ミズーリ州へ向かうシオンの陣営

目的

試練や信仰の試しがあるときでも，忠実であり従順であるなら，わたしたちは強められることを子供たちに理解させる。

準備

教義と聖約103：1－6，27－36；本課の歴史記事；教義と聖約105：1－13，18－23と本課の歴史記事を祈りの気持ちで研究する。それからレッスンを検討し，聖文と歴史記事を子供たちにどう教えるか決める（本書「レッスンの準備」ⅵ－ⅶ，「聖文と歴史記事に基づいて教える」ⅶ－ⅷ参照）。
その他の参照箇所－アブラハム3：24－26；教義と聖約103章；105章
子供たちを参加させ，レッスンの目的を達成するのに最も役立つ「話し合いのための質問」と「レッスンを豊かにする活動」を選ぶ。
教材
1. 教義と聖約（人数分）
2. 高価な真珠
3. 紙と鉛筆（人数分）
4. 視覚資料5－27「主の守りを受けるシオンの陣営」

レッスン

一人の子供に開会の祈りをさせる。

導入

子供たちにこれからテストを行うことを伝える。全員に紙と鉛筆を配り，紙の左上から下に向かって1番から7番までの番号をふるように言う。これから読む文が正しいか間違っているかを判断し，正しければ○，間違っていれば×を番号の横に付けるように言う。

ジョセフ・スミスは天父とイエス・キリストにお会いした。（○）
天使モロナイはジョセフに話しかけた。（○）
ジョセフは銀版からモルモン書を翻訳した。（×，金版だった）
ジョセフ・スミスとオリバー・カウドリはアロン神権を受けてからお互いにバプテスマを施した。（○）
メルキゼデク神権はアブラハム，イサク，ヤコブによってジョセフとオリバーに授けられた。（×，メルキゼデク神権はペテロ，ヤコブ，ヨハネによって授けられた）
末日聖徒イエス・キリスト教会は1830年4月6日に組織された。（○）
ジョセフ・スミスは神によって預言者に召された。（○）

答えについて簡単に話し合う。答えを間違えた子供がいたら，訂正させる。

学校でのテストについて話し合う。

学校の先生はなぜテストをするのですか。（情報や，特定の物事を行う方法を学んでいるかどうかを確認し，学んでいるかどうかを自分で分かるようにさせるため）
人生ではそのほかにどのようなテストがあるでしょうか。

わたしたちが地上に送られて来た理由の一つはイエス・キリストへの信仰についてテストを受けるためであることを説明する。わたしたちは試練や困難なことに出会っても，天父とイエス・キリストが望んでおられるような生活を送ることを証明するために地上にいる（アブラハム3：24－25参照）。天父とイエス・キリストが望んでおられるような生活から外れることも時にはある。しかしわたしたちは悔い改めて，正しいことをするように自分を変えることができる。このレッスンでは，初期の教会員の信仰を試された出来事であるシオンの陣営について学ぶことを子供たちに伝える。

聖文と歴史記事

子供たちに以下の歴史記事ならびに教義と聖約103章と105章から，シオンの陣営において聖徒たちが経験した事柄について教える。適当なときに絵を見せる。

1833年から1834年にかけての冬に，ミズーリ州ジャクソン郡にいた聖徒たちは敵対する暴徒から迫害を受け，家を追い出された。聖徒たちは食糧をほとんど持って行くことができず，また厳しい冬から身を守るものは何一つ手にしていなかった。ミズーリ州知事ダニエル・ダンクリンは聖徒が自らの手で暴徒から身を守る一団を組織すれば，土地と家屋を返すことを約束していた。このためミズーリの教会指導者は預言者ジョセフ・スミスから援助と指示を受けるためパーリー・P・プラットとライマン・ワイトをカートランドへ派遣した。預言者は男性の一団を組織してミズーリへ進軍し，聖徒を救出するようにと命じる啓示を（教義と聖約103章）受けた。シオンの陣営と呼ばれたこの一団は食糧，衣類，現金をミズーリの聖徒に届け，彼らの家屋と土地を取り戻すことになった。

主はシオンの陣営に500人の男性を募るよう望んでおられたが，教会指導者が500人を集めることができなければ，最低100人を集めるようにと命じられた（教義と聖約103：30－34参照）。男性たちが集まるのは遅々としていたが，陣営がミズーリに到着するころには最年少の16歳から最年長の79歳まで約200人の男が加わった。何人かの女性と子供も陣営と一緒に旅をした。陣営の一行は25台の幌馬車を持って行ったが，荷台にはミズーリの聖徒たちを支援する物資が山と積まれていたため，男性たちはミズーリまでの道のりのほとんどを徒歩で行かなければならなかった。

