初等協会テキストと分かち合いの時間
第39課 ウィンタークォーターズを建設する聖徒たち


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ウィンタークォーターズを建設する聖徒たち

目的

人々は協力し,互いに仕えることによって,大きなことを成し遂げることを子供たちに理解させる。

準備

  1. モーサヤ2:17;本課の歴史記事;教義と聖約136:1-11を祈りの気持ちで研究する。それからレッスンを検討し,聖文と歴史記事を子供たちにどう教えるか決める(本書「レッスンの準備」ⅵ-ⅶ,「聖文と歴史記事に基づいて教える」ⅶ-ⅷ参照)。

  2. 子供たちを参加させ,レッスンの目的を達成するのに最も役立つ「話し合いのための質問」と「レッスンを豊かにする活動」を選ぶ。

  3. 以下の参照聖句の箇所をそれぞれ別のカードか紙に書く(クラスの子供の人数の半分の数だけ用意する)。

    モーサヤ2:18

    モーサヤ2:21

    アルマ30:8

    モロナイ6:3

    教義と聖約4:2

    教義と聖約4:3

    教義と聖約42:29

    教義と聖約76:5

    教義と聖約100:16

    次にカードを書名と,章句を境にして二つに切る(図参照)。ジグソーパズルで組み合わせるように,カードごとに様々な線にハサミを入れる。

    puzzle pieces
  4. 教材

    1. 教義と聖約とモルモン書(人数分)

    2. 本課の最後にある「聖徒たちが西部に向かったルート」の地図

    3. 視覚資料5-42「ウィンタークォーターズ」

レッスン

一人の子供に開会の祈りをさせる。

導入

子供たちに二つに切ったカードを配り,全員が少なくとも一枚のカード(半券)を手にするようにする。それぞれ聖典を開いてカードの聖句を探すように言う。

  • どうしてカードに書いてある聖句を探すことができないのでしょう。

聖句を見つけるには協力し,助け合わなければならないことを説明する。子供たちに協力してカードを合わさせ,次にカードに書かれている聖句を二人で探させる。各組から一人に聖句を声を出して読ませる。すべての聖句に共通して出てくる一つの言葉を注意して聞くように言う。

  • すべての聖句に出てきた言葉は何でしたか。

黒板に「仕える」と書く。

  • わたしたちはだれに仕えなければなりませんか。

  • 神に仕えるにはどうすればよいでしょうか。

一人の子供にモーサヤ2:17を声を出して読ませる。この聖句の意味について子供たちと話し合う。

本課では,ノーブーを追われた聖徒たちが互いに助け合い,仕えることによってどのように神に仕えたかを学ぶことを子供たちに伝える。

聖文と歴史記事

以下の歴史記事並びに教義と聖約136:1-11から,ウィンタークォーターズまでの聖徒の旅と,そこで聖徒が経験した事柄について子供たちに教える。適当な箇所でウィンタークォーターズの地図と絵を用いる。

聖徒たちは熱心に働いてノーブー神殿を完成させ,ノーブーを豊かな町に築き上げた後,ノーブーを追放されたことを子供たちに思い起こさせる。再び彼らは敵から逃れるために家を離れなければならなかった。

アイオワを横断するイスラエルの陣営

自らをイスラエルの陣営と呼んだ聖徒の主力グループは1846年4月になっても,アイオワを横断する道のりの半分までしか来ていなかった。一部の人は夏までにロッキー山脈までの全行程を踏破する計画でいたが,果たしてそれが可能かどうか危ぶまれる状態になっていた。悪天候が続き,グループ内の食糧と物資は不足し,さらに多くの聖徒はまだノーブーの近くにいた。教会指導者は西部までの道中に一時的な駐留地を築き,作物を植えることにした。これらの駐留地はイスラエルの聖徒の陣営にとって休憩地となり,また後から来る聖徒たちに食物と避難所を提供することになった。最初に築かれた駐留地の二つが,アイオワ州のガーデングローブとマウントピスガ定住地である。

教会員がガーデングローブとマウントピスガの建設に従事していたほぼ同時期に,アメリカ合衆国はメキシコに対して宣戦を布告した。合衆国政府は教会指導者に対して,戦争を支援するために軍隊を提供するように要請した。聖徒たちにとってこの要請に応えることは大変なことだったが,応じることにした。政府との間によい関係を築きたいと考えていたことと,兵役に応じた人々が受ける報酬によって西部への旅に必要な物資を買うことができると考えたためである。500人の男性が家族を離れて,カリフォルニアで繰り広げられていた戦争に出征した。ブリガム・ヤングは,モルモン大隊と呼ばれたこれらの人々が出征している間,家族の世話をすることを約束した。また,彼らが義を行い従順であるならば,戦場で戦わずに済むことを約束した。

