パウロの模範に従い,試練や苦難の中にあってもイエス・キリストの忠実な証人となるよう,生徒を促す。
以下の聖句を読み,内容について深く考え,祈る。
使徒21:1-22:21 。パウロは生命の危険を心配する同僚たちの反対にもかかわらず,エルサレムへ向かって旅をする。彼はエルサレムで,兄弟たちに自分のしてきた伝道の旅のことを報告する。彼は神殿に行くが,そこで怒り狂った暴徒たちに捕らえられる。千卒長はパウロを捕らえるが,人々に向かって話すことを彼に許す。パウロは自分がどのようにしてイエス・キリストの福音に帰依したかを人々に話す。
使徒22:22-23:35 。暴徒たちはパウロの話を遮り,彼を殺そうと謀る。千卒長はパウロを暴徒たちから遠ざけ,兵営に連れて行く。翌日,千卒長はパウロをユダヤ人の議会であるサンヒドリンへ連れて行くが,また大きな騒ぎとなり,パウロは再び兵営に連れ戻される。その夜,主がパウロに現れ,彼はエルサレムでしたと同じように,ローマでも証をするように召されたことをお告げになる。40人余りのユダヤ人がパウロを殺す陰謀を立てたので,彼は安全のために身柄を総督ペリクスのもとへ送られる。
使徒26 。迫害と獄中生活の数年の後,パウロはアグリッパ王の前に引き出されて証をする。アグリッパはパウロの証を拒み,彼をローマのカイザルのもとへ送る。
使徒27-28 。パウロの乗った船は,船長が彼の勧告を無視した後に,ローマに向かう途中難破してしまう。ようやくローマへ着いたものの,彼は投獄されてしまう。しかしパウロは耳を傾けるすべての人々に教えを説く。
以下の資料が入手できる場合は,レッスンの中で使用する。
「パウロ-選ばれた器」(10分34秒)『「新約聖書」ビデオ・プレゼンテーション』(53914 300)。できれば事前にその箇所を見て,レッスンの話し合いのどこでビデオを止めたらよいかを確認しておく。
『聖句ガイド』「地図8.使徒パウロのローマへの旅」
教えるための提案:「ぜひとも必要なのは,皆さんの教える人々が養われ,何かを学ぶことです。彼らはクラスに出席したら,少くとも何か一つは,考え,概念,霊感を得る必要があります。ささいなこと,ごく普通のことでもかまいません。実際,基本的なことであれば,あなたの達成度は高いのです。」(ボイド・K ・パッカー,Teach Ye Diligently 『熱心に教えなさい』154)
適切であれば,以下の活動または教師が考えた活動をレッスンの始めに行う。
何人かの生徒に答えてもらう。次に,預言者ジョセフ・スミスは最初の示現を受けた後にその体験を振り返り,それが使徒パウロの体験に似ていると感じた。生徒たちにジョセフ・スミス-歴史1:23-25 を読ませ,その理由を見つけさせる。
使徒パウロとアグリッパ王の対面については,本課で後に触れることを説明する。そのときも,また伝道の旅においても,パウロは拒絶や迫害を経験したが,信仰を強く保ち,勇敢にイエス・キリストを証した。
以下の聖文を教えるに当たって,どうしたらパウロのように強い勇気と信仰を持つことができるかについて話し合う。言葉あるいは行いによって勇敢に証を述べたときの体験を話すように,生徒たちを促す。
『「新約聖書」ビデオ・プレゼンテーション』「パウロ-選ばれた器」を使う場合は,その最初の部分をここで見せる。「彼は王や支配者の前で御名を証するであろうという主の御言葉を成就した」というナレーションが終わったところで,ビデオを止める。(このナレーションが語られている間に,パウロは兵士たちに付き添われて通路を進む。)
使徒21:1-22:21 から選んだ箇所を,生徒たちに読んでもらう。ローマ帝国の領域を広く巡った3度の伝道の旅を成功させた後,パウロは危険であることを知りながら,エルサレムへ戻ることにした。
パウロの友人たちが,彼がエルサレムに戻ることを止めようとしたのはなぜでしょうか(使徒21:10-12 参照)。パウロは友人たちのその心配に,どう反応したでしょうか(使徒21:13 参照)。それはキリストに対するパウロの思いがどのようなものであることを示しているでしょうか。
パウロはエルサレムへ到着した翌日に何をしたでしょうか(使徒21:17-19 参照)。それは現代の宣教師たちが伝道を終えて戻ってからすることと,どのような点で似ているでしょうか。(彼らは伝道中の体験を,ステーク会長や高等評議員に報告する。また聖餐会においてワードや支部の会員たちに報告することもよくある。)皆さんはほかの人の伝道中の体験を聞いて,どのような祝福を受けたことがありますか。