シオンの陣営が出発する前に，預言者は男性たちを隊に分けて隊長を任命するとともに，隊員が守るべき規則を定めた。1834年5月5日，シオンの陣営はオハイオ州カートランドからミズーリまでの600キロの行軍を開始した。隊員たちは朝と夕べに祈りをささげ，日曜日にはともに集まって聖せい餐さんを受け，説教を聞いた。彼らは暴徒の襲撃に備えるために仮想演習と訓練を実施した。預言者はこの行軍について次のように述べている。「神がわたしたちとともにおられた。神の御み霊たまがわたしたちを先導した。小隊の信仰はいささかも揺らぐことがなかった。わたしたちは天使たちがともにいることを知っていた。なぜならば，彼らを見たからである。」（History of the Church，第2巻，73。教義と聖約103：20参照）。

長距離の行軍は決して楽な旅ではなかった。隊員は様々な試練を経験した。高温多湿な天候のうえに悪路が重なっていた。隊員たちの足は皮がむけ，水泡ができ，血が流れていた。さらに良質の食料と飲み水を手に入れることができないという問題も抱えていた。腐った食べ物を口にしなければならなかったり，昆虫を取り除くために水をこしてから飲料水として使用したりしなければならないことも度々あった。このようなつらい旅のために一部の隊員の間には口論や争いが起きていた。また自分たちが苦難を受けているのはジョセフ・スミスのせいだと言う者もいた。

ある晩のこと，シルベスター・スミス（預言者の親しん戚せきではない）とほかの隊員との間で口論が起きた。隊員たちは預言者に口論を静めてくれるように要請した。シルベスター・スミスと数名の隊員たちは非常に反抗的だったため，預言者は彼らに対して，現在の野営地を出発するまでにさらに苦難を受けることになると言った。翌日の朝になると，陣営のほとんどの馬が病気にかかっていた。預言者は隊員たちに，悔い改めて主の前に謙遜けんそんになるならば，馬は元気を取り戻すだろうと言った。隊員たちは悔い改めた。そして正午までにシルベスター・スミスの馬を除いてすべての馬が元気を取り戻した。シルベスターの馬は死んでしまった。

シオンの陣営がミズーリに到着すると，ジョセフ・スミスはパーリー・P・プラットとオーソン・ハイドを州庁のダンクリン知事のもとへ派遣した。やがて二人の兄弟は帰ってくると，知事は前言を翻ひるがえし，聖徒の土地と家屋を取り戻すための援助を拒否していると報告した。知事はミズーリの全財産を放棄して，生活する場所をほかで見つけるよう提案した。志気をくじかれるような知らせではあったが，シオンの陣営はジャクソン郡に向けて行軍を続けた。

行軍中の陣営はミズーリの暴徒たちからの監視といやがらせを受けていた。暴徒の指導者の一人であったジェームズ・キャンベルという男は「2日以内にジョー・スミスとやつの軍隊を殺せないようなことがあれば，おれの体を鷲とコンドルに食われてもよい」と誓っていた。キャンベルが率いる一団はミズーリ川を渡ろうとしたときに，川の真ん中でボートが転覆し，ジェームズ・キャンベルと6人の男たちはおぼれ死んだ。キャンベルの遺体は下流に流され，遺体が発見されたときには鷲とコンドル，そのほかの鳥と動物によって食い荒らされていた。（History of the Church，第2巻，99－100参照）

ある日の晩，シオンの陣営はフィッシング川の川岸で野営することになり，野営の準備をしていると，銃で武装した5人の暴徒が乗り込んできて，その場に居合わせた人々を脅したうえで，暴徒が攻撃を仕掛けてくると警告した。シオンの陣営の一部の隊員は暴徒と交戦することを望んだが，ジョセフ・スミスは主の守りに頼るように言った。間もなく非常に大きな嵐が一帯を襲った。激しい雨と雷が降り，大地が震えた。絶え間なく稲妻が空を裂き，雷鳴がとどろいた。嵐は暴徒の弾薬を水浸しにし，おびえた馬を四散させ，暴徒たちがかぶっていた帽子に穴を開け，ライフルさえも真っ二つにへし折った。豪雨によって川の水位が上がったため，暴徒は川を渡ることも，シオンの陣営を攻撃することもできなかった。

ジョセフ・スミスはシオンの陣営が出発して間もなく，預言的な意味合いを持った警告を発している。陣営に加わった人々が言い争い，不平を漏らし，主の戒めを守らなければ，陣営に災い（大きな苦しみや病気）が下ると述べた。預言者はまた，災いによって何人かが命を落とすであろうと預言した。しかし人々が謙遜になって悔い改めるならば，ほとんどの災いは姿を現さないであろうと述べている。

