わたしたちは問題や試練を経験するが,最後まで従順に耐え忍ぶならば祝福を受けることを子供たちに理解させる。
一人の子供に開会の祈りをさせる。
テーブルに空のコップを2つ置く。1つのコップで,ティースプーン1杯のベーキングソーダとテーブルスプーン2杯の酢を混ぜて化学反応を起こさせる(もし材料がそろわなければ,以下の活動を導入として行う)。一人の子供に別のコップで同じ実験をさせる。両方とも同じ化学反応が起きることを観察する。酢とベーキングソーダを混ぜると,毎回同じ反応が起きる。この反応は一定である。子供たちに一定とはどういう意味かを尋ねる(変わらないこと,信頼できる,いつも同じ,などの同義語が考えられる)。
天父は一定で,変わらない御方であることを説明する。天父は約束したことを必ず守ってくださる。一人の子供に教義と聖約82:10 を声を出して読んでもらう。わたしたちはどのような問題や試練を経験しても,忠実であり,従順であるならば,最終的に約束された祝福を受けることを説明する。
全員に鉛筆と文章が書かれたカードを配る。文の文字の順番は間違っていないが,区切り方が正しくないことを説明する。子供たちに,正しく読めるように単語に区切りを入れさせる。全員が完成させるまで,答えを口にしないように言う。
一人の子供に正しい文章を読ませる(神は常に変わらない御方で,従順な人をいつも祝福される)。
天父は一定で,変わらない御方であることを説明する。天父は約束したことを必ず守ってくださる。一人の子供に教義と聖約82:10 を声を出して読んでもらう。わたしたちはどのような問題や試練を経験しても,忠実であり,従順であるならば,最終的に約束された祝福を受けることを説明する。
以下の歴史記事と「準備」の項で採り上げられている聖文の説明に従って,新エルサレム(シオン),ミズーリ州ジャクソン郡で聖徒たちが受けた迫害,聖徒たちが最終的にジャクソン郡を追われたことについて子供たちに教えるに当たり,絶えず神の戒めに従うことの大切さを強調する。適当なときに絵を見せる。
モルモン書の預言者たちは,シオンまたは新エルサレムと呼ばれる一つの聖なる町がアメリカ大陸に築かれ,そこには義人だけが住むと預言した(エテル13:1-8 参照)。教義と聖約では,この町は聖徒のための平和と安全の地,イエス・キリストが住まわれ,悪人が来ようとしない地であると述べられている(教義と聖約45:66-67 参照)。
1831年7月,ジョセフ・スミスは啓示を受け(教義と聖約57章 ),このシオンの町かミズーリ州ジャクソン郡に築かれること,ジャクソン郡内の町インディペンデンスに神殿が建設されること(教義と聖約57:1-3 参照)が明らかにされた。1831年8月2日,シドニー・リグドンはジャクソン郡の土地を聖徒の集合の地として主に奉献し,翌日ジョセフ・スミスはインディペンデンスの神殿用地を奉献した。奉献式に出席した教会員は土地の奉献の儀式の中で,神の律法を守ること,隣人が神の律法を守るように助けることを約束した。
多くの教会員はシオンの町を築くために,先を争ってジャクソン郡へ移って行った。彼らは主の指示に従って農業用地や家屋の用地を可能なかぎり購入した(教義と聖約57:4-6 参照)。シオンを建設するために移住した聖徒たちは平和なひとときを満喫していた。彼らの中には盗人も怠け者もなく,全員で神を礼拝した。パーリー・P ・プラットは当時のジャクソン郡の聖徒たちについて次のように述べている。「現在の聖徒たちよりも幸福な民が地球上にいるとは思えない。もしいるとしてもほんのわずかでしかないに違いない。」(Autobiography of Parley P. Pratt , 93)
しかしながら,時間の経過とともに一部の聖徒たちは反抗するようになっていった。また,預言者ジョセフ・スミスがミズーリへ移ってこないことに落胆し,預言者を非難する聖徒もいた。ある聖徒たちは,教会を導くために神から召された人々よりも自分たちの方が立派に導くことができると考えたため,神権指導者と口論したり,神権指導者を無視したりした。こうして彼らの間にはねたみと不従順な気持ちが広がっていった。