モルモン大隊が出発すると,残った教会員は彼らの家族の世話をした。ある日,一人の女性がマウントピスガの教会指導者であるチャールズ・C・リッチのもとへ来て,夫がモルモン大隊の一員として出征したために残された自分と子供たちには食べる物がないと涙ながらに訴えた。リッチ兄弟は妻に対して,その女性に小麦粉を分けてあげるように言った。リッチ姉妹は家には少しの小麦粉しかなく,小麦粉を買うお金もないと言ったが,リッチ兄弟は妻にこう言った。「家の中にあるすべての小麦粉を彼女に差し上げなさい。わたしたちのためには主が用意してくださるから。」リッチ姉妹は自分たちの家族の食べ物はどうなるのかを心配しながら,夫から言われたとおりにした。その日,遅くなって,数台の荷車がリッチ家の前に停まった。そして一人の男がリッチ兄弟に50ドルを渡して,主のたまからこの家族にお金がないと告げられたと言った。リッチ兄弟は妻にお金を渡してこう言った。「これで主がわたしたちに小麦粉を買うための道を開かれたことが分かったでしょう。」その男はまた,小麦粉をいっぱいに積んだ一台の荷車がマウントピスガに向かっているので,小麦粉を買うことができるだろうと,リッチ兄弟姉妹に言った。リッチ兄弟姉妹は二人がわずかな量の小麦粉を分かち合ったことに対して主が祝福してくださったことを知り,むせび泣いた。マウントピスガに小麦粉を満載した荷車が到着したとき,リッチ兄弟は家族のためと,また定住地内の病人や貧しい人々のために小麦粉を買って分け与えた(サラ・ペア・リッチ,“‘The Spirit Tells Me You Are Out of Money,’” Remarkable Stories from the Lives of Latter-day Saint Women,145-146参照)。

1846年6月の初めに,十二使徒定員会の会員数名を含む聖徒たちは少人数でマウントピスガを出発して,聖徒たちが冬を過ごすことができる場所を探しに出かけた。彼らが歩いていた地域に住むアメリカン・インディアンと交渉したうえで,一行はミシシッピ川の西側に場所を見つけることにした。そして,9月に現在ネブラスカ州となっている地域に流れ込む川を渡って,川を見渡すことができる高台を選んだ。家畜のえさとなる植物が豊富な広大な場所だった。彼らはそこをウィンタークォーターズと名づけ,直ちに定住地を建設する計画に着手した。

ウィンタークォーターズを建設する聖徒たち

多くの聖徒がウィンタークォーターズまで移動してきた。その年の終わりまでにこの定住地には700の住居が完成し,4,000人近くの聖徒たちがいた。家屋は様々で,丸太作りの家から,丘の斜面に穴を掘っただけの住居まであった。定住地全体はインディアンの襲撃から守るために防御柵(高い塀)が巡らされていた。

ウィンタークォーターズに定住地を築くために全員が熱心に働いた。家屋を建てる人がいれば,土地を耕し,作物の種まきをする人,大きな家畜の群の世話をする人,冬に向けて干し草を集める人など様々だった。女性たちは糸を紡ぎ,編み物をし,衣服を縫い,鹿の皮からすね当てを作った。ブリガム・ヤングはある人々に川の横に小麦粉を作るための製粉所を建設するように,別の人々には「かごと洗濯板」を作って売るように指示している。聖徒は懸命に働いたが,ウィンタークォーターズの建設には困難が伴った。このため,聖徒たちは主の助けと互いの協力に頼らざるを得なかった。

聖徒は自分たちが生きていくためには一緒に働き,助け合うしかないことを知った。オーソン・スペンサーと彼の家族はほかの聖徒と同様,ノーブーを追い出された。そして,ウィンタークォーターズを目指した。しかし,到着する前にスペンサー兄弟はイギリスへ伝道に行く召しを受けた。彼は6人の子供たちを残して行きたくはなかった。長女のエレンが14歳,オーレリアが12歳,キャサリンが10歳,ハワードが8歳,ジョージが6歳,そしてルーシーは4歳だった。子供たちの母親はノーブーを脱出してすぐに病死していた。したがって子供たちの面倒を見る人がいなかった。けれどもスペンサー兄弟は伝道の召しを受けた。彼は旅を続けてウィンタークォーターズまで子供たちを連れていくと,家を建て,近所の人たちに子供たちの世話を頼んだ。近所の人々は快く引き受けてくれた。スペンサー家の年かさの子供たちは幼い弟と妹の世話をし,子供たち全員が互いに助け合うことを学んだ。冬の間中,スペンサー家の子供たちは学校に通い,家を清掃し,衣服を縫い,近所の子供たちと一緒に書き方の練習をしたり,謎解きをしたり,物語を話したり,遊んだりと忙しい毎日を送っていた。

