子供たちが赦 ゆる しの態度を培う願いを持てるように助ける。
教義と聖約64:8-11,15-16 と本課の歴史記事を祈りの気持ちで研究する。それからレッスンを検討し,聖文と歴史記事を子供たちにどう教えるか決める(本書「レッスンの準備」 ⅵ-ⅶ,「聖文と歴史記事に基づいて教える」 ⅶ-ⅷ参照)。
子供たちを参加させ,レッスンの目的を達成するのに最も役立つ「話し合いのための質問」と「レッスンを豊かにする活動」を選ぶ。
教材
教義と聖約(人数分)
鉛筆1本と紙2枚(人数分)
視覚資料5-1「預言者ジョセフ・スミス」(『福音の視覚資料セット』401),または5-2「ジョセフ・スミス」(『福音の視覚資料セット』400),5-23「タールと羽根を付けられた男」
一人の子供に開会の祈りをさせる。
子供たち全員に2枚の紙と,鉛筆を1本渡す。1枚目の紙に今まで受けた祝福を幾つか書かせる。2枚目の紙にだれかにされた不親切な行いを書かせる。
祝福を書いた紙をひざの上に置き,不親切な行いを書いた紙を,鼻に触れるほど目に近づけて持たせる。
だれかがわたしたちの気持ちを傷つけたとき,時々傷ついた気持ちにとらわれて,祝福を楽しんだり見ることができなくなったりすることを説明する。不親切な行いを書いた紙をくしゃくしゃにするように言う。それらの紙を集めるか,ゴミ箱に入れさせる。人の不親切な行いを赦し忘れて祝福に集中すると,わたしたちは幸福を感じられると説明する。
ジョセフ・スミスは,たくさんの人から迫害を受けた。この点を説明する。ほかの宗教の聖職者,見知らぬ人,友人にも彼に不親切な人がいた。彼はこの不当な扱いに怒りを表し不幸せな気持ちになるか,これらの人々を赦すかを決めなければならなかった。
迫害した人に対するジョセフ・スミスの対応について以下の歴史記事から教える。適切な箇所で視覚資料を用いる。
教会が組織されたすぐ後に,背教し教会を去る会員がいた。彼らは教会の集会への出席をやめ,預言者に反対し,聖徒たちを迫害した。人々は様々な理由で背教した。例えば,ある人は,ミズーリの聖徒に合流するために旅している間に自分の馬が死んだという理由で教会を去った。別の人は,ジョセフ・スミスが子供たちと遊んでいるのを見て背教した。預言者は非常に厳格で子供と遊ばないと彼は思っていたのである。またある人は,自分の名前のつづりが教会の書類上で間違っているのを見て,ジョセフ・スミスは神から霊感を受けていないと思った。またほかの人は,財政的な問題で期待していた助けが得られないために教会を去った。ある会員は,傷つけた会員の行いが赦せなくて教会を去った。これらの傷ついた人々は教会を去った後,時々教会の最悪の敵になった。
エズラ・ブースは,預言者がアリス・ジョンソンの腕の癒 いや しを見た後,1831年に教会に入った(第19課 参照)。数か月後,彼はミズーリに伝道に召された。彼は怒った。ミズーリまで歩かなければならず,宣教師の生活を望んでいなかったのがその理由であった。彼は,アリス・ ジョンソンを癒したような奇跡を再び目にしなかったので失望した。彼は教会の指導者に対して悪い思いを持ち,悪口を言い始めた。伝道期間の不適切な行いにより,エズラ・ブースは破門されオハイオに戻ってきた。そのとき彼はもう教会の会員ではなかった。悔い改める代わりに,ブースは地元の新聞社に手紙を書き始め,ジョセフ・スミスと教会についてうそを言った。これらの手紙はオハイオにいる多くの人々に影響を与え,教会員に疑いをかけ迫害するようになったのである。
ある冬の夜,エズラ・ブースの手紙を信じた一団が酒に酔い,オハイオ州ハイラムのジョセフ・スミスとシドニー・リグドンの家を襲った。ジョセフが,はしかにかかった養子の息子を看護するために遅くまで起きていて,ちょうど眠りに就いたときに,怒った暴徒たちが家に押し入ってきた。男たちはジョセフを外に引きずり出し,殺すぞと誓って脅した。彼らはジョセフの首を締めて息を詰まらせ,衣服を引き裂き,熱いタールのへらを押しつけ,口に酸の瓶を入れようとした。酸の瓶は割れてジョセフの歯が折れたので,その後話すときにヒューヒュー音がするようになった。暴徒の男たちは,シドニー・リグドンも家から引きずり出した。シドニーが地面に倒れているのを見ると,ジョセフはシドニーが死んでしまったと思った。暴徒はジョセフの暗殺を思いとどまったが,ジョセフにひどい引っかき傷をつけ,熱いタールを体一面に塗りつけ,羽根を付けたのである。