聖徒たちは悔い改めるように言われた。モルモン書を読み,戒めに従うようにとの勧告を受けた。ほとんどの聖徒は悔い改め,今後神の戒めを守ることを誓った。聖徒たちが悔い改めを始めると,主はジョセフ・スミスに対して「天使たちは彼らのことを喜んでいる」と言われた(教義と聖約90:34 )。
ジャクソン郡の教会員の間では平和が保たれていたが,ミズーリに住む教会員でない人々は教会員に対して恐れや怒りを抱いていた。聖徒がジャクソン郡へ移住を始めたとき,インディペンデンスの町は約20軒の家屋と数軒の店しかない粗末な開拓者村でしかなかった。住人のほとんどは読み書きができなかった。これに対して聖徒のほとんどは読み書きができる人々だった。一部の住人は,ジャクソン郡の土地を神から授かったと聖徒たちが言っているのを耳にしていた。このため彼らは教会員が郡を支配し,教会員でない人々を追放するのではないかと恐れた。地域の牧師たちも彼らの教会の信者が聖徒たちの方へ行ってしまうのではないかと恐れていた。そこで牧師たちは人々の間に恐れと争いをかき立てるようなことをした。
1833年4月,憎しみとねたみを抱く300人の暴徒は,聖徒たちを追放する計画を練るためにインディペンデンスに結集した。教会の指導者はこのような集会が開かれていることを聞いて,暴徒の邪悪な計画を中断させてくださるよう熱心に主に祈った。彼らの祈りはこたえられた。計画の合意が得られなかった暴徒たちは酒に酔い,仲間同士でけんかを始めて計画は挫折してしまった。しかし,暴徒は教会員をジャクソン郡から追い出す努力をあきらめたわけではなかった。
1833年7月 に大群衆と化した教会の敵対者は再びインディペンデンスに結集した。そこで開かれた集会において彼らは「できれば穏やかに,さもなければ強制的に」聖徒たちを追放することを誓った。集まった人々は暴徒と化し,モルモン書を印刷していたウィリアム・W ・フェルプスの印刷機を破壊した(第22課 参照)。数日後,武装した暴徒は聖徒たちの穀物に火を放ち,幾つかの建物を破壊し,さらに聖徒たちを殺すと脅した。エドワード・パートリッジ,ウィリアム・W ・フェルプス,アイザック・モーリー,シドニー・ギルバート,ジョン・ホイットマー,ジョン・コリルの6名の教会指導者は勇敢にも,ほかの聖徒たちに手をかけないのであれば,彼らに降伏することを申し出た。しかし暴徒はこれを拒否した。教会指導者は最終的に,暴徒が聖徒たちに手を出さないことを条件に,翌年の初めまでにジャクソン郡を立ち去ることを合意する書類に署名した。
自分たちの受けた迫害に対して怒りと恐れを抱いたジャクソン郡の聖徒たちは,当然のように復讐を考えていた。しかし預言者は,ジャクソン郡で聖徒たちが直面している状況を完全に把握する前に,一つの啓示(教義と聖約98章 )を受けた。主はこの啓示の中で聖徒に対して,復讐を求めてはならないこと,忍耐すべきこと,国の法律に沿って行動すべきことを告げられた。聖徒たちは国の法律に従って暴徒の迫害をやめさせるよう行政府に要請したが,暴徒は法律を無視し,さらに激しい迫害を加えるようになっていた。聖徒は行政府からの支援に頼ることができなかった。政府の内部にも暴徒がいたのである。ジャクソン郡に住んでいた人々はほとんどが聖徒に対して友好的だった。しかし暴徒に逆らって,聖徒を守ることには恐れを抱いていた。
1833年11月4日,暴徒の一団がビッグブルー川付近で末日聖徒の少数の男性と少年から成るグループを襲撃した。腹話術を使うことができた一人の教会員は,多くの聖徒が応戦する体制が整っているような声色を使ってしばらくの間暴徒を驚かせることに成功したが,暴徒の一団には聖徒の倍の人数がおり,3倍近くの武器を持っていた。発砲したのは暴徒が先だったが,聖徒も自衛手段としてそれに応戦したことにより,教会の敵は教会員がジャクソン郡の住民を攻撃したという作り話を広めた。教会指導者はジャクソン郡にいるすべての教会員に対して安全のため撤退するよう指示した。