聖徒たちが互いの世話をよくできるようにウィンタークォーターズは22の区(ワード)に分割された。各区の指導者は区内の人々が霊的ならびに物質的に必要としている状態を見届けるように指示された。彼らは区内の会員の信仰を強めるために日曜日の集会を開き,子供たちのために学校を設立した。授業は家の中で行われたり,天気が良い日には野外で行われたりした。

ウィンタークォーターズでの大きな問題は病気だった。病気の多くは川の草原から蚊が運んでくるマラリヤと,栄養価に富んだ新鮮な野菜と果物の不足が原因となっていた。この年の秋と冬にウィンタークォーターズで600人以上が死亡し,葬られている。ウィンタークォーターズではほとんどの人が病気になった。病気にならなかったわずかな数の人々は病人の看護にあたった。使徒ヒーバー・C・キンボールの妻ビレイト・キンボールは定住地全域を巡って食料を配り,病人の世話をした。彼女は忙しくて,食事をとる時間や自分のことをする時間がないこともしばしばあった。多くの人々は断食と祈りによって,またほかの人に仕え世話をする人々のおかげでいやされた。

聖徒たちはウィンタークォーターズで教会員でない人々も助けている。1846年12月にアメリカンインディアンでビッグヘッドという名の酋長が家族や友人と共にウィンタークォーターズの近くで野営していた。ある夜,彼らは別のインディアンの部族から襲撃を受け,ビッグヘッドら数人が大けがを負った。ウィンタークォーターズの人々は部族の仲間が迎えに来るまで,彼らを定住地の中に入れて,世話をした。

あらゆる種類の苦難に遭遇したにもかかわらず,聖徒たちは一緒に働いただけでなく,一緒に遊び,ダンスに興じ,家族の集いを開き,彼らの祝い事のために集まりを開くなどして楽しんだ。ウィンタークォーターズには笑い声と音楽にあふれていた。

ウィンタークォーターズを去る準備をする聖徒たち

1847年1月,ブリガム・ヤングはイスラエルの陣営と西部への旅を続けることに関する啓示(教義と聖約136章)を受けた。彼らはウィンタークォーターズにいる間に,部隊を編成して,大平原と山脈を越える旅の準備をすることになった。また,翌年の春までウィンタークォーターズに残る聖徒のために引き続き家屋を建て,作物を植えた。開拓者隊と呼ばれたブリガム・ヤングが率いる先発部隊は1847年4月にウィンタークォーターズを出発してソルトレーク盆地を目指した。ほかの部隊はその年の遅くと翌年に出発した。1848年の年末の時点で,ウィンタークォーターズにはだれもいなくなった。

話し合いと応用のための質問

レッスンの準備に当たって,以下の質問と参照聖句を研究する。子供たちが聖文を理解し,生活に応用するうえで最も役立つと思われる質問を,採り上げる。教室で子供たちと一緒に聖句を読んで話し合えば,聖文に対する子供たち一人一人の理解力を深めるのに役立つ。

  • カリフォルニアでの戦争を支援するためにモルモン大隊を派遣することが聖徒たちにとって困難だったのはなぜだと思いますか。彼らが出征することに合意したのはなぜだと思いますか。これら500人の男性が出発した後に,残された聖徒たちが一層困難な状態におかれたのはなぜでしょうか。

  • リッチ家族はどのようにほかの人々を助けましたか。チャールズ・リッチは妻に,主を信頼するように言ったことを子供たちに思い起こさせる。主はリッチ家族をどのように助けられましたか。主は普通,ほかの人々を遣わして助けを必要としている人をお助けになることを指摘する。ほかの人々が必要としている事柄に関心を持ち,進んで助けることはなぜわたしたちにとって大切なのでしょうか。助けを必要としている人を助けたことがありますか。ほかの人を助けるとどのような気持ちがしますか。

  • 聖徒たちはウィンタークォーターズを建設する間なぜ互いに助け合ったのでしょうか。各家族が自分たちのことをすべて自分たちでしなければならなかったとしたら(自分の家は自分で建てる,自分の食べる作物は自分で耕作する,自分の服は自分で紡いで縫う,など),どうなっていたでしょうか(「レッスンを豊かにする活動」の1を参照)。

  • スペンサー兄弟が伝道に行けるように隣人たちはスペンサー家族をどのように助けましたか。スペンサー家の子供たちはどのように助け合いましたか。あなたは隣人をどのようにして助けることができますか。あなたが自分の家族を助けるためにどのようなことができますか(「レッスンを豊かにする活動」の2を参照)。