約3週間後にこの預言は成就した。コレラと呼ばれる恐ろしい病気が陣営を襲った。従順であった人々も口論と不平を言い続けていた人々も同様に発病した。預言者ジョセフと兄のハイラムさえも感染した。ジョセフとハイラムは症状が重かったため，命を落とすのではないかと思っていた。二人は助けを求めて何度も祈った。ハイラムは突然立ち上がって叫んだ。「ジョセフ，家族のもとへ帰ろう。わたしははっきりとした示現を見た。母がりんごの木の下でひざまずいているのを見た。今も母は涙を流しながら，わたしたちの命を救ってくださるように神にお願いしている。……御霊は，母の祈りとわたしたちの祈りがこたえられることを証あかししておられる。」（ルーシー・マック・スミス，History of Joseph Smith，229より引用）

野営地で病床に就いてから8日後，ジョセフは陣営の多くの人々に対して，もし彼らが主の前にへりくだり，主の戒めを守ることを聖約するならば，コレラは直ちに去ると言った。人々は手を上げて，主と聖約した。すると病気は去った。シオンの陣営のうち約68人がコレラに感染し，14人が亡くなった。

ジョセフ・スミスは1834年6月の終わりに，啓示（教義と聖約105章）を受けた。ここで主はシオンの陣営に対してミズーリの暴徒と戦ってはならないと命じられた。シオンの陣営に加わっていた人々の内，一部は以前働いていた伝道地へ戻り，何人かはミズーリに残った。しかし，大多数は家族のもとへ帰った。シオンの陣営はミズーリの聖徒のために彼らの家屋と土地を暴徒の手から取り戻すことはできなかったが，参加した人々の信仰を試すという大切な目的を果たした。彼らは不平を言わずに預言者ジョセフ・スミスに従うことと，遭遇した障害を克服することを学ばなければならなかった。このテストを通過した後に，忠実な生活を送った人々は教会の力強い指導者となった。十二使徒定員会と七十人第一定員会に召された最初の会員のほとんどはこの中から選ばれた。

話し合いと応用のための質問

レッスンの準備に当たって，以下の質問と参照聖句を研究する。子供たちが聖文を理解し，生活に応用するうえで最も役立つと思われる質問を，採り上げる。教室で子供たちと一緒に聖句を読んで話し合えば，聖文に対する子供たち一人一人の理解力を深めるのに役立つ。

ジョセフ・スミスはなぜシオンの陣営を組織したのですか（教義と聖約103：1）。これらの人々は最初，何をするために組織されましたか。主はシオンの陣営に何人が加わることを望んでおられましたか（教義と聖約103：30）。主がわずか100人でも喜んで受け入れられたのはなぜですか（主は求められたすべての人が喜んで助けようとはしないことを御存じだった；教義と聖約103：31－34）。
シオンの陣営に加わった人々はどのような試練を受けましたか（「レッスンを豊かにする活動」の1を参照）。彼らはこれらの問題を自分に招くようなことをしましたが，それはどのようなことでしたか。わたしたちはどのようにして自分の方から問題を招いているでしょうか。言い争ったり，不平を言ったりする人々と同様に従順な人々も試練を受けたのはなぜですか。わたしたちは従順であっても試練や問題に出会うことが時々あるのはなぜですか（学び，成長させるため，試すため，偶然に起こったため，ほかの人々にも選択の自由があり，彼らが間違った選択をしてその影響がわたしたちに及んだため，などの答えが考えられる）。
シオンの陣営の人々は主が見守っておられることをどのようにして知りましたか。わたしたちは主が見守っておられることをどのようにして知ることができますか。毎日の生活で主の助けを得るにはどうすればよいでしょう。
シオンの陣営はミズーリの聖徒たちの家屋と土地を取り戻すという使命をなぜ果たさなかったのですか（教義と聖約105：1－6）。聖徒はシオンをミズーリに築く以前に何をする必要がありますか（教義と聖約105：9－11）。ミズーリにおけるシオンの確立はまだ実現していないことを指摘する。救い主の再降臨の直前に実現される。
主は後に当初の計画とは異なり，暴徒と戦ってはならないと命じられました。主はなぜこれらの人々に対してシオンの陣営での経験をお与えになったのでしょうか（教義と聖約105：19）。「信仰の試練」とはどういう意味ですか。シオンの陣営の多くの人々は忠実であり続けることができることを証明したことを指摘する。彼らは不平を言わず，口論せず，短気を起こさなかった。彼らは信仰を強め，また預言者に耳を傾け，預言者を観察することによって，指導力について多くのことを学んだ。
天父とイエス・キリストに対するわたしたちの信仰はどのように試されますか。信仰を試されたことがありますか。わたしたちはこれらの試しによってどのように強さを身に付けていくのでしょうか。
一人の子供に教義と聖約105：23を声を出して読んでもらう。主は聖徒がどのような資質を身に付けることを求めておられますか。忠実であること，よく祈ること，謙遜であることによってわたしたちはどのように強められ，また信仰の試練を受けるときにそれらが助けとなりますか（「レッスンを豊かにする活動」の4を参照）。