それから2日間,1,000人を超える聖徒たちが敵の手から逃れるために厳しい寒さの中を出発した。ほとんどが女性と子供だった190人のある一団は50キロに及ぶ草の切り株の上を歩き,足を傷だらけにして逃げた。ほとんどの聖徒はミズーリ川の川岸で野営した。激しい雨が降る中をある人たちはテントを張り,また別の人たちはキャンプファイアーを取り囲んで雨を遮る物も持たずに夜を明かした。聖徒は苦しみを受けていたが,まだ天父から愛されていることを確信していた。ある夜,彼らはおびただしい流星群を見た。流星の放つ光が一晩中目を見張るような模様を描いていた。聖徒たちはこれは天父が彼らを見守ってくださるしるしだと考えた。聖徒を迫害するために川に向かって馬を走らせていた暴徒の一団もこの流星群を見た。そして非常な驚きを覚えてきびすを返し,町へ戻って行った。10日間にわたって暴徒は聖徒を悩ますような行動に出ることはなかった。
聖徒たちは結局ジャクソン郡の家へ戻ることはなかった。彼らは多くの迫害を受けていたが,忠実であり従順であるならば最終的には約束されたすべての祝福を受けることを信じていた。もしこの世で受けることができなければ,次の世でそれらの祝福を受けることを知っていた。初期の聖徒はシオンの町である新エルサレムを築くことはできなかった。しかし,救い主の再臨の準備としていずれ確立されることになる。
レッスンの準備に当たって,以下の質問と参照聖句を研究する。子供たちが聖文を理解し,生活に応用するうえで最も役立つと思われる質問を,採り上げる。教室で子供たちと一緒に聖句を読んで話し合えば,聖文に対する子供たち一人一人の理解力を深めるのに役立つ。
ジョセフ・スミスが受けた啓示によると,シオンの町はどこに築かれるのでしょうか(教義と聖約57:1-2 )。神殿はどこに建設されるのでしょうか(教義と聖約57:3 )。シオンの町は いつ確立されるのでしょうか(イエスの再臨の直前)。それはどのような場所となるのですか(教義と聖約45:66-67 )。
ジャクソン郡の一部の聖徒はどのように不従順だったのですか(教義と聖約101:6-7 )。聞き従うのが遅いとはどういう意味ですか。なぜ,すぐに聞き従わなければならないのでしょうか。従順であるとわたしたちの祈りの答えに影響があるでしょうか。
生徒の年齢層の子供たちはどのような誘惑やプレッシャーを受けて,それが不従順につながるのでしょうか。あなたはそうした誘惑やプレッシャーをどのようにして退けることができますか。
主はジャクソン郡の聖徒に復讐をしないように勧告したとき,何と言われましたか(教義と聖約98:1-3 )。家族への迫害についてどのように対処するように言われましたか(教義と聖約98:23-24 ;「レッスンを豊かにする活動」の2を参照)。わたしたちは意地悪をする人たちに対してもっと忍耐し,赦 ゆる す気持ちを持つようにするには,どうしたらよいでしょうか。
主は聖徒に,福音のために死ぬことを恐れてはならないと言われたことを説明する(教義と聖約98:13-14 )。今日 こんにち わたしたちが直面している試練は福音のために死ぬかどうかではなく,福音に従って生きるかどうかである。わたしたちはどうしたら福音に従って生きることができるでしょうか。主はどのような生活をするように言われましたか(教義と聖約98:11 )。
ジャクソン郡の聖徒たちは従順ではありませんでしたが,主は彼らに対してどのような気持ちを持っておられたでしょうか(教義と聖約101:1-3,9 )。ある聖徒たちは重大な罪を犯していたわけではなかったが,それでも家を追われたことを説明する。彼らは従順な人々に約束されたすべての祝福を受けるはずである。あなたは従順であることによってどのような祝福をすでに受けていますか。この世において戒めに従順であれば,次の世においてどのような祝福を受ける望みを持つことができますか。
