聖徒たちはノーブーで数年間にわたって繁栄したことを説明する。教会と市は急速に大きくなり,神殿の業がはかどり,預言者ジョセフ・スミスは多くの啓示を受けた。しかしながら1843年から1844年に至って,教会に対する敵意が高まってきた。教会内外の敵は教会を崩壊させようとし始めた。この敵対活動は1844年6月27日にクライマックスを迎える。
割り当てておいた生徒に『わたしたちの受け継ぎ』62-63ページ「殉教」の第1段落から第5段落までの概要を報告してもらう。そして,教義と聖約135:4-5を生徒とともに読む。教義と聖約135章は預言者ジョセフが襲撃を受けたときに負傷を負ったジョン・テーラー長老が書いたものであることを説明する。
教義と聖約135:1-2を生徒とともに読む。その後に,殉教の様子についてウィラード・リチャーズ長老が記した以下の記事を読むか,生徒の一人に読んでもらう。リチャーズ長老は預言者の友人であり,十二使徒定員会の一員であったことを説明する。リチャーズ長老は預言者が殉教したときにカーセージの監獄にいた。彼の記録は1844年6月27日午後5時過ぎに暴徒が監獄に到着したところから始まる。
「2階にある監獄の扉をめがけて階段の下からマスケット銃弾が発射され,続いて大勢の人々が駆け込む足音がした。 ……
……1発の銃弾が扉を貫通してわたしたちをかすめていき,敵が命知らずの無法者であることが分かった。 ……
……ジョセフ・スミスとテーラー兄弟,それにわたしは部屋の表に面した方に飛びのいた。そして……ハイラム・スミスは部屋の3分の2辺りまで退き,扉の正面の所に扉を向いて立っていた。
そのとき,扉を貫通した1発の銃弾がハイラムの鼻の横に命中した。ハイラムはそのままの位置で背中からあおむけに倒れた。
ハイラムの〔服〕に開いた穴から考えて,1発の銃弾が窓越しに外から飛んで来て右のわきに当たったことは確かである。その銃弾は体を貫通して,彼の時計に当たって止まった。……それと同時に扉を貫通した銃弾が彼の鼻に命中したのである。
ハイラムは床に倒れると,『わたしは死ぬ』と語気強く叫んだ。ジョセフは兄を見て,『ああ,愛するハイラム兄さん』と叫んだ。そして,左手で扉を2,3インチ(約5-7.5センチ)開け,6発の銃弾入りの拳銃を玄関に向けてがむしゃらに発射した。……〔暴徒の一人が持ったマスケット銃〕から発射された銃弾が1発,ハイラムの胸をかすめて,のどから頭に突き抜けた。さらにほかの銃からねらわれて,数発の銃弾が撃ち込まれた。 ……
ジョセフは先に述べた扉の透き間から外に向けて拳銃を撃ち続けていた。……一方,テーラー兄弟はステッキを頼りに立ち上がると,戸口から発射され続ける小銃とマスケット銃の銃弾をステッキでたたき落そうとしていた。 ……
ジョセフが弾を使い果たしてしまうと,わたしたちにはもう火器がなかった。暴徒が今にもなだれ込んで来るのは必至だった。戸口にはマスケット銃が並び,部屋に半分入りかけていた。生きる望みはもはやなく,死が目前に迫っていた。
テーラー兄弟は窓に走り寄った。その窓は地面から15ないし20フィート(4.5-6メートル)の高さにあった。体のバランスを取ろうとしたときに,扉から飛んで来た銃弾が彼の足に当たり,外から飛んで来た銃弾が左胸のチョッキのポケットに入っていた時計に命中した。……その勢いで彼は床にあおむけに倒れた。とっさに彼は横にあったベッドの下に転がり込んだ。 ……
ジョセフは最後の手段として,テーラー兄弟が倒れたその同じ窓〔から〕飛び降りようとした。そのとき扉の方から発射された2発の銃弾が彼を貫いた。そしてさらに外からの1発が右胸に命中した。彼は『おお,わたしの神,主よ』と叫びながら外に落ちた。……ジョセフは左わきを下にして落ち,死んだ。」(History of the Church,第6巻,619-620)
ジョン・テーラー長老は4発の銃弾を浴びたが,命を取り留め,後にその傷から回復した。預言者が1年以上も前に預言したように,ウィラード・リチャーズ長老は傷一つ負わなかった。リチャーズ長老はこの預言の中で預言者が「そのとき,銃弾はあなたの周りをあられのように飛び交い,あなたは友人たちが右に左に倒れるのを目にするが,あなたの服は銃弾によって穴を開けられることはないだろう」と言ったと回想している(History of the Church,第6巻,619)。
ジョセフ・スミス・シニアは亡くなる前に,預言者に祝福を与えてこのように言った。「あなたはあなたの業を終えるまで生き長らえるでしょう。……あなたが行うようにと神から与えられたすべての業の計画をなし終えるまで生きるでしょう。」(ルーシー・マック・スミス,History of Joseph Smith,プレストン・ニブレー編〔1958年〕309-310で引用)ジョセフ・スミスは神が行うよう求められたすべてを行い,自らの使命を雄々しく果たした。
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教義と聖約135:3を生徒とともに読む。この節によれば,預言者ジョセフ・スミスはおもにどのようなことを成し遂げたでしょうか。ジョセフ・スミスはどのような点で「ただイエスは別として,この世に生を受けた他のいかなる人よりも,この世の人々の救いのために多くのことを成し遂げた」のでしょうか。