レッスンを豊かにする活動

以下の活動を，レッスンのどの部分でも，また幾つでも使うことができる。復習やまとめ，チャレンジに利用してもよい。

レッスンのために，ざらざらした細い木片と紙やすりを用意する。（または鋭くとがった石とつるつるした石を用意する。石を使う場合は活動の進め方を変える）
- シオンの陣営の人々はどのような問題に出会いましたか。（病気，敵からの迫害，口論，短気，腐った食べ物，汚れた水，皮膚のむけた足，などの答えが考えられる）
子供たちが答えている間に，ざらざらした木片を回して，感触を確かめさせる。ざらざらした木片を，試練や問題によって試されていない神の子らにたとえる。
- この木片で作ったスプーンや鉛筆を使いたいと思いますか。なぜ使いたくないと思いますか。
- わたしたちはどのような試練を受けるでしょうか。
子供たちの答えを黒板に書き出す。
- これらの試練を切り抜けるにはどうすればよいでしょう。
試練と，試練を切り抜ける方法について話し合っている間に，少なくとも木片の一部がつるつるになるまで紙やすりでこする。問題に出会ってもそれを克服することによってわたしたちはこの木のように磨かれていくことを説明する。問題を克服すると，不完全なところは「削り取られ」て，わたしたちはもっと良い人になり，天父とイエス・キリストのお役に立つことができる。

木片をもう一度子供たちに回し，ざらざらした部分とつるつるした部分の違いを確かめさせる。
黒板に大きな円を二つ書く。一つの円に「前世」，別の円に「現世」と書く。子供たちと一緒にアブラハム3：24－26を読む。第一の位は前世，わたしたちが地上に生まれる前の生活であることを説明する。
- わたしたちがそこで行われたテストに合格したことはどのようにして分かりますか。（第一の位を守った－地上に生まれた）
第二の位は現世であることを説明する。
- どうすればここで行われるテストに合格して，「主なる〔わたしたち〕の神が命じられるすべてのことを〔わたしたち〕がなす」ことを証明することができるでしょうか。
子供たちに，神が行うように言われた事柄を黒板に書き出してもらう（什じゅう分ぶんの一を納める，教会へ行く，互いに愛し合う，など）。子供たち一人一人に，今週努力することとして一つか二つの項目を選んで，導入の活動で使ったテスト用紙の裏にそれを書くように言う。

わたしたちは一生を通じてテストを受けることを子供たちに理解させる。1日や1週間戒めを守るだけで，テストに合格することはできない。一方，もし戒めを破ったとしても，永久に不合格になるわけではない。悔い改めた後に戒めを守るならば，天父のもとに帰ることができる。
子供たちに「歴史記事」の一部をドラマ化させる。あなたがせりふを用意してもよいし，あなたが物語を読んで，子供たちに登場人物を演じさせ，その人物が言うと思うことを言わせてもよい。
教義と聖約105：23－24から，忠実である，よく祈る，へりくだる，わたしたちが信じ行っていることを自慢しないなど，子供たちに当てはまる原則を書き出し，話し合う。これらの原則に従うことによって，どのように試練に備えることができるかを子供たちに理解させる。これらの原則にもっとよく従って生活するために，今週子供たちは何ができるかを考えさせる。
クラスを「シオンの陣営」として組織し，ワードまたは支部の会員たちを助けるために何ができるかを話し合わせる。未亡人を訪問する，ワードか支部の清掃プログラムに参加する，クラスで不活発な子供がいれば初等協会に誘う，などが考えられる。神権指導者の承認を得たうえで，奉仕活動を行う。
「主の計画にしたがう」（『子供の歌集』86）を歌うか，歌詞を読む。

まとめ

証あかし

地上に来る機会を得たことについてのあなたの気持ちを述べ，また，いつの日か天父とイエス・キリストとともに生活するためにふさわしくなりたいというあなたの望みについて話す。子供たちに，もし忠実であり従順であるならば，この偉大な祝福を受けるためのふさわしさを身に付けることができることを述べる。

読書課題

本課の復習のため，家庭で教義と聖約105：1－6，9－10を研究するよう，子供たちに提案する。

家族との分かち合いの提案

子供たちが，物語，質問，活動，家庭学習の提案などのレッスンの一部を家族と分かち合うように励ます。読書課題を家族で一緒に読んでもいい。

一人の子供に閉会の祈りをさせる。