ジョセフがようやく家に戻ったとき,エマはジョセフを見て気を失った。ジョセフに塗られたタールが血だと思ったからである。ジョセフの友人は,長時間痛みを伴うタールのふき取りの手助けをした。シドニー・リグドンは頭にひどい切り傷と打撲傷を受け,意識不明になって倒れた。彼は数日間うわごとを言った。この恐ろしい経験の後,ジョセフがその夜看護していた赤ん坊がひどい風邪を引き,亡くなった。
次の日は日曜日で,ジョセフは聖徒たちと礼拝するためにいつもの時間に出かけた。彼が説教をした人々の一団に,昨夜彼にタールを塗り羽根を付けた暴徒の仲間がいた。肌がこすり取られてひりひり痛んでも,ジョセフはいつものとおり説教し,昨夜の暴力行為には一切触れなかったのである。
レッスンの準備に当たって,以下の質問と参照聖句を研究する。子供たちが聖文を理解し,生活に応用するうえで最も役立つと思われる質問を,採り上げる。教室で子供たちと一緒に聖句を読んで話し合えば,聖文に対する子供たち一人一人の理解力を深めるのに役立つ。
初期の教会員には,なぜ背教する人がいたのですか。その人たちが赦しの態度を持っていたらどうなっていましたか。わたしたちが気持ちを害されたとき,どうすべきであると主は言われましたか(教義と聖約64:8-11 )。
主は,なぜエズラ・ブースが間違っていると言われたのですか(教義と聖約64:15-16 )。もし悪を求めると何を失いますか(教義と聖約64:16 )。
暴徒はジョセフ・スミスとシドニー・リグドンにどのような暴力を加えましたか。なぜそうしたと思いますか。
タールを塗られ羽根を付けられた次の日の朝,ジョセフは何をしましたか。集会にだれが集っていましたか。ジョセフ・スミスの行いは,人に対する赦しをどのように表していますか。(ジョセフ・スミスは,自分を虐待した人に復讐しようとしなかった。彼は,サタンが彼らに働きかけて,地上にイエスの教会を設立し回復された福音を教える大切な仕事を妨害していることを知っていたからである)
試練と迫害に遭ったとき,ジョセフは何をしましたか。(主の業を続けた。サタンは,主の業を破壊するためにあらゆる努力をするだろうと思っていた。悪いことが起こったとき,ジョセフ・スミスは最善を尽くし,主に仕え続けた)
だれかがあなたに不親切であったらどのように感じますか。怒る気持ちを持つとどうなりますか。怒ったり不親切な気持ちを持つと,良い気持ちにはならないことを理解させる。怒ったままでいたり,代わりに不親切にすると,自分がもっと不幸せになるからである。だれか があなたに不親切であったら,あなたはどう対応するとよいですか(「レッスンを豊かにする活動」の1と3を参照)。不親切な人に不親切にしたら,どうなりますか。その人に親切にしたらどうなりますか。
わたしたちを傷つけ怒らせた人に対して,ジョセフ・スミスの模範に従って赦しの気持ちを持つにはどうしたらよいですか。
辛 しん 辣 らつ で赦さない気持ちを持つとどうなりますか。赦しの態度を持つとどうなりますか。
わたしたちはだれを赦すように求められていますか(教義と聖約64:10-11 )。人を赦すのはなぜ大切なのですか(教義と聖約64:9 )。わたしたちの気持ちを傷つけた人を赦すとどう感じますか。
以下の活動を,レッスンのどの部分でも,また幾つでも使うことができる。復習やまとめ,チャレンジに利用してもよい。
次のような文を子供たちに読む。赦しの態度を示す文では親指を立てて,赦さない態度を示す文では親指を下げさせる。それぞれの行いがなぜ赦す態度を示すのか,そうでないのかについて話し合う。
