなたの業界における支払い期限を理解する努力をしてください。支払いの戦略を立てる際には,賢明であってください。あなたのビジネスにとって望ましい支払い期限を設定するようにします。一旦支払いに関する戦略を立てたなら,自分の要望を明確に伝え,約束はすべて守りましょう。

4.キャッシュフローを積極的に管理する

読む:

定期的にビジネス用の銀行口座を確認し,その額が増えるよう願うだけでは不十分です。自分のビジネスのキャッシュフローを,積極的に管理する必要があるのです。

成功するビジネスオーナーとして,あなたは自分のビジネスで使用可能な現金が幾らあるかを常に把握しておくべきです。銀行の取引明細書を頼りにキャッシュフローの管理を行ってはいけません。銀行の残高は,業者への支払いによる出費や顧客からの入金など,進行中の支払いが反映されていない場合が多いためです。

資金繰り計画を立て,それを継続的に更新する必要があります。前に説明したように,キャッシュフローは,一定期間におけるビジネスの出金・入金のタイミングや総額を表します。資金繰り計画は,今後数か月間に予測されるキャッシュフローを示すものであるべきです。資金繰り計画は,100%正確とは言えないでしょう。しかし,月々の収益,変動費,固定費に関する保守的な見積もりを常に立てておくことは不可欠です。

ビジネス上のプラスのキャッシュフローは,偶然起こるのではありません。綿密な計画と地道な努力によって達成されるものです。現在の現金持高を把握し,今後の資金繰り計画を備えているならば,ビジネスを成功させ,発展させることにつながる決断ができるようになるでしょう。成功するビジネスオーナーは不測の出費のために手元の現金を維持し,時には,予測されるキャッシュフローの必要に基づいて資金源を確保しておきます。