「9:学ぶ」『主に力を見いだす:レジリエンスを高める』
「9:学ぶ」『主に力を見いだす:レジリエンスを高める』
学ぶ—所要時間:60分以内
1.救い主のように仕え,教え,導く
読む:
主はわたしたちに,周りの人々に仕え,教え導くよう言われました。アルマとアミュレクの話はその教訓となるものです。アルマは,アミュレクが精神的にとても苦しんでいることに気づき,自ら「自分の家に彼を迎え入れた。そして,艱難に遭っているアミュレクに必要なものを与え,主にあって彼を強くした。」(アルマ15:18)
深く考える:
これまで人々はどのように,あなたを「主にあって……強くし」てくれましたか。
話し合う:
ほかの人を主にあって強くするには,どのような方法があるでしょうか。
2.人々を助けることについての誤った思い込み
読む:
人を助けることについて,あなたが信じているかもしれない思い込みがいくつかあります。次の思い込みを読んで,このように感じたことがあるかどうかを評価してみてください。
誤った思い込み1:
わたしには人々が必要とする助けを提供する全責任がある。
現実:
救い主だけがほんとうの癒し主ですが,あなたは人々に祝福をもたらすための癒しのコミュニティの一員になることができます。あなた独自の強みや物の見方を提案し,できるときにそれらを提供することによって,あなたは癒しのコミュニティの一員になるのです。
誤った思い込み2:
わたしは人々の問題を解決する専門家でなければならない。
現実:
専門のカウンセラーでさえ,自分たちの役割は指示を与えることではなく,ただ人が自分で変わるのを助けることであると信じています。あなたの役割は人々を愛し,人々に仕えることであり,救い主が癒しをお与えになります。
誤った思い込み3:
人生の問題に対して,特効薬がある。
現実:
わたしたちはすぐに満足を与えてくれる文化の中で暮らしていて,ほとんどすべての事柄に特効薬があると約束されています。しかしながら,ほとんどの問題に対して,特効薬はめったにありません。変化に取り組むことは過程です。ほとんどいつも,わたしたちが考えるよりも時間がかかります。ほんとうの変化というのは,あなた自身やあなたの愛する人が経験しなければならない精錬の過程なのです。
誤った思い込み4:
わたしは何を言ってよいのか分からないので,何も言わないほうがよい。
現実:
幸いなことに,多くのことを言う必要はあまりありません。あなたが人々に与えられる最もすばらしい贈り物は,彼らに関心を示し,尋ね,愛を持って耳を傾け,そして人々が安心してあなたに話せるよう助けることです。
誤った思い込み5:
少しでも助けると,いつもわたしに頼るようになるだろう。
現実:
奉仕をするときには,健全な境界線を設け,自分自身と家族の世話を確実に行えるようにします。主は,人々の自立の度合いが増す方法で奉仕できるようあなたを導いてくださいます。小さな,簡単な愛の行いが人々の人生に及ぼす影響を決して過小評価せず,だれかのために時間と愛情を費やすことを恐れないでください。
話し合う:
これらの誤った思い込みのうち,あなたが苦しむかもしれないものの一つについてパートナーと話し合ってください。
3.人々に適切に対応する
読む:
あなたに心からの善意があっても,困っている人を助けようとするとき,あまり役に立たないことをつい言ってしまうものです。しかし,そのことで,引き続き助けになろうとするのを恐れてはいけません。神は御自身の子供たちのことをあなたが愛し,助けることを望んでおられます。助けようとしている相手の気持ちに敏感になり,その人の痛みや困難を過小評価するようなことを言ったり,行ったりしないよう気をつけます。
話し合う:
ほかにどのような助けになる言葉や助けにならない言葉を聞いたことがありますか。
4.メンターになる
読む:
レイナ・I・アブルト姉妹は次のように教えています。「ほかの人が経験していることを実感できなくても,その苦痛が現実のものであるということを認めることは,理解と癒しを見つけるための重要な最初の一歩になります。」(「曇りの時も晴れの時も,主よ,われと共におりたまえ」『リアホナ』2019年11月号,58)人の気持ちを認めるとは,まずその人の気持ちを受け入れ,次にその気持ちを理解することです。
以下は,難しい問題に直面している人をあなたが認めるうえで助けとなる幾つかのステップです:
-
耳を傾ける。一緒に時を過ごし,その人が話していることにしっかりと耳を傾けます。もしその人の問題にあなたが関与していたとしても,防衛的にならないでください。
-
理解しようと努める。相手の気持ちをさらに理解するために,思いやりのある質問をする必要があるかもしれません。そのような気持ちがどこから来ているのか理解するために,できるかぎり努力します。
-
相手の気持ちを受け入れる。相手を変えようとしたり,そのように感じるのは間違っていると言ったりしないでください。これを行うときに,不健全で有害な思考パターンを助長しないように気をつけてください。
