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「5:学ぶ」『主に力を見いだす:レジリエンスを高める』

「5:学ぶ」『主に力を見いだす:レジリエンスを高める』

学ぶ—所要時間:60分以内

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抑うつ状態は,すべての人の生活に何らかの形で影響を与えます。今日の話し合いの内容は,あなたやほかの人たちにとって,考えたり話し合ったりするのが難しいかもしれません。この章を考察していくとき,皆が思いやり深くあるよう奨励します。つらくなったら,ためらわずに休憩を求めてください。

1.悲しみとうつ状態の違い

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悲しみと抑うつは,悲哀,不幸,深い憂いの感情のことです。この世においてわたしたちが普通に経験する事柄の一部です。悲しみと抑うつは,拒絶,対人関係,失望,そのほかの苦痛に起因する困難によってもたらされることがあります。それらはつらいものではありますが,わたしたちが成長するうえで不可欠な要素です。ブルース・C・ヘーフェン長老は,人生におけるつらい経験は,わたしたちが最終的にもっと完全な喜びを経験できるように天の御父によって意図されたと,教えています。(see “A Willingness to Learn from Pain,” Ensign, Oct. 1983, 64, 66)

大うつ病性障害(うつ病)や深刻なうつ状態は違います。それらは,わたしたちの思考,感情,物の見方,行いに影響を与える精神状態です。ジェフリー・R・ホランド長老は,通常の悲しみとうつ状態やうつ病との違いについて述べました。「わたしが言うのは,だれもが経験する何をやってもうまくいかない日や,ほかの落胆する時をときを指しているのではありません。人はだれしも,時には心配したり,がっかりしたりするものです。……今日わたしが話しているのは,もっと深刻な病気や障害によって,その人本来の能力が著しく制限されて〔いる〕……場合のことです。(「破れた器のように『リアホナ』2013年11月号,40参照)

うつ病は,明確な理由が分からないままやって来ることがありますが,つらい出来事に対する不健康な反応として起きることもあります。深刻なうつ状態を経験すると,わたしたちは感情に対してまひしたり,無感覚になったりすることがしばしばあります。恥じる気持ち,自責の念,自己嫌悪を感じることもあり,それらはすべて,毎日の活動様式に影響する恐れがあります。深刻なうつ状態は,困難が生じたときにその困難に前向きに対処する能力にも影響します。

加えて前回の集会で読んだように,悲しみやうつ状態は,わたしたちが御霊の促しを感じ,理解する能力に影響を及ぼします。(レイナ・I・アブルト「曇りの時も晴れの時も,主よ,われと共におりたまえ『リアホナ』2019年11月号,57-60参照)

話し合う:

悲しみとうつ状態とはどのように異なっていますか。

視聴する:

“Like a Broken Vessel Part 1”(「破れた器のように パート1」)はsrs.ChurchofJesusChrist.org/videosで視聴可能です〔1分38秒〕。

1:57

2.感情面の困難につながり得る要因

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これらの感情の理由に気づくことは,わたしたちが自分や他人に対してより思いやりのある態度を取る助けとなります。悲しみやうつなどの感情は,以下の要因のうちの多くを始めとする,幾つかの事柄によって引き起こされることがあります。

感情面の困難につながり得る要因

生物学的なもの―体にまつわる身体的要因

  • 遺伝的特徴

  • 重病/重症

  • 食習慣や運動不足

  • 違法薬物や薬物の乱用

  • 季節ごとの気候

  • 化学的な変化やホルモンの変化

心理的なもの―感情に影響する出来事

  • 大きな出来事や人生の節目

  • 死亡や喪失

  • 虐待

心理的なもの―激しい感情を生む他人との交流

  • 衝突

  • 孤独や孤立

  • 社会的圧力

  • 裏切りや壊れた信頼

霊的なもの―信仰を試す困難な出来事

  • 選択の結果

  • 困難な世の中に生きること

話し合う:

つらい感情がどこから来るかを知ることは,わたしたちが自分や他人に対する思いやりを深めるうえでどのような助けとなるでしょうか。

3.うつ病の症状

読む:

以下のような症状は,うつ病の兆候かもしれません。ほとんどの人は人生の中で時々このような状態を経験しますが,長期間複数の症状がある場合は,より深刻な状態である可能性があります。もしこれらの症状のうちの3つ以上が一定期間続いたり,それによって活動する能力が制限されたり,自分や家族の努力にもかかわらずそれらの症状から逃れるのが難しい場合には,専門家の助けを求めてください。

うつ病の症状

  • いつも悲しかったり,途方に暮れたり,絶望したり,価値のない人間だと感じる

  • 活力や意欲がほとんど湧かない

  • 食欲の変化,やせた,または太った

  • 寝つきが悪い,眠りを持続できない,または目覚めが悪い

  • 以前は楽しかった活動に興味を失った

  • 集中できない,物事を覚えているのが困難,または決断ができない

  • 死や自殺についてよく考える*

話し合う:

うつ病の症状に気づくことは,わたしたちがレジリエンスをさらに高めるうえでどのような助けとなるでしょうか。わたしたちがほかの人をサポートするうえでどのような助けとなるでしょうか。

読む:

*もしあなたやほかの人が死や自殺について考えている場合には,最寄りの病院の救急センターに行き,ビショップまたはほかの教会指導者に連絡を取って,直ちに専門家の助けを求めてください。自殺願望は,常に深刻に捉えるべきです。

ヘルプラインおよびリソースについては,suicide.ChurchofJesusChrist.orgmentalhealth.ChurchofJesusChrist.org を参照してください。

北アメリカ在住の人は全米自殺予防ライン(800)273-8225 に電話をしてください。

4.助けを得る方法

読む:

レイナ・I・アブルト姉妹は次のように教えています「体のほかの部分と同じように,脳も病気になったり,傷を負ったり,化学的不均衡になることがあります。心が苦しんでいるとき,神に,周りの人に,そして医療とメンタルヘルスの専門家に助けを求めるのは適切なことです。……

たまに悲しくなったり,心配になったりするのは普通のことです。悲しみや不安,怒りは,人間の自然な感情です。しかし,常に悲しかったり,苦悩により天父や御子の愛と聖霊の影響を感じられない場合,うつ病や不安神経症,またはその他の情緒的状態によるものかもしれません。」(「曇りの時も晴れの時も,主よ,われと共におりたまえ『リアホナ』2019年11月号,57)

5.悲しみ(死別,喪失による)

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ほとんどだれもが人生のある時点で悲嘆にくれる経験をします。それは愛する人の死によるものかもしれませんし,仕事や人間関係を失うといった,そのほかの喪失や人生の大きな変化によるものであるかもしれません。福音,聖約,そして,再び愛する人に会えるという知識があるので,わたしたちは嘆き悲しむべきではないと感じることがあるかもしれません。しかし,そうではありません。ラザロが死んだとき,救い主でさえも,ラザロへの愛のゆえに涙を流されました(ヨハネ11:35-36)。ラッセル・M・ネルソン大管長は次のように教えています。「嘆き悲しむことは,純粋な愛の深い表現の一つです。それは,『あなたは死ぬ者を失うことで涙を流すほどに,……ともに愛をもって生活するようにしなければならない』という神の戒めに〔教義と聖約42:45〕完全に従った反応なのです。」(「死の扉『聖徒の道』1992年7月号,77参照)

だれもが異なる形で,異なる時期に悲嘆を経験します。悲嘆に暮れている間,ほとんどの人は以下のような感情を経験します。一般に,特定の順番や特定の時間枠でそれらの感情を経験するわけではありません。

  • 否認,否定:このことが起きたと信じることができません。しばらくの間ショック状態になったり,平気なふりをしたり,なかったことにしてしまったりすることもあります。

  • 怒り:自分自身や,愛する人や,さらに神にさえも怒りを抱くことがあります。怒りは,失ったものをどれだけ大切に思っているかを示す一つの表現です。

  • 交渉:悪い夢の中にいると考えて,物事がなかったことになるように神と交渉しようとするかもしれません。特定の結果が得られるように,「もしわたしが毎週神殿に行くなら」など,「もしも」の問いかけをするかもしれません。

  • 悲しみ:喪失によって,深い悲しみを経験します。この悲しみは強烈で抗しがたいものである場合がありますが,必ずしもうつ病であるとはかぎりません。深く悲しむ過程において正常なことです。

  • 受容:受容とは,失ったということを受け入れることです。失ったことをうれしく思うわけでも,失くしたものの思い出を裏切るということでもありません。前に進めるように,失ったという事実をただ受け入れるのです。

話し合う:

悲嘆というだれもが経験し得る感情を理解することは,わたしたちにとってどのような助けとなるでしょうか。

読む:

悲嘆に暮れているときに経験することは,人それぞれ異なります。寝食に困難を覚える人もいるかもしれません。一人でいたいと思う人もいれば,人と一緒にいたいと思う人もいるかもしれません。強烈な感情を抱く人もいれば,抱かない人もいるかもしれません。つかの間である人もいれば,長い間悲嘆に暮れる人もいます。正しい嘆き方,悲しみ方などというものはありません。