多くのユダヤ人のクリスチャンたちは,救いはモーセの律法ではなく,イエス・キリストを通して授けられると説いたことで,パウロに怒りを感じました(使徒15:1-35 )。この人々の感情を静めるために,エルサレムの指導者たちはパウロに,神殿へ行き彼が今も律法に従っていることを示すしるしの一つとして清めの儀式を行うように求めました(使徒21:20-25 )。パウロが神殿にいたときに,どのようなことが起きたでしょうか(使徒21:26-30 参照)。バウロは,モーセの律法に反することを教え,ユダヤ人でない者を入れて神殿を汚したと自分を非難する暴徒たちに取り囲まれました。パウロはこの暴徒たちからどのようにして救われたでしょうか(使徒21:31-36 参照)。千卒長が人々に向かって話す許可を与えたとき,パウロはどのようにしたでしょうか(使徒21:37-22:21 参照)。それをするには勇気が必要でした。なぜでしょうか。
使徒21-28 に書かれている,パウロが大きな勇気を奮ってイエス・キリストを証した出来事をすべて黒板に書き上げるとよい。レッスンを進めながら,適切であれば書き加えるようにする。
使徒22:22-23:35 から選んだ箇所を読み,その内容について話し合う。
神殿の外でパウロの改宗談を聞いていた人々は,どのように反応したでしょうか(使徒22:22 参照)。千卒長がパウロを暴徒たちから切り離したのは,どのような目的があったからでしょうか(使徒22:24 参照)。パウロはどうして鞭打ちの刑を免れることができたのでしょうか(使徒22:25-26 参照。パウロは自分がローマ市民であることを告げた。それはローマ帝国内においては,特別な権利を付与するものであった。そしてエルサレムもローマ帝国の領土の一部だったのである)。
ユダヤ人の議会であるサンヒドリンに立たされたとき,パウロが最初に話したのはどのようなことでしょうか(使徒23:1 参照;使徒24:16 も参照。預言者ジョセフ・スミスが同様のことを述べた教義と聖約135:4 も参照)。パウロが「神の前に,ひたすら明らかな良心にしたがって行動」していたことは,このときどのように役立ったと思いますか。神の前に明らかな良心を得るには,生活をどのように変える必要があると思うかを,生徒たちに考えさせる。
サンヒドリンでの審問が行われた後にパウロに現れた主は,彼に何をお告げになったでしょうか(使徒23:11 参照)。主は皆さんが苦しいときにどのようにして「しっかり」するようにと励ましてくださいましたか。
主がパウロに現れられたその翌日,40人余りのユダヤ人がパウロを殺す陰謀を立て,それを成し遂げるまでは何も食べず何も飲まないという誓いを立てました(使徒23:12-15 )。パウロはどのようにしてその陰謀から守られたでしょうか(使徒23:16-35 参照。これはわずか数日の間にパウロが生命の危険から救われた3度目の出来事であることを指摘するとよい)。
使徒26 から選んだ箇所を読み,その内容について話し合う。使徒24-25 から以下の事柄を要約するとよい。パウロは総督ペリクスのもとへ送られ,彼の前で大胆に証を述べた。ペリクスはパウロから保釈金を得ようという下心があったので,彼を2年間獄中にとどめた。ペリクスと交替してフェストが総督の任に就くと,ユダヤ人たちはフェストに,パウロをエルサレムへ送って裁判にかけるように求めた。パウロは公正な裁判を受けられないことを知って,エルサレムへ行くことを拒んだ。そしてローマ市民の権利として,カイザルに上訴した。フェストはパウロをローマへ送ることに同意したが,その前にローマが任命したユダヤの統治者へロデ・アグリッパの前に引き出された。
『「新約聖書」ビデオ・プレゼンテーション』の第2部を使う場合は,ここで見せる。「わたしが神に祈るのは,ただあなただけでなく,きょう,わたしの言葉を聞いた人もみな,わたしのようになって下さることです。このような鎖は別ですが」というパウロのせりふが終わったところでビデオを止める(パウロがアグリッパ王の前から連れ出される直前のシーン)。