  • ウィンタークォーターズの聖徒たちは困難な状態に置かれていたにもかかわらず,なぜ一緒に遊ぶ時間を作ったと思いますか。一緒に遊ぶことが何かの役に立ったと思いますか。家族やワード(支部)の中で,一緒に礼拝し,一緒に遊ぶことはなぜ大切なのでしょうか。

  • 主はウィンタークォーターズにいる聖徒たちにどんなことをするように指示されましたか(西部へ移動するための準備をする;教義と聖約136:1-2,5)。主は聖徒にどのようなことをしてほかの人々を助けるように言われましたか(教義と聖約136:8-9)。主は聖徒たちが準備を整え,互いに助け合うならば,どのような祝福を与えると約束されましたか(教義と聖約136:11)。

  • 聖徒たちはウィンタークォーターズでどのような大切な教訓を学んだと思いますか。わたしたちは彼らの経験から何を学ぶことができますか。

レッスンを豊かにする活動

以下の活動を,レッスンのどの部分でも,また幾つでも使うことができる。復習やまとめ,チャレンジに利用してもよい。

  1. 子供たちにウィンタークォーターズに着いたばかりの開拓者になったと想定させる。

    • ウィンタークォーターズの建設を手伝うには何をすればよいでしょうか。

    子供たちの答えをすべて黒板に書き出す。(家を建てる,土地を耕す,作物を植える,家畜の世話をする,干し草を集める,粉をひくために製粉所を作る,糸を紡ぐ,衣類を作る防御柵を築く,などの答えが考えられる)

    全員に紙と鉛筆を配る。子供たちに1分間で黒板に書き出したすべてのことを絵に描くように言う。あなたが「始め」と言ってから始めさせる。1分後に「やめ」と言って,どれほど描けたかを見る。

    紙を裏返しにさせて,一人一人に描くものを一つ割り当てる。もう一度1分の時間を与え,協力した作業の結果を見る。

    • 2度目の絵を描く活動は,ウィンタークォーターズの建設を手伝うためににどのようなところが似ていましたか?

    子供たちが協力して、一緒に働いたとき、多くことが達成できたことを指摘してください。

    • もし,あなたが家と家族の世話をすべてしなければならないならないとしたらどうでしょうか?あなたのお母さん,または、お父さんがすべてのことをやらなければならないとしたらどうでしょうか?なぜ,わたしたちにとって、共に努力して一緒に働くことが大切なのでしょうか?

  2. 質問する。

    • だれかがあなたを助けるために何かをしてくれたら,あなたはどのような気持ちがしますか。あなたがだれかを助けるために何かをしたら,どう感じますか。

    奉仕に関して子供たちが経験したことを発表してもらう。

    黒板に「隣人」と「家族」と書く。子供たちが隣人と家族を助けるためにできる事柄を提案させ,それらの事柄を隣人と家族に区別する。全員に紙と鉛筆を配り,今週実行することを一つ以上,リストの中から選んで紙に書いてもらう。

  3. 子供たちがクラスとしてワード,支部または地域社会のだれかのために小さな奉仕活動を行うことについて,初等協会会長と神権指導者に相談する。子供たちが奉仕活動を計画し,実行するのを助ける。

  4. モーサヤ2:17を暗記させる。天父はわたしたちがほかの人々に仕えることによって天父に仕えることをお喜びになることを教える。

  5. 信仰箇条第13条を復習する。「慈善を行う」ことと「すべての人に善を行う」ことは奉仕の原則であることを指摘する。

  6. 「イエス様のように」(『子供の歌集』40)か「主の恵み,人にも分かたん」(『讃美歌』138番)を歌うか,歌詞を読む。

まとめ

あかし

わたしたちは人々に仕えることによってキリストに近づくことができ,ほんとうの幸せを得られることについて証する。ほかの人からしてもらったことについて,またほかの人に奉仕する機会があることについて感謝の気持ちを述べる。子供たちに家族や友だちを助ける方法を見つけるように奨励する。

読書課題

本課の復習のため,家庭でモーサヤ2:17を研究するよう,子供たちに提案する。

家族との分かち合いの提案

子供たちが,物語,質問,活動,家庭学習の提案などのレッスンの一部を家族と分かち合うように励ます。読書課題を家族で一緒に読んでもいい。

一人の子供に閉会の祈りをさせる。

聖徒たちが西部に向かったルート

map of west

0

キロメートル

200

400

0

マイル

120

240

インディアン特別保護区

アイオワ州

イリノイ州

ミズーリ州

メキシコ

聖徒たちがとったルート

ソルトレーク盆地

フォートララミー

ウィンタークォーターズ

マウントピスガ

ガーデングローブ

ノーブー

ロッキー山脈

スイートウォーター川

チムニーロック

プラット川

ミズーリ川

ミシシッピ川