以下の活動を,レッスンのどの部分でも,また幾つでも使うことができる。復習やまとめ,チャレンジに利用してもよい。
戒めを一つ挙げ,それを守る一つの方法を言ってから,お手玉または同様のものを一人の子供に渡す。お手玉を受け取った子供は一つの戒めを挙げ,それを守る方法を一つ言って,次の子供にお手玉を渡す。全員に少なくとも1回はこの活動を行うまで続ける。
大きなソックスか布製の袋の中に,小さなおもちゃ,鍵 かぎ ,ボタン,くぎ,あめなど子供になじみのある物を5個から10個入れておく。ソックスか袋をひもなどで縛って,封をする。
子供たちに紙と鉛筆を配り,一人一人にソックスか袋に触って,中に何が入っているかを考え,それらを書き出してもらう。全員が書き終えたら,ソックスか袋を開けて,中のものを子供たちに見せる。外から単に眺めるだけであったり,触るだけではソックスか袋の中に何が入っているかが分かりにくいことを指摘する。同じように,わたしたちは他人の行いを見ることはできるが,そのような行いをさせた考えや気持ちを知ることは難しい。
教義と聖約98:23-24 で聖徒たちは迫害を忍耐を持って耐え,敵に仕返しをすることを求めてはならないと主から命じられた。聖徒は敵の行いを見ることができた。しかし,暴徒がなぜそのような行動に出たかを知っておられるのは主だけである。主だけが彼らの心の思いを御存じだった。聖徒は復讐を求めるのでなく,赦さなければならないと言われた。
以下の物語をあなた自身の言葉で話す。
ジャクソン郡における暴徒との戦いで,教会員のフィロ・ディブルは腹部を撃たれた瀕死の重傷だった。当時,このような傷を負った人々は通常,出血多量で死ぬか,病気に感染して命を落とすかのいずれかだった。
聖徒たちはジャクソン郡から次々に逃げ出して行った。フィロ・ディブルの友人たちはフィロを残して行きたくはなかったが,一緒に連れて行くにはあまりにも重傷で,そこへとどまるにはあまりにも危険だった。フィロの友人の一人であったニューエル・ナイトは暴徒たちの前をそっと通過してフィロ・ディブルの家へ入り,すばやくフィロに神権の祝福を与えると,その場を去った。
翌日ニューエル・ナイトはフィロの家から16キロ離れた地点でほとんど回復しているフィロに出会った。フィロがニューエルに話したところによると,祝福を受けたとき,痛みが去り,フィロの体は「病気に感染した大量の液体を,銃弾と自分のシャツの切れ端とともに吐き出した。」フィロは神権の祝福により完全に回復した。彼は大平原を横断してユタへ行き,残る人生を忠実な教会員として過ごした(ディーン・ヒューズおよびトム・ヒューズ,Great Stories from Mormon History [Salt Lake City: Deseret Book Co., 1994] ,35-37参照;パーリー・P ・プラット,Autobiography of Parley P. Pratt [Salt Lake City: Deseret Book Co., 1975] ,99-100とHistory of the Church , 第1巻,431も参照)。
子供たちに教義と聖約82:10 を暗記させ,わたしたちが戒めを守るときに主は祝福してくださることを強調する。
信仰箇条3条 を子供たちに暗記させるか復唱させる。救いを得るには神の戒めに従わなければならないことを確認する。
「戒めを守る人を」(『子供の歌集』68)か「福音の教えよく守りましょう」(『子供の歌集』72)を歌うか,歌詞を読む。
子供たちに神の戒めを守るようチャレンジする。わたしたちは問題や試しを受けるが,終わりまで従順で耐え忍ぶならば,約束されたすべての祝福を最終的に受けることを証する。
本課の復習のため,家庭で教義と聖約82:10 を研究するよう,子供たちに提案する。
子供たちが,物語,質問,活動,家庭学習の提案などのレッスンの一部を家族と分かち合うように励ます。読書課題を家族で一緒に読んでもいい。
一人の子供に閉会の祈りをさせる。