-
思いやりを示す。相手の気持ちを気遣っていることを伝えてください。もしあなたが相手の状況や,気持ちの原因に共感できなくても,次のように言うことで相手の気持ちを認めることができます。「見下されているような思いをされたのですね。見下されているように(あるいは,不安に,絶望的に,価値がないように,腹立たしく)感じるのはつらいことです。」
-
愛を示す。相手に対して次のように言います。「あなたのことを気にかけています。あなたは抱えている問題を解決,あるいは克服する力を持っているとわたしは確信しています。」
読む:
以下は,困難な時期を経験している人を認める方法の例です。
ジルはシングルマザーで,息子が薬物の過剰摂取で最近亡くなりました。彼女は一人暮らしで,近くに家族はいません。マリアがジルと話をするためにやって来て,様子を尋ねます。マリアはジルの話に口を挟みたくなりましたが,そうしませんでした。ただ耳を傾けました。タイミングを見計らって,マリアは次のような質問をしました。「今どういう気持ち?」「いちばんつらいことは何?」マリアは「少なくとも息子さんは今,神のみもとにいますから」と言わずに,ジルが息子を失ってとにかく寂しく思っていることを理解しました。「息子さんがいなくてとても寂しいのね。あなたと一緒に,わたしも心が痛むわ」と言って共感を示すことにしました。座って一緒に泣き,愛を示しました。
ヒント:
ミニスタリングについての教会のウェブサイトには,思いやりを示す方法を知るためにさらなるアイデアが紹介されています。churchofjesuschrist.org/ministering?lang=jpnを参照してください。
5.人々の選択の自由を尊重する
読む:
天の御父はすべての人に選択の自由という賜物を与えておられます。あなたの助けに関係なく,人は自分の選択に対して責任があります。人に手を差し伸べるときには,あなたにはその人の問題を解決したり,その人の選択をコントロールしたりする責任はないことを忘れないでください。人々を助ける際には,あなた自身の健全な境界線を設けることが大切です。
救い主はあなたが愛する人たちの選択の自由を尊重することを望んでおられますが,それは必ずしも傍観することを意味するわけではありません。選択の自由を尊重し,耳を貸してもらえないと感じさせることなく,どのようにほかの人に仕えることができるか分かるよう,御霊を求めてください。
以下は,気持ちを認め,耳を傾けることに加えて,あなたができる事柄のアイデアです:
-
断食して彼らのために祈る。
-
彼らのために神殿であなたの時間を奉献する。
-
専門的な助けや助言を求める。
-
情緒的な健康について研究する。
-
励ましのメモを送ったり,相手がほほえむようなユーモアのあるメモを分かち合ったりする。
-
神権の祝福と勧告を求める。
-
家族や友人のためのサポートグループに参加する。
-
健全な境界線を維持しながら,いつでも愛する人のために時間を取れるようにしておく。
-
相手が望む,または同意する方法で仕える。選択の自由を奪うことなく,耳を貸してもらえないと感じさせることのないようにする。
話し合う:
力をもらっているとき,あるいは人々に力を与えているときに,心が高められた経験を分かち合ってください。
6.人々に対し辛抱強く耐える
読む:
愛する人を世話することは,難しくて圧倒されてしまうことがあります。困っている人の世話をしようとするときは,理解に努め,裁かないようにします聖文の勧告に従って,「この愛で満たされるように…… 熱意を込めて御父に祈〔る〕」ことができます(モロナイ7:48)。その愛とは慈愛,つまりキリストの愛です。
愛する人が情緒的な健康の問題を抱えている場合,愛する人の世話に集中しすぎて,自分を大切にするのを忘れてしまうことがよくあるかもしれません。あなたの受けられる助けやサポートがあります。サポートグループでは,家族の人たちが様々な健康問題や支援の方法,症状に対処する方法について学べるよう助けます。信頼できる友人や医療専門家に連絡し,あなた自身や愛する人への助けを求めてください。家族や友人によるサポートは,深刻な社会的,情緒的な健康問題の治療に有効な影響を与える可能性があります。
ジェフリー・R・ホランド長老は次のように勧告しています。「お世話をしている方は,人の介助に熱心なあまり,自分自身の健康を損なうことのないようにしてください。これらすべてのことに賢明であってください。自分の力以上に速く走らないでください〔モーサヤ4:27〕。できることとできないことがあっても,祈りと『偽りのない愛』〔教義と聖約121:41〕をささげることはできます。」(「破れた器のように」『リアホナ』2013年11月号,41)
話し合う:
人々の世話をすることと自分を大切にすることのバランスを取るために,これまでどんなことが役立ってきましたか。