以下はそのような時に助けとなる方法です。

  • どのようなことを感じていても,あるいは感じていなくても,自分自身がそのように感じたり,泣いたり,経験したりすることを許す。

  • 自分を大切にする。健康的な食事をし,十分な睡眠を取り,運動するようにする。

  • 抱いている感情を特定し,正常で健全なものであると認める。

  • どのくらいの時間が必要となりそうか現実的に予想し,一歩ずつ進む。

  • 幸福,喜び,平安を感じることは失ったものへの裏切りではないと理解する。

  • 喪失感と将来への希望について書くことによって,あなたの思いや気持ちを表現する。

  • これらの感情が抗しがたいものになったら,専門家の助けを求めるとよいでしょう。

読む:

独りで悲嘆に暮れる必要はありません。必要なときにはほかの人を頼ってよいのです。家族,友人,教会指導者,そして最も重要なこととして,救い主に助けを求めることができます。

シャロン・ユーバンク姉妹は,救い主がわたしたちをどのように助けることができるか,このように教えています。「悲劇が不意にわたしたちを襲うとき,息ができなくなるほど人生に傷つくとき,そしてエリコに向かう道で死にそうなまま放置された男のように打たれるとき,イエスは近寄って来られ,わたしたちの傷に油を注がれ,優しく起こしてくださり,宿屋に連れて行ってくださり,世話をしてくださるのです〔ルカ10:30-35参照〕。悲しんでいるわたしたちに主はこう言われます。『わたしは……あなたがたの肩に負わせられる荷を軽くし,……あなたがたの背にその荷が感じられないほどにしよう。……主なる神であるわたしが,苦難の中にいる自分の民を訪れるということを,あなたがたが確かに知ることができるようにするためである。』〔モーサヤ24:14〕キリストが傷を癒してくださいます。」(「キリスト—闇の中に輝く光『リアホナ』2019年5月号,74)

悲嘆を経験するとき,耐えがたいものに感じ,他の人たちと距離を置きたい感じることがあるかもしれません。しかし,他の人を通してサポートを得られることを覚えておいてください。

視聴する:

“Christ’s Atoning Love Heals Grieving Hearts(「キリストの贖罪という愛が深い悲しみを癒す」)はsrs.ChurchofJesusChrist.org/videosで視聴可能です。〔訳注–日本語では,クエンティン・L・クック長老の総大会での説教「あのね,大変だったんだよ」の一部12分38秒から15分43秒をhttps://www.churchofjesuschrist.org/study/general-conference/2008/10/hope-ya-know-we-had-a-hard-time?lang=jpnで視聴してください。〕

3:31

話し合う:

悲嘆を乗り越えることについて,この話からどのようなことが学べるでしょうか。

6.助ける方法

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あなたは,愛する人を失った人や,つらい時期を過ごしている人,うつ病やほかの病気と診断された人を知っているかもしれません。その人たちにどのような言葉をかければよいのか,どうすればよいのか,理解するのは難しいことでしょう。感情を表に出すことや,感情を表に出している人のそばにいることに対して,恥ずかしいと思ったり,苦手に感じたりすることがあるかもしれません。下の表の左欄は,悲嘆している人を助けようとするときによく使われる,あまり助けにならない表現の例です。右欄は,代わりに使える,より助けになる表現です。

あまり助けにならない

より助けになる

あまり助けにならない

  • 「お気持ちは分かります。」

    • たとえとても似通った経験をしたことがある場合でも,その人がどのように感じているかを尋ね,聞いてあげる方が良いでしょう。

  • 「信仰を持ってさえいれば,すべて解決しますよ。」

    • もちろん信仰を持つべきですが,それによってつらさがなくなるわけではありません。その人と一緒にいることが大切です。

  • 「少なくともあなたは……。」

    • 文章を「少なくとも」で始めると,その人が経験してきた事柄を軽視してしまいます。

  • 「神には御計画があります。」

    • このように言うと,ほんとうに耳を傾け,愛情を向けているのではなく,問題をさっさと解決しようとしているように聞こえてしまうことがあります。

  • 「彼らは,もっと良い場所にいます。」

    • このように言っても,愛する人がいない寂しさが減るわけではありません。

より助けになる

  • 「今,何と言えばいいのか分かりませんが,あなたがわたしに打ち明けてくれてとてもうれしいです。」

  • 「今感じている気持ちを話してもらえませんか。」

  • 「あなたのことを気にかけていますよ。」

  • 「わたしがそばにいます。」

  • 「そんな風に感じてもいいんですよ。」

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人はそれぞれ唯一無二であり,必要とすることも異なります。言ったことがすべて適切だった場合でも,相手を怒らせてしまうことがあるかもしれません。傷ついたり,怒ったりすることは,悲しんだり,落ち込んだりしているときに自然に起きることです。最も重要なことは,足を運び,耳を傾け,愛と優しさを与えることです。

ヒント:

この章の最後にある「リソース」セクションを見て,人生における様々な困難に対処するためのリソースのリストを確認しましょう。

話し合う:

あなたはどのようにして感情の面で苦しんでいる人の助けとなれるでしょうか。