初等協会テキストと分かち合いの時間
第38課 民を救ったエステル


第38課

民を救ったエステル

目 的

断食によってどのような祝福がもたらされるかを子供たちに教える。

準 備

  1. 祈りをもって以下の聖句を研究する。

    • エステル2:5-11,15-23——王はエステルを新しい王妃に選んだ。モルデカイが王の命を救った。

    • エステル3:1-6,8-11,13——モルデカイはハマンにひざまずくことを拒んだ。ハマンはすべてのユダヤ人を殺す計画を立てた。

    • エステル4章——エステルは王にユダヤ人の助命を嘆願してそれが成功するように,ユダヤ人に断食するよう求めた。

    • エステル5章——王はエステルを受け入れた。エステルは王とハマンを酒宴に招いた。ハマンはモルデカイを首つりにする計画を立てた。

    • エステル6章——眠ることができなかった王はモルデカイが王の命を救ったことに対して栄誉を与えていないのを思い出した。何も知らないハマンはモルデカイが受ける報酬を計画した。

    • エステル7:1-6,9-10——エステルはユダヤ人を殺そうとするハマンの謀略を明らかにした。王はハマンをモルデカイのために用意された絞首台にかけた。

    • エステル8:1-8,11,17——王はユダヤ人の命を救う新しいみことのりを出した。

    • エステル10:3——モルデカイは王に次ぐ地位を与えられた。

  2. レッスンを検討し,聖文の物語を子供たちにどう教えるかを決める(本書「レッスンの準備」ⅵ—ⅶ,「聖文に基づいて教える」ⅶ—ⅷ参照)。子供たちを参加させ,レッスンの目的を達成するのに最も役立つ「話し合いと応用のための質問」と「レッスンを豊かにする活動」を選ぶ。

  3. 教材

    1. 『聖書』人数分

    2. 任意——イースト菌小さじ1杯,ぬるま湯1/2カップ,砂糖小さじ1/2,これらを混ぜるためのボウル

    3. 視覚資料6-44「エステル」

レッスン

一人の子供に開会の祈りをさせる。

導 入

イースト菌はパンを軽くふっくらとさせるためにパン生地に入れて使う酵母菌であると説明する。イースト菌をぬるま湯に入れると,成長または繁殖を始める。そこへ砂糖を入れるとどうなるか質問する。(これらの材料を入手できれば,ボウルで混ぜて実演して見せる。)イースト菌は暖かく湿った環境を与えられると成長するが,そこへ砂糖を加えるとさらに早く成長することを説明する。ぬるま湯と砂糖が一緒になってイースト菌の成長を速めたように,一緒に用いるとわたしたちの信仰を成長させるものがあることを告げる。

信仰と霊性を増すにはどうすればよいかを子供たちに質問する。わたしたちは心からの祈りによって信仰を持ち,霊性を高められるが,祈りに断食を加えると,信仰と霊性はさらに成長することを説明する。断食とは自分の意志で食べ物と飲み物を断つことである。正しい断食と祈りが一緒になると霊性と信仰が増すだけでなく,謙遜けんそん,神に対する愛,問題に遭遇したときに助けを受ける力が増す(ブルース・R・マッコンキー,『モルモンの教義』Mormon Doctrine,276参照)。今日きょうのレッスンでは勇気ある一人の女性が民を救うために,どのように断食を用いたかを学ぶ。

聖文の物語

適切な箇所で視覚資料を用いて,「準備」の項目に挙げられた聖句からエステルの物語を子供たちに教える(聖文の物語の教え方については,「聖文に基づいて教える」ⅶ—ⅷ参照)。

エステルの物語を検討するに当たって,ペルシャのアハシュエロス王は貴族と王子たちのために7日間の酒宴を設けて,誇らしげに金,銀,美しい布を見せたことを説明する。王は次に美しいワシテ王妃を皆に見せるために呼んだ。けれどもワシテは人々の前に出ることを拒んだため,王は怒った。賓客の前で王妃が王の命令に従わなかったため,王は当惑した。王は知者に王妃をどうすべきか尋ねた。知者たちはワシテから王妃の位を取り去り,新しい王妃を選ぶように進言した。このようにして,王に新しい王妃を選ばせるため,王国内のすべての若くて美しい女性が集められた。

話し合いと応用のための質問

レッスンの準備に当たって,以下の質問と参照聖句を研究する。子供たちが聖文を理解し,生活に応用するうえで最も役立つと思われる質問をする。教室で子供たちと一緒に参照聖句を読み,それについて話し合うのは,聖文に対する子供たちの理解を深めるのに役立つ。

  • エステルとモルデカイはどのような関係でしたか(エステル2:5,7)。なぜユダヤ人がペルシャに住んでいたのですか。(エステル2:6。ユダヤ人は天の御父の聖約の民であったことを説明する。これは彼らが主に従うことを約束したという意味である。ユダヤ人はイスラエルの一部族でもあった。つまりアブラハム,イサク,ヤコブの子孫だった。しかしユダヤ人は征服されてメデアとペルシャの地に連れて来られた。)エステルは王の宮殿に連れて行かれたとき,なぜ自分がユダヤ人であることをだれにも知らせなかったのですか(エステル2:10,20)。