皆さんはパウロがアグリッパ王に述べた言葉から,どのような印象を受けますか(使徒26:2-27 参照)。アグリッパはパウロの言葉にどのように反応したでしょうか(使徒26:28 参照)。アグリッパにクリスチャンになるのを思いとどまらせたのはどのようなことだと思いますか。現代の人々にイエス・キリストの福音を受け入れるのを思いとどまらせる態度や問題として,どのようなことがあるでしょうか。
パウロに対するフェストとアグリッパの態度はどのように違っているでしょうか。どのような点が似ているでしょうか(使徒26:24,28 参照。主は完全な献身を確かに受け入れてくださるということを指摘する。アグリッパはパウロのメッセージを信じかけていたが,フェストは完全に拒んだ。二人ともパウロが出した信仰の試金石につまずいたのである)。
使徒27-28 から選んだ箇所を読み,その内容について話し合う。アグリッパがパウロを釈放したいと思っていたことを指摘する(使徒26:32 )。しかしパウロはカイザルに上訴したために,ローマへ送られることになった。パウロのローマへの旅について話し合うときに,地図を掲示して,パウロが冬の間そこにとどまった方がよいと勧告した「良き港」や難破した人たちが泳ぎ着いて上陸したマルタなどの場所を指し示すとよい。
船長が,「良き港」を出るのは非常に危険だというパウロの警告を受け入れなかったために,どのような結果になったでしょうか(使徒27:7-20 参照)。百卒長がパウロの勧告を受け入れなかったのは,どのような動機からだったでしょうか(使徒27:11-12 参照)。わたしたちの中に,教会の指導者の勧めをしばしば受け入れない人がいるのはなぜでしょうか。教会の指導者の勧告に従うことの大切さについて,どのようなことを学びましたか。
嵐で船は失われても,全員が無事にどこかの島に打ち上げられるということを,パウロはどのようにして知ったのでしょうか(使徒27:21-26 参照)。この預言はどのようにして成就したでしょうか(使徒27:27-44 参照)。
パウロはマルタ島にいる間に,神権の力をどのように行使したでしょうか(使徒28:7-9 参照)。この出来事は神権の力の目的について,どのようなことを示唆しているでしょうか。神権を尊ぶことは,キリストの証人としての義務を果たすうえでどのように役立つでしょうか。
数か月後に,パウロはようやくローマへ到着しましたが,軟禁状態に置かれました。パウロは一見逆境と思えるその状況をどのようにして良い方向に転じたでしょうか(使徒28:16-31 参照。彼はかなりの自由を与えられたので,福音を教えたり,キリストを証したりすることに時間を用いた)。イエス・キリストの証人として忠実に義務を果たすことについて,わたしたちはパウロの例から何を学ぶことができるでしょうか(パウロが忠実な証人として勇気を示した出来事を黒板に書き上げていく場合は,聖典の該当箇所を参照する)。
ビデオの残りの部分を使う場合は,ここで見せる。
歴史家たちは,パウロは西暦65年ごろに,ローマで殉教したと推測している。彼はその全生涯を通して,すべての国民に教えよという(マタイ28:19 参照),使徒としての責任を全うした。パウロはまた「異邦人たち,王たち,またイスラエルの子らにも」(使徒9:15 )福音を伝えるようになるという主の預言も成就した。彼は言葉による攻撃,肉体的な攻撃,不当な監禁,自然災害など様々な苦しみを受けたが,忠実にキリストの証人としての責任を果たした。
わたしたちも,どのような状況にあっても,イエス・キリストの証人として忠実に義務を果たしてパウロの模範に従うなら,試練を耐え抜く力を主から頂くことができることを証する。
以下の資料はレッスンの概要を補足するためのものである。このアイデアをレッスンに取り入れてもよい。
パウロがキリストについて証するという生涯の使命を全うしたことを理解できるよう,生徒を助けるために,『聖句ガイド』「パウロ」 の項の説明を読ませる(201ページ)。各生徒に,パウロの生涯の中から,彼がキリストを証した事例を一つ挙げさせる(『聖句ガイド』の項目リストに載っていない出来事でもよい)。各生徒に自分が選んだ出来事を発表してもらい,そのすベての出来事を黒板に書き上げる。次に,生徒たちにパウロの旅の地図を見せる(『聖句ガイド』「地図6.使徒パウロの1回目と2回目の伝道の旅」「地図7.使徒パウロの3回目の旅」「地図8.使徒パウロのローマへの旅」)。そして,それぞれの出来事の起こった場所を確認する。必要であれば,生徒たちがその場所を確認できるように,該当聖句を見直すのを助ける。158