彼女はわたしと仲良くしないので,わたしも仲良くしません。
彼は会うといつもわたしにいじわるをします。彼には何か問題があるのでしょう。そうでなければ,そんなひどいことはしないでしょう。
彼が妹をからかったので,彼をたたきました。
学校の宿題に弟が落書きをしたので,もう一度最初からやらなければなりません。弟は小さくてその紙の大切さを知らないので,わたしは彼を怒りませんでした。
彼女を赦しますが,もう彼女とは二度と話をしません。
今日 きょう わたしのいちばん親しい友達は,わたしに失礼でした。たぶん彼女は,何かに悩んでいたのでしょう。
箴言15:1 を読むか,一人の子供に声を出して読ませ,その意味について話し合う。それから,以下の物語を自分の言葉で話す。
1838年の夏,ジョセフ・スミスとその家族がミズーリ州ファーウェストに住んでいたとき,ジョセフが7人の人を殺し,教会の会員でない人を全員殺すグループを作ろうとしているという間違った噂が広がった。8人の士官に率いられた大きな武装集団がジョセフを探しにジョセフの両親の家にやって来た。そのときジョセフは,両親を訪ねていたのである。士官たちはジョセフの母ルーシー・スミスに,ジョセフ・スミスと教会の会員全員を殺しに来たと言った。ルーシーは静かに応対し,ジョセフを男たちに紹介した。ジョセフは,親切な態度で士官たちと握手をした。その間彼らは信じられない様子であった。彼らがジョセフから話を聞いた後,彼らはこの親切で誠実な男がジョセフ・スミスであるとは信じられなったのである。
預言者は男たちと長い間話をして,教会の見解と会員たちが受けた迫害について説明した。ジョセフは,もし教会の会員が法律を破ったら,ほかの人が傷つけられる前に裁判所で法律により裁判されるべきであると,男たちに話した。それからジョセフは帰り支度をし,エマが待っているので家に帰らなければならないと母に説明した。二人の士官が態度を変えて,家まで護衛して行くと言い張った。ジョセフが一人で歩くのは安全ではなかったからである。武装した男たちはもはやジョセフに危害を加えようとは思わず,彼を尊敬する気持ちで家に帰って行ったのである(ルーシー・マック・スミス,History of Joseph Smith , プレストン・ニブレー編,[Salt Lake City: Bookcraft, 1958] ,254-256)。
子供たちが赦しの態度と赦さない態度を選べる状況で実演させる。傷つけられても,自分の態度を選ぶ自由がある。また傷ついたと思う気持ちは,意図して傷つけられるよりも誤 解から来ることが多い。この点を理解させる。以下の状況を使うか,「レッスンを豊かにする活動」の1を使う。
あなたは学校に行く前に自分の部屋の掃除をしましたが,あなたが行った後,妹が部屋を散らかしました。あなたが学校から戻ってくると,部屋がきれいになっていないのでお母さんが友達と遊ばせてくれません。
学校のスポーツチームであなたが選ばれるのはいつもいちばん最後です。そのことにあなたは傷ついています。ある日学校から家に帰る途中,チームキャプテンの一人が自転車から落ちるのを見ました。彼の教科書とノートが辺りに散乱しました。
あなたの友達がパーティーを開きますが,あなたを招きませんでした。
人を赦したり赦されたりしたあなたの個人的な経験で適切なものを分かち合うか,子供たちの経験を分かち合わせる。
「人をゆるせるように」(『子供の歌集』52)を歌うか,歌詞を読む。
赦す態度を持ったときに感じる安らかな気持ちについて証 あかし する。人が自分に不親切であっても理解を示し親切であるように励ます。
本課の復習のため,家庭で教義と聖約64:9-11 を研究するよう,子供たちに提案する。
子供たちが,物語,質問,活動,家庭学習の提案などのレッスンの一部を家族と分かち合うように励ます。読書課題を家族で一緒に読んでもいい。
一人の子供に閉会の祈りをさせる。