  • エステルが初めて王の前に連れて行かれたとき,どのようなことが起こりましたか(エステル2:17)。

  • モルデカイは王を守るためにどのようなことをしましたか(エステル2:21-23)。ビグタンとテレシは王の衛兵だったことを説明する。彼らの王を殺害する陰謀は非常に危険でした。彼らは王の近くへ行く機会が多く,計画を容易に実行できたからです。

  • モルデカイはどういう理由から民に,王のすべての大臣の中で最も高い位に就いていたハマンに敬礼しないように言ったのですか(エステル3:2-4)。モルデカイがハマンに敬礼することを拒否したのはなぜですか。(出エジプト20:3。王はハマンに敬礼するだけでなく,ひざまずいて拝むよう民に命じた。もしモルデカイがこれを行ったとしたら,十戒の最初の戒めを破ることになった。)

  • 怒り狂ったハマンはモルデカイとユダヤ人にどのような罰を与えようとしましたか(エステル3:6,8-9)。すべての教会員が定められた日に全員殺されるという法律が決められたとしたら,どのような気持ちになりますか。モルデカイとユダヤ人はこの新しい法律に対してどのような行動を取りましたか(エステル4:1-3)。荒布とはらくだまたはやぎの毛で作った織り目の粗い布で,断食や嘆きのときに着たことを説明する。人々は荒布を着て,さらに喜びが去ったことの象徴として堆積した灰の上に座り,灰をかぶりました。

  • エステルはなぜ王の前に行くことを恐れたのですか(エステル4:11)。モルデカイは王の前へ行くことについてエステルに何と言いましたか(エステル4:13-14)。モルデカイは天の御父がユダヤ人を救うためにエステルを備えられたので,それができると考えていたことを説明する。エステルは王への願いがかなえられるようするために,どのようなことをしましたか(エステル4:16-17)。王はエステルをどのように扱いましたか(エステル5:2-3)。わたしたちはどのような義にかなったことのために断食しますか(「レッスンを豊かにする活動」4参照)。

  • エステルは3日間断食するように求めました。わたしたちはどれほどの間断食すべきですか。普通,断食とは連続した2食を断つことをいいますが,ジョセフ・F・スミス大管長は,これは「絶対的〔な〕律法であるというわけではない。良心の問題として,また知恵と分別を用いる事柄としてわたしたちに任されている。……体の弱い人が多くおり,ある人々は虚弱体質である。……このような人に断食を求めてはならない」(『福音の教義』237)と述べています。

  • エステルはだれを酒宴に招きましたか(エステル5:4-5)。最初の酒宴が終わった後,ハマンはなぜ怒っていたのですか(エステル5:9)。ハマンの妻と友達はモルデカイをどうするようにとハマンに言いましたか(エステル5:14)。

  • 王は自分の命を救ってくれたモルデカイの善い行いをどのようにして思い出しましたか(エステル6:1-3)。王が眠れなかったことは,ユダヤ人が断食した結果,天の御父が与えられた祝福と考えられることを指摘する。王はモルデカイへの褒美をどのようにして決めましたか(エステル6:6-10)。

  • エステルは2回目の酒宴でどのようなことを王に頼みましたか(エステル7:3-4)。ユダヤ人を殺す計画が王に知れたとき,ハマンはどうなりましたか(エステル7:9-10)。モルデカイにはどのような褒美が与えられましたか(エステル8:1-2)。

  • わたしたちはどのように断食すべきですか(マタイ6:16-18)。どうしたら断食を守ることができますか。断食とともに心からの祈りをささげなければならないことを説明する。また,時には特別な理由があって断食することがあるのを指摘する。わたしたちはいつも望んでいるような答えを受けるわけではないかもしれませんが,主の御心みこころが必ず行われるという信仰を持たなければなりません。わたしたちは特別な助けが必要になったときにどのようにして助けを求めたらよいかを知っておくために,断食の律法に従う習慣を身に付けておくことが大切です。断食をすると,ほかの人々を助けたいという気持ちが生まれます。

  • 時々断食することが難しく感じられるのはなぜですか。子供たちは空腹とのどの渇きを経験するであろうが,喜びをもって断食の戒めに従っていると霊的に成長できるのを理解させる。あなた自身または家族で断食によって祝福を得た経験がありますか。

レッスンを豊かにする活動

以下の活動を,レッスンのどの部分でも,また幾つでも使うことができる。復習やまとめ,チャレンジに利用してもよい。

  1. エステルの物語から幾つかの出来事をロールプレーで演じる(エステル4:1-5:3参照)。子供たちの演技に添って教師がせりふを読むか,台本を作って演技する子供たちに読ませる。登場人物を明確にするために,簡単な小道具や名札を準備するとよい。

    しもべ

    モルデカイ,エステル王妃はなぜあなたが荒布を着て灰をかぶって嘆いているのかとおっしゃっています。

    モルデカイ:

    ハマンはすべてのユダヤ人を殺す許可を受けました。若い人も老人も小さな子供も女性もすべてです。この命令書の写しをエステル王妃に渡して,民のために王にお願いするように言ってください。

    僕:

    モルデカイは王妃に,王のところへ行って,民のために命を助けてくださるようお願いしてほしいと言っています。

    エステル:

    モルデカイに伝えてください。呼ばれてもいないのに王のところへ行くことはく恐ろしいことです。王が金のしゃくを向けないのに王のところへ行こうとすると殺されてしまうからです。王は30日間わたしと会わないと言っておられます。もしかしたら,王を怒らせてしまうのではないかしら。

    僕:

    (モルデカイに紙を渡す。)

    モルデカイ:

    ユダヤ人であるエステルは王の宮廷に住んでいるからといって死を免れることはできないと伝えてください。民のために王に頼んでくれるようもう一度お願いします。主がエステルに,王妃になるのをお許しになったのは恐らくこのためだと思います。エステルは自分の民を救うために王妃になったのです。

    僕:

    モルデカイは民のためにもう一度お願いするようにと言いました。

    エステル:

    わたしのためにモルデカイとユダヤ人に3日間夜も昼も断食するように伝えてください。わたしと侍女も一緒に断食します。わたしは王のところへ行きます。たとえ殺されることになっても,悔いはありません。

    王:

    しゃくを差し伸べて,ほほえむ)エステル,何か欲しいものがあるのですか。国の半分でもあなたに与えよう。

  2. 聖典に登場する以下の人々の名札を作る。アハシュエロス王,ワシテ,モルデカイ,エステル,ハマン。5人の子供たちを選んで,彼らに何が書かれているかを知らせずに,背中に名札をピンで留める。名札を付けた子供は「はい」か「いいえ」で答えられる質問をクラスのほかの子供たちにして,自分がだれかを当てる。時間が許せばこの活動を繰り返して行うとよい。

    次のような質問をする。「わたしはユダヤ人ですか。」「わたしは義にかなった人ですか。」「わたしは断食しましたか。」「わたしはモルデカイと親しかったですか。」「わたしは王妃ですか。」

  3. 以下の話を自分の言葉でする。

    教会が組織されて間もないころ,メキシコに末日聖徒の一団が住んでいました。メキシコの革命組織の司令官パンチョ・ビヤはメキシコ北部にある多くの定住地を襲いました。その中にはある日の晩に壊滅すると予告されていた末日聖徒の定住地コロニアデュブランがありました。その町のワードの監督はすべての会員に断食して祈るように願いました。監督はすべての会員を教会堂に集めて集会を開きました。全員が心を合わせて祈りました。人々はパンチョ・ビヤが率いる革命軍の襲撃から守られるように,天の御父に願い求め続けるようにとの指示を受けました。そしてそれぞれの家に帰って,いつものように主の守りを願いながら休みました。

    その夜,パンチョ・ビヤの革命軍は町に接近していました。ところが,大きな軍隊が火をたきながら町を護衛しているような光景が目に入りました。パンチョ・ビヤはコロニアデュブランを攻撃するのは得策でないと判断して,軍を引き揚げました。

  4. 断食をする目的としてふさわしい事柄を挙げて,話し合う。以下のような目的が考えられる。

    • 愛する人々が病気やけがから回復するように

    • 大切な事柄を決められるように

    • あかしを得られるように

    • 人々が喜んで福音に耳を傾けるように

    • 悪の力から守られるように

    • 自然の災害や干ばつの際に慰めが得られるように

    • 御霊みたまを感じられるように

    • 祝福師の祝福など特別な祝福を受ける準備ができるように

    • 受けた祝福を感謝できるように

    • 罪を克服できるように

    • 問題を解決できるように

    • だれと福音を分かち合ったらよいかが分かるように

    • 嘆き悲しんでいるときに慰めが与えられるように

    • 難しい責任を理解できるように,あるいは成し遂げられるように

    • 問題を抱えている人々を助けることができるように

  5. クラスを二つのグループに分けて,各グループに鉛筆と紙を渡す。そしてエステルが民を救う際に示したすべての資質を挙げて,紙に書かせる。勇気,天の御父を信頼する,人々を愛する,謙遜,などの資質が考えられる。各グループで挙げられた資質を発表させる。

  6. 「信仰」(『子供の歌集』50)を歌うか,歌詞を読む。

まとめ

心から断食して祈るときに,祈りはこたえられ,天の御父に近づけることについてあなたの証を述べるとよい。他人のために断食をすることによっても偉大な力が発揮されることを子供たちに理解させる。子供たちに,喜んでまた目的をもって断食するよう勧める。

家族との分かち合いの提案

物語,質問,活動などのレッスンの一部を家族と分かち合ったり,読書課題を家族と一緒に読んだりするよう,子供たちを励ます。

読書課題

本課の復習のため,家庭でエステル4章を研究するよう,子供たちに提案する。

一人の子供に閉会の祈りをさせる。

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