ジョセフ・スミスの成し遂げたことは現在の神権時代の聖徒たちに祝福をもたらしただけでなく,福音の祝福や救いにかかわる神権の儀式を受けることのできない時代に生きた何十億という人々にも恵みとなったことが答えとして考えられる。以下の資料を使ってジョセフ・スミスが果たした貢献について掘り下げた話し合いを展開する。見出しを黒板に書き出す。ジョセフ・スミスの貢献がわたしたちの日常生活にどれほど多くの祝福をもたらし,また永遠にどれほど大きな祝福を与えるかを考えるときに,預言者の生涯と使命について正しい理解を得られることを説明する。
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預言者ジョセフ・スミスを通して回復された神会に関する真理にはどのようなものがあるでしょうか(教義と聖約130:22-23;ジョセフ・スミス—歴史1:17;以下の引用参照)。
1844年4月7日キング・フォレット長老の葬儀で行った説教の中で,預言者ジョセフ・スミスはこのように教えた。
「神御自身,かつては今のわたしたちのようでした。そして今は昇栄された人であり,かなたの天で王座に着いておられます。これは大いなる奥義です。もし幕が今日裂かれたならば,そしてこの世界を軌道上に保ち,全世界と万物を御自身の力により支えておられる大いなる神が御自身を現されたならば,わたしは申し上げます,もし今日あなたがたが神を目にしたならば,あなたがたは神が人の形をしておられること,すなわち姿,形,有様がすべて人間のあなたがた自身のようであることを知るでしょう。なぜならば,アダムは神にかたどってその姿,形に創造され,神から教えを受け,そして人が人と語り,言葉を交わすように,神とともに歩き,語り,言葉を交わしたからです。」(Teachings of the Prophet Joseph Smith,ジョセフ・フィールディング・スミス選〔1976年〕345)
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ジョセフ・スミスを通して回復された神会に関する真理はなぜ,わたしたちにとって大切なのでしょうか。
十二使徒定員会のブルース・R・マッコンキー長老はこのように述べている。「神に関する知識は永遠において最も偉大な真理である。……霊的にほとんど暗黒の時代に,人々が礼拝すべき御方の本質や資質に関する知識がもはや失われた時代に,ジョセフ・スミスは神を明らかにするために登場したのである。」(“This Generation Shall Have My Word through You,” Ensign,1980年6月号,55)
ジョセフ・スミスを通して天からの使者がアロン神権とメルキゼデク神権,さらに神権の鍵を回復したことを指摘する(教義と聖約13章;110:11-16)。回復が進められるにしたがって,主は神権の職,組織,聖約,儀式,義務,祝福に関する啓示を与えられた。これらの啓示がなければわたしたちは神権もその働きも理解することができなかった。
神権に関する詳しい情報については8課と25課を参照する。
ブルース・R・マッコンキー長老は,預言者ジョセフ・スミスは「かつてこの世に住んだいかなる預言者にも勝って神聖な聖文を今の世にもたらした」と語った(「偉大な回復の預言者ジョセフ・スミス」『聖徒の道』1976年8月号,411)。それらの聖文にはモルモン書,教義と聖約,高価な真珠,聖書のジョセフ・スミス訳が含まれる。
十二使徒定員会時代にゴードン・B・ヒンクレー長老はこのように述べている。「〔ジョセフ・スミス〕が出版した522ページのモルモン書(英文)は〔多くの〕言語に翻訳されて,数百万の人々に神の御言葉として読まれている。また,彼が受けた啓示や彼の著した書物はこれら数百万の人々にとって聖文となっている。書物のページ数を総計すると,ほぼ旧約聖書全体に相当し,それがただ一人の人によってわずか数年で世に出されたのである。」(「聖見者ジョセフ」『聖徒の道』1977年10月号,498)
聖文に関する詳しい情報については1課,4課,13課を参照する。
死者の救いは預言者ジョセフ・スミスを通して回復された最も重要で霊感に満ちた教義の一つであることを説明する。詳しい情報については29課と39課を参照する。
以下に列挙された預言者ジョセフ・スミスが果たした貢献とそれらがわたしたちの生活にもたらしている祝福の中から幾つかを簡単に復習するとよい。
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預言者ジョセフ・スミスを通して教会が回復された(9課参照)。
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預言者ジョセフ・スミスは現在の神権時代に,福音をあらゆる国々にもたらし,イスラエルを集める業を始めた(12課参照)。
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預言者ジョセフ・スミスを通して奉献の律法が明らかにされた(14課参照)。
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預言者ジョセフ・スミスを通して知恵の言葉が啓示された(22課参照)。
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預言者ジョセフ・スミスを通して末日のシオンの建設に関する情報が明らかにされた(27課と46課参照)。
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預言者ジョセフ・スミスは信仰箇条を書いた(「教えるためのそのほかのアイデア」1参照)。